神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

144 / 171
「引けよ、かみまろ」
険しい顔で言う高畑に対し、かみまろはむしろ笑みを浮かべる。
「わかってると思うけど、カードに書かれた神罰に逆らったら死だかんな。

それは平等に!俺にも!お前にも訪れるジャッジメント!!」
かみまろが1枚のカードを、勢いよく引く!!


「あ」











「……せーーーふ。えへへ、まだまだ続けて行くよー。次々ーーー」



第33話---強制力

「はい、どーぞ」

かみまろは高畑に背を向け、隣の男の前に5枚のカードを差し出す。隣の男……(さじ)元士郎(げんしろう)はその顔を睨む。

「誰にでも神罰(バツ)は平等。そう言ったな?」

対してかみまろはヘラヘラと笑ったまま言う。

「当たり前だぁ。そうしないと楽しくない。俺はお前達と楽しみたいだけさ」

「そうか。じゃあ俺は、このババ抜きで合理的に……お前を殺す!!」

匙がカードを強引に1枚、かみまろから抜き取る!

「……チッ!!」

匙は強く舌打ちをした。

「かみまろ、お前なんか持ってねーのかよ!『引かれたら死』とか、そんな罰もどうせ用意してんだろ!!」

その言葉に、明石は反応する。

(なるほど……『引いたら死』以外にも罰カードがある、か。確かに、木場がしゃくれてるのも罰の1つだろうし、他にも罰はあると考えて良いかもな。ただ、どれくらいあるんだろう……53枚全部はありえないしな)

明石は自分のカードを見る。スペードの3・9、ハートの2、クローバーのA、全部が何の罰もないただのカードだった。

(1〜Kまでの13種類とJOKER、これらに1つずつ罰がある、と考えた方が良いか……いや待てよ)

明石はテーブルに置かれた捨てカードを見る。

(7の『引いたら死』は2枚ある!つまり、少なくとも2枚はそれぞれに罰があるって事かな?それとも『引いたら死』だけか?)

こればっかりは作ったかみまろとマナしかわからないか、と明石は思考を切って盤上に意識を戻す。ちょうど、ハンナが匙からカードを1枚引いたところだった。

「あ……」

匙が漏らす。その直後。

 

 

「!!!」

ハンナが座っている椅子から、10のマジックハンドが飛び出てくる!それはハンナの全身を掴み、揉みしだく!!

 

「…………って、何やってんだ地蔵!?!?アンタ、何引かせたんだよ!?」

明石は匙に問う。匙も今の状況をよくわかってないようだ。

「……俺は今、『引いたらくすぐり地獄30秒』っていうのを引かれたんだよ。『死』って言葉がねぇから、引いても死なねぇと思ったんで、カードを取ろうとするのを止めなかったんだ」

そんな事を言ってる間に30秒のセクハラ、もといくすぐりが終わり、マジックハンドは椅子の中に戻っていった。くすぐりに対し騒ぐ事なく笑いもせず最後まで耐えたハンナは匙を睨むが、その目は潤んでいて全く迫力が感じられない。「悪かった、すまん」と、一応匙も変なカードを引かせた事を謝った。

と、そこで。

 

「あっれーーー?今のカードはギャグカードで、笑ったところで死なないカードだったんだけど、なんかスッゲー我慢してるように見えたなぁ……あ……もしかして。

 

『声出したら死』カード持ってたり?」

ハンナはそれに対しても何も言わない。ただ、かみまろを睨むばか「わぁっ!!」

 

 

かみまろがいきなり大声を出してハンナを驚かせようとするが、ハンナは全く反応しなかった。むしろ、隣にいた天馬の方が大げさと言っても良いほど驚いている。

「ハンナ、無視した方がいい」

明石の言葉に、ハンナは黙ったまま頷いた。

 

そして次は、天馬がハンナから引くターン。

 

「ハンナさんハンナさん!これ!大丈夫ですか!!」

天馬は、自分から見て1番右のカードを指差して尋ねる。それに対しハンナは、首を振って答える。

「じゃあじゃあじゃあじゃあ!こっちはどうですこっちは!」

天馬はハンナの右から2番目のカードを触って(・・・)、引いていいかを聞く。それに対し、ハンナはまた首を振って答える。

「じゃあじゃあ、この隣のこれは……」

天馬が右から2番目のカードから指を離した時だった。

『ダメだ』

地蔵が重い声で告げる。

『1度触れたカードは変更できない。そのカードを引けぇ』

その言葉に、天馬は動揺する。

「え……ちょっ……!?ハンナさん!それって……ダメなやつなんですよねぇ!!?」

ハンナの右から2番目のカードが光る!確かに、ハンナが首を振って『ダメだ』と合図をしたカードだった!

 

『引けぇ』「ちょっと待って……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!」

天馬は恐怖で泣くが、地蔵はそんなもので許しはしない。

『逆らう者は「神罰(ジャッジメント)」!!』「わかったわかった引くからぁ!!」

半狂乱になり、ヤケクソと言わんばかりに泣き叫びながら勢いよく光るカードを引く天馬!!

 

目を閉じ、カードを目の前に持っていく。天馬が開けた目の先にあったのは、ハートのQのカードと、

 

ハンナの顔。

 

「ん」

 

ハンナの唇が、天馬の唇に重なり合う。そのまま数秒間、2人はそのままだった。周りには音もなく、まるで時間が止まった様だった。

やがてハンナが離れると、天馬は「生きてたぁ……」とホッとする。それを見て明石は思う。

(今の『キス』、さっきの『くすぐり地獄』……それと木場の『しゃくれ』もカードの神罰(バツ)だとしたら、このゲーム……『引いたら死』みたいな、直接『死ぬ』神罰(バツ)だけじゃないのか?だったら、そういうカードを回していけば、いつか誰かの手札で確実に捨てられるのか!もしかしたらそれが攻略法に繋がるのか……いや、でも……

 

「さぁ明石、お前の番だ」

 

思考をぶった切る様に明石に話しかけたのは、隣に座る相棒、丑三清志郎。

彼は真摯な顔で明石を見つめ、言う。

 

「キスを引け。俺まで回せ(キスミー)

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。