神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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第13話ーーー同盟

星の国の幹部4は、車で本拠地まで戻ってきたオペレーターの1人、真田ユキオと、月の国のハンナ・フェリックスの2人と対峙していた。

ハンナは手につけていた、敵を捕まえるためのグローブを外し、手を挙げて攻撃の意思が無いことを証明して、言う。

「私達月の国と手を組んで欲しいの。太陽の国を倒す為、そして捕まった明石を助け出す為に」

「俺からも頼む、明石は良い奴なんだ」

真田の援護に、しかし幹部4は表情を変えない。

「……確かに太陽の国は脅威だが、俺達には手を組むメリットが見当たらないな。

 

このまま明石が捕まったまま処刑時間を迎えれば、月の国の負けは確定。俺達は何もしなくても勝てるんだ」

と、そこで『手段を選ばない』ムスタファが1度息を吐き、言う。

「だが1つ問題がある。これを見てくれ」

『とにかく明るい』スティーブが、幹部4の背後にあった幕を取ると、そこから1枚の絵が現れた。それを見てハンナは察する。

「ファトマの予知絵!?これが……」

 

「知ってるのか……なら話は早ぇ。実は俺らもお前達を待っていた」

「わざわざキング・明石を助けて太陽と戦うリスクを取るべきか?どう考えます?『手段を選ばない』ムスタファ」

「わかんねぇよ」

そこから幹部4の話し合いが始まる……と思ったその時、星の国の本拠地全体に、地震のような強い揺れが起きた!!

 

「幹部4!報告だ!!」

星の国の兵士が慌てた様子で会議室に入ってきて、大声で叫ぶ!

「ガソリンを積んだタンクローリーが校舎に激突!炎上!!我が拠点は今……

 

 

 

太陽の国の急襲を受けている!!」

 

窓から外を覗くと、そこには確かに太陽の国の人間が大勢いる。ざっと見て400人くらいはいるだろう。

「ファトマを見つけ、捕まえた者こそ戦士だ!!1人残らず確保しろ!!」

後方からC・Bが叫ぶ!その声に呼応するように、太陽の国の兵士達は雄叫びをあげ、星の国の兵士に武器で攻撃を浴びせている!!

「あいつら……普通に殺しに来てる……!!俺らまで全滅させる気か……!?」「……状況が変わったな……このままじゃやられる……」

それを見た幹部4の決断は早かった。

「決まりですね」

「手を組もう。星月(スタルナ)同盟で太陽の国を倒すぞ」

 

幹部4とハンナ、ユキオは作戦を立てる。幹部4とハンナはファトマを連れて月の国まで行き、そこから援軍を呼んで現存する星の国メンバーと彼らとで太陽の国を挟撃する。残ったメンバーはこの場所で太陽の国を食い止める、というシンプルだがかなり難易度の高い作戦だった。

「俺は残るよ。この場を統率する人間が必要だろ?じゃなきゃ、パニックでお前らが戻って来る前に全滅だ。

 

 

指揮は任せろ。持ち堪えてみせる」

いつもと変わらない調子でいうユキオに、ハンナは「ありがとうユキオ!アンタカッコいいよ!」と言って、幹部4と一緒に、先ほど自分とユキオが乗った車までかけて行ったーー

 

 

 

ーーそこから30分ほど前、太陽の国が1つ目の管制塔を占拠して少しした時、明石は門番として立候補していたナツメグに、自分の書いた『推薦状』を渡した。それを見せれば彼女は月の国の者からの危害は加えられないだろう、と配慮しての事だった。

と、その時カツカツと廊下を歩いて明石達に近づいてくる物音があった。ナツメグは慌てて明石に背を向ける。明石も彼女から視線を逸らし、音のする方を向いた。

 

 

「このゲームは、王様が真っ先に捕まっちまう様なゲームじゃないと思ってたんだがな。王様がバカみたいな猪突猛進だとこうなっちまうのか?なぁ、明石?」

天然パーマの様な髪型に高い身長。囚人服の様なボーダーの服の上からライフジャケットを着けた男は、メガネをクイッと上に持ち上げると、ハァッ!とわざとらしくため息を吐く。

「このバカ野郎が」

 

明石は、信じられないものを見たかの様にそちらを見つめる。そこにいたのは、前々回の試練で、助けられなかったと思っていた男。死んでしまっていたと思っていた男。

 

「佑!!」

東浜佑(ひがしはま たすく)その人だった。

 

檻に手をかけて、彼が本物かどうかを確かめるためできる限り佑に近づこうと顔を檻に押し付ける明石に、佑は近づいていき彼の胸ぐらを掴んだ。

明石の顔面に、佑の拳が入る!

 

予想していなかった事で受け身も取れず、明石は檻の中を転がる。その明石に佑は追い討ちをかける様に言葉を叩きつける!

「お前はキングだろうが!お前が死んだらお前の国の奴らがみんな死んじまうんだぞ!?お前、今の状況がわかってんのか!?このまま行くとあと数時間後にはお前は死ぬぞ!!お前だけじゃねぇ、お前の国……月の国の奴らも全員だ!その意味がわかってんのか!?あぁ!?」

明石はヨロヨロと立ち上がると、佑にごめん、と謝る。佑は俺らしくねぇな、と首を振りながら、明石にある物を手渡す。

「カミーズ・フォン……?」

明石に手渡されたのは、マナ・フォンよりも1回り小さいスマートフォン。カミーズjr.となった時渡されたものと寸分狂わぬ物が明石の手に渡された。

 

「それは、お前と仲良くしてたバカの物だ」

その言葉に、明石の頭に1人の姿が浮かぶ。長い髪をまとめもせずに(1時期はシュシュでまとめていたが)、パンツが見えるか見えないか、ギリギリのワンピースセーターを着て(途中から『すなとり』の制服になったが)、にっこりと笑うその姿を。

 

「今から、あいつが俺に、そしてお前に残した言葉を言ってやる。1回しか言わねぇぞ」

そう前置きすると、佑は前々回の試練……空中ケンパが終わった後の事を話し始めた--

 




なぜ佑が生きているのか!?次回は回想から!

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

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