神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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さぁ、4日目です。イッセー君に出番はあるのか?


第27話---ぼうや

「絵、上手いね芽衣ちゃん」「ありがとう……これぐらいしか取り柄無いけどね」

芽衣ちゃんはノートに書いた鳳の似顔絵をモニター近くの棚に置く。俺達は彼の冥福を祈って手を合わせた。1日目にアイツが死んでから、俺達はこの生活が慣れないこともあって弔いをしてやれていなかった。少し余裕が出てきたこの時に、彼の死後の平穏を願ってやろうと明石が言い出し、俺達は鳳を追悼したのだった。

しばらく黙祷した後、4日目の話し合いに移る。

目下の問題は、ハラカイ達『あやとり』チームだ。刀などの七つ道具で殺されないのはわかったが、学校にあるものでも十分殺しなんてできるはずだ。下手したら屋上に登ったら突き落とされたりなんてこともあり得るかもしれない。

 

ハラカイに難色を示す俺達に対し、明石は力強く説いた。

「ハラカイはきっと変われる!俺が変わらせてみせる!!

俺はこれから毎日参加する!丑三にもできるだけ毎日参加してもらって、絶対勝ちに行く!もう誰も殺させはしない!!」

明石が皆の前での決意表明に思わず拍手したくなるが、皆からは非難が飛んだ。

「待てよ、丑三はともかくお前はまだケガが治ってねーよ」「そうだよアカッシー、戦いたい気持ちはわかるけど、今は休んでて!」「ダメよ、毎日なんて。そのうちすなとりのときみたいに限界が来るに決まってるわ」

 

「いや、ナツメグ、アレは演技だから大丈夫!俺は行きたい!行く!」「ダメだって言ってんでしょ!?」

 

そんなことを言っている間に時間が来て、スージーが今日倒す不思議を選択する。モニターがパッと切り替わる。

『「ぼうやはとまらない」不思議番号5』という文字と、5枚のお札が映る。難易度は艮とか坤の10枚が最大だと思うから、5枚だとまあまあ強いって事か?

 

『飛び出す坊やにご用心!!当たり屋なんて言わないで!内臓破裂は覚悟して♡もう坊やはとまらない♪』

今回は映像のナレーターのテンションが高かったな……それにしても坊や?どんな奴か良くわからないな。

 

ピピッ『すなとりBOX 不思議番号5

本日のリーダー 明石靖人』

明石!ここで明石が選ばれた!果たしてこれは偶然か……

「止めても無駄なんだ。運命が俺を選ぶから」

……そう言う明石を、今の俺達が止めることはできなかった。

 

「あと……他のメンバーは……」「明石がイクなら、俺もイク。明石と一緒にあの豚怪獣をブッ飛ばす」

というわけで、丑三決定。

「約束しろ丑三、ハラカイをブッ飛ばすより解決優先だ、いいな?」

「明石が言うなら仕方ない。俺はそれに従う。

そのまま、丑三が明石に飛びつきに行ったりしていたが俺達は無視して、あと1人を相談する。

「どうする?あと1人……」

「2日連続で行っても良いぜ」

と俺は言うが、他の人に止められた。

 

「……俺にも行かせてくれ!今まで全然役に立ってない俺!」

代わりに立候補したのは、間凛平。確かに凛平はまだ、一度も試練に行っていない。

「お……俺もヒーローになりたい!!脇役人生はもうゴメンだ!絶対に役立ってみせる!!」

 

と力説に押されて、今回は明石、丑三、凛平の3人になった。

生きて帰って来てくれよ--

 

 

--校舎内の廊下。明石達は警戒しながら廊下を歩く。

「『ぼうやはとまらない』……『ぼうや』ってのが具体的に何なのかはよくわかんないけど……さっき見た映像の情報だと出現場所は廊下だと思うから……片っ端から調べていこうぜ……」

明石は七つ道具の一つ、ロウソクの炎を見ながら言う。どうやらこのロウソクの炎が、敵のいる方角を示しているらしい。今のところ炎は進行先の方に向いている。このまま進んで行って問題ないはずだ……

「……っておい、丑三!勝手に先に行くな……っ聞いてる?」

丑三は何か考え事をしているのか、明石の声に耳を貸さず、そのまま1人で前に歩き続ける。明石と凛平は、その道の先に書いてある『止まれ』の文字に気づいた。

 

「『止まれ』?」「何だアレ……おい丑三、マジでちょっと待て!」

「……ん?ワツハプン?」

 

『あぶなーい』

 

丑三が止まれの文字の上を通りすぎ、その先に書かれた線を踏んだ時、教室のドアを破って何者かが丑三に体当たりを仕掛ける。腰に下げていた刀が宙を舞って落ちる。喰らった丑三の腰に嫌な音が響き、口から黒い物体を吐き出した。

『魂いっただっきまーっす』

丑三はその場に倒れる。慌てて凛平が近寄るが、丑三は呼吸を止めていて、微動だにしない。

体当たりを仕掛けた張本人……『ぼうやはとまらない』の坊やは魂を持ったまま、凄いスピードで走り去っていく!!明石は全速力で追いかけるが、差は縮まらない。

(何か取られた!不味い!もう仲間は失わないって決めたのに……これじゃあ……!このままじゃ……!!)

 

そこで、軽く息を吐く音が明石の横から聞こえる。

その音は明石を追い越すと、坊やの背中まで迫り、

 

「タッチダゥーン!!!」

音の主、凛平が、坊やにタックルを仕掛け、地面に押し倒した!彼はそのまま坊やを羽交い締めにしながら「やれ、明石!!」と叫ぶ!明石も全力で近づき、丑三の持っていた刀で坊やを切り裂いた。

 

 

『ピンポンパンポーン♪不思議番号5「ぼうやはとまらない」「すなとりBOX」マス取り成功』

「しゃおらああぁ!!」

凛平は興奮した様に叫ぶ。

明石が丑三の口の中に吐き出した黒い物体を入れ直すと、丑三は意識を取り戻した。

「ありがとうりんぺー!何今の超スピード!マジで速かったんだけど!」

「おう!俺アメフト部だからよ、こういう走ってく奴にタックルして脚を止めるのは得意なんだよ!」

「……そうだ、丑三!お前なんかボーッと考え事してたろ!りんぺーがいなかったら確実に死んでるぞ!気をつけなきゃ!お前が死んだら皆困っちゃうぜ!」

「明石が困るのは、俺も困る……」

マス取りクリアに、そして誰も死ななかったことに、思わず笑みが零れる皆。この一歩をこのまま続けていけば良い。あと、12日だ。

 

和やかな空気のすなとり3人組の耳に、獣がノドを鳴らすような音が聞こえた。音のした方を向く3人、彼らが目にしたのは3人の男女と、怪物だった。

 

2人の男と1人の女で形成された3人は、歌舞伎の様な隈取りをあしらっていた。ご丁寧に3人とも違った表情だ。小さな男子は真顔、紅一点の女には悲しみ、そして中央の太った男……ハラカイの顔には、怒りの隈取りが塗られていた。

後ろの怪物は口を開いたままで動きが止まっている。よく見ると頭の上に動きを止めるお札が貼ってあった。

 

悲しみ顔の女はその雰囲気に似合わない刀を、そして真顔の男は怪物を引っ張る為の縄と、そして何故かペンキを持っていた。

「我は戦闘神・修羅海。明石を殺す者也」

 

 




残念ながら4日目は、イッセー君の出番ナシです!
本当はこの話の途中で丑三の回想が入るんですけど、それはあとに回します。

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

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