神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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「……うるせえな、黙ってろ。今集中してんだから……」
話を終わらせ、元の思考に戻ろうとする明石。しかし丑三はなおも食い下がる。
「待ってるぞ明石。俺まで『キス』が回ってくるのを……「いい加減にしろバカ!人が真剣に考えてる時に邪魔すんな!」
ついには明石に怒られて、丑三は拗ねた様になりながらも小さい声で「俺だって真剣だ……」とだけ呟いた。
それを無視して、明石は天馬のカードを選ぶ。天馬が1枚のカードを差し出してきたので、そのカードを手に取る。その時、小さな声が聞こえた。

「ごめんなさい……」



第34話---人間看破

「あ、え?」

明石は天馬の口から出た言葉に驚愕する。しかし、カードを触ってしまったため、もう変えることはできない!

「そのカード……それ以上持ってるのが辛くてぇ……!」

「は?へ?」

(嘘でしょ……まさか、『死』のカードが……!?)

明石は引いたカードを見る。ハートの5、その中央に1文が書かれてあった。

 

『持ってる間ハイテンションでなければ死』

 

「あ、な……なるほどなぁーーー!!!ヘイヘイヘェ〜〜〜イ!!!」

明石は全力で叫ぶ!

「どうした明石!?おい明石!?」

拗ねていた丑三も明石の突然の変貌に驚愕し、明石の周りのメンバーも息を飲む。その中で天馬だけが明石に必死に謝っていた。

「『ハイテンション』カードです。『持ってる間ハイテンションでいなければ死』の神罰(バツ)カード……私、選別が始まった時からずっと持ってて……ハイテンションで頑張ってたんですけど……もう気力が……耐えられなくて……ごめんなさい……」

 

明石はその言葉を聞き、泣いている天馬を大声でカバーする。

「天馬ちゃーん!気にすんなってーー♪全然いける全然いける!!」

「嘘だ!顔が引きつってるぞ明石!」

丑三は、自分がハイテンションを代わりに引き受けようと心に決める。今の明石はそれくらい、なんか見ていてアレだった。

 

「いいか?ハイテンションカードを俺に回すんだ」

そう言う丑三に対し、明石は「どれかなどれかなー?」と言いながらも1枚のカードを上に押し上げ、強調する。丑三はそれを手に取った。

引いたカードは……クローバーのA。

「な!?明石、これ違……」

狼狽える丑三に、明石は笑いながら告げる。

「大丈夫、まだいける!キツくなったら渡すから!その時は頼りにしてるぜ丑三っちゃん!」

言われて丑三は、「……ああ」とだけ言って、明石に背中を向ける。その内心は実は、(明石が俺のこと頼りにしてる!)と歓喜と興奮でいっぱいだった。

 

「丑三君!死なないやつを引かせてください!」

開口一番、そんな事を言ってくる紫村に、丑三は苦笑しながらもカードを1枚だけ左手に持ち、それ以外のカードを提示した。

紫村はそのうち1枚を引く。何も起こりはしなかった。

「お!セーーーフ!!紫村、生き残りぃ!」

叫ぶ明石。それに対し先駆者の天馬が助言する。

「明石さん!さっきから『ハイテンション』頑張りすぎです!そんなノリノリばっかりじゃ最後まで持ちませんよ!?静かにテンション高くしとけば大丈夫ですから!」

「お……おう!」

 

そんな明石は放って置かれて次のターン。紫村と対峙するのはオスメス。

「ど……どうぞ……どれでも……構いません……よ?」

紫村は震えながらも、オスメスにカードを差し出した。オスメスはそれに対し無表情のまま、語り出す。

 

「私はこれまで何十もの戦場を戦い抜き、その中で色々な力を手に入れました。その中でも私が最も得意とするのは……尋問(インテロゲイション)。戦場で捉えた捕虜から、情報を聞き出す仕事です」

言いながら、オスメスは紫村から見て1番右のカードを指差す。そこからゆっくり、1枚ずつ手を右に動かしていく。

「捕虜は簡単に口を割りませんから、私はその嘘を見破る術を身につけた。私の前では隠し事は通用しません。あなたのその震え……何かに怯えているその感じ……あなたは何か引かれたくない(・・・・・・・)カードを持ってますね?」

オスメスは全てのカードに指を差し、1回手を目の前に戻す。

「瞳孔……眉……唇……発汗……その全てに嘘は現れる。特にあなたはそれが顕著だ。あなたはこのカードを指差した時だけ、不自然に目を逸らしましたね」

オスメスが、紫村から見て右から2番目のカードを引き抜き、その内容を見る。

「なるほど……こいつはいーいカードです。人間看破(ビンゴ)

明石は紫村に引かれたカードの中身を聞く。

「紫村、一体なんのカードを引かれたんだ!?」

「ぼ……僕が今引かれたのは、ダイヤの8……そのカードの効果は……『7』のカード……『引いたら死』のカードが見える、っていう効果なんだ……」

それを聞いて、明石は戦慄する。

(そんな……人間看破なんてものを持ってて、さらに『引いたら死』を絶対に引かないなんて……最強じゃないか!?)

 

「……私は。」

オスメスがギロリと紫村を睨む。

「ここにいるリリィを除いた12人。それをこの力で。全身全霊全員全滅する。最初の男はたまたまだったが、次は私のこの手で、確実に屠ります。まずは隣に座る、あなたからだ」

オスメスに指され、紫村は情けない悲鳴をあげた。

 

リリィはそれを聞いて、何も言わずに目を瞑った。

 

「そしてリリィ。あなたにはこのカードを渡しておきます。このカードがあれば、あなたは無敵だ」

そのリリィに対し、オスメスは1枚のカードを献上する。リリィは数秒止まった後、そのカードを受け取った。

 

 


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