神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】 作:兵太郎
「逃げろ幹部4!私は片方しか抑えられん!」
ゼノヴィアの叫びを聞き、幹部4と紫村、ファトマが乗っている車は、慌てて旋回し正門からの撤退を目論んだが、
「あっちだ、車ん中」「はい」
もう1つの太陽の巨大戦力が、全力で車を狙う!
「に、逃げろ!!とっとと逃げるぞ!……隠密部隊が1つでも塔を取れれば、逃げ切れる!」
紫村は、この戦闘の影で動かしているもう1つの戦力を思い出す。
『
(塔を1つでも取れれば、相手の『レーダーにキングの位置を常に表示する』効果が消える!そうすればこの自動車のフルスピードで逃げ切れる……はず!)
そう考えながら、紫村は車を急かす。数秒して、オープンカーの運転手、『とにかく明るい』スティーブがアクセルを踏んだ!
「逃すなオスメ……!オスメス、右!」
C・Bのその言葉を聞き、オスメスは右に大きく飛ぶ。すると、オスメスの先程の進行方向に、巨大な拳が叩きつけられる!
「お?避けられた?運が良いなおい」
オスメスはファトマの乗った車から視線を外し、巨大なロボットアームをそちらに向けると、
ダダダダダッ!
1秒に150発の弾丸が10秒間、攻撃された方向へとばら撒かれる!
「!?『バッチャジャラ』!硬化!!」
金属が弾かれる音がオスメスの耳に入る。ロボットアームの向いた方向に自身も顔の向きを変えると、そこには巨大な老婆の幽霊の姿があった。その後ろから、日本の学ランを着た1人の男が現れる。
「もうここに攻め込んできた『太陽の国』の奴らはほぼ全滅だ!後はお前ら2人と、他数人くらい!ここでお前らを仕留めれば、キングを追う奴はいねぇだろうぜ!」
そんな事を言う学ラン坊主に、オスメスは冷たい口調で言葉を発する。
「平和を日常だと思っている人間に、いきなりライフルを持たせたらどうなると思いますか?」
学ラン坊主・福満はその言葉を聞き、訳が分からず「はぁ?」と聞き返す。
「答えは2通り……自分の持つ強さに怯えるか……」
オスメスは再びロボットアームを構えると、鉛玉を福満に向かってばら撒く!
「効かねぇっての!バッチャジャラ!『硬化』!!」
福満の言葉にバッチャジャラの色が変化し、弾丸を全て弾き飛ばしていく!
「どうだ!バッチャジャラの力あぎゅ!?」
背後から、頭を掴まれる。福満重里は思わぬ刺激に手脚を振ってどうにか逃げようとするが、金属製らしい頭のそれは、容易に抜けられない。
「ば、バッチャうぎゃあぁ!!」
福満が攻撃を与えようと頭の中でイメージを膨らませる前に、頭を掴む冷たいそれは、さらに締めつけをきつくする!
「……新しく手に入れた力に奢り、溺れ、過信し、油断するか。あなたはどうやらそちらの方だったようですね」
バキッ!と何かが砕ける様な音がした。
それとほぼ同時、星の国にいた巨大幽霊が消滅した。
「だいぶ離れてしまったみたいだぞ」「これくらいならすぐに取り返せますよ」
ドサリという音には興味も示さず、オスメスはC・Bのナビに従ってファトマ追跡を再開する。
〜〜〜〜〜〜〜
「だっ!」「ぬおおおお!!」
アスカロンとデュランダルが何度もぶつかっては離れを繰り返す。生き残った星の国の『狙撃手』が敵である太陽の国の『兵士』に狙いをつけようとするが、超スピードについていけず、引き金を引けない。『狙撃手』のスナイパーライフルの銃弾に当たった者は、敵味方関係なく60秒間身動きが取れなくなってしまう。もしそれが味方である青髪の剣士に当たってしまうと、彼女は動きを止められて、一刀のもとに切り捨てられてしまうだろう。そうなれば赤鎧の兵士を止める者はいなくなり、自分達も全滅、というシナリオが鮮明に浮かぶ為、狙撃手組は手出しができないのだ。
そんな星の国の人々の事などいざ知らず、人の輪の中央で兵藤一誠とゼノヴィアは斬り合う。
「楽しいなイッセー!!こんなに楽しい戦いは久しぶりだ!!嬉しいよ、イッセー!!」
「そうかよっ!!」
鍔迫り合いになっていたゼノヴィアの身体をイッセーは蹴り飛ばし、倒れ込んだ所に追撃を仕掛けようとするが、ゼノヴィアは『騎士』のスピードを駆使して高速で立ち上がり、上に跳ぶと、
「喰らえぇぇ!!」
渾身の力でイッセーに向かってデュランダルを叩きつける!イッセーはアスカロンで受け止めようとする。
しかし、そこでアスカロンの柄の近くの刃にヒビが入った!!
「!?木場の聖魔剣と今の戦いで蓄積されたダメージで、アスカロンが!?」
そう言い終わらないうちに、アスカロンが根元から叩き折られる!イッセーは右手を顔の上に持っていき、剣をガードしようとする。
イッセーの腕に、剣のぶつかった衝撃が走る!
「デュランダルは鎧に阻まれる様な柔な剣では無い!イッセー、君も良く知ってるだろう!」
そう言うと共にゼノヴィアは更に力を入れる!右腕の籠手が割れ、肉が裂ける感覚を覚えたと思った時には、イッセーの右腕が宙に舞っていた。
クルクルと空中で回転していた腕は、切断箇所からだんだんと消えていく。
「『デュランダジャラ』、私の『戯』の効果だよ。最終日にお披露目したから、イッセーには見せてなかったっけ?」
隻腕となったイッセーにドヤ顔を放つゼノヴィア。それに対し、イッセーは鎧の色を変化させる。最初は橙色に変化したが、数秒経っても何も起こらず、イッセーの鎧は今度は緑色に変化した。イッセーが切断面に手を当てると、そこから緑色のオーラの様なものが発せられた。少し距離を取ったゼノヴィアはそれを見て、ハッとなる。
「それは、アーシアの」
「そう、アーシアの力を借りている。治癒の鎧、『
イッセーの鎧が、今度は真紅に染まっていく。
「喰らえ!滅びのドラゴン波!!」
いきなり飛んできた高速のビームを、しかしゼノヴィアは首を振るだけで避ける。
「甘いな。直進してくるビームなんて、避けるのは造作も無い。部長や魔王様の様に、操れる様にしておけば『ジュッ』あ?」
ゼノヴィアの右腕が、刃の一部を失ったデュランダルごと地に堕ちる。ゼノヴィアの肩を貫き、先程避けたはずの光線が直進していく。
「操作……そんな事、もうできる様になってるさ」
「ヒュー、さすが」
隻腕の男女はそんな会話を交わしながら、残った左の拳を握る。
数秒の沈黙の後、一瞬の激突があった。
剣士と闘士の戦いは、その一瞬で幕を閉じた。
今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!