神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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第37話ーーー時限爆弾

「な……何が起こった!?」「何もしてないのに!?」

皆が一斉に動揺するなかで、爆発した天馬のカードが公開された。

持っていたのはクローバーの6、ハートのQの『キス』カード、そして、

(!?……時限爆弾……!?)

ダイヤの10のカード、その真ん中には、『時限爆弾、あと00ターンで死』という文字が書かれていた。

『時限爆弾カードが30に戻るぞぇ』

天馬の席の地蔵の言葉を聞いて、秋元が考察を口にする。

「……カウントダウンがターン毎に1つずつ減っていく……そして、0になったら死ぬばちゅだったの!?」

「それなら、さっさと隣に渡していけば良かったのにな」

天谷の何気ない1言が、明石の心に突き刺さる。明石は、天馬の気持ちを理解した。

(天馬ちゃんは……『0』で死ぬ事をわかってて俺に回さなかったんだ!だからあんな言葉を……俺に……なのに……俺は、気づいてあげられなかった……!!)

思わず溢れる涙を拭うこともできず、明石はただ天馬の死を悔いた。

 

『手札再配分だぁ』

天馬が死んだことで、天馬のカードが次の3人に1枚ずつ配られる。

「お、このカードか!ハンナちゃんのためにも取っときてぇけど、両隣はヤローだしな、捨てるか」

かみまろが捨てたのは、はー「ああ!!!俺の『キス』カード!!!」……

かみまろが捨てたのはハートとクローバーのQ。これでかみまろの手札は残り3枚となった。

(……かみまろがカードを捨てたってことは、匙かハンナのどっちかが『時限爆弾』カードを持ってる!?)

明石は狼狽える。このままでは、再び『時限爆弾』で誰かが死んでしまう!!と焦る気持ちをどうにか落ち着け、ババ抜きに意識を戻す。

『時限爆弾』で中断されていたババ抜きが再び再開される。次は、紫村がオスメスから引くターンだ。

「えっとー……どれが良いんでしょう……これだ!」

紫村は1枚引くが、何も起きない。紫村は少し残念そうにしながら、丑三の前にカードを持っていく。丑三は右端を取り、手札からハートとスペードの3を捨てた。次は丑三から明石が引くターンだが……

「……もうだめだ……終わりだ……俺は明石とキスできない……せっかくのビッグチャンスが……」

明石と対峙する丑三の顔が、この世の終わりとばかりに絶望に染まっていた。明石は励ましたり慰めたり喝を入れたりするが、もはや丑三には届かない。丑三がマズイ、もう生きる気力をなくしている!と思った明石は、最終手段を取った!

「丑三!!」

 

「……なんでしょう(ワッツ)?」

 

「もしお前が生き残ったら、キスしてやる!だから生き残れ!」

 

 

 

 

 

「……え?マジ!?ホントのホント!?」

「あぁ、約束だ!だから……生きろ!生き残れ!!」

了解(オールオッケー)!!」

顔に生気が戻った丑三。というか戻りすぎて怖い、と明石は貞操の危機に震える一方で、丑三が元に戻ったことに安堵する。周りから、『あの2人、どんな関係?』『やばくね?』などと声が聞こえてくるが、気にしたら負けだと無心で丑三からカードを引く。

取ったのはクローバーのA。前に丑三に渡したカードだ。

 

そして次、明石がハンナからカードを引かせるターン。

「この1枚以外なら何でもいいぞ!」

明石の言葉にハンナは頷き、1枚を手に取る。そして目を一瞬大きく開くと、2枚のカードを捨てた。

 

「……ふぅ、これでやっと喋れるわ」

捨てたのはハートの2、そして『声出したら死』の文字が刻まれたダイヤの2のカードだった。

「サジ……って言ったかしら?これは駄目だから他で好きなのどーぞ」

ハンナは1枚のカードを外して、残り2枚を突き出す。匙はその内の1枚を手に取り……

「!!?」

椅子からマジックハンドが飛び出した。

 

 

 

〜〜〜30秒経過〜〜〜

 

はぁ、はぁ、と荒い息を吐く匙から、かみまろは遠慮せず1枚カードを抜き取る。特に何もなかったようで、ヘラヘラと笑いながらかみまろは高畑にカードを提示した。

「ほら、どれでも好きなのを取れよ。もしかしたら運が良ければ、俺を殺せるかもよ?」

その言葉を聞いて、高畑はかみまろを睨む。現在高畑は、ハートのJの『神罰シンクロ』カードの他に、もう1つ神罰カードを持っている。

絵柄はスペードの4、その効果は、『引かれたら死』。

高畑は、かみまろもそのカードを持っていないか?と考えていた。

(下手したら『引いたら死』を引いてアウト、うまくいけば『引かれたら死』でかみまろが倒せて、しかも俺の『引かれたら死』も捨てられる……)

逆周りになった事でしゃくれが解けた高畑は、真面目な顔で考える。

(1枚は俺から取った『夢を語る』、1枚は匙から取った何の効果もないカード。そしてもう1枚は……1番最初に取られたスペードの5、もしくは、かみまろが最初から持ってるカード……どれだ……どれを引けば……)

「早くしろよー、高畑瞬。日が昇っちまうぜ」

欠伸をしながら言うかみまろに「黙ってろ」と告げるが、これ以上考えても好転しないと思い、高畑はカードを1枚取る。

手にしたのはクローバーのQ。かみまろがこのカードを最初から持っていたなら、先ほどキスカードが来る前にQを2枚捨てていたはず。これは匙から回ってきたカードだな、と高畑は推測した。

 

続いて、高畑から秋元が引くターン。高畑は持っている『引かれたら死』以外のカードを秋元に差し出す。秋元はその中から、クローバーの8を手に取った。

秋元から木場のターン、秋元は1枚のカードを木場に差し出した。木場は(『しゃくれ』が戻って来るのかな?)と思いながらそのカードを受け取る。

そのカードは、ハートの10だった。

 

「……しょのカードは、今ゆいいちゅ『時限爆弾』を潰せるカード。これを回していきゃば、確実に『時限爆弾』カードは消えりゅ。最初に他の10は瞬が捨てちゃったから、他に10のきゃーどはないの。あなたに、託すわ」

秋元は告げる。その言葉を受け取り、木場は次の天谷にハートの10のカードを提示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が。

 

「よっと」

天谷は、わざわざ他のカードに手を伸ばすと、その中から1枚を取る!これには木場も驚愕と、そして怒りが露わになる!

 

「天谷君!何で君はこのカードを取らない!?このカードを回していかなければ、『時限爆弾』で誰かが死んでしまうんだよ!?」

対して天谷は、つまらないものを見るかのように白けた目でこちらを見る。

「だーかーらー、俺は楽しみたいんだって。そんなわかりきったカードよりも、何も情報のないやつの方がおもしれぇじゃん?それに……

 

何人か死んだ方が、テンポ良く進むってもんだろ?」

「きさ「天谷!!」

 

木場が斬りかかろうと剣を創造するその1歩前、高畑瞬の喝が響き渡った。

天谷は肩をすくめると、「はいはい、ごめんなさーい」とふざけたように謝った。

木場は怒りを堪えると、仕方なくババ抜きを進める。

ハートの10は依然として、木場の手札の中にあった。

 


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