神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
『「東山」犬村辰士……342g
「南山」明石靖人……108g
「西山」ドリルエル・亜樹……299g
「北山」丑三清志郎…………2798g』
俺達北山の砂は4分の1ほどがなくなり、砂山自体も倒れそうになったが、なんとか持ちこたえた。しかし先程までの乾物屋の功績が、おそらくこのマイナスでほぼなかったことになったぞ……
「何やってんだお前、死ぬとこだったぞ!!」「2度と立候補させねーぞ!!聞いてんのか!?早く戻ってこい!!」
双子は怒ったように言う……まぁ、怒っているんだろう、当然だ。運良く旗が倒れなかっただけで、下手したら死んでた。最も、丑三は倒れないように計算して取ったのかもしれないけど……
その丑三は手を握りしめたまま、南山……明石の方をひたすら向いてる。しばらくすると首を回して、足早に自分の席に戻る。
なんであんな事、自分が死んでしまうかもしれないようなことしたんだろう、なんて思っていると、南山のノーパン美女、夏川さんが、涙ちゃんに説明する様に話しているのが聞こえた。
「『自分達は何とかしないとこのままでは死ぬ』今のはチーム全体にそう思わせるための、あの男の策じゃないかしら?」
話によると、『100gの感覚』……『100感』がこのゲームの終盤戦では大事になってくる。今リードしている南山以外のチームは少しくらい取りすぎても気にかけないから『100感』をチームで共有できない。そうなると終盤……砂山が小さくなった時に有利なのは『100感』を知っているチーム。だから丑三は『100感』の重要性を自分のチームに植えつけるために、ワザとあれだけ多くの砂を取って自分達を不利な状況に置いた……らしい。
丑三の破天荒な性格的に、それだけでは無い気がする。明石に眼で何か伝えてたみたいだし。しかし丑三の真意が掴めないまま、見猿により7回目のすなとりが始まる。
『7回戦「すなとりもの」ぉ!!挙手ぅううらぁぁあ!!!』
7回戦、各山ともにセーフ。その中でも明石は「102g」と100gギリギリを取っていた。南山からは興奮の声が聞こえる。
「へへ……」
声が途切れる。不意に明石がふらっ……と砂山の方に倒れる。驚いた仲間の声かけのおかげでギリギリで意識を戻し、砂を崩す前に計りに手をかけ持ちこたえたものの、一歩間違えれば南山の砂山にぶつかり全滅の危ない状況だった。
『8回戦おら!!いくぞおらぁ!!「すなとりもの」挙手らあぁ!!』
時計回りは俺の隣まで回ってきた。次の9回戦は俺か!隣の元浜も近づいてくる自分の順番に緊張しているのが、表情を見てわかる。
と、ここで南山が再び騒がしくなった。
「はぁ!?バカなのアンタ!?今の方が余計士気下がるっての!!」
「もういい……もういいよナツメグ……こんな腐れブタ置いといて、私達だけでやろうよ」
始まる前は明石にベタベタだった芽衣ちゃんも、顔が怖い。言ってることも酷い。めちゃくちゃだ。
どうやら明石は先程意識を失いかけた時のことを心配され、代わろうかと言ってくれた仲間に『ずっとすなとりやらせてくれ!体調は大丈夫だから!』風に言った。それを聞いて安心した仲間に対し、『本当はもう、すなとりやりたくない。変わってくれ』と言い放ったようだ。南山は空気最悪で、明石はここから不参加になったみたい。ホントに何やってんの明石?紫村の顔が悲痛すぎてもう見てられない。
そんなトラブルがありながらもすなとりは続く。8回戦では東山が100g以下で犠牲になったが、それ以外はどうにか生き残った。そして9回戦、俺の番。
小型の猿に視界を覆われる。比喩でなく言葉通りに視界は全て真っ黒だ。しかし、その分聴覚はいつも以上に働いている気がする。元浜達仲間の声が、俺を導いてくれている。
止まれ、と言われたところでストップし、前に向かって手を伸ばす。柔らかい砂の感触を肌で感じながら、ゆっくりと周りに見えるように砂を落としていく。少ししたところで仲間から砂を取るのを止められた。俺は手を離し、「オーケーだ」と宣言した。
視界が開く。蛍光灯の明かりに目が眩んだ。
部屋が静まり、俺達は結果を待つ。一瞬がとてつもなく長く見える。
『「北山」137g』
俺もセーフだ。良かったぁ……
10回戦は元浜、そして北山では紫村も出ていたが、両方とも200gちょっとの砂を取ってセーフ。試合は続き、13回戦が終了したところで、どこの砂山も同じくらいの大きさになった!
人数は西山が残り3人、東山が残り2人と大きく減っているが、俺達北山は松田と乾物屋以外の7人が、そして南山は9人全員が残っている。
だがしかし14回戦、残り2人にして東山が「100感」を掴み、15回戦で西山も100感を掴んだ!
更に14回戦では、俺の順番の直前に
『「北山」96g』
北山3人目の犠牲者が出た!犠牲となったのは黒髪巨乳のクールガール。
俺は動揺しながらも、何とか100g以上取り、次に繋いだ。
そして更に試合が進み、22回戦。砂山はほとんど削られ、どのチームも残り後1回半くらいの砂の量になった。
北山、西山、南山は何とか砂を取った!
東山が倒せば、それで終わりか?俺達は東山の結果を待つ。
東山の男は砂の目の前まで来ると、手をすっと砂の方に伸ばし……
たと思ったら手を身体の方に引き戻し、こう言った。
「取ったぜ」と。
誰の眼から見ても、彼が砂を取って……いや、触っていないことは明らかだった。東山で最後に残ったもう一人の男子も、困惑しながら尋ねる。声が震えていた。
「いや……え……取って……ないよ?取ってないって……何で……?」
「他のチームが倒してくれればと思って待ったが…どーやらムダだったな……長い付き合いだから、俺が負けず嫌いだって事くらい知ってんだろ……?」
そういうと東山のすなとりものはゆっくりと続ける。
「『東山』はあと1回取れるか取れねぇか……取れりゃ奇跡と言っていい……あとはもうお前がその奇跡を起こすしか『東山』に勝ちはねぇ。勝てよ、託したぜ……お前は1人でもやれるさ」
『「東山」樽菱剛……0g』
「この命、お前にくれてやるよ」
その言葉を最後に、男の顔がグチャリと潰れた。
さぁ、すなとりもいよいよ大詰め、次がラストです!ちょうどいい具合のペースで終わらせられたかもしれませんね。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!