神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
ーー何がどうなっているの?
今日は平和な日。戦いに明け暮れる私達にとって束の間の休日。何もないけれど……何もないからこそ、幸せな1日になるはずだった。私、姫島朱乃はそう思っていた。
バンッと何かが弾けた音がした。その直後、リアスが倒れる。
その身体、イッセー君の大好きな胸の間、心臓部には……大きな穴が空いている。
……え?大きな穴?
なぜ?
「り、リアスさん、だいじ
『パァン!』
リアスに駆け寄ろうとした男子の腹にも、大きな穴が空いた。
なに、何が起こっていると言うの?
禍の団が攻めて来たというの?それとも、また別の敵が……?
ダルマが後ろを向いた。私はあの不気味な物体を注意しながら遠目で観察する。 押し……たなら……終わり?
『だー、るー、まー、さー、んー』
ハッ!と気付いた。これは、「だるまさんが転んだ」だ!小さい頃、リアスや私が使役している小鬼達とよくやっていた。
リアスや男子が死んだのは、ダルマがこっちを向いている時に動いたから!
「みんな、これは『だるまさんが転んだ』ですわ!ダルマがこちらを向いた時に動くと、命を落とすことになりますわよ!」
『んー、だ!』
私の言葉を聞き入れてくれたのか、クラスメイト達はぴたっと止まり、微動だにしない。ダルマはちっ、と舌打ちをするかのように揺れて、また後ろを向く。
「ひ、姫島!どういうことだよ!だるまさんが転んだとか急に言われても分かんねえよ!」
そういって、男子の1人がドアを開けて、逃げようとする。
「あれ、開かねえ!」
だが、いくらドアノブを引っ張っても、ドアガラスを叩いても、ドアが開く気配は無い。
『だっ!』という音と共に、その男子の腹にも大きな穴が……
「嫌だ、いやだぁぁ!こんなところで死にたくねえぇ!」
「誰か助けて、助けてよおぉぉ!」
一時は止まってくれたクラスの皆も、恐怖がピークを迎えたのか叫び始める。でも、そんな事でこの試練が終わる訳も無く、『だっ!』という音と共に、その身体に穴が空き、彼らは崩れ落ちる。
現在、クラスに立っているのは、13人。皆が震えている。ダルマの恐怖に支配された教室に、『パチン!』と乾いた音が響いた。
クラスメイトが皆、そちらを向く。そこにいたのは、元・生徒会副会長にして、ソーナ・シトリー眷属の女王、
「落ち着いて下さい、皆さん。このデスゲームを終わらせる方法は、あります」
そういって彼女は背を向けているダルマを指差す。
「あの背中にあるボタン、そしてその上の文字、『押したなら終わり』と書いてあります。あのボタンを押すことができれば、私達は生き残ることができるでしょう」
その言葉に、クラスメイト達の絶望の淵に立った様な顔も明るくなった。
「そ、そうか。あのボタンを押すことができれば、俺達は生き残れるぞ!」「よっしゃあ、やってやろうじゃないか!」「元陸上部の力、魅せてあげるわ!」
「……ただし、ダルマさんもゆっくり待ってくれそうにはないですわね」
私は少し声を大きくして言う。その言葉に椿姫も気付いた様だ。ボタンの上にある……制限時間に。
「おいおいおいおい、まさかあの制限時間内にボタンを押せってことか?無理ゲーじゃないか⁉︎あと3分ねぇぞ!」
「いやでも、ダルマの振り返るペースは一定だし、タイミングを見計らって走れば、行けるんじゃないの?」『だっ!』
皆が止まる。ダルマがそれを見て後ろを向く--
「今だ!行くぞ、GOGOGOGOGOっ!」
「よし、突っ込め!」
これで終わる。私も立ち上がり、ダルマの方へ向かおうとし、
『まさんが転んだっ!』
『どパパパパパパパァン!!』
一瞬にして走り出したクラスメイトを葬った。
ふぇ、フェイント!?急に早く振り返ったダルマに対応出来ず、男子6人、女子4人に一斉に穴が空く。
「そんな、こっちのタイミングを見計らってくるなんて、こんなの、こんなの無理じゃないのよっ!」
残ったのは3人だけ、私と今話した少女、そして椿姫。
「朱乃さん、朱乃さん」
その椿姫がこちらに話しかけてくる。
「どうしたの?」
返事の声が恐怖で擦れている。
「私に、ちょっとした考えがあります。しかし、誰か他の人に協力してもらわないと、この策は難しいのです」
そういって彼女がしゃべり始めたのは、こういう作戦だった。
⒈ダルマが背を向けたときに椿姫が
⒉ダルマがこっちを向くまで、ひたすら近づく。
⒊ダルマが鏡を攻撃し、カウンターのダメージで怯む。ここでダルマを倒せればなおよし。
⒋怯んでいるダルマの背中に回り、ボタンを押す!
