神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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明石、丑三と共に空へ昇りながら、カミは言う。
「『こぶし』→『しゅうりょう』、これにて、しりとりと試練は終了です。
NEXT PLACEが見えてきましたよ」

明石達の視界に映ったのは……空に建った家。
「あれが、生き残ったYOU達が、これから暮らす家--クラスハウスです」
「暮らす……はうす?」「オシャンティだな」
「では、私はこれで。どうぞ中へ」
そう言ってカミはどこかに飛んでいく。
明石は、「クラスハウス」のドアを開けた--


第41話---カミーズJr.

--クラスハウスのドアが開いた。入ってきたのは最後の生き残り、明石と丑三だ。

「アカッシー!!」

芽衣ちゃんが明石に抱きつく。くそぅ、モテモテ野郎め!

「カッコよかったよ!!」

芽衣ちゃんはそう言う。確かにあの1発は凄かった。カミが吹っ飛んだもんな。

「一発殴ったとこ、最高だった」「カッコよかったで、ありがとう」「気持ちがスカッとしたよ」

 

「とにかくお疲れ!2人とも。握り飯作って待ってたんだぜ」

福満が奥からおにぎりを持って現れる。その目元は腫れていて、俺達が来る前に泣いていたんだろうとわかった。あいつも、『いすとり』だったもんな……

 

「普通に暮らせる設備になってんだよ、ここ。トイレも風呂もキッチンもあるんだぜ」「共同みたいですけどね」「ルームシェアってやつですかね?」

なんかそんなテレビ番組あったよな、と俺が思っていると、芽衣ちゃんが明石に切り込んだ。

「……ねぇ、アカッシー。さっきの返事……聞かせてくんない?」

それに対し、明石は……

「後でいい?」

先延ばしした!

「え〜、何で?」「明石君も疲れてるんでしょ、芽衣ちゃん。休ませてあげよーよ。話なら後でいくらでもできるし、ね?」

涙ちゃんの言葉に芽衣ちゃんは頬を膨らませながらも追及をやめた。

ヤミィ(美味し)ヤミィ(美味し)」「ちょっ、おま……全部食うなし!!」「あ、おいしい……」

丑三と紫村はおにぎりを食べ始めた。俺もおにぎりを一つ手に取る。

「ゴメン、先にトイレ……」「そこまっすぐ行って右!」「お……おう、ありがと」

明石はトイレに向かっていく。あれ、トイレ……何か忘れてるような……

 

「……何でここにいるの!?え!?死んだのに……何で!?」

「じゃなくて何でノックせずに開けてんの!?勝ったんだから生きてるに決まってるでしょ!?」

 

あ、しまった!トイレにナツメグいるの忘れてた!

 

 

--おにぎり完食後

 

「生き残ったのはこの11人だけか……」

言われて俺は周りを見る。最初はあんなに人がいたのに……もうこんなに少なくなっちゃったんだな……

「この先、どうなるんだろう?カミは『暮らす』とか言ってたけど……まだ終わりじゃねーのかな?」

「帰りたいなぁ……外って今、どうなってんだろ?」

外……俺は朱乃さん、木場、子猫ちゃんを思い出す。あいつらはまだ生きているのかな……いや、生きてるに決まってる!

俺はマイナスになりそうな思考を、頭を振って止めた。

 

「ここへ来てから何日経ってんだっけ?」「20日くらいじゃない?」「20日か……長かったなぁ、ここまで……」

明石の言葉に、俺も思い出す。他の人もこれまでの激戦を回想しているようだ。

「今までに、何人……死んだんだろうね……」

「うん……何かそう考えてみたら、私達が今生きてるのって……

奇跡……みたいな気がするね」

静まるクラスハウス。その中に、不意に楽器の音が響く。

福満が、バンドの曲をギターで演奏していたのだ。ゆっくりとした曲調に、優しい音。そして心に響く歌詞。

俺も思わずメロディを口遊む。巴が近くにあったゴミ箱の裏を叩き、丑三は食器を楽器にして箸でチン、チンと鳴らす。

 

……歌いながら、いつの間にか俺は泣いていた。明石も、涙ちゃんも、ナツメグも芽衣ちゃんも。ゼノヴィアも紫村も、巴も福満も。やえちゃんも……そして丑三も。

 

「♪ラ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ー!!!」

!!

カミが尋常じゃないほどの爆音で歌いながら、クラスハウスに入ってきた!

クラスハウス中が声量で揺れる!

ぐっ、耳が!空気も振動している!

「ラ゛ァラ゛ァラ゛ァ〜、ドゥドゥンドゥドゥドゥンドゥ〜〜〜〜ン!

