神さまの言うとおり 〜踊らされる悪魔達〜 【完結】   作:兵太郎

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「この辺りにはもう、数字になってる並びはない……移動するぞ、俺についてこい」
東浜の言うとおりに俺達は動く。陣形を明石と東浜を要とした扇型にして、時計回りに回っていく。
「あ、見つけました!」
天馬ちゃんが見つけたプレートは『T・E・N』、それをかけて再びジャンケンをする俺達6人、次にジャンケンで勝ったのは……

「……え?おぉ……!勝った……!!やったぁ!!」
明石だ。




第70話ーーー仲間

生き残りが決まった明石は、しかし依然としてそこに立ったままだった。やがて東浜に向かって口を開く。

「なぁ……本当に、これしか方法は無いのかな?皆で生き残る方法が、まだ……どこかにあるんじゃないかな……?もうちょっと冷静になって皆で考えれば「無ぇよバカ。言ったろ、この作戦に感情は必要ないって。

 

今の発言は、死を覚悟するチームへの裏切りだ」

 

東浜の言葉に明石は俯く。そして、俺達に背を向けると、ゴールプレートが出現する方に向かって走り出した。そう、これでいい。

明石はゴールプレート付近で待機した。それを見て俺達は10時になるのを待つ。そして、

「よし、今だ!」

俺が『T・E・N』とプレートを踏む!『10』のゴールプレートが出現した!そして明石が……

 

明石が……来ない?

 

「アイツ……いなくね?」「は?さっきまでいたよね!?フザけんなし……どこ行った!?」

 

「あ!あれ!!あそこ!!」

天馬ちゃんが指差した方向、そっちに明石は確かにいた。周りにいるのは2人の人間……いや、少し違うか。

1人は恐らく神の子の男。何でかは知らないけど、ビリヤードのキューを持っていて、それを明石と取り合いしている。そして、その後ろにいるのは……

(……涙ちゃん!何でここに!?)

俺が悪魔に転生させた、1人の少女の姿があった。

紫村もいたし、カミーズJr.が来ていてもおかしくは無いと思ってはいたけど、涙ちゃんが来ているなんて!

どうする、助けに行くべきか?行くべきだろ!

「私、助けに行きます!」「!……俺も行く!」

天馬ちゃんに先を越されるとは思わなかったけど、心強い仲間ができたと思う。俺と天馬ちゃんで明石を助ける!

「はぁ!?ダメだし!!今行ったら、作戦が全部崩れる!」

千夏ちゃんが制止したが、俺達はそれを振り切る!仲間がピンチの時は助けに行く!それが俺だ!

「せ……せっかく出した『10』!もったいねぇ!俺がもらう!!」「ちょっ……!」

そんな声が聞こえたが、今はそんなのを気にしている場合じゃない!プレートは欲しい奴にくれてやる!俺は明石と涙ちゃんを助けるんだ!

 

「オラァ、離せコラァ……ん?」「どりゃあぁぁぁ!!」

俺は明石と揉めていた男に、全力で体当たりを喰らわせる!男はその衝撃で吹き飛び、視界から消えていった。

「やったぜ、明石様々だ!俺も馬皿に続く!」

あ、宇治原が明石が放置した『10』のゴールプレートを踏んだ!宇治原は誰にも邪魔されず、無事『10』のゴールに足をつけた!クリアだ!

宇治原が消えていくのを見ていると、千夏ちゃんと東浜が近づいてきた。

「……皆、ゴメン……俺……」

「マジそれだし!何考えてんだよ!?誰だよコイツ!コイツのせいで作戦オジャンだし!宇治原の奴が抜け駆けしてゴールしちまいやがったし!」

「ご、ごめんなさい!私が何かの邪魔をしちゃったみたいで……本当にごめんなさい!」

「謝ってすむ問題じゃないし!」

「待て……!この人は俺の……俺達の仲間なんだ!悪いのは無理に助けた俺だ!」

明石は必死に涙ちゃんを庇う。それに対し東浜が、冷静に声をかける。

「『自分のクリアを投げ打って、何故仲間を助けた?』俺が納得する説明をしろ」

東浜の問いに、明石はちょっと迷った様に視線を彷徨わせた後、少し小さな声で言う。

「自分でもわからないよ……気づいたら助けに行ってたんだ。理由なんてない……助けなきゃって心が叫んでたから……」

明石の答えに、俺は納得する。そして親しみを感じる。明石は俺と同じ様な心情を持っているという事が、何となく嬉しかった。

 

「……イッセー君?」

俺が明石を暖かい目で見ていると、不意に俺の名前を呼ぶ様な声がした……どこか聞き覚えがある、柔らかく少しゆったりとした声音。

「朱乃さん?」

そう言いながら後ろを振り向くと、俺が思っているその人が、そこにいた。

「……」

朱乃さんの眼から涙が溢れてくる。

「イッセー君、まだ生きていたんですわね。良かった……」

朱乃さんはこっちに近づいてくると、足を近くのプレートに置いて俺にギュッと上半身だけで抱きついて来た。柔らかなおっぱいの感触が……ウヘヘヘ。

「……イッセー、何してるんだよ。もう行くし。あんたも作戦の要員の1人なんだから、さっさとついて来なよ」

どこか拗ねた様に千夏ちゃんが言う。それを聞いて俺は我に返った。

「やっぱりまだ続けるのか?」

「明石が責任を取って、自分が最後の1人になるらしいし。『バイバイ明石作戦』だってよ。フィールド上にいる生き残りも少ないし、それが1番効率的だろうって事だし」

「なるほど……」

俺が同じ立場に立たされたら、同じ事を言っていたと思う。

 

同じ作戦を続けるなら、人が多い方が見つけやすいかも?と思った俺は朱乃さんに言う。

「俺達と一緒に来ませんか?」

その言葉に朱乃さんは表情を明るくして、

「まぁ、良いんですの?それならば、私もご一緒させていただきますわね」

朱乃さんの笑顔に、こっちも表情が崩れてしまう。何か後頭部に視線を感じる気がするけど、多分気のせいだろ。




宇治原があっさりクリア。コイツを生き残らせて何がしたいんだ、自分は……。

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!

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