神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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第59話---面白い奴だな

風を斬る音が耳元のすぐ側で聞こえる。

 

(やべぇ……攻撃させてくんねぇ……)

光圀は冷や汗を流す。先程は格好つけてタンカを切ったものの、光圀は闘いなんて小学校の時のケンカ以来だ……まぁ、先日も戦ったと言えば戦ったが、あれは自分の力ではなく『戯』のおかげである。よって、今の光圀に勝ち目はない……と本人すらも思っているが。

 

(でも、なんだろ?いつもより動けるし、いつもより見えるし、いつもより聞こえる……)

実際こうして数分間、光圀は天谷の攻撃、プロペラ剣の斬撃を避け続けているのだ。そして、軽くだが1・2発ほど、拳を相手にぶつけている。

「ちょこちょこ動くの面倒だな……よっと!」

天谷が足払いを仕掛けるが、光圀はそれをジャンプで後ろに下がりながら避け……!

 

背中に、木の幹の感触があった。

(しまった、追い詰められた……!)

天谷の横薙ぎが迫っているのを見て、光圀は背中の大木を蹴ってその反動で天谷の頭を超え、高く跳ぶ!だが、

 

「そうだよな!この状況だったらそれしかないよな!」

天谷はそれを見切っていた。

刃が軌道を変え、空中の光圀に近づく!

 

(やば……どうするもなにもどうしようもねぇ!)

空中故に足場も何も無く、光圀は逃げる方法が思いつかない。そんなことを考えているうちにも、剣は迫ってきている!

 

(と、とにかく後ろに!後ろに……!)

 

 

「あり?」

 

結果として、天谷の一撃は空を切った。予想外の感触に天谷は首をかしげ、光圀の行き先を見る。

光圀は、更に後ろに飛んでいた。

 

 

背中に、黒い羽を生やして。

 

「お?マジで神の使いだった訳?」

 

 

「……何だこりゃあぁあああああああ!!」

 

光圀の絶叫が響き渡る!

 

「何だ、その羽!イカすじゃん♪どうやって手に入るのか教えてくんね?」

天谷はそう言って笑う。そして、

 

「ただ、空中にいるからって、有利とは限らねぇよな」

 

森林の大木を利用し、光圀の所まで跳ぶ!光圀はそのまま叩き落とされ、丑三と同じ場所に吹き飛ばされた。

 

「光圀……お前、人間(パンピー)じゃ無かったのか?」

丑三は光圀に尋ねるが、光圀は応えない。その場所に、再び天谷がたどり着く。

 

「いやぁ、俺もこれまでいっぱいケンカしてきたけど、人外とやるなんて初めてだわ……ん?あぁ、こけしとは戦ったっけ?いや、あれも俺がただ倒しただけか?」

天谷は今まで持っていたプロペラを捨てると、別のプロペラを手に取った。

 

「滾らせてくれたお礼に、最後にもう一度聞いてやる」

 

天谷は、剣を振りかぶる。軌道的に、光圀と丑三を一刀両断するつもりのようだ。

 

「お前ら、どんな時、生きてると感じる?」

 

剣を振り下ろしながら、天谷は尋ねる。

 

 

「「まさに今、この瞬間」」

 

2人は、暗い笑みを浮かべながら、言う。

「俺の命が美しく散る時だ」と告げる丑三。そして、

 

「俺の命と引き替えに、誰かを救う時だ」

そう言うと光圀は丑三の前に被さり、翼を広げる!

丑三の身体は羽に包まれる。そして、光圀の身体に剣が届く!

 

……その一歩手前で、剣が止まった。

 

「……お前ら、面白い奴だな」

 

天谷はそう言うと、剣を肩に抱え、2人と向き合った--

 

 

 

--その頃、クラスハウス。

 

「……ふぅ、ただいまー」「ただいまー」

ナツメグと涙ちゃんはクラスハウスに戻ってくる。見た所周りに人はいない。どうやら1番のようだ、と2人は気づくと、そのままソファに腰掛ける。

 

「いやぁ、でもナツメグ、いい陽動だったね!私が裏に回った時にはあの子、完全にナツメグの方を向いてて、しかもそっちに向かってるみたいだったし」

「そんな大したことしてないよ、あははー……」

 

実は、スカートが捲れてノーパンだったのに気づいたあちらさんが、なぜかめっちゃ喰いついてきて、必死に逃げてた、なんて事を、プライドが高いナツメグが言える訳がないのだ。

顔に引きつった笑みを貼り付け、ナツメグが目を泳がせていると、机の上に本があるのを見つけた。

 

「……?何、この本?」

「『ゴミばこだよ!全員集合!』?『かみまろプロダクション』?何これ?」

気になった2人は、それを捲って読んでみる。

 

「え……これ……」

 

「うわっ!」「ぐへっ!」「よっと!」「はいよ!」

そのタイミングで、紫村、福満、ゼノヴィア、やえちゃんも帰ってくる。

 

ナツメグは皆にその本を見せる。皆が皆、同じ驚愕の表情を浮かべた。

 

「何や、これ……!?」

 

「『まめまき』とか、『すなとり』とか……俺達が今までやってきた事が描かれてる……」

 

その本の中には、自分達が今までやってきた試練の内容が、ギャグ漫画チックに描かれていた。

 

 




影踏みももう直ぐ終わり、描写は無いですがやえちゃん達はゼノヴィアがクリスを気絶させ影を踏みました。紫村チームは日光の関係で隠れている所まで伸びてきたユキオの影を、紫村が踏みました。その頃福満は、近くで熊を見てました。

次回、本の謎に迫る……のか?

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

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