神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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vs猫!


第6話---反撃

「おおおおおおらあああぁぁぁぁ!」

とりあえず仲間を救出する。

そう思うと同時に、私の身体は動き出した。

「吹っ飛べ!」

ルークの力で、小猫ちゃんを潰そうとしていた太い腕をぶん殴る。招き猫の腕は吹き飛びこそしなかったが、大きく横にずれ、小猫ちゃんが潰される最悪の事態は免れた。

 

「ありがとうございます、正直もうダメかと……」

肩で息をする小猫ちゃんに背を向け、私、由良翼紗(ゆら つばさ)は言う。

「お礼なんてのは、全てが終わってからでいい。とりあえず今は、このクソ猫を倒す!」

この招き猫をしばらく見ていて分かったことがある。こいつはそれほど強くない!ということだ。

まず、動きが遅い。それに移動は戦車に似たキャタピラ式、攻撃は左手の振り下ろしだけ。だからネコの右側全体が……圧倒的死角!そしてこいつは振り下ろし攻撃だけしかしてこないため、横運動に極端に弱い!

 

腕の元の状態に戻したネコがまた振り下ろし攻撃をしてきたが、そんなものもう見切った!

私は、体育館に落ちたまま、誰も拾いに行かなかった鈴を手にとり、ネコを挑発する。ネコはどこか怒った様子で、左手を振り下ろしてきた!それを華麗に避け、私はダンクシュートをねらう。ネコの首元には、バスケのゴールがある。あれにこの鈴を入れることが、おそらく『猫に鈴をつける』こと!多分これで終わり……!

 

と、そこで。私は、視界の端に映る何かを見た。

 

(あれは……ね、ネコの右腕⁉︎)

 

そんなバカな、右腕は動かなかったはずじゃ……そう思っている間にも巨大な手のひらは近づいてくる。この速度、私のスピードじゃ逃げられない!私は身体を丸めて、必死にガードの体制を取るが……あのスピードに質量では、おそらく身体のどこかしらを潰されて、死ぬ。

 

(くそ、ここまでか。相手の力を見誤った……シトリー眷属でありながら、なんと無計画で、無様な死に方だ)

半ば諦めるように眼を閉じる。あの勢いでぶつけられたら、死ぬ。神器の力を使っても、戦車(ルーク)の力を使っても、多分死ぬ。

頭の中には、昔の記憶が流れてきた。そんなに長い時間を生きた訳では無かったが、いろいろな思い出があるものだと振り返る。特に、高校に入り悪魔となってからは、楽しい日々だった。

ソーナ会長の顔が頭に浮かぶ。そして、仲間達の顔も……

 

不意に、何かに包まれているような感覚を覚えた。ああ、あったかい。これが死後の世界か。

……いや、死んでいるものが暖かさなど感じられる訳がない。眼を開けると暗闇は晴れ、体育館の天井が見える。その視界の端に写ったのは、黒い鎧の一部。

 

「翼紗、大丈夫だったか? お前は頑張った。後は俺たちが何とかする。お前はここで休んでいろよ」

走馬灯の最後に出てきた男の子の声。こんな危機的状況なのに、その声は私に安らぎを与えてくれた。

「俺はもう決めた!これからは、仲間を1人も殺させはしない!仲間はみんな、俺が守る!」

黒い鎧の男は……匙は、震え声ながらもはっきりと、招き猫に向けてそう宣言した!

 

私を生かしてくれたのは、仲間の死に囚われていた男ではない。

仲間の死を乗り越え、守る意志を手にした男だった。

 

そこから先は、一進一退の攻防が続いた。キャタピラ状態から起き上がり、本物の猫のように俊敏に動き出した招き猫と対するのは、6人の悪魔。招き猫には雷光や水流は効かず、結局の所ほとんど肉弾戦の様相となった戦いは、戦車に昇格(プロモーション)した兵士(ポーン)留流子(るるこ)と元士郎、そして小猫ちゃんのパワーで腕を止め、会長と姫島先輩が雷光や水流で動きを制限し、その間に騎士の木場が素早いスピードでゴールを決めるという形で決着した。それがきちんと成功したのは試練が始まってから9分以上過ぎ、鈴のカウントが40秒を切ったあたりだった。

 

『--由良 翼沙、以上8名、生きる!』

 

猫の口から終わりの音が聞こえた。私は生き残った。

それと同時に、今更ながら体育館に機動隊が突入してきた。私達は彼等に保護され、近くの病院へと移された--

 

 

 

 

 

 




明日は、ちょっと出席者の視点を離れるかも。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

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