神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
そんな風に地方紙が騒ぎ立てたあの頃が懐かしい。
あの頃のウチは自分の脚に、そして三段跳びの実力に自信を持っていた。
しかし、あの大会で--
--『いーてーまえ!!』『いーてーまえ!』
そんな言葉を背に受けながら、ウチは大きく深呼吸をする。そして、助走をつけて!
『1!!2!!3……づっ!?』
そこでウチは倒れ、意識を失った。
気がついたのは病院のベッドの上。付き添っていた母さんは、ウチの姿を見て泣いていた。その涙の意味が、ウチにはわからなかった。
その涙の訳は、医者から教えられた。
『骨の病気や。競技復帰は難しいやろねぇ』
そう聞いて、ウチの頭は一瞬、真っ白になった。
数10秒かけて医者の意味を噛み締めると、ウチの眼から涙が溢れてきた。
『何で……ウチなん……?もっとどーでもええ奴おるやんか……』
そう言うとウチは医者に掴みかかった。ただの八つ当たりなのはわかってた。でも、そうせずにはおれんやった。
『何でウチなんよ!?なぁ!!ちゃんと説明してよ!!
ウチから……三段跳び、奪わんといてよ……!!』
ウチは泣く事しか出来ず、その後引きこもりになった--
〜金太郎チーム〜
「キッタでぇ!!」「ヤバいヤバいヤバい!!」
6人は熊から背を向け、走る!
熊は森を薙ぎ倒しながら徐々にこちらに近づいてくる。
(だけど……多分もうすぐ2時間……2時間経ったら門が開く。それに飛び込んで帰れる事が出来たら!)
明石達はそう思いながら門のある方向に向かって走る。しかし……
「が……崖!?」
そこは崖。向かいにも同じ様な崖がある。そちらの奥には門が小さく見えるが、その崖と崖の間には常人では飛び越えるのは無理な幅があった。
「とぅっ!!」
まぁ、ゼノヴィアには関係なかったが。
「……!?は?え?ゼノヴィア!?え!?跳んだ!?」
ゼノヴィアは福満を抱えたまま、かなりの幅を軽々と飛び越えていった。
「急げ!早くしないと熊が来るぞ!」とゼノヴィアが言うが、明石達には向こう岸に渡る手段がない。
『グオオオオォ!!!』
熊が追いついてきた!それに対し……
「……発動しろ、『戯』!」
そう言って明石は大切なものであるサッカーボールを熊に蹴り出す。しかし、
「な!吹っ飛ばされた!?」
特に何が起こるわけでも無く、ボールは弾き飛ばされ、崖の方へと向かっていく。
「……!ボール!」
そういうと明石は涙ちゃんと芽衣ちゃんとボールを追う。しかし、ボールは明石から離れていくように崖の下へと落下していく。明石はそれを見て、自分も飛んだ。
「ボールは俺の希望なんだ!ボールが無きゃ戦えねぇ!!」
そして明石は、2人と共に崖下の森へ落ちていく。更に、熊もその後に続き飛び込んだ!
その様子をゼノヴィア、そして……蓬莱やえは見ていた。
「ちょっと待って!!芽衣ちゃん!!明石!!……づっ!!」
やえはしかめっ面をすると、右足を押さえた。脂汗が流れる。
「……こんな時に……言う事聞いてくれへんか…この
傷ついた脚を見ながら、やえは思う。
「ボールが希望……ウチかて一緒や…
やえは着ていたシャツとズボンを脱ぎ、下に着ていた服……陸上のユニフォーム姿になる。陸上部のユニフォーム、それが蓬莱やえの『大切なもの』だった
(もう一度跳べるなら……他に何もいらんわ……お願いやから……ウチにも戦わして!!言う事聞いて……!!
いい子やから、動いて!!)
やえはゼノヴィアに告げる。
「助けに行かんと!ウチを下に連れてって!」
ゼノヴィアは頷くと、再び崖を飛び越えてこちら側に来、背中にやえを乗せる。
「舌噛むなよ!」
そう言うとゼノヴィアとやえ、そして抱えられている福満は崖を降りていった--
--「やべぇ、追い詰められた!」
明石、芽衣、涙ちゃんは再び追い詰められていた。背後にはまた崖。その下は先程の様に森林では無く一面荒野で、落ちてしまったら少なくとも骨折だろうと明石は推測し、冷や汗をかく。先程と同じく向こう岸には出口の門が、今度はかなり近くに見える。しかし、その幅はやはり一般人には到底及ばない範囲。明石達は追い詰められている!
その時、『パン!』と破裂音が響いた。
明石、涙ちゃん、芽衣ちゃん、そして熊も、そちらを向く。そこにいたのは、1人の少女。
「蓬莱やえ……いきます!」
少女……やえは明石達の方へと走ってくる。もちろん熊もそれを見逃さず、攻撃を仕掛けてくる。しかし……
「1!」
その掛け声と共にやえは跳ぶ!それも高く、人には真似できないほど高く!そして、熊の一凪ぎを避ける!
(ビンビン動く!全身がしなる……!いい子や……!!)
熊の追撃を2回目の跳びで躱すと、やえは明石達3人のところに着地する。
やえは3人を腕まで使って掴む!そして!
「3!!」
その言葉と共に、やえは3人と共に空を跳ぶ!やえの軌跡から虹が出てくる!そして、4人は向こう岸にたどり着いた!
「……!これが……ウチの『戯』!?ウチ……また跳べる!!
『
新たな『戯』でどうにか熊から逃げ切った4人は、急いでクラスハウスへと戻っていった。
『エエがナアァア!!』
その後ろ姿を睨みつける熊は、その身体を大きく震わせ、金太郎の死を嘆き叫ぶ。
「……うるさい奴だ。起きろ、福満!あいつを倒すぞ!」
「……うぅーん。どうした……って熊!?こんなデッカい熊、見た事ねーど!」
「あいつがこの試練の最終目的だ。まだ2時間までもう少しある。少しでもダメージを喰らわせるぞ!」
「かなりヤバそうですけど!?……ああもうわかったよ!『ナンモナンモ』!!」
自分で帰れるだろうと判断されて置いていかれた旧『いすとり』コンビはそう言うと、熊と対峙した。
「私の『戯』が発動してくれると、ありがたいんだけどな」
そう言ってゼノヴィアは、エクス・デュランダルを構える--
今回はオール金太郎チーム。イッセー君の出番は次回か次次回か…?
だんだんと皆『戯』を発動させています!残りは後5人、皆発動できる様に頑張って!
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!