神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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「すきすきだいすき」 ほしかわめい さく

あるところに おんなのこがいました。なんでもすぐ「すき」になる げんきなこ。

「きみがすき」「おえかきがすき」
でも なぜか「すき」になったものたちは
ぜんぶ こわれてしまいます。

おんなのこは「すき」になるのが こわくなって ひとりぼっちに なってしまいました。

そんなときにであったのは すきになってもこわれないおとこのこ。
なぜ あなたは こわれないの? 『こわれるわけには いかないからさ』
なぜ? 『あいたいひとがいる まもりたいなかまがいる』
『ぼくは そんなみんなのために いきるんだ』

『みんなのことが 「すき」だから』

おんなのこは おもいました。
「すき」は じぶんのためじゃなく だれかにあげるものなんだ。

おんなのこが 「すき」をあげると おとこのこも 「すき」をくれました。

「すき」と「すき」が あわさって
「すきすきだいすき」になりました。

「すきすきだいすき」はこわれません。

ひとりじゃできない しあわせのまほう。


第52話---星

それは一瞬だった。

 

『ヴォウ!!!』

熊がこちらを向いたのを、明石達は……ゼノヴィアさえもどことなく現実味のない様子で眺めた。

その熊が、こちらに跳躍する。

 

「!……芽衣!うしろ……!!」

言いながらゼノヴィアは走る。福満はバッチャジャラを召喚する。

だが、間に合わない。

 

熊の1?撃が芽衣ちゃんの立っている場所の近くに落ちる。芽衣ちゃんはその衝撃で、15メートルほど上空に打ち上げられる。

 

それに、熊が噛み付いた。

 

熊の口が芽衣ちゃんの上半身をすっぽりと覆い隠す。熊の牙と牙の間から、芽衣ちゃんの下半身が見える。そこからは、ダムが決壊したかの様に血が止め処なく流れ出てくる。

 

「な!?この足、この間よりも硬い……グハァ!」

ゼノヴィアの攻撃は通らず、彼女は熊の横薙ぎに吹き飛ばされる。涙ちゃんや福満もそれに巻き込まれ、倒れる。

 

やえちゃんのジャンパジャラを使って、明石は熊の顔に近づく。その時熊は、芽衣ちゃんを噛み砕き、飲み込んだところだった。

 

「うわああああああああ!」

明石は光圀からもらった剣で斬りかかるが、熊にやえちゃんごと叩き落とされる。

みんなが倒れて動けない状況の中で、明石は何とか力を振り絞る。が、すぐにそれも尽き、倒れてしまう。

その時、倒れた明石の手に、何かがぶつかる。明石が向いた方向にあったのは、約束のサッカーボール。そして、それを持った『すきすきだいすき』の主人公の女の子。芽衣ちゃんのモシャジャラで出てきたそれは、今にも消えそうなくらい不安定だが、それでもニッコリと笑っていた。明石が女の子と目があうのと同じくらいのタイミングで、女の子はサラサラと泡になっていく。一言を残して。

 

『ひとりじゃ…… できない……』

 

 

〜桃太郎チーム〜

 

ナツメグの首にかけられた首輪のリードをひっぱりながら、桃太郎はナツメグに言う。

『俺の言う事は絶対だ、メス犬。わかったら返事』

その言葉を聞きナツメグは返事をする……代わりに唾を吐きかける。

「死ね、ヘンタイ」

『返事は「ワン」だっつってんだろ。

調教不足』

「!かっ……はっ…………」

桃太郎はリードを強くひっぱり、それによりナツメグの首につけられた首輪が閉まっていく。ナツメグは白眼を剥き、やがて気絶した。その無残な光景を見て紫村は激昂する。

「やめろぉ!!!」

勇ましく1歩踏み出す紫村。しかし、

「やめとけ」

桃太郎に近づいて行こうとするのを丑三に止められる。

「お前の脆弱な『戯』じゃ勝ち目はない。捕まって、ナツメグと同じように猿にでもされるのがオチだ。

 

俺はもう一度星になる。お前らはそこで、観測者(スターゲイザー)となれ」

その言葉と同時に丑三は桃太郎と雉に向かって走り出す!

「待って、丑三君!!自分の『戯』の発動条件わかってるの!?」

その問いに丑三は応えず、走り続ける。

(犬と戦った時、『戯』が発動したあの時を再現(リバイヴ)!まずは宝物(スケボ)を抱え……次に全力疾走(フル・スロットル)!!)

