紅魔館は霧の湖と呼ばれる湖の畔に建っている。
その名が示す通り、湖にかかる霧は紅魔館の敷地近くまで及び、暖かくなったこの季節でも早朝は肌寒い。
そんな空気の中で冷たくなった格子状の門を押し開くと、敷地内から出てきた俺に紅魔館の門番たる妖怪少女が軽く頭を下げた。
「あ、おはようございます、悠基さん」
「おはよ、美鈴。早いね」
「悠基さんこそ。こんな早くにどこか御用ですか?」
まだ低い位置にある太陽の光をちらりと見つつ美鈴は問いかけてくる。
「ちょっと体力付けにランニングかな。この屋敷って見た目よりも随分広いから、使用人として働くにしても結構体力がいるみたいだし」
「へえ、精が出ますねぇ」
屈伸運動をしながら答えると、「感心感心」といった様子で美鈴は頷く。
「ん~悠基さん」
「ん?」
「少し体を触ってもいいですか?」
「…………ええと」
「あ、変な意味はなくてですね」
先日の大図書館での珍事もあって、過敏な反応をする俺に美鈴は苦笑しつつも構わず近づいてきた。
若干の居心地悪さを感じつつも彼女のボディチェックを受けると、何か納得いった様子で美鈴は頷いた。
「ふむ。最近気になっていたのですが、前よりも一段と鍛えられてますね」
「……まあ、体力は多少付いたと思うけど、そんなに変わった?」
美鈴の言う『前』というのが、初めて紅魔館に訪れた折のことを指しているのなら、まだ僅か三ヶ月と少し前の話だ。
その期間集中して体を鍛えていたかといえばそんなことはなく、普段通り甘味処で肉体労働したり里の外で歩き回ったりを繰り返した程度だから、鍛えられたなんて言い方は大袈裟に感じる。
「順当よりもやや上、といった程度ですかね。集中して鍛えたというよりも自然に鍛えられたって感じではありますが」
「そんなことも分かるの?」
「なんとなく、ですが」
照れくさそうに美鈴は笑う。
「でも、良い感じの体ですよ」
「イイ感じて」
「あ、コレじゃあなんだか言い方が変ですねぇ」
あっけらかんと笑う美鈴に俺も釣られて苦笑が浮かんだ。
とはいえ、どっかの小悪魔にはもう少し彼女くらいの気遣いを見習ってほしいところだ。
でも悪い子じゃないんだよ?
……誰に対するフォローだ。
「なんというか、武芸家よりの体になってます。もしかして、妖怪といくらか交えているのですか?」
「え?……どうなんだろ」
確かに、分身の際の生存時間を増やすために、魔法や木刀で抵抗する機会は少しずつ増えてはいた。
だが、機会が増えたからと言って、筋肉のつき方が顕著に出てくるほどということはないだろうし、そもそもそんな抵抗をする段階まで追い込まれているときというのは、多少の時間差はあれど最終的には妖怪の手にかかっている。
つまり分身は消えているのだ。
分身が消滅した際に引き継ぐのは記憶だけだから、美鈴の言うような鍛えられ方はされていないはず。
「多分、そんなことはないかな」
最終的にそんな結論に至った俺が答えると、美鈴は対して気分を害した様子も見せずに頷いた。
「ですか。じゃあ、私の勘違いですね」
「……さて、そろそろ行ってくるよ」
「はい、お引き止めしてすいませんでした」
「いえいえ。美鈴も、お仕事ご苦労様」
「ふふ、ありがとうございます」
はにかみながら手を振る美鈴に軽く手を上げて応じながら、俺はランニングを開始した。
紅魔館に来て、というか連れ去られて今日で三日目。
なんだかんだでここの住人の中では、彼女と話しているときが一番落ち着くなあ、とかそんなことをしみじみと思いながら、俺は霧の中を走り始めた。
* * *
「――ん?」
水の跳ねる音が聞こえた気がした。
ちゃぷん、というよりも、どぽん、みたいな少し重みを感じさせる音だ。
走り始めて十分程、静寂に包まれた空気の中で不意に聞こえた音に、僅かに息が上がり始めた俺は足を止めることなく湖へ視線を向ける。
