神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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一瞬。そう、それこそ瞬きを1つしただけで、勝負は決着した。

アシッド・マナの左腕には、1本の光の槍が突き刺さっていた。

そして、アザゼル先生の心臓部を巨大な鉛筆が貫いていた。



第50話ーーー反逆

「……っ!?」

木場はアザゼルを高速で回収し、教室の外に出る。

(神の力を使えば……!)

思った通り、木場が念じるとアザゼルの胸の傷はすぐに塞がった。

「よう、木場。助っ人に来たぜ」

何事もなかったかのように言うアザゼルに、木場は呆れて声も出せない。その表情を見て笑いながら、アザゼルは木場に告げる。

 

「木場、今のお前は神の力を使えるんだろ?なら、神が創った力も使えるはずだよなぁ」

ハッ、とする木場。その隙に木場の腕の中から脱出したアザゼルは、学校の外に出てきたマナに再び突撃する。

「なに、ヤケになって自爆特攻って感じー?」

 

マナが右手を横薙ぎに振るうと、その手の中に巨大な三角定規が現れた。マナはその定規を振りかぶり、アザゼルのいる地点の上空へ投げる。

 

それは回転しながら明後日の方向に飛んで行く……かと思いきや、アザゼルの少し後ろに行ったところで急激に回転し、アザゼルに襲いかかる。

 

しかしアザゼルは、それに目も止めない!彼は一直線にマナに向かって行く。

そして、三角定規がぶつかる寸前!!

 

「ここでスピードアップ!これで避けられ「あ、この定規追尾性だから」

 

スパッ、と言う音が虚しく響く。

 

手元に戻った三角定規を消しながら、マナは空から降ってくるものをキャッチした。

「聖書に残る堕天使……そんな仰々しい名前なんて、捨てちゃった方がいいと思うけどね」

司令塔を無くした身体はその後も少し飛んでいたが、マナの立ち位置の直前で失速し、前につんのめるように倒れていく。マナはその身体を受け止めると、持っていた頭をその背中に置いた。

「つまんねー、ちょっとは期待してたんだけど?まぁ、神が弱っちいのにその下位互換が強い訳は無いよね」

 

「そいつは悪かったな」

 

マナの目の前で、首が喋る。さすがのマナも、目を見開いた。

 

「すまねぇな、モノホン(・・・・)が来れなくて。まぁ、神より弱っちいやつってのは皆似たり寄ったりだから、俺でもモノホン(・・・・)でも変わんねぇだろ。

 

じゃあな!アリヴェデ!!」

 

その言葉を聞いた直後、アザゼルの身体が光る。マナは離れようとするが一足早く、

 

 

 

ドグワァァァァァァン!!と地を揺るがすような大爆発が起きた。

 

「な、何がどうなってんだよ!?木場!?あの人お前の知り合いみたいだけど、一体なんなんだ!?何が起こってるんだ!?お前が違う世界の人間とか、堕天使とか、訳わかんねぇよ!!」

 

爆発よりも少し早く、木場は残りの4人を脇に抱えて学校の屋上まで避難していた。そのうちの1人、明石が叫ぶ。対して木場は応えた。

 

「アザゼル先生は今、この世界を守るために戦っていた。僕達も、戦わなければならない。アシッド・マナと」

 

「え、でももう試練は終わったんじゃ……どうして今、マナと戦う必要があるんです?マナが提示した通りに、僕達5人で世界を見守っていけばいいじゃないですか」

戦うのが嫌いな紫村が言う。木場はその言葉を聞いて首を振った。

「マナは面白そうだからとこのデスゲームを行うような人間……いや、神だ。気分によっては僕達を皆殺しにして、再びデスゲームを始めるかもしれない。そうでなくても、マナの所為で僕達や、僕達が守る世界も潰されてしまう。

 

だから、今ここで僕達はマナを倒すべきなんだ!幸い、今は神の力を持つ者が5人もいる!5人の力を合わせれば、マナを倒せるかもしれない!!」

 

「へー、ふんふん。それでそれで」

 

気がつくと木場の隣には、アシッド・マナが立っていた。

 

そのコンマ1秒後、木場は真横に吹き飛ばされて屋上にあるアンテナにぶつけられていた。

 

顔を両手で叩いて揺れる意識をハッキリさせる木場。彼の視界に映るマナは、少し前までの余裕ある表情ではなくなっていた。

アザゼルの自爆を近くでモロに喰らったためか、髪は崩れて服は所々破れている。その目は血走っており、額に血管を浮かべていた!

 

「アンタら、そんなに死にたいんだ。なら、ここで殺してあげる!!」

 

マナの手から3本の光の槍が出現し、木場を襲う!

 

 

木場は対して左腕を前に出して、叫ぶ!

 

 

「『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』!!ドラゴンショット!!」

『BBBBBorst!!』

 

突如木場の手に装着された紅い籠手から声が響き、マナの光の槍が籠手から出たビームに掻き消された!

 

 

「……イッセー君も神の力を使って、他のオカルト研究部の力を使っていた。ならば、今の僕にだってその力は使えるんだ!!」

 

「舐めやがって……!?」

 

怒りで顔を歪ませるマナ。その表情が驚愕に変わり、マナは上空に大きく飛ぶ。

 

 

そのマナが元いた場所を、2つのモノが通過する。

 

1つは巨大な刃をつけた腕、1つは鋭利な日本刀。

 

それらを持った2人の男は、少し残念そうに告げる。

 

「不意を突いたつもりでしたが……やはり神、そこまで甘くはないですか」

「ああ、思わぬEX(エクストラ)ラウンドだ。これは明石のキス、あと2セット追加だな」

 

「あ、アンタ達まで!私が神の力を与えてやったのを忘れた訳ぇ!?」

 

マナがそちらに無数の巨大鉛筆を投げつける。しかし、

 

 

鉛筆と2人の間に巨大な壁が出現し、2人を鉛筆から守る!!

 

『硬度10、ダイヤモンドウォールだ!!』

 

守ったのは、巨大な宝石となった紫村。それを見てマナは歯ぎしりする。

 

その頭上に、影ができる。マナは上を向いた。

 

そこにあったのは、超巨大なサッカーボール。それは、落石……いや、隕石の衝突のようにゆっくりとマナに向かって落ちてきていた!!

 

マナはコンパスを投げてボールを割った。その延長線上にいたのは、明石靖人!

 

「お前ら……舐めやがって……私のおもちゃの癖に、私をコケにしやがってぇえええええ!!!!!」

 

マナの髪が逆立つ。それを見ながら残った5人は心の中で思う。

 

(((((ここでマナを倒し、このデスゲームを終わらせる)))))

 

 

 

 

 

 

 

 




「……ふぅ、やっぱり女ってのはロマンがねぇよなぁ。超高性能アザゼル先生ラジコンも、1発で自爆して空気のチリの仲間入りだ。あーあ、もったいね」
『地球』の某所。アザゼルはコントローラーを放り投げながら、横目で隣の男を眺める。


「……あと、どのくらいだ?1時間くらいか?OK。


その間、持ちこたえろよ、木場!!」


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