神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
--冥界……そこは悪魔達と堕天使達の住む世界。
その悪魔領は、4人の悪魔によって統治されていた。
「じゃあ、これでけって〜、ってことで良い訳ね☆」
現魔王の1人であるセラフォルー・レヴィアタン。魔王少女という渾名にふさわしい魔法少女のコスプレをしている彼女は(これでも)真面目な口調で告げた。
「ふぅ、きちんと決まって良かったね〜」
現魔王の1人であるファルビウム・アスモデウス。仕事のほとんどを眷属に丸投げしている彼だが、今日は珍しく働いたようだ。円卓の上にだらしなく上半身を預け、指を鳴らして毛布を召喚し羽織った。
「なんとも面白いものができたじゃないか、これならまず問題ないだろう」
現魔王の1人であるアジュカ・ベルゼブブもニヤリと口を歪める。すべての事象を方程式で捉えることができる彼が見ても、この『何か』は面白いものであるらしい。
「それではこれで決定だ。アジュカ、セラフォルー、ファルビウム。このことは絶対に他言無用だぞ」
現魔王の中でもルシファーの名を冠する男、サーゼクス・ルシファー。グレモリー家の魔力と、バアル家の滅びの力を持った魔王筆頭は告げる。
「この……『乳龍帝おっぱいドラゴン』の新・オープニング曲は!アザゼルにもらった歌詞の情報も外部に漏れていないかは心配だが……」
乳龍帝おっぱいドラゴンとは!赤龍帝、兵藤一誠をモデルにして造られた特撮ヒーロー番組で以下略!
と、そこで真面目な顔をしているサーゼクスに声がかかる。
「バカヤロー、こう言うのはすこーしだけ情報を流しとくのが良いんだよ。目敏い情強どもが話題にしたり考察したりして中途半端なまま広げてくれると、完成品を世に出した時にリアクションがデカいんだ」
対岸に座るアザゼルの言葉にサーゼクスもなるほど、と思う。
その時部屋がノックされ、使用人が紅茶を運んできた。
「お仕事はいかがです、サーゼクス?」「もう粗方終わったところだ。皆休憩中だよ」「それは良いタイミングでした」
使用人--グレイフィアが微笑む。彼女は座っている者達に紅茶を配ると、自らも円卓の空いた席に座す。
「それで、今回はどんな曲を創ったのサーゼクス?」
「ああ、前回は子供が乗りやすいように童謡みたいな賑やかな曲だったんだけど、今回はヒーローもののように熱い感じにしたんだよ」
「
「私としては、『マジカル☆れゔぃあたん』のライバルがこれ以上進化していくのはちょっと複雑だけど……面白ければなんでもOKよね☆」
悪魔も堕天使も、束の間の休息を存分に噛み締めていたのだった--
〜〜〜〜〜〜〜
「…ふぅ」
ふぅ……。
俺、兵藤一誠は今日、学園をサボって親友の
それに、こいつらとも全然遊べて無いしな……
おっと、しみったれちまった。らしくない。賢者モードにでも入ったか?
時計を確認するともう朝の10時半、こっちは昨日から[自主規制]ばかりしてきたから、腹が減った。
「おい松田、
「そうだな、そろそろ飯が欲しいところだ」
俺たちは軽くシャワーを浴び、服を着替えて外に出た。
馬鹿なことを言い合いながら歩いていると、視界に駒王学園が映る。
「ハッ、もうすぐ学園だ!気をつけて行動するんだ!先公に見つかったら終わりだぞ!」
「俺はロスヴァイセちゃんになら見つかってもいいなぁ」
「俺も俺も」
「おいおい、どうせ捕まったら生徒指導室で野郎にみっちりと……げ」
悪魔になって良くなった目で門の方を見ると、本当にロスヴァイセさんが立っていた。今日もスーツ姿がビシッと決まっていて美しい!10点!
そのまま眺めていると、彼女がこちらを向いた。目と目が合う……は!
「マズい見つかった!松田、元浜!逃げるぞ!!」「マジで!?」「おい2人とも……って速!?」
俺と松田は一目散に駆け出す。元陸上部の松田と悪魔の俺。両方とも足は速い。
走りながら横目で元いた場所を見ると、元浜がロスヴァイセさんに捕まっていた。くそっ、俺達はお前の分まで逃げ切っ……っ!?
