神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
「よし、行け行け行け行け!」
しょんべん小僧の試練は、もう佳境に差し掛かっている。現在残っているのはこちら側が3チーム。そして、相手側が1チーム。今、外では相手の最後のチームと、こちらのチームの1つが綱引きをしている。こちらのチームが優勢だ。
「よし、そのまま引っ張れ!」「頑張れー!」
届いていないだろうが、それでも俺達は彼らに声援を送る。その言葉に応えたのかは分からないが、ついに彼らは相手のしょんべん小僧をラインまで持って行った!
綱引きを見届けたところで窓から離れる。人が死ぬ絵面はどうにもなれない。いや、慣れたいものでもないが。
「これで終わりか……?」
皆が生き残ったであろうことに安堵する。これからどうなるか、なんて会議が始まるが、皆の表情は前より明るい。
ただ、その中で会長だけ、どこか暗い顔だ。
「会長……?大丈夫ですか?腹でも痛めました?」
「あ……いいえ、サジ。なんでもありません。しかし……こちらの陣営は3チーム全てが生き残りました。この後は三つ巴か、はたまた別の試練が始まるのか…全滅せしめる、という条件はクリアした以上これでこの試練は終わりでしょうが……」
不安げな表情を崩さない会長。その顔を見るのが嫌で、俺はつい声を上げる。
「大丈夫です!どんなことがあろうと、会長やみんなは俺が守ります!」
そう言うと、会長は表情を少し和らげた。
「ありがとう、サジ。貴方には助けられてばかりですね」
「いえいえ、
しばらく会議をしていると、不意に再び建物のドアが開いた。サッ、と外を確認してみるが、しょんべん小僧の姿はない。綱引きはやはり終わったようだ。
「これは……外に出ろ、ということなのでしょうか?」
姫島先輩が訝しげに言う。警戒心を捨ててはいけないけれど、恐らくそういうことだろうな。
外に出ると、他のチームの人達もいた。合計で19人。1つの部屋だけ5人のチームがあった。どうしたのか尋ねると、1人の男子が女子を性的に襲おうとし、周りに止められたところ逆上してその女子を殺し、自殺したらしい。
閉鎖空間に長時間いると、やはり精神をすり減らせる…俺達の部屋ではなかったものの、その恐怖に足元が冷たくなる思いだった。
さあ、これからどうなる?と、周囲に気を配る。ねこの時みたいな初見殺しがないとも限らねぇ……
と、不意に綱引きのラインの中央が盛り上がる。
それは、砂の中からスクリュー回転をしながら凄い勢いで飛び上がり、そしてずんっ!と重い音を立てて着地した。
何だあれは……亀?
「次は『う』のはずなんだけど……亀?」
他のチームの女の子がそう言っているのを聞いて、会長はその人に声をかける。
「次が『う』というのはどういう事ですか?」
「?あんた気付いて無いのかい?頭良さそうなのに……」
くせっ毛のある髪を腰あたりまで伸ばした女の子は、少し不思議そうに言う。会長が気付かないことに気付いているのか?一体何に?
「今までやって来た試練、これ全部しりとりになってるんだよ」
しりとり?しりとりって子供の頃よくやってたあの、「ん」が最後に着いたら負けのあのゲーム?
「『だるま』、『まねきねこ』、『こけし』、『しょんべん小僧』……なるほど、確かにその通りですね。それで、次は『う』だと……」
「ああ、そのはずなんだけど……亀ってどういうことだろうね?」
「うみがめ……とかじゃないか?」
俺がそう言うと女の子はかぶりを振った。
「このしりとりには恐らくだけどもう1つ決まりがあるらしくてね、しりとりに出てきてるのは全部造りもの……生きているものじゃないんだよ」
なるほど、確かに言われてみればその通り、全部伝統工芸品やら世界遺産やらで、生きているものは今まで無かったな……
「でもたまたまじゃないか?今まで俺達がやって来た試練だってたった4つだけだし。現に今、亀がここに……」
『YEAH〜!』『HAHAー!』
俺の言葉を遮って、数体のしょんべん小僧がそれぞれの建物の上から飛んできた!?
しょんべん小僧達はさっき綱引きで負けたチームのようにうみがめを囲む。
『Turtle!!』『Turtle〜〜!!』
発音が無駄に良いのがムカつくが、Turtleとは亀の英語だ。何だ、今から亀関係の事が始まるのか?
『ファッキンタートー!!』『HAHAHAHAー!』『YESYESYES!』『NAーNA♪NAーNA♪NAーNA♪』
しょんべん小僧達は悪口を言いながら亀を殴ったり蹴ったりし始めた。あれ、なんかこんな話あったような--
『コラあああ!!!』
妙に機械的な強い声が辺りに響く。俺達がそちらを向くと、そこに居たのは……
『やーめーろーよーだーめーだーよー弱いものいじめは〜〜』
釣り竿を持ちマゲ風の髪型をした漁師服の男!……のカラクリ!
もしかして、次は『うらしまたろう』か!?
今回タイトルをしりとりにしたのはわざとです。出席者と欠席者、それぞれどのタイミングでしりとりのことに気付いたのか、というのはやっぱり大事かなと思ったのでどちらにもこのタイトルをつけた所存です。
今回でしょんべん小僧の試練も終わりです。ほとんどなにもやってないですね、彼ら。次回からはうらしまたろうの試練!数々の恐怖と苦痛が彼らを押し寄せる!
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!