神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
丑三はヘリコプターから出てきた男を眺める。ボサボサの髮に鋭い目。
(こいつが……『影踏み』のターゲット……
神の子 天谷
天谷は地面に両手足4本を使い着地すると、その姿勢のまま不思議そうな顔で2人を眺める。
「何だ、お前?」
そう言って首を傾げる天谷を見て、丑三は思う。
(コイツ……隙だらけだな。瞬殺だ)
ここは森の中で、他の人に影踏みを見られる心配もない。それに気づき丑三は光圀に合図する。そして、
「GO!」「Year!」
2人で一気に天谷まで走る。天谷はこちらに声をかけてくるが、気にしない!
(影 いただき!!)
丑三は影のある場所を全力で踏んだ!
……と思っていた。
「名前ぐらい名乗れっつーの、失礼な奴だな」
丑三の足の下にも、光圀の足の下にも、天谷の影は無かった。そして、隣にいたはずの天谷は……2人の上にいた。
(!!?あの状態から!?)
丑三は天谷の予想外の跳躍力に動揺する。その背中に、空中から天谷の蹴りが入った。
「あ、もしかして、これが次のゲーム?いーね!!」
天谷は宙に浮いたまま二の足で近くにいた光圀の腹部もシュートする。
丑三は何とか倒れないよう耐えたが、光圀は吹き飛ばされ大木に衝突した。あの威力の蹴りを喰らったのなら、しばらく起き上がれないだろうなと丑三は考察する。
「ちょーど退屈してたとこだ♪」
そう言って綺麗に着地する天谷を前にして、丑三は思う。
(前言撤回……コイツは強い……)
天谷はそのまま後ろに跳び、今度は先程自分が出てきたヘリの上に降りる。
そのままヘリを弄りながら、天谷は不意に丑三に問う。
「お前さ、何してる時生きてると感じる?」
?と丑三の頭に疑問符が浮かぶ。その言葉に更に天谷は続けた。
「俺の場合……何かを壊してる時」
そう言うと天谷は、ヘリコプターからプロペラを外した!先程までの作業はプロペラとヘリを分離する事だったらしい。
天谷はそれを振りかぶり、丑三に投げる!?
丑三は何とかブリッジでそれを避けるものの、前髪が少し巻き込まれて散った。
(更に前言撤回……コイツは
プロペラは飛んでいき、後ろの木の上空に刺さる。あれは、光圀が気絶してる木の上だ、と丑三は一瞬考え、頭を振る。
(他の事を考えてたら、
そして、体勢を立て直そうとし、驚愕する。
天谷武が自分の上まで、一瞬で距離を詰めている。
「お前何者?神の使い?もしや黒幕?
まあ、何でもいいけど〜〜〜〜……ね♪」
その言葉とともに、丑三の反らせた腹に強烈なかかと落としをお見舞いする天谷!丑三の口から溢れ出てくる血を見て、天谷は興奮する。
「血♪血♪これこれー♬
これが俺の生きてる感!!」
丑三は蹴り飛ばされ、先程のプロペラの突き刺さった木に直撃した。
プロペラの上にへたり込む丑三。その首を天谷が掴む。
「死のゲームが俺の
俺は、神になるのだ♪」
そう言うと天谷は金属製のプロペラの羽根を1つを取り外し、剣のように持つ。そして、大きく振りかぶり……
大きく後ろに跳んだ。
(!?)
丑三は驚く。それは天谷が背後に跳び去った事についてではない。
自分も座っている、今まで天谷が足場として使っていたプロペラの羽の1枚が、一瞬で折れた事にだ。
「……あり?2対1はメンドーだから
天谷の視線の先を丑三も見る。
そこに立っていたのは1人の少年。
「舐めんな、俺も化け物との戦闘回数は豊富だから、猿倒す時から怪物対策くらいしてんだよ……まぁ、ジャンプ入れてるだけだけど……」
お前が入れておくのはジャンプではなくマガジンであるべきだろう、などという野暮なツッコミをする者はその場には1人もいなかった。天谷はプロペラ剣を構える。
「へぇ、もうちょい楽しめそうじゃん♪ただのヒョロヒョロかと思ったのにな」
「お前はまだ俺の真の実力を知らない……光圀プレゼンツ、
こうして、自他共に認める化け物と、まだ本人も気がついていない異形との闘いが幕を開けた--
次回、『面白い奴だな』
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!