幻想郷に集う魑魅魍魎の中で、一大勢力のトップに立つレミリア・スカーレット。
成り行きで彼女と知り合ってから数ヶ月立つけど、彼女ほど掴みどころのない人(妖怪)を俺は知らない。
基本的にレミリアは大人びた淑女然とした言葉遣いをする。
かと思えば、まるで暴君のような乱暴な言動だったり、威厳と貫禄を持った風格を見せたりと、印象が時と場合によって二転三転する。
しかもそんな振る舞いをするのがどう見ても十歳前後の少女なのだから、得体の知れなさに拍車がかかる。
全体的に見た目不相応な大人びた振る舞いが目立つが、そんなレミリアでもあどけない子供じみた一面を――意図的だとは思うが――見せるときがある。
というか最近は毎日、決まった時間に見ている。
初対面で威圧された印象が強くて、逆に年相応の振る舞いをされるとまだ違和感があったり、もしかして多重人格なのではと疑いが沸いたりもするが、それは置いておいて。
柱時計から鐘の音が響く。
ボーン、ボーン、ボーン、ときっかり三度。
その音を律儀に聞き終えてから、漆の扉をノックする。
「入りなさい」
扉向こうの声を聞き届け、俺は左手でドアノブを掴んだ。
右手のトレイに乗った小皿の上には、レモン果汁によって酸味と風味を備えたマドレーヌ。
明治時代から技術的な進歩の少ない人里ではともかく、紅魔館の設備でなら再現するのにあまり苦労しない試作の甘味だ。
レミリアが俺を雇った理由の大部分は、俺の血が目当てだと俺は考えている。
だが、それとは別に俺が再現する甘味は彼女のお気に入りで、強いて言うならこの甘味も目的に含まれているのだろう。
紅魔館の設備を使う代わりに一日一度レミリアにケーキを献上すること。
俺がここで働く上で提示された条件だ。
レミリアは甘味が手に入る、俺からすれば試作が出来る上にその感想を聞くことができるということで両者Win-Winに見えるこの条件。
だが、更に付け加えるならば、気温の変化の関係でケーキを作れない俺からすれば何か解決作に通じるヒントを得られるかもしれないチャンスでもあった。
しかも太っ腹なことに材料は必要経費として紅魔館側が負担してくれる。
もはやこんなに優遇されていいのだろうかすら思えるレベル。
とまあ、最近苦手意識が再発しつつあるけれど、一勢力の長であり雇い主としてのレミリアについては概ね尊敬の念を抱いている。
とはいっても、扉の向こうにいるレミリアは、尊敬や畏怖なんて言葉から程遠い、目を輝かせた小さな女の子モードで待ち構えていて。
昨日も一昨日もその前もそんな感じだったし。
「失礼しますよ、レミリア様」
さて、そんなお嬢様の期待に応えることができるだろうか。
喜んでもらえるかな、なんて期待と不安をないまぜにしながら、俺は扉を押し開いた。
* * *
「おいひい!……っんく、これ美味しいわ、悠基」
「ふふん、そうだろう?」
正午を過ぎて数刻、ぽかぽかと暖かい陽気の下、花びらも随分散ってしまった桜の木の傍にて。
草地の上に胡座を掻いた俺は試作のマドレーヌの感想に満足して胸を張る。
正面で両手に菓子を持って笑みを浮かべるのは、巷で宵闇妖怪なんて呼ばれているルーミアだ。
暖かくなり妖怪たちも活発に動くようにはなったが、どうも彼らは人里から伸びる道に寄り着かないようで、道の上をまっすぐ行くならば遭遇率は意外と低かったりする。
だが、このルーミアなる妖怪はそういった傾向には当てはまらないのか、人里へ向かう俺の進路上を、いつものように闇を纏ってふよふよと横切ろうとしていた。
暗黒まりもと表現すると存外しっくりくるそれに声をかけて今に至るが、近付くまで俺に気づいていなかったあたり、相変わらず視界は悪いようだ。
ちょうど持ち合わせていたマドレーヌは、午後三時にレミリアに献上するマドレーヌの試作の更に試作だ。
