神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
「ちょっとちょっとちょっと、ヤバくないかしら!」
とりあえず天井から現れた巨大なネコから離れながら、私は悪魔ちゃん…小猫ちゃんに近づく。
ダルマが先生の首から現れた時、みんなが驚き、動揺してる中、私、
ダルマの背中のボタンを押した時も、そのダルマが何かしたことでクラスの全員が死んだ時も、私は特に何も感じなかった。どうせあの悪魔達の悪ふざけで--あるいは彼らが敵対組織と戦っている最中の犠牲で--何かが終わったらまたもとの学園生活に戻るだろうと、本気で思っていたーーこの体育館に来るまで。
体育館に来たのは1番最初だった。ネコに鈴をつけたら〜なんてことが床に書いてあったけど、正直私にはよく分からなかった。しばらくすると、人がちらほらとやって来た。その面子の中にある女の子を見つけたとき、私の心臓は急に早まった。
塔城小猫ちゃん。ゼノヴィアが言っていた仲間の1人……つまり悪魔。
なぜ彼女がここに来ている?なぜ彼女は暗い顔をしてる?なぜ彼女は……泣いているの?
私は彼女に話しかけようとしたが、その時にもう1人の悪魔がやって来た。姫島先輩。学園の2大お嬢様と言われる彼女も確か悪魔だったはず。小猫ちゃんは彼女を見ると、彼女に飛びつくように近づいていった。しかし私は、別のことを考える。彼女のクラスにはもう1人悪魔がいたはず。彼女らのボス(らしい)、リアス先輩が。彼女はどうした?今朝姫島先輩と2人で登校しているのを見たぞ?……その答えは小猫ちゃんを抱きしめて姫島先輩の顔を見て分かった気がした。彼女もまた暗い顔をしていた。小猫ちゃんを撫でている顔は、安心そうだけれどどこか悲しそうだった。
次の試練が始まって数分、小猫ちゃんに話しかけるチャンスができた私は、彼女の背中に語りかけた。
「小猫ちゃん、私はイッセーと同じクラスの桐生ってもんだけどおっ!」
体育館をネコが叩いた振動で、床が揺れる。その揺れで倒れないように足に力を入れると、小猫ちゃんは揺れを感じてないかのように至って自然にこちらを向いた。
「桐生先輩?名前は知りませんが、こんな危機迫った状況で一体どういったご用件ですか?」
「小猫ちゃん、いや、悪魔ちゃん。この状況、人が死にまくっている状況、あんた達の仕業なの⁉︎」
小猫ちゃんを悪魔ちゃんと呼んでみると、彼女は少し驚いたような顔をし、その後怒ったような表情に変化した。
「私達の仕業ではありません!もし私達の仕業なら、ギャー君やレイヴェルは何のために死んだんですか!!」
彼女はその小さい身体からは想像できないくらいの大きな声を上げる。ギャー君……ギャスパー君とレイヴェルさん。かわいい後輩が1人くらい最近転校して来たとか、1人女の子みたいな美少年が復学してるって風の噂で聞いてた。そのうちギャスパー君はゼノヴィア達の仲間だったことも、ゼノヴィア情報で知っている。彼らも死んだ……そして恐らくはリアス先輩も……
「……あっ。ごめんなさい、小猫ちゃん。あんたのことも考えずに……」
「……いえ、こちらも取り乱してしまいました、すいません」
彼女は丁寧に謝ってくれた。その心の広さに感謝しながら、これは悪魔の仕業では無いと理解した私は彼女に一つの質問をした。
「あんた達でさ……あれ倒せない?」
「えっ……⁉︎」
彼女は一瞬戸惑ったような声を上げた後、大きく丸い目をさらに見開き……私を吹っ飛ばした。
「グヘッ!」
乙女が出しちゃいけない声を上げながら、ワンバウンドして床に倒れる。勢いよく吹っ飛びはしたものの、ダメージは少ない。手加減してくれたのだろうか?というか何故に殴られたのだろうか?そんなことを思いながら元々いた方を見る。
--私のいたところにネコの腕が振り下ろされていた。小猫ちゃんが助けてくれなければ、今ごろ私は死んでいたのだと分かった。冷や汗がどっ、と流れる。私は今、1回死んだ。
助けてくれた救世主を探す。彼女はネコの手の下で……潰されないように腕に血管を浮かべながら、ネコの手のひらを押し返していた--
ネコパンチに潰されないように、必死にネコの手を支える小猫ちゃん、彼女の運命は!次回に続く!
読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いしますー