 

さあ!という事で、YOU達11名はカミーズJr.になりました!おめでとう、おつかれさま!」

カミの歌が終わると、急な静寂にカミの声だけが残る。

 

「……しかし、YOU達はまだまだ試練(オーディション)を偶然通っただけの練習生にすぎません。これからはデビューに向け、『レッスン』が始まります。これまで以上にレッスンは厳しく、スパルタですよ♪もちろん逃げ出す事はできません♪」

 

……やっぱりか……やっぱり、まだ終わりじゃないのか……

「まずはレッスン1。

 

『帰宅』です」

 

は?

「は?」

 

「レッスン1は『帰宅』。YOU達には地上に戻り、『あるもの』を探してきてもらいます」

「え」「帰宅……」「帰れんのか……!?」

俺達はどよめく。そりゃそうだ!帰りたいと思っていた家に帰ることができるんだ!

「何だ……!?『あるもの』って……」

明石は冷静にそう聞く。

 

「YOU達それぞれの『一番大切なもの』です。それを持って48時間以内にここに戻ってきて下さい」

一番大切なもの……?

「戻ってこい、って事は……まだ終わらねぇって事かよ……」「YES、オフコース」

 

「カミ、少し聞く。デビューの為のレッスンとは何だ?いつになったらこの戦いは終わる?……そろそろ教えてもらっても良いと思うが?」

ゼノヴィアがカミに問う。その問いにカミは「……いいでしょう」と言って喋りだした。

 

「地上で出席者の高校生に殺し合いをさせて『神の子』を選別している男の名を覚えていますか?」

あれは……確か初日に言ってたような……アレ、全然覚えてない!

「えっと確か……神小路かみまろ……!!」

やえちゃんが答える。あぁ、そんな名前だった、思い出した思い出した!

カミは笑って手をグッドの形にすると、その出た親指で首を掻っ切る仕草をする。

「YOU達の最終到達目標は、その悪の根源!!

 

神小路かみまろを殺す事です!!

 

つまりは『神殺し』!!それさえ果たせばYOU達を解放しますよ!!」

『神殺し』!?それは相当厳しいぞ!俺はロキと戦ったり、オーディンの爺さんの戦いを見た事があるからよくわかる!

……いや、でもあれはかなり高位の神様達だもんな……もしかしたらかみまろって奴はそんなに強く無いのかも……いやいや、そんな訳ない!リアスやギャスパー、そしてレイヴェルまで殺せて、更にその力を全国で同時に発動できるやつだ!弱いはずがない!

……と、俺は思ったが、周りのみんながそれを聞き高揚しているから、言うのはやめた。盛り上がりに水を差してはいけないよな。

「待てよカミ……その後はどうなる?」

声のした方を向く。

そちらでは明石が、完食して無くなったと思ったおにぎりをどこからか出して食べながら、カミを睨みつけていた!

「仮に俺達がそのかみまろって奴を殺して解放されたとして、死んだ人間は生き返んのかよ?それに……お前が『正義』だって保証がどこにある?」

 

その問いにカミは何も言わず、ただ口角を上げるだけだ。

「無視かよおいっ……!」

カミは不意に口の前に手を持ってくると、手からポコポコと何かを出し、それをこっちに吹き飛ばした。

それは俺達の手中に収まる。……何コレ?スマホか?

「レッスン1に必要なアイテムです。その名もカミーズフォン♪

カミーズJr.同士の通話が24時間いつでもタダ!それ以外の機能は一切ナシ!!おっ得ぅー♪」

そう言った後、カミはまた真面目な、しかしうっすら笑みを浮かべたような表情になった。

「ちなみにこの計画、全ては極秘事項(トップシークレット)です。つまり……『帰宅』にあたってのルールは2つ。

自分の『一番大切なもの』を持って48時間以内にここに戻ってくる事。そして、YOU達が置かれている状況およびここで起きている事の他言無用。

破るともちろん(デス)ですよ♪」

 

「ば……ばっちゃんは?ばっちゃんを大切なものにしてもいいのか?」

「生モノはダメです。生きてないヤツでお願いします」

「くっ……マジか…………」

福満は悲しそうに唸る。

 

「大切なものを手に入れたら、カミーズフォンの私のアイコンをタップして下さいね。48時間あります。よーく考えて選んだ方がいいですよ。

 

それではみなさん、暫しのお別れ♪」

カミは俺達に何か術を掛ける!俺達は液体のような状態になり、クラスハウスを離れていく!

え、これ帰る時には治るよね!?

 

「レッスン1、スタート!!」






レッスン1の開始!そして次回は……久しぶりに第壱章!

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

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