霧は濃く、白い景色の中で視界は悪い。
ただ、大きな波紋の中央に、鮮やかな緑の布地が翻りながら水中へ消えて行くのが一瞬だけ見えた。
見覚えのある姿に、俺はペースを落としながら進路を変える。
「おーい!」
聞こえるかな?と思いつつも声を上げてみて数秒ほど。
足を止めて様子を見ていると、暫くして再び水音がした。
「あら」
ほど近い水面から、見知った少女が顔を出した。
俺の姿を見て、彼女は僅かに目を丸くする。
「おはよ、姫」
「悠基じゃない」
しゃがんで視線の高さを近づけながら挨拶する俺に、どこかのほほんとした雰囲気で少女は呟いた。
彼女の名前はわかさぎ姫。
深緑の着物を纏い、楚々とした空気を漂わせる人魚だ。
普通に挨拶している通り、彼女は野良の妖怪でありながら非常に温和な性格だ。
そして俺主観の無害な妖怪ランキングにおいて栄えある最上位に君臨している。
ちなみにこのランキング、その他上位にいるのが美鈴、幽香、鈴仙あたり。
ただ、先日電撃の如く小悪魔がランクインし、激戦の模様を見せている。
今後の展開に注目したいところだ。
などと、すごく馬鹿馬鹿しい――とはいえ身の安全を確保する上では存外馬鹿にできない――思考を切るように、俺に微笑みかけてくるわかさぎ姫に気付かれない程度の小さなため息を漏らす。
「こんな朝早くに珍しいじゃない。お散歩?」
「まあ似たようなものだよ。姫も早くから元気だね」
「早寝早起き、規則正しい生活は美容のための第一歩なのよー」
意外な言葉に俺は無粋に思いながらも目を丸くする。
「へえ、人魚でもそういうの気を付けてるんだ」
「妖怪である前に女性ですから」
「おおー」
妙に感動して感嘆の声を漏らしながら小さく拍手する。
俺の反応にわかさぎ姫は得意げにはにかんだ。
とまあ、彼女と話しているとやけに和む。
和むけど…………幻想郷の妖怪として、それってどうなんだろ。
阿求さんから聞いた話では、妖怪というものは人々からの恐れを糧にしているらしい。
なので、人から全く恐れられなくなった妖怪というのは自然と消滅してしまう…………かも。
目の前で話す少女はそんな恐れというものと無縁に見えるけど大丈夫なんだろうかと、人の立場で言えばお門違いだとは思うものの心配になる。
「あら、案外どうにかなるものよ」
余計なお世話を承知でそんな旨の質問をした俺に、わかさぎ姫は頷いた。
「大丈夫なの?」
「ええ。見てて」
と、わかさぎ姫は得意気に笑みを浮かべる。
何をするのだろうと俺が待ち構えていると、不意に彼女は浮上した。
…………『水中を』ではなく、『空中に』である。
彼女の体から滴る水が湖面を派手に叩き、着物の裾から下に見える魚の艶やかな鱗は、僅かな日の光すらも反射させほのかに輝いているように見えた。
「ほら、驚いたでしょ」
「――――」
得意げに笑みを浮かべるわかさぎ姫に対し、予想外にも程がある光景に思考が止まった俺は答えられない。
「ふふ、悠基面白い顔」
「……姫、飛べ、えぇ?飛べたの?」
「そうよー」
「ど、どうやって?」
空中に浮き上がるわかさぎ姫の真下の空間に、なんの種も仕掛けもないことを確認しながら問いかけると、考え込むように彼女は首を傾ける。
いったいどういう原理で空中浮遊しているのか、さっぱり分からない。
「んー……気合?」
「んなバカな」
「でも、人魚が空を飛んだらびっくりするでしょ?しかも、そのまま迫ってくるのよ?意外と怖いでしょ?」
「あ、ああ……そういえばそんな話だった」
目の前の光景があまりにも衝撃的すぎて頭から吹き飛んでいた。
わかさぎ姫が空中に浮き上がりそのまま飛んでくる様を想像する。
……なんというか、思ったよりもシュールな光景が浮かんだ。
でも夜道に来られたら普通にビビりそう。
「確かに怖いかも」
