神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
さて、イッセー君にお話があるんだ。サイラオーグ、しばし彼と話していいだろうか?……いや、席は外さなくても構わないよ。キミもそこで聞いておいて損はないかもしれない。
イッセー君、キミに昇格の話があるのだよーー正確に言うとキミと木場君と朱乃君だが。ここまでキミ達はテロリストの攻撃を防いでくれた。三大勢力の会談テロ、旧魔王派のテロ、神のロキですら退けた。そして先の京都での一件と今日の見事な試合で完全に決定がされた。ーー近いうちにキミ達3人は階級が上がるだろう。おめでとう。これは異例であり、昨今では稀な昇格だ。
ーー本来のキミ達の活躍の大きさからすれば、一気に最上級悪魔に昇格してもいいと思うのだが、こればかりは幹部達が苦言を示してね。すまないがまずは中級悪魔から上がっていって欲しい。
だが、キミの実力は本物だ、と魔王達4人で話したのさ。眷属を持っても良いほどに、ね。もちろん贔屓目は入れていないよ。それだけの事をキミがしてくれた……いや、今後も悪魔としてこれ以上の活躍をしてくれる、と見込んででもある。だから私は、キミに『悪魔の駒』を渡そうと思う……リアス達には内緒だよ?できたら成人するか、上級悪魔になるまで自分の眷属を持つのはやめておいた方がいい。キミもまだリアスの眷属としてしばらくはやって行くんだろう?王に従いながら自分の下僕を統制するなんて、なかなかできることではないだろうし。
……そうか、受け取ってくれるか。
キミの眷属、そしてリアス達がレーティング・ゲームをしている光景をこの眼で観るのを、楽しみにしているよーー
ーー坤と別れて1人廊下で辺りを警戒する『艮』に、接近してくる者がいた。
『殺意接近……戦闘不可避……何奴襲来』
「播磨生高校……サッカー部……『すなとり』BOX司令塔・
艮は再び手の模様を明石に見せる。艮の能力は、見た者に『過去のトラウマ』を追体験させる能力。その能力は、心の中の最も悲しい記憶を呼び起こす。
明石はその手を直視する……が、消えない。転送されない。艮は不思議そうに明石の前に手をかざし続ける。その艮の顔に重いパンチが入った。
「効かねえよ」
明石は追撃と言わんばかりに腹部に蹴りを放つ。艮は怯みながらも爪を出して明石を切り裂こうとするが、明石は制服の上着を目眩しに攻撃を避ける。斬撃は虚しく宙を切るばかり。
大振りで隙ができた艮の首筋に、明石はお札……涙ちゃんが持っていたお札を貼り付ける。
「俺は……今が一番、悲しいから……!!お前に涙ちゃんを殺された、この今が……!!
知ってるか、艮?人ってのは、悲しみと向き合って、超えて行くことができんだぜ?
俺はお前をぶっ殺して、この哀しみを乗り越える!!」
艮はお札を取り付けられ、動きが止まった……かと思われた。しかし、艮は力付くで自分の手のひらを顔の方になんとか向け……自らを転移させる。
『ホ!?』
校舎の屋上では、あの後イッセー達と別れた後に追ってきたゼノヴィアとイリナとミツバから何とか逃げ切った坤、その目の前に艮は現れる。
『我……助……求……此札……取賜……至急……懇願……』
坤は賢しい。今のままではあの少女2人に勝てないのはわかっていた。一度触れると消えると言っていた刀は右手を失っても消えやしないし、少女らの異常なスピードには追いつかれないように逃げるのが精一杯で、とても攻撃なんて行えやしない。おまけに頼みの綱の幻術も効かないとなっては、坤としては積み、お手上げだった。
それでも、この艮なら。肉体派のコイツなら、せいぜい囮にはなってくれるかもしれない。そう思って坤は、お札に手を伸ばす。
しかし、坤はお札を取る直前に、何かを察知したのか、屋上を飛び降りる。
その後、艮の眼に映ったのは、手榴弾だった。
「サッカー部、ナメんな」
直後、屋上を爆炎と肉片が埋め尽くした。
『ピンポンパンポーン♪不思議番号7「艮」、「すなとりBOX」マス取り成功』--
ーー『マス取り成功』のアナウンスが体育倉庫の外、体育館に響く。俺は、その吉報に安堵しながらも、気を引き締める。
(準備はできた。見様見真似だけど……やってみるしかない!!)
悪魔になって1月も経っていなかった頃、俺は友人の死、そして……その転生を見た。俺の最愛の主、リアス・グレモリーは神器を抜かれて死んだアーシア・アルジェントを悪魔に転生させた。俺はその時の事をよく覚えている。
俺は胸ポケットから取り出した『
「我、赤龍帝、
駒は……紅い光を発し、涙ちゃんの胸に沈んでいく!駒は完全に涙ちゃんの中に入っていき、心臓の鼓動が蘇る!!
「……あれ、私……」
俺は、眼を開け起き上がろうとする涙ちゃんに、事情を説明するために近づいたーー
ーー明石は、頬を涙で濡らしながらも、力強く体育倉庫に歩いていく。体育館に入ったところで、倉庫の入り口に立っているイッセーを見つけた。
「よくやったな、明石」と声をかけてくるイッセーに、明石はお礼で返す。
「お前がくれた手榴弾が役に立ったよ。ありがとう、イッセー」
そう言って笑う明石。イッセーはそんな明石に近づいて、肩を組みこう告げる。
「大切な人が死ぬかもしれない、そんな時が来るかもしれないという覚悟を、決めるんだ。そして、その覚悟が無駄になる様に、全力でその人達を守れ」
その声音は普段のイッセーの明るい声とは違う、威圧感と迫力があった。明石は真剣な表情で、ゆっくりと頷く。すると、イッセーはニッコリ笑った。
「じゃあ、帰ろうぜ!3人で!!」
イッセーはそういうと、BOXの方へ全力で走って行く!置いてけぼりを食らった明石は、もう見えなくなった彼を追おうとする。
「明石……君……」
その耳に愛しい声……もう二度と聞けないと思っていた声が聞こえた。
3日目、終了です!4話かかりました、まだ16日中の3日目なのに…。まぁ、16日中、原作でカットされていたところはこっちもカットしますが。
涙ちゃん、転生悪魔として復活!ハイスクールD×Dを見た、または読んだ人は、弐章2話の時点でこういう展開があるんだろうな、とお気づきになっただろうと思います。この展開も元々考えていたんですが、ゲームバランスが崩壊するかなと思い、迷っていました。しかし、感想のご指摘のおかげでこの展開になっても大丈夫なんだ、と踏み入ることができました。感想をくれた迷子の黒猫さん、ありがとうございます!
あとはヴァレリーちゃんをどう扱うか…これが今のところの課題です。みなさんの意見もらえたら嬉しいです。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!