何かに躓き、俺は体勢を崩す。転びそうになったが、なんとか耐えた。一方松田は思いっきり転んでいる。しかし、なぜか地面に敷いてある運動マットの上で転んだせいか、ダメージはないようだ。
「だ、大丈夫ですか?松田君?」
恐らくマットを敷いてくれていたであろう人物を見て、松田は手を振る。
「大丈夫大丈夫、これくらい屁でもねーよ。
……気がつくと、俺達の後ろに銀髪の
学園の敷地内に入ると、ちょうど2時間目が終わったあたりなのか、生徒達が廊下や外で騒いでいた。
「またあのエロトリオが捕まってるわ」「ロスヴァイセちゃんがまた捕まえたみたいね」「
好奇の視線にも慣れているので、俺はそんなに気にしない。そのまま廊下を引きずられていると、生徒会2年御一行と出くわす。
「おう兵藤。また捕まったのか?」「孔明の罠に掛かっちゃってな」
そう言うと生徒会の唯一の男子である
「良かったな紫村、褒められてるぞ」「あ、ありがとうございます。イッセー君」「褒めてねーよ」
その言葉にシュン、となる紫村。こんなやり取りも何度繰り返したことかわからない。
無断欠席した俺達を捕まえるのは紫村とロスヴァイセさんの仕事のようだ。いつも俺達の考えを読むように紫村は逃げ道に罠を仕掛けている。紫村になぜ俺達の考えが読めるのか聞いたところ、友達だからだと返ってきて照れたのも記憶に新しい。
「イッセー?今日は学校はお休みじゃなかったの?」「あらあら、連行されたのですか?無断欠席者にはお仕置きですわよ?」
「駒王学園の皆さん、世界の憐れな子供達に愛の手を!……あ、イッセー君!」「イッセーさん!宜しければ募金をお願いします!」「イッセー、おはよう。良かったら募金してくれ」
「イッセー先輩、また連行されてる……サイテーです」「どうして無断で欠席なさるのかしら……何か人に言えない事でもやってるんですの?」「イッセー先輩達はそこら辺は堂々としてるから、多分何かあったんじゃないかなぁ……」
遠目で観察される俺達。何かさっきから知り合いばっかり視界に入るんだけど!
そう思っていると、その知り合いの1人がこっちに向かってきた。
「やぁ、イッセー君。また捕まってるのかい?」
「よう、
「ゴメンね、イッセー君。でもこれも仕事だから」
「紫村が謝る事じゃねーよ。もともと俺達が悪いんだし」
そう言って笑いかけると、紫村も申し訳なさそうに笑った。
「そうです。元々あなた達が悪いんですよ。私の仕事を増やして……」
後ろから感じる怒りのオーラに冷や汗を流す俺達5人。
「じゃ、じゃあ僕はもう行くね」「あ、木場君!僕も行きます!」
「あ、おい紫村!木場!待って!」
すがる声も虚しく、2人は逃げるように行ってしまった。残った俺達は再び引きずられていく。
こんな平凡な日常を、俺は久しぶりだと思った。悪魔になって色んな奴らと戦って、それでも日常生活は常にあった。だけど何だろう。今日は何だか、とても懐かしく思える。
何日も何ヶ月も張り巡らせていた緊張が解けたような、そんな心地良さを感じた。
「……」
深呼吸して空を見上げる。流れ星が一筋、薄っすらと見えた。
俺は心で唱える。『こんな日常が、できる限り長く続きますように』と--
〜FIN〜
これにて、『神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜』、完結です!開始から1年と3/4ヶ月ほどが過ぎました。最初からここまで読んでいただいた皆さんに感謝します!
原作ありきの物語に他の物語のキャラを絡ませる、いわゆるクロスオーバーの作品を1作目として書かせていただきましたが、やはりどこか原作とキャラが違ったりと難しいところが多く、動かすのに苦労しました。また、今年に入ってからは投稿期間が安定せず、定期的に土日祝日投稿を続けていれば2、3月には終わっていたはずの物がここまで延びてしまいました。それらの反省を、別のssに活かしたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
ここまで読んでくださった方々、感想・評価をくださった方々に最大限の感謝を!