ルーミアに声をかけたのは、甘味処に職場復帰するまでの半年、試作した菓子を改善するためになるべくいろいろな意見が聞きたかったのもあった。
まあいろいろな意見と言ったものの、ルーミアの感想は基本的に「美味しい」だけだからあまり参考にならない。
「ふふふーん♪」
「ご機嫌だね」
「悠基、私これ気に入ったわ」
「そりゃ良かった」
まあ、例え参考にならなくても、これだけ喜んでくれたならそれで満足だったりする。
「ねえ悠基」
「ん?」
「いつものクリームだっけ?これには付けないの?」
「…………」
むう。
「付けなくても充分甘くないか?」
「とっても甘いわよ。でも貴方が持ってくるケーキは、いつもクリームがあったじゃない」
「付けてほしい?」
「うん」
「…………」
むぅう。
マドレーヌにホイップクリームか。
確かにマドレーヌにケーキのスポンジ生地を連想するのは分からなくもない。
だから、彼女がオプションを所望するのもまあ理解できる。
でもなあ。
「そうは言っても、俺としてはその組み合わせは邪道というか凶悪というか……」
「凶悪?」
キョトンとルーミアが首を傾げる。
「なにが凶悪なのよ」
そんな問いかけに、真剣な顔を作る。
「めちゃくちゃ甘くなるんだ。凶悪なくらい」
「…………」
なぜかルーミアが鼻白むように半眼になる。
不思議なことに。
「……それだけ?」
「それだけ」
「…………」
「…………」
「悠基、クリームは?」
「えぇ」
聞かなかったことにされた。
「ま、あるけどな」
「あ、あるのね」
紐で蓋をしっかり固定した小壷をルーミアの正面に置く。
固定紐を解き蓋を開くと、中に入っていたホイップクリームにルーミアが目を輝かせた。
「衝動的に飛び切り甘くして食べたいっていうのも分からなくもないからな。特別サービスだ」
クリームを掬うためのスプーンを手渡すと、上機嫌にルーミアは頷いた。
「判ってるじゃないの」
「あ、クリームは半分残しといて。それ試食用なんだから」
「そうなのかー♪」
「信用するからな……?」
浮かれきったルーミアの言葉に俺は小さく嘆息を漏らした。
甘味処を絶賛休職中の俺だが、その理由は俺の作るスイーツの核とも言える生クリームが作れなくなったからだ。
クリームを制作する過程で生乳を長時間寝かせておく必要がある。
だが、手を加えた生乳は足が早く、この気温の下で放置しておけば残念ながら生クリームとして使う前に傷んでしまう。
だったらなんで作ることが出来ないはずのそれを今ルーミアに振る舞っているのかというと、これも一重に紅魔館の備蓄庫のおかげだ。
その施設は、パチュリーの魔法によって手を加えられているらしく、室内温度が常に一定以下に保たれた現代の冷蔵庫と同じ機能を有している。
ルーミアが嬉しそうに舐めているクリームも、その施設があるおかげで作ることが出来ているわけだ。
最近はこの技術をどうにか盗むことができないか、なんてことを密かに考えていたりする。
試作したクリームを持ち合わせていたのは、何か着想を得られないかという漠然とした考えで休職中の職場に持ち寄るつもりだったからだ。
「甘かったわー」
「そらそうだろ」
口端にクリームを付けたまま、ルーミアは満面の笑みを浮かべた。
気付けば、試作品のマドレーヌはあっという間に無くなっていた。
と言っても、ルーミアの食欲が底知れないことはだいたい分かってるのでさして気にするようなことではない。
言いつけを守ってきちんと残されたホイップクリーム入りの壺に蓋をしながら、俺は「そういえば」とルーミアに問いかける。
「ところで、妖怪も虫歯になるの?」
「ちゃんと歯を磨いてるから大丈夫よ」