「ふふん。でしょう?」
空中を泳ぐように尾ひれをたゆたわせながら、わかさぎ姫は得意気に胸を張った。
ちなみに彼女の魚部分だが、わかさぎ姫の身長を尾ひれの先まで図るとすれば優に二メートルを余裕で上回る。
つまり、間近で見れば結構な迫力を感じるくらいにはでかい。
そういう要素も恐怖を感じさせる一助になっているのかもしれないと、俺は勝手に納得する。
「あ」と、不意にわかさぎ姫が小さく声を上げた。
「で、でも気をつけなきゃ」
何を思い出したのか自らの顔の横であわあわと彼女は手を振る。
「驚かすにしても相手は選ばないと駄目なのよ」
のほほんとした彼女にしては珍しい真剣な様子に、俺は当惑しつつも問いかける。
「相手?」
「あっちの紅い館の住人よ」
と、わかさぎ姫が指し示す先には、霧で見えないものの俺の新しい職場が建っている。
「特にあの銀髪の人間の子。あの子は特にだめ。ちょっと驚かそうとしただけなのになます切りにされそうになったのよ!?」
顔を青くしながらわかさぎ姫はまくし立てる。
対する俺も彼女の言う人間の子に心当たりがあるおかげで凄く複雑な顔になっている。
「眉一つ動かさずに『人魚の肉は美味らしいじゃない』よ!?『今夜は刺し身にしましょう』よ!?」
「あー……」
言いそう。
そのときの記憶が蘇ったのか、わかさぎ姫は涙目になっている。
「食べられると思った……怖かった……」
「さ、災難だったね……」
時間を操る程度の能力のおかげで瞬間移動を体現する紅魔館のメイド長が、ナイフをその手に襲い掛かってくる様を思い浮かべる。
……わかさぎ姫と比較にならない迫力を感じた。
あとで咲夜にはわかさぎ姫をいじめないように頼んでおこう。
紅魔館で働き始めたとは言いにくい空気を感じた俺は、口には出さずに誓うのだった。
密かに決心する俺と、トラウマなのか記憶を呼び起こし震えるわかさぎ姫。
各々の理由で不意に会話が途切れる。
未だ空中に浮かんだままのわかさぎ姫の体から滴る水滴の音が断続的にある程度で、早朝の霧の湖周辺は静かなものだった。
清涼感溢れる空気の中で、軽い運動で温まりつつあった体温が涼められていくのを不意に自覚したとき、唐突にその静寂が破られた。
「………ん?」
「………あら」
高らかに鳴り響く音に、俺たちは揃って同じ方向へ視線を向ける。
金管楽器……トランペットかなにかだろうか。
素人目、もとい素人耳に聞いても見事な演奏は、湖に沿った俺の進路の先から聞こえてきた。
軽快な旋律は詰まることも乱れることもなく滑らかに流れ、聞いていると不思議と気分が高揚してくる。
「この音って……」
「いつ聞いてもいい音よね」
自然と呟いた言葉をわかさぎ姫が拾う。
彼女の言い方からして、どうもこの音色は日常的に聴こえてくるようだ。
「誰が吹いてるの?」
「あ、もしかして初めてかしら」
俺の問いかけにわかさぎ姫は察したように微笑む。
「プリズムリバー三姉妹って、聞いたこと無い?」
「あぁ、あるかも」
阿求さんの元で働いていた当時、彼女が話す数ある人ならざる存在の中に、その言葉を聞いた覚えがあった。
「えっと、幽霊楽団だったっけ」
自分で口にしつつ、なんともおどろおどろしい演奏を想像させる名前だと思う。
ただ、今まさに耳にしているこの演奏は、想像した暗い曲調の真逆、ついついリズムに乗ってしまいそうなくらい陽気な音色だ。
「ええ。この先にはあの子達の住処があるのよ」
「住処……」
一箇所に定住しているということは地縛霊なのだろうかと、幻想郷の幽霊に関しては疎い俺はなんとなくそう思う。
「あ」
わかさぎ姫が唐突に声を上げた。
なにごとかと隣に浮かぶ彼女へと視線を向けようとした瞬間、冷たい感触が突然両耳を襲う。
「つめたっ」
驚いて跳び上がりそうになった。
代わりにギクリと肩を竦めながら、しかし、その感触の正体を察した俺は混乱する。
