神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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第27話---策

「何か思いついたの!?瞬……『ぜつぼうたおし』の攻略法?」

秋元さんの問いに、高畑は小さく頷く。そして、高畑は天谷を呼んだ。俺はそちらに耳を傾ける……と、その時。

 

『YES!!レッツチョイス♪次の組み合わせをレッツチョイス☆』

かみまろがサイコロを振る。俺達の意識はそちらに傾く。

 

「発表します…『ぜつぼうたおし』2回戦は…………

 

4年生と、1年生」

 

遂に、俺達の出番がやってきた。

 

「あぁ…!!」

 

秋元さんがそう言ってへたり込む。ろくな作戦も考えていないうちに来てしまった……まぁ、俺達なら大丈夫だろうけど。

と、そこで近くにいた、真田とクリスの声が聞こえてくる。

 

「4年生ってさっきの……」

「はい、多分……

 

しょうこちゃんの妹がいる学年ですね」

 

しょうこ……高畑の復讐の動機となる人物……その妹……。俺なら会長の姉であるレヴィアタン様と戦うようなものか……。それを想像するのも嫌なくらい、残酷な仕打ちだ。運命のイタズラってのは、何とも残酷……。

 

「ははーーー♪マジかよ!!?」

と、そこで興奮した天谷の声が響く。

「やべぇなそれお前♪キテるキテる♪ちょ…おま…イイな!

乗ったぜ、その策!!」

 

高畑は天谷と何か作戦会議をしていたようだ。俺達は必勝法……味方を誰も殺さずに勝つ方法を思いつかなかったが、あいつらは何か策を捻り出したらしい。ただ、俺達が聞いても2人はその内容について、何も言わなかった。時間がないと誤魔化された俺達は、その次の高畑の台詞を信じるしかなかった。

「大丈夫!この作戦が成功すれば……誰も死なないから」

 

そして、俺達はフィールドの上、円の中に立つ。こっちの人数は14、それに対して4年生は25人。その中には、『しょうこ』さんの妹も立っている。そちらに意識を持っていかれないようにか、こちらも作戦会議が開始された。

 

「--ということだ。いい?OK?皆は、今俺が言った事をやってくれればいい」

「なるほど、確かにその作戦は、この数的不利を打開できる。こちらの人間は、どきょうそうを見た感じパワーに秀でた者が多いし、その作戦は非常に有効……」

「待ちなよ……!そこまではわかったけど、肝心のクリア方法を言えよ!」

坂東さんの詰問に、「え…あ……ゴメン」と高畑は言うが、その説明は質問への答えにはなっていなかった。

「こっちは14人、向こうは25人でしょ?何よりも、この数的不利を打開する事が大事なんだ」

「は?それ答えになってねぇよ」「相手の棒を倒す方法を早く教えてよ!時間無いよ!?」

1年のメンバーは更に高畑を追求しようとする。しかしそこで、

『それではまもなく開始です☆アーユーレディ?』

 

時間切れだ。

「おい、もうその作戦で行くしかねぇじゃんかよ!?」「高畑さん!ちゃんと説明してください!?」「瞬さん!?ちょっと!?」

高畑はずっと黙ったままだ。

「瞬!!何で黙ってんのよ!?いい加減に」

幼馴染の秋元さんの言葉を遮って、高畑は短く告げる。

 

「俺と天谷が何とかするから…

 

信じてくれ」

 

そう言うと高畑は、「いくぞ、皆」と声をかけて、作戦の位置へとスタンバイした!

「まさかアンタ、始めからそれを言わないつもりで!?」「……やられた。自分の作戦を押し通す気だ」「しかし、他に策があるわけでもありません」「しゃーねぇ、腹くくるぞ。それでやるしかねぇ」

 

他の1年生も今の状況では高畑に従わざるを得ない。それが実のところ確実に負けない、安定策だ。俺達も所定の位置に着く。

そして、旗が降ろされた。

 

4年生がかなり……20人ほどで攻めてくる。それに対し、俺達は動かない。

 

俺達の作戦は、超守備特化、専守防衛策。真田を先頭に据え、1ー6ー6ー1の14人体制の守備システムを作っている。

 

最前線、真田ユキオがまず、攻めてくる敵を片っ端からなぎ倒していく!

討ち漏らしは俺達中軸12人が確実に倒す!

 

「おら!」「やっ!」「はっ!」「どりゃあ!!」

……まぁ、ほとんど俺達悪魔勢で仕留めてるけど……冠城や坂東さんも結構倒してるな。

 

一応、万が一に備えて棒の所に天谷を置いてるけど、特にする事も無く、暇そうに鼻をほじっている。

 

そしてとうとう、4年生チームの攻撃チーム20人、すべてを地に伏せた。それに焦ってか、守備チームも1人を除き皆突撃してくる……が、全て俺達に阻まれ、倒された。

 

時間は残り約1分。『しょうこ』さんの妹、平井響子さんがただ1人、震えながらも自陣の棒を掴んでいる。

そこに2人が近づいていく。1人は最前線、真田。そしてもう1人は……策の立案者、高畑。

真田が平井さんを倒そうとするのを、高畑が制する。真田はその高畑に対し、そしてフィールドにいる皆に聞こえるように一言言い放った。

 

「負けたチームはどうせ全滅なんだ。俺達が勝てば、こいつは死ぬんだぞ」

その言葉に高畑は頷く。そして平井さんに棒を渡すようにお願いした。

「な……舐めないでください!!

お姉ちゃんの事で手加減してるのなら、やめてください。私だって、戦って死にますから……!」

 

震え声でそう言う平井さんの肩に、高畑はポンと手を置く。そして、優しく言った。

「大丈夫。誰も死なせないから。

 

もう、しょうこちゃんの時と同じ想いはしたくないんだ……」

 

誰も死なせない……?そんな事、どうやってできる?この状況で試合をなかった事にするなんて、とても……!!

 

いや、ある。1つだけある。ここで全てを終わらせる方法が。

 

「時間が無い、信じてくれ。君を死なせたくないんだ。俺はこの『ぜつぼう』を……

 

『希望』に変えてみせる」

その高畑の横顔に、一筋の光が見えた。

 

平井さんは棒を高畑に渡す。それを受けて、高畑は真田に言った。

 

「……ユキオ。響子ちゃんを連れて、ここから離れてくれ」

 

その後、真田が平井さんを抱え全力でこちらに逃げてくるのが見えた。1人棒を持って残る高畑を見て、1年生の皆は--駒王学園の皆も含め--的外れな事を口にする。

「瞬っ!!独りで死ぬなんて、ダメよ!!瞬!!」

秋元さんがそんな事を口にする。だけど違う。あいつはそんなつまらない事をする奴じゃない。

 

高畑は棒を片手に持ち、そしてある方向に走り出した。

「言ったろ?誰も死なねぇって」

後ろから声がする。俺の予想通り、天谷も棒を片手に持って立っていた。

「衝撃に注意なーのだ♪」

そして、高畑と同じ方向に走り出す!!

 

2人が目指すのは、グラウンド中央。いや、正確には、その上空。

 

そこに座っている、神小路(かみのこうじ)かみまろ。

 

2人は大きく棒を振りかぶり、

 

「「死ねかみまろおおおおお!!」」

 

神を射殺す槍が、天へと放られた。




次回、第壱章最終回。

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

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