神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
「イッセー君、あーんですわ」「あ、あーん」
「こっそり胸ばかり見てる……先輩、エッチです」
時刻は夜の7時半。僕達は今、晩ご飯を食べている。
あの事件があってから僕、木場祐斗も連れ添い2人とともにこっちに住まわせてもらっている。
「うまうま……」
忌まわしき『聖剣事件』を生き残っていた僕の同士トスカ。そして、
「美味しいですね、はい、あーん」
ギャスパー君の幼馴染み、ヴァレリーちゃんだ。
ヴァレリーちゃんはギャスパー君と同じ吸血鬼と人間のハーフで、『赤龍帝の籠手』と同じくらい強力な神器……『
彼女の神滅具の能力は、死んだ者を生き返らせる能力。
しかし、彼女はその大量使用によって精神を病み、死人の魂に取り憑かれていた。それを僕達グレモリー眷属が救ったのは、つい最近のことだ。
ヴァレリーちゃんは、何もない虚空にスプーンを差し出す。すると、スプーンが微かに揺れて、上に乗っていたおかずが無くなった。
彼女が言うには、ここにギャスパー君の魂がいるそうだ。
ギャスパー君が死んだと聞いた時、彼女はギャスパー君を生き返らせようとした。その時、彼の魂がヴァレリーちゃんが神器を使用するのを止めたらしい。それから、ヴァレリーちゃんをギャスパー君は魂となりながらも守っているんだ、と死者の魂と会話できるヴァレリーちゃんは言っている。
最初、匙君が生徒会メンバーを生き返らせてほしいとお願いした。だけど、それはギャスパー君が許可しなかった。ヴァレリーちゃんにはもう2度と神器を使わせたくない、そう言われたそうだ。匙君も事情を知っていたから、惜しみながらもその理由を理解してくれた。
その匙君は今、家ではなく生徒会室で暮らしているらしい。もともとは一人暮らしだったけれど、住んでいたマンションの大家さんにも神の子として恐れられてしまい、迷惑になるからと自分から出ていったそうだ。匙君にもイッセー君の事は伝えていて、明日にはこちらに会いに来る、と言っていた。
やがて食事が終わり、皆はイッセー君とゼノヴィアさんに、今まで何をしていたか、質問した。しかし、イッセー君達は「悪い……それは言えないんだ……」と言うばかりで、質問に答えてはくれなかった。おそらく、何か都合があるんだろう。あるいは……誰かに口止めされているとか。そう思った僕達は、それ以上追求しなかった。
夕食の席を立ち、イッセー君は自分の部屋に向かった。僕達もそれについていく。彼は机の引き出しを開けると、1枚の写真を取り出した。あれは……3年生の卒業アルバム用に撮った、オカルト研究部の集合写真だ。彼はその写真を大切そうに懐に入れた。
その夜は、イッセー君とゼノヴィアさん、朱乃副部長と小猫ちゃんで同じベッドに寝た。僕も同じ部屋で寝させてもらった。
次の日、匙君と由良さん、桐生さんがやってきた。匙君は号泣しながらイッセー君との再会を喜んでいた。桐生さんが泣きながらイッセー君の胸板を1発叩いていたのも印象的だった。
そして。
「やっぱり、まだボロボロだな」
そう言ったイッセー君の頬に、涙がつたう。
僕達は、立ち入り禁止となっている、試練の始まりの地
ーー駒王学園にやってきていた。
イッセー君とゼノヴィアさんは教室を1つ1つ訪れると、そこに手を合わせ、死者を弔った。特に、自分のクラスだった教室、小猫ちゃんのクラスだった教室、そして、朱乃副部長のクラス……リアス部長のクラスだった教室を念入りに弔っていた。
「木場、朱乃さん、小猫ちゃん、匙、由良」
教室参りが終わって学園を出て、桐生さんと別れた後、イッセー君は深刻そうな顔で僕達の名前を呼んだ。
「何かな、イッセー君」と返す僕に、イッセー君は言う。
「俺達は、また出かけなきゃいけないんだ。父さんと母さんに、ゴメンって言っておいてくれ」と。
朱乃さんが、小猫ちゃんが、匙君が、皆が彼を止めようとした。しかし彼は、行かないといけない所があると告げた。僕達では彼を止めることができなかった。僕達も薄々察してはいたんだ。
「また、逢えるかい?」
だから代わりにそう聞いた。イッセー君は大きく頷いてくれた。
イッセー君は別れの言葉と共に、もう1つ言葉を残した。
「まだ終わってないんだ、お前らも気をつけろよ!生き残れよ!」
僕達がその言葉を理解するのは、そこから更に数日が過ぎた後の話だ--
出席者編を一気に読んでいる方はどうもすいません。書いている時は出席者と欠席者を交互に書いていたもので、このようなある種のネタバレになってしまったことはご容赦ください。
イッセー君の大切な物、それは皆が映った集合写真!一応弐章2話で出してました。他の人の大切なものは、また後ほど……
まだ第壱章も終わりではありません。第壱章生き残りの彼らの出番も、後々をお待ちあれ。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!