神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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第39話ーーー生き方

紫村は、先程よりもいっそう震えを大きくした。

(僕のせいで……僕がハートの10を引けなかったせいで、誰かが死ぬ)

そう思うと、吐き気が出てきた。呼吸が荒くなってくる。

「紫村、落ち着け。俺にカードを回せ」

隣にいる丑三が紫村に指示を出すと、紫村は青い顔でそれに応じた。オスメスはそれを見て、チッと舌打ちをする。

 

「……明石。これ以外ならどれでもいい。引け」

紫村と丑三の態度で明石は感じた。ハートの10は巡ってこなかったのだ。

明石が引いたのはスペードのJ。これでは、『時限爆弾』カードを捨てることはできない。

「ハンナ……どれでもいい。引いてくれ」「ん」

ハンナは1枚、今丑三から受け取ったスペードのJを取る。それを見て、ハンナの表情が曇った。

「……」

下を向くハンナ。彼女に対し、声をかける者がいた。

 

「おい!『時限爆弾』くれよ!」

隣の男、匙元士郎。彼はハンナに向かって言う。

「俺は『時限爆弾』を使って、かみまろとどっちが生き残るか勝負する!かみまろが『時限爆弾』を引けば俺の勝ち、引かなければ俺が死ぬだけのルールだ!俺はそれで死んでも悔いはねぇ!だから!『時限爆弾』をこっちに渡すんだ!」

その言葉は荒々しかったが、匙の眼はハンナを写していた。今の彼は、かみまろを全く見ていない。

「……わかったわ、はい」

ハンナは匙に対し、1枚のカードを強調させる。匙は血走った目でそれを引く。

 

そのカードは、クローバーのK。『時限爆弾』ではなかった。

 

「……あ?な、なんで?」

匙の問いに、ハンナはクスリと笑う。

「アンタは良くても、それで死んじゃったら私が責任感じちゃうからね。

……お気遣い、ありがとう。最後に私を助けてくれようとしてくれたこと、感謝するわ。だから……だからこそ、このカードは、目標があるあなたじゃなくて、私が持っておくべきなんだと思うの」

ハンナはゆっくりと立ち上がる。匙は彼女に背中を向けた。その肩が震えているのを、明石は見た。

「命を賭けての復讐でもいいけど、賭け事っていうのは成功しないものよ。やるなら確実に倒せる機会を狙うことね。まぁ、でも。やり方……生き方ってのは人それぞれか。

皆、生きたいように生きればいいのよね」

ハンナはニッコリと笑う。その目尻に涙が浮かんだ。

 

「そーそー、皆が好き勝手生きればいいのさ。俺自身もそんな感じだし」

言いながら、かみまろが匙から1枚引いた。

 

ーーここで、天馬の死から30ターンが経過した。

 

神罰(ジャッジメント)!』

地蔵の言葉とともに、血塊に変わるハンナ。それを見て紫村は、謝ることしかできなかった。匙はその血を背に受けながら、しばらく動かなかった。

 

『ハンナ・フェリックス、時限爆弾により死亡。

これにより、カード再配分だぁ』

地蔵がそう言うとともに、ハンナの手札が公開される。

スペードのJ、そしてダイヤの10である『時限爆弾』カードが、ハンナの手札がであったらしい。そのうち1枚が匙へ、1枚がかみまろへと分配された。

 

「……さて、高畑瞬。お前にはこいつがオススメだぜ」

かみまろが高畑に向かって、1枚のカードを強調させる。

「……面白い、乗ってやるよ」

対し高畑は、そのカードを引く!手にしたのはハートの9。特に神罰もない。高畑はチッ、と舌打ちしながら、秋元の前にカードを持っていく。秋元は高畑からクローバーの8を引いた。

 

そして、秋元から木場、木場から天谷、天谷からリリィ、リリィからオスメス、とスムーズに進む。その間、紫村影丸は泣いていた。

 

「紫村、お前のターンだ。早く引け」

丑三に言われ、しゃっくりをしながら、紫村はオスメスの手札から1枚を手に取る。

彼は目を大きく見開くと、10数秒もの間、固まった。彼は震える手で自分の手札を押さえると。

 

 

スペードとダイヤのQを捨てた。

 

 

「え?」

紫村のカード、残り1枚。

「なんで……僕は……ハンナさんを救えなかったのに……僕が……また自分ばっかり……」

丑三は残った1枚のカードを、混乱している紫村から取り、スペードのK、デコピンの神罰を紫村に与えた。

指に全力を込め、紫村に思いっきりデコピンをする丑三。そのおかげで、紫村も混乱から正気へと戻ったようだ。その紫村に、丑三は諭すように言う。

 

「紫村、お前には義務がある。ハンナの命の分以上の人を救う義務が。行ってこい。お前なら、皆を救える」

「……」

紫村は無言で涙を拭う。

 

紫村影丸(しむら かげまる)!!

神罰(ジャッジメント)ババ抜き突破(クリア)!!』

 

「丑三君、そして皆さん。僕はずっと、待ってますから。

 

待ってますからぁ!!」

 

紫村影丸は、その言葉を最後に、天へと昇っていったーー

 

 

 


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