神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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祝日投稿!今回もすなとり!


第11話---ノーパン

「あ、え……これ……俺、セーフ……!?」

松田達が顔を潰され倒れた中、南山の明石だけは死なずに立っている。猿の目隠しをしていた手は、グッドのポーズになっている。

「何でアンタだけ生きてんのさ!?」

南山の1人の問いに、明石はこう答える。

「え?いやわかんないけど……何となく……『なぞるだけ』って簡単すぎるんじゃないかと思ったからさ。多めに砂を取ったんだけど……それがよかったのかな……?」

 

「はっ、なるほど!そういうことか!」

明石の言葉を聞き、元浜が何かに気づいた様だ。

「どうした元浜!」

「黒板の文字の意味が分かったんだよ。あれは試験のルール。『白』っていう字は漢字の百から一を引いた文字だろ?だから、100ー1の99……つまり『白イカはぺっしゃんこ』ってのは、.『99以下はぺっしゃんこ』ってことだ。100g以上砂を取らなければ、ぺっしゃんこになって死ぬ。松田みたいに……」

松田の死体は頭を潰した猿が持っていってしまった。あいつが死体になる前にこの事が気付けていたら……

「いや、でも松田の犠牲のおかげでちゃんとルールが分かった。あいつに命を救われた様なもんだ。感謝しないとな……」

元浜は、泣いていた。

そうだろう、ずっと……中学の頃から5年間の長い付き合いだったんだ。俺達は学校では3人で1人の共同体みたいなものだった……俺が悪魔に転生するまで。俺が悪魔になって忙しくなってからも、こいつらは他の友達なんてあまりいなかったから、2人でいつもつるんでたんだ。2人1組みたいな関係だった。その片方がいなくなってしまったもう片方の悲しみは、俺が想像するよりはるかに深いだろう……

 

 

 

「だって私、パンツ穿いてないもの」

!?

俺も元浜もそちらを向く!あれは……さっき後ろにいた凍えた目つきの女の子!あの子、ミニスカだぞ!それでパンツ穿いてないって……

い、いかん、鼻血が……くそう!惜しむらくは、彼女が俺達北山に背中を向けて座っているということだ!

彼女は涙ちゃんと揉めている。すごく高飛車な態度でエロそう……おっと偉そうだ。

 

『ゴチャゴチャうるせーな、そこぉ!!生き残ったら席つけ席ぃ!!ルールなんてここに書いてあんだからモメてんじゃねーよタコがぁあ!!』

いかん、見猿が怒り出した。俺達は慌てて前の砂山に向き直り、我関せずという様に真面目な顔を造った。

……松田、ありがとう!お前の分まで俺達は生きる!お前の勇姿は、後々まで語り継ごう!『松田は誰よりも漢であった』……と!

俺と元浜は南無阿弥陀、と唱える。ずっと死を引きずって悲しんでいては、自分達まで危なくなる。自分のせいで友が死んだら、あの世で松田も悲しむだろう。そうならない様に、俺達は悲しみを胸にしまい込んだ。

『2回戦いくぞ2回戦!!次の「すなとりもの」ぉ!!挙手せよぉ!!』

全ての山がしん……と静まりかえる。それはそうだ。この試験は順番制ではない。下手したら死んでしまうのにわざわざ俺が行く!という奴はいないだろう。

ここは俺が行くしかないか……「ワシが行こう!」!?

 

俺に先んじて手を挙げたのは甚平服の男子。どこか自信満々な表情が見える。

その後別の山もすなとりものが出揃った。南山からはあのノーパン美女が出る様だ!西山は西山でゆるふわ森ガール風の美人さんだ!東山は特に言うこともない。

 

『「すなとりもの」出揃ったな。2回戦はじめだおらぁあああ!!!』

甚平君(仮)はゆっくりと砂山の前に行くと、砂を掬い、指の間から少しずつ落としていく。何やってるんだ?計ってる……のか?

「ヤァッ!」

その声に後ろを振り向くと、南山の砂が途轍もなく減っていた。

えええええぇぇ!?!?あんなに偉そうな態度だったのに、取る量多っ!あれ、1000gくらいいってるんじゃ……

『時間それまで、ジャッジメント!!』

全ての山が取り終わった様だ。頼む、甚平服。お前は死なないでくれ!

 

『「東山」……棚橋盤。「204g」

「南山」……夏川めぐ。「884g」』

多っ!やっぱり多っ!南山の方から悲鳴と焦りの声が聞こえる。まあ、1回目・2回目合わせたら他の山よりだいぶ砂の減りが多い。1番砂山が倒れやすくなってるんだから、当然か。紫村も泣きそうになってるし……。

「私はただ、口だけの女じゃないと証明したかっただけ。100gなんてわかるわけないじゃない」

でしょうね!100gの重さがわかる奴なんていたら、超有利になるしね!そんなタイミングのいい奴なんている訳ないよね!

『「西山」……ドリルエル・亜樹。「380g」

「北山」……』

そこで「おぉお……!?」と歓声が上がる。同じグループの双子からだ。

『……桐谷甚平。「103g」』

103g……!?

「す……すげぇ!!100gに近いじゃん!!」「ナ、ナイス!……でもお前、どーやって?」

質問に甚平服の桐谷甚平は答える。

「ワシの親父は乾物屋なんじゃ。こちとら小せぇ頃から一握りの鰹節の重さを体に叩き込まれて育ったクチ」

よく見ればその甚平には「桐谷鰹節」の4文字が見える。さっきの砂を掬って落とす行為は、やっぱり重さを計ってたのか?

「このゲーム『すなとり』ワシに任せとけい!!100gの砂取るなんざ朝飯前じゃあ!!」

「おおお!」「頼むぞ!!」

北山のメンバーが興奮に包まれる!

 

 

……出てきたぁ!100g計れるこの試練の主が、同じグループにいたぁ!

 




松田君が死んだ所からのスタートでしたが、何故かコメディチックな感じになってしまいました。なんででしょう?ナツメグ効果?乾物屋効果かな?

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

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