神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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第16話---腕

「逃げろ幹部4!私は片方しか抑えられん!」

ゼノヴィアの叫びを聞き、幹部4と紫村、ファトマが乗っている車は、慌てて旋回し正門からの撤退を目論んだが、

 

「あっちだ、車ん中」「はい」

もう1つの太陽の巨大戦力が、全力で車を狙う!

「に、逃げろ!!とっとと逃げるぞ!……隠密部隊が1つでも塔を取れれば、逃げ切れる!」

紫村は、この戦闘の影で動かしているもう1つの戦力を思い出す。

通信使(オペレーター)』50名、『狙撃手(スナイパー)』12名、『兵士(ソルジャー)』68名、そして、ハンナを含めた『鍵使い(キーマスター)』20名。総勢150名が今現在、星の国から最も遠い塔を奪取しに向かっているのだ。

(塔を1つでも取れれば、相手の『レーダーにキングの位置を常に表示する』効果が消える!そうすればこの自動車のフルスピードで逃げ切れる……はず!)

そう考えながら、紫村は車を急かす。数秒して、オープンカーの運転手、『とにかく明るい』スティーブがアクセルを踏んだ!

「逃すなオスメ……!オスメス、右!」

C・Bのその言葉を聞き、オスメスは右に大きく飛ぶ。すると、オスメスの先程の進行方向に、巨大な拳が叩きつけられる!

「お?避けられた?運が良いなおい」

オスメスはファトマの乗った車から視線を外し、巨大なロボットアームをそちらに向けると、

 

ダダダダダッ!

 

1秒に150発の弾丸が10秒間、攻撃された方向へとばら撒かれる!

「!?『バッチャジャラ』!硬化!!」

金属が弾かれる音がオスメスの耳に入る。ロボットアームの向いた方向に自身も顔の向きを変えると、そこには巨大な老婆の幽霊の姿があった。その後ろから、日本の学ランを着た1人の男が現れる。

「もうここに攻め込んできた『太陽の国』の奴らはほぼ全滅だ!後はお前ら2人と、他数人くらい!ここでお前らを仕留めれば、キングを追う奴はいねぇだろうぜ!」

そんな事を言う学ラン坊主に、オスメスは冷たい口調で言葉を発する。

 

「平和を日常だと思っている人間に、いきなりライフルを持たせたらどうなると思いますか?」

学ラン坊主・福満はその言葉を聞き、訳が分からず「はぁ?」と聞き返す。

「答えは2通り……自分の持つ強さに怯えるか……」

オスメスは再びロボットアームを構えると、鉛玉を福満に向かってばら撒く!

「効かねぇっての!バッチャジャラ!『硬化』!!」

福満の言葉にバッチャジャラの色が変化し、弾丸を全て弾き飛ばしていく!

「どうだ!バッチャジャラの力あぎゅ!?」

 

背後から、頭を掴まれる。福満重里は思わぬ刺激に手脚を振ってどうにか逃げようとするが、金属製らしい頭のそれは、容易に抜けられない。

「ば、バッチャうぎゃあぁ!!」

福満が攻撃を与えようと頭の中でイメージを膨らませる前に、頭を掴む冷たいそれは、さらに締めつけをきつくする!

「……新しく手に入れた力に奢り、溺れ、過信し、油断するか。あなたはどうやらそちらの方だったようですね」

 

バキッ!と何かが砕ける様な音がした。

 

それとほぼ同時、星の国にいた巨大幽霊が消滅した。

 

「だいぶ離れてしまったみたいだぞ」「これくらいならすぐに取り返せますよ」

ドサリという音には興味も示さず、オスメスはC・Bのナビに従ってファトマ追跡を再開する。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「だっ!」「ぬおおおお!!」

アスカロンとデュランダルが何度もぶつかっては離れを繰り返す。生き残った星の国の『狙撃手』が敵である太陽の国の『兵士』に狙いをつけようとするが、超スピードについていけず、引き金を引けない。『狙撃手』のスナイパーライフルの銃弾に当たった者は、敵味方関係なく60秒間身動きが取れなくなってしまう。もしそれが味方である青髪の剣士に当たってしまうと、彼女は動きを止められて、一刀のもとに切り捨てられてしまうだろう。そうなれば赤鎧の兵士を止める者はいなくなり、自分達も全滅、というシナリオが鮮明に浮かぶ為、狙撃手組は手出しができないのだ。

そんな星の国の人々の事などいざ知らず、人の輪の中央で兵藤一誠とゼノヴィアは斬り合う。

「楽しいなイッセー!!こんなに楽しい戦いは久しぶりだ!!嬉しいよ、イッセー!!」

「そうかよっ!!」

鍔迫り合いになっていたゼノヴィアの身体をイッセーは蹴り飛ばし、倒れ込んだ所に追撃を仕掛けようとするが、ゼノヴィアは『騎士』のスピードを駆使して高速で立ち上がり、上に跳ぶと、

「喰らえぇぇ!!」

渾身の力でイッセーに向かってデュランダルを叩きつける!イッセーはアスカロンで受け止めようとする。

 

 

しかし、そこでアスカロンの柄の近くの刃にヒビが入った!!

 

「!?木場の聖魔剣と今の戦いで蓄積されたダメージで、アスカロンが!?」

そう言い終わらないうちに、アスカロンが根元から叩き折られる!イッセーは右手を顔の上に持っていき、剣をガードしようとする。

イッセーの腕に、剣のぶつかった衝撃が走る!

「デュランダルは鎧に阻まれる様な柔な剣では無い!イッセー、君も良く知ってるだろう!」

そう言うと共にゼノヴィアは更に力を入れる!右腕の籠手が割れ、肉が裂ける感覚を覚えたと思った時には、イッセーの右腕が宙に舞っていた。

クルクルと空中で回転していた腕は、切断箇所からだんだんと消えていく。

「『デュランダジャラ』、私の『戯』の効果だよ。最終日にお披露目したから、イッセーには見せてなかったっけ?」

 

隻腕となったイッセーにドヤ顔を放つゼノヴィア。それに対し、イッセーは鎧の色を変化させる。最初は橙色に変化したが、数秒経っても何も起こらず、イッセーの鎧は今度は緑色に変化した。イッセーが切断面に手を当てると、そこから緑色のオーラの様なものが発せられた。少し距離を取ったゼノヴィアはそれを見て、ハッとなる。

「それは、アーシアの」

「そう、アーシアの力を借りている。治癒の鎧、『赤龍帝の微笑鎧(ブーステッドギア・ヒーリング・メイル)』。俺はアーシアとも共に戦ってるんだ」

イッセーの鎧が、今度は真紅に染まっていく。

「喰らえ!滅びのドラゴン波!!」

 

いきなり飛んできた高速のビームを、しかしゼノヴィアは首を振るだけで避ける。

「甘いな。直進してくるビームなんて、避けるのは造作も無い。部長や魔王様の様に、操れる様にしておけば『ジュッ』あ?」

 

 

ゼノヴィアの右腕が、刃の一部を失ったデュランダルごと地に堕ちる。ゼノヴィアの肩を貫き、先程避けたはずの光線が直進していく。

「操作……そんな事、もうできる様になってるさ」

「ヒュー、さすが」

隻腕の男女はそんな会話を交わしながら、残った左の拳を握る。

 

数秒の沈黙の後、一瞬の激突があった。

 

剣士と闘士の戦いは、その一瞬で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 




今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

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