神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
からくりの『うらしまたろう』はこっちに近づいてくる。亀の隣に立ち、そのまま背中に登っていく。
ゴゴゴ、と床が急に揺れだした!地震か!?いやでも、ここは病院の上……
『え、何?竜宮城?連れてってくれんの〜?行く行くー』
亀がうらしまたろうに何かを話している。うらしまたろうはその声に耳を傾け、時折頷く。1分ほど、謎の時間が場を支配するが、ようやっと亀の声が止むと、うらしまたろうは首をこっちに向けた。
『お前らも、行っとく?』
ドゴァ!と地面から急に建物……立派な平安時代の御殿の様な建物が出現した。
「な、でか!」「おお!?すげえ!」
他の人達も声を上げずにはいられない様だ。こんな高級そうな建物が一瞬で現れたんだから、当たり前か。とはいえ、油断はできない。
高級そう、豪華、ということは今まで以上に最新鋭。もしかしたらこちらも予想だにできない凶器や理不尽が待ち受けているかも……
うらしまたろうと亀に連れられて、恐る恐る竜宮城の中に脚を踏み入れる。そこには--
『ようこそ、竜宮城へ』
……何だここは?宴会場?
奥の襖には『おつかれ』の4文字。キレイに並べられた座布団と美味しそうな料理。そして、女性……使用人達のからくり達がお出迎えをしてきた。
『ようこそお越しやす、あらええ男さん』『何飲みます〜?やっぱり最初は生?』
こちらに馴れ馴れしくも話しかけてくる。手を取られ、それぞれの名前が入った席に腰を下ろす。俺は、会長と由良の間だ。
『はい、注も〜〜〜〜く。おつかれちゃんで〜〜〜〜〜〜す』
うらしまたろうは亀に乗ったまま、前にある(無駄に光を当ててる)ステージで話し始めた。
『皆、ここまでよく生き残った。太郎、感動した!!!
だからあとは楽しんじゃって〜〜〜〜、食べ放題飲み放題パーリナ〜〜〜〜〜〜イ!!!』
ワーワーと使用人からくり達も盛り上がり始めた。
こ、これは……?もしかして、終わり…?
向かいを見ると、搭城と桐生は箸を摘み、早くもメシをがっつき出した!木場が慌てて止めようとするが…
「こ、小猫ちゃん。桐生さんも、すぐに席に着いて食べ始めなくても」
「だってさ、もう終わりみたいな雰囲気じゃない?おつかれ、とかよく頑張った!とかさ〜。この料理も別に、見た感じ普通の……いや、高級そうな食べ物だし。私こういうの生まれてこのかた食べた事無いし、食べてみたかったんだよねー」
「……もぐもぐ。毒がないのは確認済みでふよ。おいひい……もぐもぐ」
気の抜けた雰囲気に、他の建物の人達も、「……終わったのか?」「そうだ、生き残ったんだ!」と盛り上がり始めた。
『おお、盛り上がってきてるね〜。じゃあ、さらに盛り上げる為に、やっちゃいますか?ゲームでもやっちゃいますかあ〜〜〜?』
その言葉に場の空気が止まった。次の試練が始まるのか!?こんな行き当たりばったりな感じで!
『じゃあ、お前とお前。野球拳な』
選ばれたのは、他の建物の女の子1人と、男の子1人。
選ばれた彼らは、半ば涙目になりながら、野球拳を始めた。勝ちと負けが交互に続き、両者残り服1枚となった。次で勝負が決まる!
『あ、はいはいはいはい。
や〜きゅ〜うーーーすーーーるなら〜〜〜〜♪
こーゆーぐーあいーにしーやしゃーんせ〜〜〜〜〜〜♪
アウト!!セーフ!!
よーーーよいの……よい!!!』
出した手は、男がグー、女の子がパー。
「あ、う、うそだろ……俺、俺……」
『おい、早く脱げ、ルールだぞ?』
そううらしまたろうに急かされて、男子は震えながらパンツを脱ぐ。
足の先、つま先から数秒止まった下着は、重力に従ってスッと落ちていく。
思わず俺は目を逸らす。その先にいた会長は、品定めをするようにこのゲームを見ている。
と、
『ハダカだハダカー』『カッコわる〜〜〜〜〜』『ははははー』
使用人達が一斉に笑い出す。その声はあまりにも陽気で、これまでとは雰囲気が違いすぎた。
そして、裸一貫の男子は……死なない。
あの男子は負けたのに、死なないのか?
と、動揺して声を失っている俺達を見て、一緒に笑っていたうらしまたろうがヤジを飛ばしてくる。
『あれ〜〜?面白くなかった?何だよ〜〜?せっかく竜宮城来たのにい〜〜。ここで楽しまないのは、罪ってもんだぜぇ〜〜〜!』
「罪?つまり、ここでは楽しむのがルール、という事?」
会長は疑問を抑えられないようだ。ここまできて、楽しむのが試練なんて……訳わかんねえ。
『じゃあ違う遊びにしよっか?とりあえず王様ゲームやって……そのあとモノマネ大会ね〜〜〜〜』
その言葉に会長は眼を閉じて、考え始める。この試練の真のルールは何なのかを……
それを見て俺は駒王学園のみんなに言う。
「みんな、まだ気を緩めちゃダメだ。本当にただ遊ぶって事はないだろ!?絶対何かある……」
「そうだな、気を引き締めてかからねば……!」
「そうだね、まだ戦いは終わっていないんだ!」
「(もぐもぐ)」
『はい、じゃあ割り箸引いてくださ〜〜〜〜い』
こうして新たな『うらしまたろう』の試練がスタートした……のか?
さぁ、うらしまたろうの新たな試練!楽しむという内容に日頃仕事ばかりの悪魔達はどう対処するのか!続きは次回、今度はギリギリにならないよう、できるだけ頑張りますね。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!