神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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最初は勢いが肝心、ということで、二話目投稿です!


第2話ーーー3年生

ーー何がどうなっているの?

 

今日は平和な日。戦いに明け暮れる私達にとって束の間の休日。何もないけれど……何もないからこそ、幸せな1日になるはずだった。私、姫島朱乃はそう思っていた。

 

バンッと何かが弾けた音がした。その直後、リアスが倒れる。

その身体、イッセー君の大好きな胸の間、心臓部には……大きな穴が空いている。

 

……え?大きな穴?

 

なぜ?

 

「り、リアスさん、だいじ

 

『パァン!』

 

リアスに駆け寄ろうとした男子の腹にも、大きな穴が空いた。

なに、何が起こっていると言うの?

禍の団が攻めて来たというの?それとも、また別の敵が……?

 

ダルマが後ろを向いた。私はあの不気味な物体を注意しながら遠目で観察する。 押し……たなら……終わり?

 

『だー、るー、まー、さー、んー』

 

 

ハッ!と気付いた。これは、「だるまさんが転んだ」だ!小さい頃、リアスや私が使役している小鬼達とよくやっていた。

リアスや男子が死んだのは、ダルマがこっちを向いている時に動いたから!

 

「みんな、これは『だるまさんが転んだ』ですわ!ダルマがこちらを向いた時に動くと、命を落とすことになりますわよ!」

『んー、だ!』

 

私の言葉を聞き入れてくれたのか、クラスメイト達はぴたっと止まり、微動だにしない。ダルマはちっ、と舌打ちをするかのように揺れて、また後ろを向く。

 

「ひ、姫島!どういうことだよ!だるまさんが転んだとか急に言われても分かんねえよ!」

そういって、男子の1人がドアを開けて、逃げようとする。

「あれ、開かねえ!」

だが、いくらドアノブを引っ張っても、ドアガラスを叩いても、ドアが開く気配は無い。

『だっ!』という音と共に、その男子の腹にも大きな穴が……

 

「嫌だ、いやだぁぁ!こんなところで死にたくねえぇ!」

「誰か助けて、助けてよおぉぉ!」

 

一時は止まってくれたクラスの皆も、恐怖がピークを迎えたのか叫び始める。でも、そんな事でこの試練が終わる訳も無く、『だっ!』という音と共に、その身体に穴が空き、彼らは崩れ落ちる。

現在、クラスに立っているのは、13人。皆が震えている。ダルマの恐怖に支配された教室に、『パチン!』と乾いた音が響いた。

 

クラスメイトが皆、そちらを向く。そこにいたのは、元・生徒会副会長にして、ソーナ・シトリー眷属の女王、神羅椿姫(しんら つばき)

 

「落ち着いて下さい、皆さん。このデスゲームを終わらせる方法は、あります」

そういって彼女は背を向けているダルマを指差す。

「あの背中にあるボタン、そしてその上の文字、『押したなら終わり』と書いてあります。あのボタンを押すことができれば、私達は生き残ることができるでしょう」

その言葉に、クラスメイト達の絶望の淵に立った様な顔も明るくなった。

「そ、そうか。あのボタンを押すことができれば、俺達は生き残れるぞ!」「よっしゃあ、やってやろうじゃないか!」「元陸上部の力、魅せてあげるわ!」

 

 

「……ただし、ダルマさんもゆっくり待ってくれそうにはないですわね」

私は少し声を大きくして言う。その言葉に椿姫も気付いた様だ。ボタンの上にある……制限時間に。

 

「おいおいおいおい、まさかあの制限時間内にボタンを押せってことか?無理ゲーじゃないか⁉︎あと3分ねぇぞ!」

「いやでも、ダルマの振り返るペースは一定だし、タイミングを見計らって走れば、行けるんじゃないの?」『だっ!』

 

皆が止まる。ダルマがそれを見て後ろを向く--

「今だ!行くぞ、GOGOGOGOGOっ!」

「よし、突っ込め!」

 

これで終わる。私も立ち上がり、ダルマの方へ向かおうとし、

 

『まさんが転んだっ!』

 

『どパパパパパパパァン!!』

 

