神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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久しぶりに番外編!ずっと放置気味でしたし、少しは進展させないといけませんしね。
この話を読む前に、できれば二章の0.5話を読んでください!


第壱ノ17.5話---命令

突然現れたコカビエル率いる謎の軍団、そして旧魔王勢力の攻撃は、確実に新魔王勢力の力を削ぎ、兵力を減らしていた。

 

「何だ、あの変な兵器は!?攻撃1発1発が確実に我らの数を減らしているぞ!」「しかもあの攻撃、フェニックスの涙では回復出来ない!まさに喰らえば最期、致命傷だ!」「くっ!俺は、無事に帰って……結婚するんだ!うおおおお!

 

パパパァン!!!と空気が弾ける音が、立つ者のいなくなった広場に響く。鉄の臭いが充満したその地で、日本の伝統工芸品の1つが目を光らせていた。

 

 

「サーゼクス様、大変です。堕天使及び旧勢力の攻撃により、こちらの軍の約38%が再起不能、16%が重傷を負い、さらに被害は一般市民にも及び始めてきていると……」

「一般市民にまで!?無差別攻撃だという事か!」

 

「……更にレーティングゲームの実力者、ビィディゼ・アバドン氏を初め多くの王が殉職し、その眷属にも大きな動揺が。中には敵方に寝返る者も……相手の戦力は未だ分からないままですが、情報によるとニホンの工芸品……『ダルマ』型自立兵器が計108体、各地で無差別に殺戮をしている模様です。現ゲーム王者、ディハウザー・ベリアル氏はつい最近行方不明になったばかりで、ある筋からの情報によると、『禍の団(カオス・ブリゲード)』側についたという話がありますが、調査を行う暇は今の私達にはありません。また、指名手配されていたはぐれ悪魔も--」

「皆まで言わなくてもいい、危ない戦地での情報収集、ご苦労だった。下がっていい」

「はっ!」

 

偵察に戦地の情報を集めさせたが、新魔王勢力の圧倒的な戦力的不利、そして相手の攻撃が市民にまで及んでいる事にサーゼクスはショックを受けた。これまでも何度か旧勢力の反乱は起きたが、ここまで危なくなることは無かったのだ。

「サーゼクス、ここは我々も出た方がいいのではないか?このままでは王都が完全に潰れるぞ」

「働きたくは無かったけど、この際仕方が無いよね〜。今の戦力では勝てないのなら、僕達が出るしか無いか」

「行くのなら早く行かないと!また赤龍帝ちゃんが来てくれる……なんて希望観測してる暇は無いわよ!サーゼクス!」

「そうだ、我々の使命は国民を守ることだ!民のいない王なんておままごとと同じだ!これより我らは戦場に向かう!アジュカは北!ファルビウムは東!セラフォルーは西!私は南方面だ。全員、全力を持って敵を排除しろ!」

こうして、4人の魔王は戦場に散った--

 

 

--そして一夜が明けた。現在の状況はお世辞にも良いとは言えない。魔王の介入により味方の戦意は大幅に上がったものの、敵方も最終目的、殺すべき相手が最前線に立ったことで、士気を上げてしまった。また、厄介なダルマ兵器の攻略が出来ていない。何体かは滅びの魔力で滅したものの、まだ大量に残っている。その攻撃は確かに強力で、喰らった悪魔達はみな死に至っている。

更に、つい先程セラフォルーのいる西側から膨大な魔力が感じられた。それは今でも続いている。強大な敵が現れたのか……あるいは、セラフォルーが暴走しているのか?

この非常に危険な状況で、彼は自分の妻であり眷属であるグレイフィアに、1つの指示を出した。

「グレイフィア……君は人間界に行って来てくれないか?」

 

その言葉に、グレイフィアは旧勢力を吹き飛ばしながら言う。

「……お嬢様達に救援を求めるのですか?確かに駒王町にいらっしゃる方々は皆強大な力の持ち主ではありますし、実戦経験も多く持っておられますが……」

「いや、違う」

その言葉にサーゼクスはかぶりを振る。そして、こう言った。

 

「君には、人間界に逃げてもらいたいのだ」

 

 

「え……」

グレイフィアは目を見開き、硬直した。その隙をついて攻撃してきた旧勢力の兵を滅ぼしながら、サーゼクスは続ける。

「君には、今生き残っている魔界の国民全員……戦う事の出来ない者達、そしてミリキャスを連れ、人間界に避難してくれ。避難場所は私やセラフォルー、アジュカ、ファルビウムの名前が付いた場所全てだ」

「しかし、まだ負けが決まった訳ではありません!」

 

サーゼクスは一瞬言葉を詰まらせながらも、グレイフィアに現実を突きつける。

「もう人々は被害を受けているんだ!この王都でも反乱を許し、国民達はすでに傷ついている!この冥界は安全では無くなっているんだ!まだ相手はかなりの兵力だ。あの殺戮兵器も目に見えるだけで10体以上はいる。それに比べ、こちらはかなりの兵力を削られた。しかも不眠不休だ。このままでは兵士達も持たないし、国民達も更に危なくなる。私や眷属達も、君がいたとしても、被害を全部抑える事は出来ないだろう。その時国民が誰1人傷つかない為に、君は彼らを避難させるんだ!させなければならない!」

 

 

「……分かりました。それが主の命令であるのならば、私はただそれに従うのみです」

魔王の強い言葉に、その女王は頷く事しか出来なかった。確かにそれが最善だった。そうしなければならなかった。人々が傷つかない為にも……

「……ありがとう、グレイフィア。さすが僕の最愛の妻だ」

そう言うとサーゼクスはグレイフィアを少し自分から離れさせる。上着を脱ぎ捨て、自分の体に魔力を高め始める。地震など起きないはずの冥界の地が大きく揺れ、滅びの魔力がサーゼクスから発生して紅く紅く体を染め上げていく。

 

「サーゼクス殿があの姿になるのは久しぶりだ……グレイフィア殿!ここは我らがいれば大丈夫です!あなたは早く行ってください!反勢力と堕天使達が全て片付いたら、すぐに連絡しますよ!」

「……分かりました、総司さん、皆さん、サーゼクス様!御武運を!」

 

こうしてグレイフィア・ルキフグスは戦線を離脱し、グレモリー邸に向かった。そして彼女の息子ミリキャス・グレモリーを連れ、国民に命令を出すため王都の中心の魔王城を目指す。最愛の夫の無事を願いながら-

 

 




公式設定だと、冥界は地球と同じくらいの広さで、海が無い分陸地がとても広いけど、悪魔堕天使両方とも数がとてつもなく減っているので、未開の地も多い……とのこと。
つまり悪魔や堕天使の住んでいる場所はかなり離れていて、かつどちらの領土も周りを未開の地が囲っており、今回はその未開の四方から悪魔が住んでいる領域に堕天使が攻め込んできた、という事です。
それにプラスして人の住む地でも旧魔王勢力が反乱を起こし、各地で戦いが起きている、ということです。最上級や上級の悪魔は自分の土地の人々を守らなければならないので、他の地には援軍を出せない。それは王都も同じです。
そうやって各地で戦力が分散しては、やがて各地でだんだんと兵士が潰れていき、人々が全滅する地も出てくるでしょう。そうならないように、サーゼクス様は国民を全て人間界に逃がし、さらに戦力を敵も味方も全部王都ルシファードに集め、そこで敵を一掃するという考えです。
果たしてサーゼクスの考えは正しいのか?グレイフィアと悪魔の市民達は人間界にたどり着けるのか?セラフォルーはどうなったのか?そして不意に襲ってきた堕天使達の真の目的は?

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

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