神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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--イッセーが空を昇っていくのを見て、明石はホッと息を吐いた。そして隣にいる次の挑戦者に話しかける。
「……怖い?」
その声にナツメグは、明石と繋いでいた手を離すと、前へと進む……が、数歩進んで止まった。
「ねぇ……眼……つぶりなさい、耳も塞いで」「え?」

「私……こういう運とか全然無くて……多分ダメだと思うから……私が怖がってる所とか、まして死ぬ所なんて、カッコ悪くて見せられないわ」
「……何言ってんだよ!?大丈夫だって、きっと勝て「それならそれでいいの」
ナツメグは明石達に振り返り、告げる。
「アンタ、あの時言ってくれたよね。『そのままでいい』って。だから……最期まで、完璧人間でいさせて」
その決意に、最後の1人である丑三は、「いいだろう、尊重する」と眼を瞑り耳を塞いだ。
「わかった……ナツメグ……でも、約束して。死ぬなよ……!」
その台詞とともに、明石も視覚と聴覚を遮断する。

「……ねぇ、本当に……聞こえない……?よね……ありがと……」
ナツメグは明石達が自分の言うとおりにしてくれているのを確かめると、彼が耳に被せた手に更に自分の手を重ね、抑えつけるようにし、

明石の唇に、自分の唇を重ねた。
(!?)
何も見えず聞こえない明石はただ驚くばかりだ。

「だーい好き!!」
ナツメグは涙を流しながら告げる。
(優しい所が好き……!!バカな所も好き……!!その眼も……!!その鼻も……!!その口も……!!
全部好き!!
もっと一緒にいたい……!!まだ死にたくない………!!
私は勝って、明石と生きたい……!!)

「お別れのキッスですか?今生の別れにならないといいですね♪」
『それじゃあイクゾ。
さーいしょーは、グー。ジャン、ケン--


第39話---死んでもやりたいこと

何も見えない暗闇の中で明石はただひたすら(ナツメグ、死ぬな!)と祈る。

何秒、あるいは何分経ったんだろうか。

『オイ』ゴッ!

明石は頭を殴られ、眼を開く。その視界内にいるのはカミだけだ。ナツメグは……いない。

「ナツメグは……?」

その言葉にカミは不思議そうに言う。

「あれ?本当にどうなったか見てなかったんですか?」

まさか本当にバカ正直に眼を閉じ続けているとは思っていなかったようだ。

「じゃー、どうなったか知りたい?知りたい?……仕方ない、じゃあ特別に大ヒント♪彼女はー……

 

 

……死にました」

そう言われた瞬間、明石の頭が真っ白になった。

「あ!これ、答え言っちゃった?いっけねー♪」

カミの台詞に明石は跪き、声にならない叫び声を上げる。

「泣ーーくーーなーーよーー♪いっちいちウザいなぁ。まーた仲間想いアピールですか?死んじゃおうがどーだっていいじゃないですか、あんな面倒臭ガール♪」

「……あ?」

その言葉に、明石の表情が変わる。

「……早く上がれよ」

カミは明石の顔を見て軽い感じを引っ込め、ニヤッと笑う。

「……丑三……俺……死ぬかもしんねーわ」

その言葉に丑三は驚いた。明石がここで弱音を吐くと思っていなかったからだ。よほどナツメグの死がショックだったのか?と丑三は心配する。

「え?お前までなに弱気に「違う」

 

その時の明石の顔は、3日目、彼が艮を倒した時ととても良く似ていた。何かの覚悟を決めたような、どこか哀しみの入った力強い顔だ。

 

「たとえ死ぬ事になっても……やりたい事があるんだ」

そう言うと明石は、階段を上っていく。

「『死んでもやりたいこと』?何ですかそれ?」

「ジャンケンだよ。ジャンケン」

その返しに拍子抜けしたのか、カミはまた軽い感じになる。

「え?なんだ、結局生きたいんじゃないですか♪」

 

「カミ……ひとつ聞く」

明石は覚悟の座った眼でカミを見て、言う。

「お前は試練中に何人が死んだか、憶えてるか?」

 

その言葉にカミは……バカにするように笑った。

「HA♪憶えてるワケないじゃないですかそんなの〜。私はただ一生懸命に試練(オーディション)を行ってるだけですから。殺したくて殺してるんじゃないですよ?死亡(アレ)は言わばルール上の事故(ハプニング)♪まあ、そうカッカしないで」

『お喋りはそこまでダ』

キリの良いところでカミ・ブリックは会話を止める。

『セット』

その言葉に明石は腰を低く構え、右手を後ろへと引く。

『さーいしょーはグー』

 

その時丑三には、明石の『死んでもやりたいこと』の意味がまだわかっていなかった。しかし、明石からビシビシと伝わってくるオーラが、ただ事では無いような素晴らしい事が起きると彼に告げていた。ゆえに丑三は、明石を一瞬たりとも見逃すまいと眼を見開いて明石を見つめる。

 

『ジャン、ケン……ポン』

ポン、という音と同時に、明石は構えていた拳をカミの顔面にめり込ませ、そのまま振り抜いた。

 

 




ここら辺は原作ほぼそのままですね。『こぶし』はあまり変えようがないです……

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!


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