彼女によく売れ残りのケーキを譲っていた身からすれば今更な質問だったが、思ったよりも文明的な回答が返ってきたびっくりした。
「そうなのか?」
目を丸くして彼女の口癖を呟くと、得意げにルーミアは口端を上げる。
「そうなのだー」
お、新しいパターン。
* * *
暖かい春の日差しの下、日向ぼっこがてらぼーっとしていた俺は、草葉を踏む軽い足音が近付いてくることに気付いて振り向いた。
日傘を差した金髪の少女が、どこか胡乱な瞳をこちらにむけたまま歩み寄ってくる。
春先に出会い、この前の異変の終わりになんとなく打ち解けた感のある少女だが、結局名前はまだ教えてもらっていない。
いつまでも妖怪少女と呼ぶのも何なので、名前を教えてもらうまで仮名でも付けておこうか。
例えば、日傘をいつも手にしてるところから、日傘ちゃんとか。
……知り合いの妖怪と被るから却下だな。
なんてくだらないことを考えていると、普通に会話出来る距離まで近付いてきた少女は足を止めた。
「や」
胡座を掻いた草地の上、とある事情で動けない俺は、彼女に上半身を捻って半笑いを浮かべて手を挙げて見せる。
そんな俺をジト目ぎみに見る日傘の少女は、俺の顔から視線を一度下げて、暫くしてから再び俺の目を見た。
「何をしているのかしら」
「……えーと、膝枕……みたいな?」
「…………」
すっげえ微妙な顔をされた。
さて、そんな彼女が見る俺の胡座の上。
さっきまで俺の試作菓子を試食していたルーミアが、俺の腿を枕にぐっすりと眠っていた。
寝心地が良さそうには到底見えないが、春の陽気が心地よいのか、うっすらと穏やかな笑みを浮かべて寝息を立てるルーミアは、すぐには目を覚ましそうにないくらい寝入っている。
起こすのも気が引けて、おかげさまで俺は動くことが出来ない。
「なんというか」
日傘の少女僅かに口元を引きつらせながら片眉を上げた。
「随分懐かれているわね」
「いやぁ……」
なんとなく後ろめたくなって思わず視線を逸らす。
なぜ懐かれたのか、なんて理由を考えるなら、ルーミアに甘味をあげまくったからだろう。
一瞬『餌付け』という単語が浮かびそうになったがそれはそれとして……道端で妖怪とはいえあどけない少女を菓子を使って懐柔するというのは、改めて考えればちょっとまずい気がしなくもない。
「昔から子供には懐かれやすくてね。親戚の子とかこうやってあやしたりしてたし」
「あっそ」
さして興味もなさそうな相槌を打つ少女は、日傘を畳むと俺の隣に腰を下ろした。
ルーミアの面倒を見る俺に付き合うような彼女の行動を意外に思いながらも、先日の夕暮れ時に話してから、多少は打ち解けたということだろうかと前向きに考えることにした。
そういえば、その時この子は誰かと喧嘩していたっぽいけど、それ以降はどうなったのだろうかと気になった。
「あれから仲直りはできたかい?」
「なんのことかしら」
隣に座りつつも、正面を向いて目を合わせようとしない少女の様子を見つつ、もう少しくらい圧しても大丈夫かなぁ、なんて微妙な距離を測るように俺は質問を続ける。
「いやさ、前遭った時に拗ねてたじゃない?」
「拗ねてないわ」
「あー、うん、そうかも」
意外と意地を張るタイプだったらしい。
「それより、貴方はいいのかしら?」
話題を逸したいらしい空気を察した俺はその問いかけに乗ることにした。
「なにが?」
「その子、妖怪よ」
「うん?それは分かってるけど、それが?」
「怖くないの?」
……それは、なんというか今更な質問だと思う。
なんとなく手持ち無沙汰に感じた俺は、ルーミアの前髪を軽くすきながら、その寝顔をぼんやりと眺める。
「君だって妖怪だろ?」
「…………」
「まあ、怖くないってことはないかな。この子だって、こんなあどけない顔して好物は人肉だって普通に言うし、隙あらば噛み付こうとするし。そもそも人間っぽいぽくないに関係なく、妖怪にはよく襲われてるから、そりゃ怖いってのもあるよ」