追憶の鏡は、鏡を割った相手にその倍のダメージを与える椿姫の
「その作戦、乗りましょう!」
時間はあと1分15秒位。ダルマがこちらを向いた。
ダルマは2秒ほどこちらを向いて、背中を向ける!このタイミングで!
「
今だっ!
私と椿姫は一斉に走りだす!
『だるまさんがころんだっ!』
動いているのをなにかで感じ取ったのか、ダルマが(鏡で見えないけどおそらく)こちらを向く!
正面の鏡が割れ、『ヌグッ』という音が聞こえた。
「今よ椿姫!ダルマの後ろの鏡を消して!」
私はダルマの後ろに回り、背中のたった1つのすき間へと手を伸ばす!
「「いっけえぇぇぇぇぇぇぇ!」」
ーー手が何かを押した感覚がした。私はダルマから跳んで離れる。椿姫が鏡を消すと、ダルマはまだ、そこにいた。微動だにせず、血走った様な目で前を見つめている。
終わったの?終わって無いの!?
ダルマが口を開ける、私達は身構えてーー
ピロリロリン、ピロリロリン、と。
間の抜けた音が響いた。
『しゅーりょー、しゅーりょー、しゅーりょー、しゅーりょー』
ダルマが飛び跳ねながら、告げる。
……!
「やった、生き残った!」
残った女の子が嬉しそうに声を上げる。だが、私はそう言っていられない。座り込んでしまいそうになるのを我慢して、リアスの方へ向かう。だらしなく横たわったその肌は、冷たくなっていた。
「リアス、リアス、しっかりしなさい、ほら起きて……ねぇ、起きてよ、リアス……」
私は、声を上げて泣きくずれる。その肩に椿姫の手が触れ、
『パパァン!!』
教室に響く破裂音……今の音は今日散々聴いた。乾いた銃声の様な音。
振り向いてはいけない、と誰かに言われた気がした。
終了と言っていたのに、なんで?
「なんで椿姫達を殺したのよ⁉︎」
ダルマに向かって振り返るのと、椿姫達の身体が倒れるのはほぼ同時だった。
『姫島朱乃、お前がボタンを押した。だから、姫島朱乃のみ、生きる。 生きる!』
生きる!!
頭が白くなった。このゲームは元から1人しか生き残れなかったのだ。ならば、なぜ私なの?リアスや椿姫ではなく、私が生き残った?
「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
私は声が潰れるまで啼くことしかできなかった。
3年生編、しゅーりょー。次は1年生ですかね。
だるまの試練は3年生と1年生だけ書こうと思ってます。2年生はとりあえずスルー。結果は次の試練で明らかになると思います。
主役である、我らがイッセー君の参戦は、もう少しあとになるかな?とりあえず出席者の試練を3つ書いたあとに、欠席者の方になると思います。
神さまの言うとおりの主役、高畑くんと明石くんも出ます。天谷くんも出るよー(だいぶ後だけど)
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからも、よろしくお願いします!