「な、なに?」
俺の背後に回り込み、両耳を塞ぐように掌で押さえたわかさぎ姫。
困惑の声を上げる俺に対してわかさぎ姫は「で、でも気をつけなきゃ」と慌てた声音で言った。
耳の塞ぎ方が甘くトランペットの音色も彼女の声も未だによく聞こえるし、今のわかさぎ姫の言葉に既視感があったりで、妙に可笑しかった。
笑みをこらえようと頬肉を引きつらせながら、俺はなんとか問いかける。
「なにを?」
「あの子達の音って、感受性が高いと影響を受けやすいの」
「催眠効果でもあるの?」
「似たようなものだから、聞き入りすぎて気を抜いたりしちゃだめだからね?」
「……う、うん」
まず間違いなく親切心からくるであろう忠告に、俺はなんとか頷いた。
頷きつつも、こういう部分は妖怪として大丈夫なんだろうかと、余計なお世話もお門違いも承知でやっぱり心配だ。
「……悠基?どうかした?」
まあ、そんな心情とは裏腹に。
「っふふ、姫、ありがと」
その心遣いが思いの外嬉しかったのか、俺は小さく笑っていた。
「もう。こっちは心配して言ってるのに」
急に笑いだした俺にわかさぎ姫は機嫌を損ねたように頬を膨らませた。
そんな仕草も妙にツボったのか、ますます笑いが溢れ出す。
「わ、判ってるって」
少し自重しなければな、と剥れるわかさぎ姫を見て思うものの、反して自制心は緩まりつつあると自覚する。
未だに流れてくるトランペットの旋律が、気付けば最初に聴こえたときよりも大きくなっていた。
「あら~これは」
不意に間延びした声がした。
「うん?」
振り向けば、色素の薄い髪の少女がふよふよと低空飛行をしながら近付いてくるところだった。
その手には以前の世界で見たことのある金管楽器が握られている。
ぼんやりとした霧がかかり肌寒い中で、一人だけ昼間の暖かい陽気をまとっているかのように、ほんわかとした面持ちで近付いてくる少女。
隣で未だに宙に浮かぶ――意外と続くもんなんだな気合――わかさぎ姫が小さく手を振った。
「メルランじゃないの」
「おはよ~魚の姫様」
「おはよー」
なんだこの不思議系女子みたいなのほほんとした挨拶は。
癒されるなあ。
「それとこっちは初めて見る妖怪~」
地面に降り立ち、語尾を伸ばしながら俺へと視線を移す少女。
妖怪に間違われたのは初めてだ。
そんな些細なことに、再び俺の口から笑いが漏れかけた。
「……違う違う。俺は岡崎悠基。見ての通り人間だ」
「人間?こんな時間にこんな場所にいるなんて、変な人間なのねえ」
「はは、よく言われるよ」
初対面の少女の物言いに苦笑まじりに肩を竦める。
「そういう君は、もしかしてプリズムリバー三姉妹の一人かい?」
少女の手に持つ金管楽器を見ながら問いかけると、少女は笑みを浮かべながら頷いた。
「ええ。メルランよ。よろしくねーゆーき」
「ああ、よろしく」
自分の胸に手を当てながら名前を告げるメルランに、俺も笑みを浮かべてうなずき返した。
今もまだ、わかさぎ姫の言った幽霊楽団の住処の方向からトランペットらしき音色は聴こえてくる。
ということは、彼女たち幽霊楽団は金管楽器の担当が複数いるのかもしれないとぼんやりと推測する一方で、終始笑顔を浮かべるメルランの雰囲気につられてなんだか楽しくなってきた。
「あの、悠基?」
おずおずと、なぜか戸惑いがちな様子でわかさぎ姫に呼ばれた。
「ん?」
「……あらら、これは」
振り向いた俺の顔を見て、わかさぎ姫は何かを察したように微妙な顔を浮かべる。
彼女の呟きは中途半端に途切れ、続きがこないことに内心俺は首を傾げる。
そのついでに、そういえばさっきメルランが近付いてきたときも同じような言い方をしていたことに気づいた。
「どうかしたのかい?」
「貴方、あてられてるわねえ」
「あてられてるでしょ~」
あてられてる???
