神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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ゼノヴィアはエクス・デュランダルを構え、熊を見上げる。熊はだんだんと肥大化していっており、現在は一軒家位の大きさになっている。
「行くぞ!はあああぁ!」
口にすると同時に彼女は熊に切りかかる。しかし、
(なっ、速い!?)
彼女の騎士の素早さによる一太刀は、熊に身をかがんで避けられる。
隙だらけのゼノヴィアに熊が攻撃を仕掛けるが、それは『バッチャジャラ』が防いだ。
「ばっちゃん……もっともっと強くなれ!あいつを倒すぐらいに強く!」
福満の声により、バッチャジャラもだんだんと大きく、筋肉質になっていく!
「よし!喰らえ!
ナーンモ……ナンモォ!!」
バッチャジャラが、金太郎を倒した時の様に熊の顔面を狙う!
『グ……グアオオオォ!!』
熊はどうにか顔面への直撃は避けたものの、肩に一撃を受け、バランスを崩した。
「!!……良くやった福満!行くぞ熊!うおおおぉ……らぁ!!」
ゼノヴィアはエクス・デュランダルを全力で振り下ろす!その一撃は熊の右脚に命中し、それを粉砕した。
「よし、決まった!これで動きが鈍るはずだ!さぁ、門に戻るぞ!」「了解!……あぁ、疲れた……」

ゼノヴィアは足早に門に向かいながら、エクス・デュランダルを見て思う。
(敵を斬っても『戯』は発動しない……何故だ?もしかして……『大切なもの』の選択を間違えた?……いや、そんなはずはない……と思いたい。では、発動条件が違うのか?)
いくら考えても答えは出ず、その間に2人は明石達の背中に追いついた。



第49話---発動条件

明石達6人は熊から逃げ切り、クラスハウスに戻った。そこにいたのは……

「あれ?光圀1人?他の皆は?」

そこにいたのは、ボロボロの光圀、1人だけ。他には誰もいなかった。光圀は震え声で言う。

「す……すまねぇ……すまねえ……」

 

光圀から聞いた話によると、最初は優勢だったが猿と雉の変身により一気に窮地に立たされ、丑三と紫村は連れて行かれ、ナツメグは炎の中に消えた。イッセーも行方不明だと言う。

 

「俺が戦うべきなのはわかってたんだ……でも、俺の『戯』じゃ歯が立たなかった……それで1人ノコノコ帰ってきちまったんだよぉ……」

光圀は暗い表情で消え入る様に話し、両手で頭を抱えた。

「……そんな、じゃあ他の4人は……?」

「わからねぇ……まだ帰ってきてないって事は……島のどこかに隠れてるか……

 

皆、もぉ……死んでるか……

うぅ……すまねえ、すまねぇ……」

光圀の首がどんどんと落ちていく。明石はそれを見ていられず、声をかける。

「……自分責めんな光圀……ナツメグは帰るって言ったんだろ?だったら絶対帰ってくる。信じて待とうよ」

明石はそう慰める。が、

「……同情かよ……キレイゴトぬかすなよ」

光圀は明石を睨みつける。

「言いたかねーけど普通に考えりゃ、この状況で4人とも無事なワケねぇだろが……!!信じりゃどうにかなると思ってる!?バカかお前!?」

明石は光圀に何も言えない。実際に自分も心の奥底でそう思っているからだ。

「てか、お前『戯』使える様になったのかよ!?あ!?

リーダー気取ってんじゃねーよ!!『戯』も使えねぇ奴がよぉ!!」

「……んだとてめぇ!?」

明石も遂に我慢の限界を超え、光圀の胸ぐらを掴む!

「使えるなら使いたいよ……俺だって……」

明石はそれだけ言うと、光圀を手荒く放し、部屋へと戻って行った。

 

その夜。

 

「あー、くそぉ……でねぇ、『戯』……」

明石は部屋でひたすらにサッカーボールと格闘していたが、ボールは何の反応も示してくれない。

(ダセェな俺……光圀の言うとおりだ……今の俺には何の説得力もねぇじゃん……マジ、足引っ張ってるだけだ!クソクソクソォ!)

 

そんな明石の部屋を、誰かがノックした。

「明石……俺だ」

その声の主は、光圀だった。

「星川から聞いたよ……お前……何回も今の俺みたいな経験して、自分の事、責めてたんだってな……だからあんなコト言ってくれたのに……なんつーか、ゴメン」

「……俺の方こそゴメン……入れよ」

そう言うと光圀はゆっくりと部屋に入ってきた。2人は同じベッドに腰掛ける。

 

「……さっき『戯』の練習してたろ?まだムリか……?」

その言葉に、明石は弱々しく返事する。

「うん、ゴメン……俺が発動させなきゃダメなのに……俺がやらなきゃあの熊を倒せないのに……」

そう言う明石に、光圀は優しく言う。

「……難しく考えすぎじゃね?俺は、『好きなモノで好きなコト』すりゃ、『戯』使えたぞ?」

そして明石に問う。

「お前はサッカー好きなんだろ?」「えっ……うん」

「ポジションどこ?」「トップ下」

 

「どんなプレーが好きなんだ?」

その言葉に明石は下を向く。そこに見えるのは約束のサッカーボール。その中にヨレヨレの字で書かれた、親友である青山と交わした誓い。

『世界一のパサーになる』という約束。

 

「チームが勝つ為の、パス」

そう言うと光圀は少し驚いた顔になる。

「え?そーなんだ、意外だな。てっきり1人でゴール決めたいタイプかと思ってたわ。

いいじゃん、世界一のパサー」

そう告げて光圀は立ち上がる。

「あとは自分で見つけろYO。俺はお前の言うとおり、ナツメグ達4人が生きてるのを信じて寝るわ」

そう残して出て行く背中を、明石は見守っていた--

 

 

--『ほらほら、言うこと聞けこのカスが』

そう言うと桃太郎は拳を振り下ろした。

「グフッ」

殴られたナツメグは腹を抑え、その場にうずくまる。その身体は何も身につけておらず、白い肌には青アザや出血、火傷痕ができている。首にはリードをつけられ、日本語を口にする度に首を絞められている。心身共に疲れきっている様子だが、その眼だけは桃太郎に抵抗していた。

 

その様子を、俺は物陰で見ている。

(……今俺がドラゴンショットを撃てば、確実にナツメグも巻き込まれる。かといって俺が突っ込めば、桃太郎の近くにいるナツメグは殺されてしまう!どうすれば、どうすればいい!?リアス!アーシア!ギャスパー!イリナ!レイヴェル!教えてくれ!)

俺は大切なものに語りかける。

 

その時、写真が薄く光った。

 




ナツメグがまずい状況に。イッセーはそれをどう対処するのか?
また、紫村と丑三の運命は?
はたまた、明石の『戯』は発動するのか?
そして、この『レッスン』は死人0で終わるのか?

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

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