「じゃあ、どうしてそんな風に触れ合えるの?」
「変?」
「ええ、とても」
「そんなことは……」
と反射的に言い淀む。
例えば、咲夜なんかはたまに過激な部分に目をつぶっていれば、美鈴や小悪魔あたりには接し方がフランクだ。
霊夢は鬼の萃香と同居してるし、魔理沙なんかは野良妖怪と話しているとしばしば彼女の名前が出て来る。
そんな彼女たちと比べれば、俺なんて別に普通普通……。
「……なんていうか、一応普通の人よりは死ににくい体質してるっていうのもあるんだけど……ありゃ」
「どうしたの?」
ルーミアの髪をすいていた手を止めた俺に、少女が問いかけてくる。
「いや……たんこぶできてる」
触ってみれば、ルーミアの頭頂部が腫れているのが分かる。
「また低いところ飛んでぶつけたのか……気をつけろっていつも言ってるのに」
最初に遭遇したときも思いっきりぶつけてたんだよなあ。
「…………」
ジト目ぎみな隣からの視線に、俺は小さく嘆息して首をすくめた。
呆れの色が濃くなっているのは、唐突な俺の言動のせいだろう。
「こう接してるのって、こうしてどう見ても子供にしか見えないからっていうのも理由になるかな」
「貴方より長く生きている者の方が多いわ」
「そうかもだけど、言動がなあ……」
精神年齢が見た目年齢に引かれやすいのか、現状子供っぽい見た目の妖怪の大半が、見た目通りもしくはやや上程度みたいな振る舞いをする。
そんなんだから年上だの長いこと生きてるだの言われてもイマイチピンとこない。
「まあ、それは置いといて。普通に会話できるんだ。普通に接するのだってそこまで変じゃないさ」
「妖怪は人間を襲うものよ?襲われて命を奪われるかもしれないのに、そう思うの?」
「……確かにそれは致命的な問題かもしれないけど、生憎俺は襲われたとしても対策がある。ていうかさ、変だ変だって言うけど、そう言う君だってよっぽど変だよ」
「私?」
訝しげに眉根に皺を寄せる少女に、俺はふてぶてしく頷いてみせる。
「うん。さっきから妖怪だとか襲われるとか、なんだか俺を心配して忠告してるみたいだ」
「……もしそう聞こえるのなら」
半眼で少女は俺を睨むように見る。
「おめでたい頭をしてるのね」
「う……そ、その、そうかもなんだけど…………ああいや、でも、否定はしないんだね。日傘の妖怪さん?」
思ったより言われた言葉にダメージを受けつつも少しムキになって揚げ足を取ると、彼女は視線を逸した。
「そうね」
「…………え?」
予想外。
てっきり向こうもムキになって反論してくると思ってた。
「そうなの?」
「ていうかなによ。その日傘の妖怪って」
「え?ああ、だって名前教えてくれないから。勝手にそう呼ぶことにしただけだ」
「だけって」
「それよりもさ、今の――」
今の「そうね」は、俺を想って忠告をしたことを肯定しているようにとれるし、もしもそうならなぜ出会って間もない俺のことを心配したのか。
どういうわけかそのことが強く気になって身を乗り出そうとする俺の鼻先を鋭くも小さな傷みがはしった。
「うっ!?」
少女のデコピンだ。
予想外の行動に怯んでいると、俺を見据える少女は呟くような小さな声で言う。
「ユカリ」
「え?」
「ユカリと、そう呼んで」
「あ、ああ。名前か……」
やっとこさ名前を聞くことが出来たわけだが、不意のことに面食らっているおかげでなんだか感動がない。
というか、そんなに日傘の妖怪という呼び方がいやだったのだろうか。
まあいいか。
「じゃあ、改めて。よろしくユカリ」
「ええ。よろしく、悠基」
握手をしようと右手を伸ばすと、意外にもユカリは応じてくれた。
「あ、名前覚えててくれたんだ」