意味がわからず困惑する俺の正面で、わかさぎ姫が困ったような微妙な笑顔を浮かべ、隣でメルランが同意しながら頷いた。
「なんの話?」
「まぁいいじゃないー」
明らかに答える気がない様子のメルラン。
わかさぎ姫は何かに迷うように首を傾げる。
「んーいいのかしら?」
「いいのいいのー」
微妙に歌うように語尾を伸ばしながら、メルランが突然俺の手を握った。
不意のことに混乱する俺の手を引きながら、誘うようにメルランは軽やかにステップを踏み始めた。
「え?え?」
「なんだか私もノッてきたし、せっかくだから踊りましょー?」
あ、これ話聞いてくれなさそう。
そんなことを察した俺は、わかさぎ姫へと視線を向けた。
「どういうこと?」
困ったような笑みを浮かべたままのわかさぎ姫は、頬に手を当てる。
「まあ、いいんじゃない?」
メルランと同じこと言ってるなあ。
「ねえゆーき。踊りましょーよー」
「いいけどさ」
駄々をこねるようなメルランに手を引かれ、されるがままに俺は彼女とともに歩く。
ていうか幽霊って触れるもんなんだな…………なんて感慨は今はとりあえずうっちゃりしといて。
「俺こういうのよく分からないよ?」
「いいのよ適当で」
「そうそう」
気付けば、わかさぎ姫の笑顔から、さっきまでの困ったような雰囲気が消えている。
「そういうものなの?」
「そういうものよー」
なんだろう。
陽気に笑うメルランに、影響されたのか、いつまでも困惑しているのもバカバカしく思えてきた。
まあ、害はなさそうだし深くは考えなくてもいいか。
今もまだ、陽気な音色はどこからともなく流れてくる。
メルランに引っ張られながら、俺も釣られるように見よう見まねのステップを踏んで見る。
「そうそうその調子」
手拍子をするわかさぎ姫に言われ、俺は口元を緩ませる。
「え?上手い?」
「ふふふーゆーき下手っぴー」
クスクスとメルランが笑った。
「もう、なんだよー」
と、かくいう俺も釣られるように笑みをこぼす。
あー、でも。
結構楽しいかも。
こういうのもいいかもなー。
なんて。
年甲斐もなく――なんてことはないかもだけど――下手なステップを踏んではしゃぎながら、俺はそんなことをぼんやりと思った。
後に、このメルランという幽霊は、魔力を伴った音色で聴いた人の気分を高揚させると知った。
つまり、そんなメルランの音に、俺は思いっきり『あてられた』みたいで、その日の午前いっぱいまでやけにハイテンションだったらしい。
自分の話なのに『らしい』なんて言い方をしているけど、記憶はばっちりあったりするわけで。
ただ、人間というやつは、精神的安定を図るために良くない記憶には蓋をしてきれいさっぱり忘れてしまいたこともあるわけで。
今回のこともそれに該当するわけで。
…………結局のところ、何が言いたいかというと、
「あら悠基、今朝の鼻歌はもうしないの?」
「スキップは?」
「ダンスは?」
「レミリア様…………お願いですから忘れてくださいほんとマジで」
つまるところ、
オチがつきました(大事なことじゃないけど二回言います)
まっとうなほのぼのを目指し、のんびりスローライフ感を出そうとした日常回です。
申し訳程度に存在はぼかしてはいましたが、輝針城から先んじてわかさぎ姫に出てもらいました。ポテンシャル的には、そんなに高くは飛べないし弾幕も打てないから弾幕ごっこは出来ない程度です。主人公の姫呼び見てるとオタサーの姫感あります。
プリズムリバー三姉妹からは先んじてメルランがソロで登場してもらいました。彼女が演奏していないにも関わらず聴こえてくるトランペットの音色については求聞史紀ソースの音の幽霊的なあれです。どれだ。