神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
独離腐寺正門前、アクロバティックに太陽の国の攻撃を避けていくハンナに抱えられた明石に、丑三は全速力で近づいていく。
(明石……明石……!!ずっと逢いたかった……明石!!
追い続けてやっと、手の届く所に明石がいる!!)
丑三の身体が明石へと引き寄せられる様に近づいていき、
「!」
丑三はとっさに身を翻す。すると、0.1秒後。
本来彼の進行ルートだった場所に、思い切り木の刃が振り落とされた!
木の刃はコンクリートに叩きつけられ、しかし折れる事は無かった。あまりの勢いに、逆に道路に大きな穴が空いていた。
(こいつが……リリィ!俺と明石の、最大の敵!!)
丑三は攻撃してきた張本人、倒すべき相手を視界に捉える。独離腐寺の正門から出てきたリリィは、正門にある阿院像から取ったらしい木の大鉈の刃先をこちらに向け、言う。
「お前も俺達に背く異分子か?……邪魔だ。消えろ」
丑三は思う。こいつは強敵だ、と。
(これは一筋縄ではいかない相手!最後の最後で大きな壁!!でも……
その方が燃えるのはなぜだろう?)
「!」
リリィは、割れた地面に手をやった丑三の行動の意味に気づいた。
その数秒後、割れたコンクリートの一部を、丑三がリリィに向かって飛ばす!
あらかじめ予想していたリリィは大きい身体を震脚する様な格好で下げ、その状態で鉈を構える。
丑三が、突撃してくる事が読めていたからだ。
正門に付いている鐘にコンクリート片が直撃し、鐘が深い音を鳴らすと同時にリリィも大鉈を振るう!首筋を狙ったその一撃を、丑三は紙一重で避けた。
「タイマー0!行けるよ明石!!」「おう!!」
明石のタイマーがそこで0になる!唯一の天敵である狙撃手がいなくなった彼はリリィに向かう前に、動けなくなったのを見てハエの様にたかり始めていた周りの太陽の国の兵士達を一掃する。
視線の先では、丑三がリリィの攻撃をひたすら避け続けていた。それを見て明石はリリィの方へとダッシュする!それを見て、他の星月軍も太陽の王を狙って突撃していく!
「リリィ!それ以上殺すな!俺達は殺し合いをしたい訳じゃない!!」
その言葉にリリィは、鉈を振って丑三を狙いつつ背中を狙う星月の兵士達の身体を分断しながら、冷静な声で告げる。
「ほう、その手で何人も牢屋に送っといて、良く言えるな。キング・明石。このドロケイのルールを忘れたのか?檻に入れられた奴は天井に潰されて死ぬんだぞ。お前がやってる事も俺と同じ、立派な殺人だろ」
明石はその言葉を聞き吠える。
「違う!!うまく言えないけど……俺とお前の気持ちは同じじゃない!」「同じだ」「違う!」
明石は首を振って否定する。その明石に、リリィはゆっくりと、試す様に言う。
「ならば、もう一度聞くぞ。キング・明石。
『何の為に戦う』?」
その言葉に、明石は即答する。
「戦って勝って、世界を救う為だ!俺は、今まで死んでいった仲間達から託されてきた!!俺には戦わなきゃいけない理由があるんだ!」
「……やはり、同じだ。俺にもあるさ。殺すのは平和の為の犠牲だ」
リリィは思う。やはりこのキングと俺は、全く同じモノなのだと。そして、脳裏に浮かぶ
ただ、その一方でまた思う。お前の様な、戦争も体験した事のない奴にはわかるまい、とも。
「違う!そんな神ならいらない!!俺は、そんな気持ちで戦わない!!」
「黙れ。理想で世界は救えない」
理想論と現実論がぶつかり合う。冷静で冷酷なリリィの言葉に、明石は熱い声で反論する!
「だったら!生きてる意味なんてない!!
たとえ、綺麗事でも!どんなに無理な理想だとしても!
希望に生きるのが人間だろ!!!」
リリィの動きが、その明石の言葉に、一瞬止まる。そして、その一瞬を見逃さない男がいた。
「やっとできたな。隙が」
丑三の脚が、大鉈の柄を割りリリィの脇腹に入る!体制を崩したリリィの顔面に、さらに拳が2発、3発と打たれる!
明石もその間に、リリィの目前まで迫る!光ったグローブがリリィの1m前まで届き、
「今だ星月軍!明石と丑三に他の太陽軍を近づけるな!
ファトマの絵を、再現させるんだ!!」
真田ユキオの大きな声が耳に入る。明石の動きが一瞬、固まった。明石は、その絵の特性を知っていた。
「あっぶね!!」
明石の顔面に、強力な蹴りがお見舞いされた!!明石はその衝撃で、1mほど後ろに転がった。
蹴りを放ったのは、ライフジャケットに身を包んでいない、半裸の男。丑三と同じ、この三国ドロケイの
「やめろよなーお前ら。横取り禁止!
リリィ壊すのは俺だっつーの♪」
天谷武。彼の登場により、場は更に混乱する。
三国ドロケイ決着まで、残り15分。
決着まで残り15分!
星月VS太陽の行方は!?
そして、悪魔達の戦いの結末は!?
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!