「意外?」
「興味なさそうに見えたから」
それに、名乗ったのなんて初めて会ったときだけだったし。
それにしても、ユカリか。
確かこの名前って――。
「んん…………」
不意に俺の足を枕にしていたルーミアが身動ぎした。
おそらく隣に座るユカリと握手しようと上半身を捻った俺の動きが衝撃になったのだろう。
とはいえ、人里に用がある俺としてはそろそろ起きてもらおうとは思っていたので調度いい。
「さて、私はそろそろ行くわ」
ルーミアの様子に気付いたらしいユカリが、握っていた手を離しながら立ち上がった。
「あ、うん。それじゃあ」
小さく手を振る俺に対し、ユカリは小さく頷くと日傘を指して背を向ける。
「…………んん、ゆう……き」
「お、起きたか」
名前を呼ばれて視線を向けると、ルーミアが少しだけ目を開いて、眩しそうに俺の顔を見上げている。
「誰かいたの?」
「ん?ああ……」
眠りが浅かったのか、俺とユカリの会話をぼんやりと聞いていたのだろう。
なんとなくそんな当たりを付けながら、俺はユカリが去っていった方向を見る。
比較的開けた景色の中で、既にユカリの姿は影も形もない。
とはいえ、初めて遭ったときも突然現れ突然消えた彼女のことだし、さして驚くようなことでもないか。
それよりも、少しだけ気になることがあった。
「なあ、ルーミア……あ、二度寝しようとすんな」
春眠暁を覚えずの精神なのか、再び目を閉じて睡眠体勢に入ろうとするルーミアを軽くはたく。
「ん~なによぅ」
「いや、俺もそろそろ行くからどけてくれ」
「いーやー」
「はいはい起きて起きて」
やんわりと彼女を起こしながら、俺は嘆息する。
長時間ルーミアが乗っかていたおかげで足が痺れている。
「ところでルーミア」
「なにかしら」
まだまだ眠りたりなかったのか、ルーミアは微妙に不機嫌そうに唇を尖らせる。
「幻想郷の管理者の妖怪って知ってる?」
「八雲紫がどうしたのよ」
お、フルネームか。
だとしたら面識があるのかもしれない。
「遭ったことある?」
「あるわよ」
「どんな妖怪?」
「なによ急に……」
訝しげな視線を向けつつも、ルーミア考えるように腕を組んだ。
「ま、胡散臭いヤツね」
「胡散臭い?」
意外な言葉に面食らう。
幻想郷の管理者ってことは、つまりはこの幻想郷の中ではトップに立つといってもいい大物のはずだ。
俺のオウム返しの言葉に、しかしルーミアは頷いた。
「そう、胡散臭いの」
「えっと、他の特徴は?」
「遭ったら分かるわよ」
ええ…………。
どうも、ルーミアの口ぶりからしてその八雲紫なる妖怪に対面すると『胡散臭い』いう印象を強く受けるらしい。
その特徴だけで充分とばかりのルーミアの様子に、「そうかぁ」と俺は間の抜けた相槌を打った。
と、するならば、ユカリは幻想郷の管理者の妖怪、八雲紫とは別人と考えていいだろう。
彼女からは胡散臭いというよりもどちらかと言えば不思議な子という感じだ。
なによりも、八雲紫なる大物が俺に接触してくる理由も浮かばないし。
おそらく、ユカリと名乗った少女は、八雲紫から名前を肖ったのだろと、ぼんやりと予想する。
迷いの竹林にも『かぐや姫』から肖って輝夜と名乗る前例だってあるくらいだし。
俺はそんな風に適当な理由で自分を納得させながら、まあなんだかんだでユカリとも仲良く慣れてきているってことなのかな?と、前向きに考えることにした。
補足1:「迷いの竹林にも『かぐや姫』からあやかって輝夜と名乗る前例」について
主人公は輝夜が本物のかぐや姫ではないと思っている。不老不死の蓬莱人の存在すら知らない。
補足2:主人公試作菓子のルーミア試食分は必要経費に認められないので主人公負担。
自己責任です。
以上、いつもはやらないほのぼの補足説明です。
一部修正いたしました。