神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
赤鬼はド派手にゴロゴロと転がる。茶色のドデカい鬼の腹にぶつかり、ようやくその動きを止めた。
横目でやつを見ながらも、視点を膝に移す。赤き鎧は燃えて穴が空いている、などということはない。それなら、十二分に戦える…!
今、このグラウンドに残っているのは、俺、赤鬼、そして他2体と違ってグラウンドから動こうとしない茶色鬼。その胸には、『まばゆ〜い』という文字が刻まれ、胡座を組んでいながらその身体が宙に浮き、時折りそのまま移動する様子が見える。
カミはいつのまにか姿を消し、残る人間はいない。
『マジヤバ〜!腕がポッピンしちゃった☆』
『我らが肉体を、あれなしで吹き飛ばすとは。なかなかなる兵よ』
奴らは、俺を値踏みするように見る。対して俺も、警戒は怠らない……と
『兵の道にこそ、救いは必須たらん。しからば、我が光を届けようぞ』
茶鬼の身体が、不意に莫大な光を発する!兜のお陰で目のダメージは幾分か減少した……が、光ってのは悪魔の天敵…!どうにも力が入らなくなる…!
と、風を切る音が前から聞こえる。俺は慌てて空へ飛び退いた!
俺の顔があった位置を、棍棒を持った赤い腕が通過していく。赤鬼が、自身の腕を蹴り飛ばしてきたようだ。
『wow!ヤバくな〜い?空飛んでんだけどぉ』
赤鬼は大袈裟に驚きポーズを取る。と、側面から巨大な衝撃が……!
『衆生を救うために、この身体を動かすのも悪くなかろう』
茶鬼が浮いたまま、飛んで体当たりをして来たようだ…!俺の身体はグラウンドに生える巨大な木にぶつかり、共に薙ぎ倒される!
それを待ってましたと言わんばかりに、赤鬼が走って来るのが見えた。こっちに来るなら容赦はしねぇ……!
赤鬼の腕が、俺の顔面を狙って伸びる。そのニヤついた笑みが、急に引っ込む。
俺が、その股間を蹴っ飛ばしたからだ。赤鬼の身体が、空へと吹き飛ぶ!
『BOOST!BOOST!BOOST!BOOST!BOOST!』
俺の天から貰った力、『
「粉々に吹き飛びやがれ!ドラゴン・ショット!!」
『Explosion!』
赤い弾が、吸い込まれるように赤鬼へと飛び込み、弾ける!
轟音と共に、空を一瞬赤が支配した。
「さぁ、あとは1匹……!」
茶色鬼が再び、身体を発光させる。今度は顔を覆い、その光を完全にシャットアウトする。多少の弱体化は、俺の能力で補う……
『頭上がお留守よん♪』
不意に肩にのしかかる重み。目の前に脚が迫り、なすすべもなく蹴り飛ばされる。倒れた木でできた茂みの中に飛び込んだ身体を、大きな枝が受け止める。
俺を蹴ったのは、吹き飛ばしたはずの赤鬼。身体は焦げているものの、目立った損壊は見えない。
『我らは貴様らの頂点の一角に触れ、その力を肌に触れた。貴様らのような人の姿見をしながら人の生を歩まぬ者には、相応の力を持って対応せんと、特殊なる力を得た』
『つまりぃ、ちゃーんと試練を受けないと殺されてやんね!』
くそったれ、赤鬼の腕もくっついてる。俺みたいな悪魔用の対策はしてるってか……
と、その手に何かが触れる。木の枝の中に隠れてる、丸くてすべすべとした物体。手に取ると、それはカプセル。表には、豆の文字。
これは、つまり……!
『てなわけで、さいならさいなら〜!』
今度は両腕で、俺の足元目がけて赤鬼が突撃を図る。咄嗟に足を引き、木の枝を折って赤鬼の腹へぶん投げる!
『わかんねぇかな?こんなの効かないって!』
赤鬼はその木を叩き落とし、木は瞬く間に炭となる。
その、一瞬を使い、顔面に一撃叩き込む。
最初と同じように、赤鬼はゴロゴロと地面をバウンドしながら吹き飛んでいく。今度は茶鬼が進行先に周り、その身体を受け止めた。
『暴の力は、試練の前には余りにも無力。そして、暴の力を覚えた者は、その力が通じねば弱き存在へと堕ちる
なれば、我らが救ってやるのは必定也……!』
茶鬼の口が、途中で止まる。その腹にあるのは、顔面が半分溶けてなくなった赤鬼の、無惨な姿。
「木の中にあったこいつは、そういうことだったんだな」
俺がカプセルをわざと見えるように投げると、茶鬼も少なからず動揺したように見えた。表情が変わらないから、よくわかんないけどな。
「このカプセルに入ってたのは豆の文字。つまり、この試練は
「豆があああああああああ!
効くぅううううううう!」
校舎から響き渡る声。それは、赤鬼を倒したことを裏付けてくれた。
「カプセルに入ってる豆を、鬼にぶつける。『豆まき』だってこった。
そして、こう堂々と宣言されてるってことは、少なくとももう1匹はやられたってことだな!」
『ぬう…』
唸り声を出す茶鬼。その時、茶鬼の太い腕が弾け飛ぶ。
「行け行け行け!」「顔狙え顔!」「わかってる!」
茶鬼の背後から飛び出した4人組。彼らから飛んでくる豆がついには茶鬼の顔にも当たり……
『見事也』
茶鬼の顔面も弾け飛び、その動きを止めた!!
無事投稿です。今日書いて明日休み、そしてその後29から1月の3日まで連続で書く予定です。あくまで予定なので、無理かもしれませんが…正月忙しいかもしれないし…
ただ、1回休んだ時に年末年始は頑張ると言ったので、頑張ります!
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!