「勃起だ!勃起してたんじゃなかったっけ!?」

その言葉に対し、丑三は言う。

Don't worry(心配するな).

Be BOKKI(もうしてる)!!」

 

前線に出てきた雉がミサイルを発射する!しかし丑三も犬戦での条件をほぼ揃え、ミサイルなど気にせずに叫ぶ!

「激やばびんびん丸ぅ!!」

そして『戯』が発動--

 

 

--しなかった。

「WHY?」

その言葉と同時に丑三はミサイルに巻き込まれ、爆発する。吹き飛びながら丑三は考える。

(この前は出来たはずなのに……発動条件が間違っているのか……?何かが足りないのか……?)

丑三は血塗れで倒れる。『死んだな』と桃太郎も判断する。それほどまでに、酷い傷だと見た目だけでわかった。本人もその傷の深さを実感する。

(あ……!ヤバイな……この傷は致死量(チッシー)だ……

愚かなる丑三(ホーリー・シット)……こんな散り際は望んじゃいない……)

丑三の脳裏に、2人の男が浮かぶ。

(生死の狭間で命を燃やす事が、あの憧れの星達に近づく行為だと思っていたのに……あの2人に近づけたかと……思ってたのに……俺には、こんな暗闇を照らす光は、放てないよ……

(ココ)は……とてつもなく暗い……俺は……やはり……星にはなれなかった……)

 

そんな丑三を呼ぶ声が聞こえる。

「……ら今のうちだ!!立って丑三君!僕が時間を稼ぐから!!今のうちに『戯』を発動させて!」

丑三が目を薄っすらと開けると、迫ってきた雉と、その前に立ちはだかる大きな岩が見えた。紫村だ。

『やれ』

桃太郎の命令によって雉のくちばしがドリルになり、岩になった紫村を削っていく。

「う、うああああ……!!」

『痛いか?猿になるならやめてやろう』

そう言う桃太郎に、紫村は言い放つ。

「う……丑三君はお前らなんかに負けない!僕にはわかる!」

『死んだって言ってんだろ?』

「丑三君はどんな相手にも勇敢に立ち向かう!!うぁ……

そして勝つ!!あぁ…… めちゃくちゃ強い人間なんだ!!カミとジャンケンした時も!!イヌから守ってくれた時も!!

キミは最高にカッコイイ!!

丑三君はこんな所で死ぬワケない!!今に立ちあがるんだぁぁぁ……!」

紫村がその言葉を叫んだ時、丑三にはこんな声が聴こえた。

「俺もそう思う」

 

次の瞬間に何か黒いものが一瞬視界を横切り、雉が丑三と紫村の視界から消えた。よく見ると先程まで雉がいた所に、小さな機械片だけが残っていた。

『……?何をした?』

突然消えた雉に対して桃太郎は紫村に問うが、紫村にも意味がわからなかった。桃太郎は面倒くさそうに言う。

『ちっ、お供が3匹ともいなくなっちまいやがった。新しい犬は言う事聞かねぇ役立たずだしよ……ここで全員処分してまた別の所で新しいお供を調達するか…』

そう言うと桃太郎は腰の刀の柄に手を掛ける。

『岩のお前ももう必要ないわ「紫村ぁ……」!』

丑三がゆっくりと起き上がる!彼はスケボを杖のように地面につきながら、紫村に問う。

「お前にとって……俺は星か……?」

「え……うん……」

「そーか…………」

2人の会話を煩わしそうに聞きつつ、桃太郎は懐からクナイを数個取り出すと、丑三目掛けて一気に投げる。

「すまんな紫村……俺はお前を救えない……」

丑三はフラッと身体を揺らす。その身体にクナイが迫っている!

「……でも、幸せだ」

 

そう言うと、丑三は笑みを浮かべて、言う。

「バイバイ」

それは、紫村が未だ見たことのない、新しい素顔だった。

 

「う、丑三君ーーー!!!」

なぜ自分は、彼が守れないのかという思い、彼を守りたいという想いが身体を焦がす。

 

丑三は、自分に来るであろう衝撃と痛みを待った。

が、それが来ることはなかった。

「ん!あれ……また出来た……何で……?」

目の前に広がるのは、星、星、星。

 

1度見たことのある宇宙空間が、今再び丑三達の目の前に広がっていた-

 

 




鬼退治も終わりが近づいていく……

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

*49話と51話を、少し内容変更しました。

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