一瞬にして走り出したクラスメイトを葬った。

ふぇ、フェイント!?急に早く振り返ったダルマに対応出来ず、男子6人、女子4人に一斉に穴が空く。

「そんな、こっちのタイミングを見計らってくるなんて、こんなの、こんなの無理じゃないのよっ!」

残ったのは3人だけ、私と今話した少女、そして椿姫。

 

「朱乃さん、朱乃さん」

その椿姫がこちらに話しかけてくる。

「どうしたの?」

返事の声が恐怖で擦れている。

「私に、ちょっとした考えがあります。しかし、誰か他の人に協力してもらわないと、この策は難しいのです」

そういって彼女がしゃべり始めたのは、こういう作戦だった。

 

⒈ダルマが背を向けたときに椿姫が追憶の鏡(ミラー・アリス)をダルマの前に展開

⒉ダルマがこっちを向くまで、ひたすら近づく。

⒊ダルマが鏡を攻撃し、カウンターのダメージで怯む。ここでダルマを倒せればなおよし。

⒋怯んでいるダルマの背中に回り、ボタンを押す!

 

追憶の鏡は、鏡を割った相手にその倍のダメージを与える椿姫の神器(セイクリッド・ギア)。これでダルマをやっつける、最低でも怯ませること位はできるのでは無いかしら?

「その作戦、乗りましょう!」

時間はあと1分15秒位。ダルマがこちらを向いた。

ダルマは2秒ほどこちらを向いて、背中を向ける!このタイミングで!

追憶の鏡(ミラー・アリス)!」

 

今だっ!

私と椿姫は一斉に走りだす!

 

『だるまさんがころんだっ!』

動いているのをなにかで感じ取ったのか、ダルマが(鏡で見えないけどおそらく)こちらを向く!

正面の鏡が割れ、『ヌグッ』という音が聞こえた。

「今よ椿姫!ダルマの後ろの鏡を消して!」

私はダルマの後ろに回り、背中のたった1つのすき間へと手を伸ばす!

「「いっけえぇぇぇぇぇぇぇ!」」

 

 

 

ーー手が何かを押した感覚がした。私はダルマから跳んで離れる。椿姫が鏡を消すと、ダルマはまだ、そこにいた。微動だにせず、血走った様な目で前を見つめている。

 

終わったの?終わって無いの!?

ダルマが口を開ける、私達は身構えてーー

 

 

 

ピロリロリン、ピロリロリン、と。

間の抜けた音が響いた。

 

 

『しゅーりょー、しゅーりょー、しゅーりょー、しゅーりょー』

ダルマが飛び跳ねながら、告げる。

 

 

……!

 

「やった、生き残った!」

 

残った女の子が嬉しそうに声を上げる。だが、私はそう言っていられない。座り込んでしまいそうになるのを我慢して、リアスの方へ向かう。だらしなく横たわったその肌は、冷たくなっていた。

「リアス、リアス、しっかりしなさい、ほら起きて……ねぇ、起きてよ、リアス……」

私は、声を上げて泣きくずれる。その肩に椿姫の手が触れ、

 

『パパァン!!』

 

教室に響く破裂音……今の音は今日散々聴いた。乾いた銃声の様な音。

振り向いてはいけない、と誰かに言われた気がした。

 

終了と言っていたのに、なんで?

「なんで椿姫達を殺したのよ⁉︎」

ダルマに向かって振り返るのと、椿姫達の身体が倒れるのはほぼ同時だった。

『姫島朱乃、お前がボタンを押した。だから、姫島朱乃のみ、生きる。 生きる!』

 

 

生きる!!

 

 

 

頭が白くなった。このゲームは元から1人しか生き残れなかったのだ。ならば、なぜ私なの?リアスや椿姫ではなく、私が生き残った?

 

 

「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

私は声が潰れるまで啼くことしかできなかった。

 

 




3年生編、しゅーりょー。次は1年生ですかね。
だるまの試練は3年生と1年生だけ書こうと思ってます。2年生はとりあえずスルー。結果は次の試練で明らかになると思います。
主役である、我らがイッセー君の参戦は、もう少しあとになるかな?とりあえず出席者の試練を3つ書いたあとに、欠席者の方になると思います。
神さまの言うとおりの主役、高畑くんと明石くんも出ます。天谷くんも出るよー(だいぶ後だけど)

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからも、よろしくお願いします!

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