ルパン四世と学園モノ!   作:早乙女 涼

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私のやっているオンラインゲームの二児小説を書こうと企画中……。
SAO、軌跡シリーズ、精霊使いの剣舞etc...色々と混ざりそうです(;´д`)


東峰学園

 

 ――午後四時ごろ。

 ところ変わり、東京湾――私立東峰学園。

 そこへ通っているであろう学生達とすれ違う様にして、ボク達三人は学園敷地内の応接室へ訪れていた。

 その場で数分待たされると、灰色のスーツを着込んだ、初老の男性が入室される。恐らく、彼がこの学園の理事なのだろう。

 応接室のソファへお掛けになったお母様の後ろへ、ボクと玄哉は立ってついていたので、そのまま立礼を交わす。

「お待たせしてしまい申し訳ありませんでした、峰様」

「いいえ、とんでもないわ。こちらこそ急なアポイントでごめんなさいね」

「いえいえ。書類の件につきましては滞りなく進んでおります」

「そう。わざわざありがとう」

 最初はお母様と理事長らしき男性とのお話ばかりだったが、それから数分ほど打ち合わせをした後、その話題の矛先はボクへと向けられた。

「そして、彼女がかの……」

「私の自慢の娘よ。紬、御挨拶なさい」

「はい、お母様。――お初にお目にかかります。峰紬と申します。どうかお見知りおきを」

 ボクは礼儀正しくお辞儀をすると、顔をあげた時には男性は優しく微笑んでいた。

「ふふ、あの黒髪の令嬢が、ここまでお綺麗になっているとは思いませんでしたな」

「以前にお会いした事がありましたか。それは大変失礼いたしました……」

「いやいやとんでもない。覚えていなくても当然ですよ。なんせこの学園の創立初期にいらしたのですから……そうですね、十五年ほど前、ですか。貴女もお兄様も大変可愛らしいご年齢だったはず」

「恐れ入ります」

「紬、彼は私の古い友人でね。当時はいいビジネスパートナーだったの」

「そうなのですか?」

「峰様には当学園の創立にも大変なご助力を頂きました。この学園も十五年。ここまで学園が成長できましたのも、峰様のお陰です。改めてお礼を言わせてください」

「そんな事ないわ。この学園を引いてきたのは全てあなたなのだから、胸を張って」

「恐れ入ります」

 ……どうやら話を聞く限り、ボクはこの方と面識があるらしい。覚えていないけれど。

「改めまして、わたくしが当学園の理事を務めさせていただいております。東方(ヒガシカタ)哲司と申します。どうか、よろしくお願いいたします」

「こちらこそよろしくお願い申し上げます」

 ボクと玄哉は丁寧に一礼すると、男性はまたも嬉しそうに微笑んでくれた。なんて良い人なんだろう。ボクの心もほんわかと温まっていくかのような笑みだ。凄く安心できた。

 ボクはそれから、東方理事のお話を数十分ほどお聞きして、空が暗くなってきた所でお暇する事となった。

 ……良い国だなあ、日本。なんて素敵なんだろう。それに少なからずボクにも色々な縁がありそうだ。凄く楽しみ。

 これからどんな人と会えるんだろう。なんて、学園の校舎を出た時のボクはそんな事を思っていた。

 

       * * *

 

 ――目の前にあったのは、大きなお屋敷。

 正門から中へ入ってみると、桜の木が多く植えられているのが分かった。あと二カ月ほどすれば、塀の外からでも花見が出来そうなほどだ。

 しかしいずれにしても敷地面積はフランスの本宅と同じくらいの規模。これは一体……。

「紬、入るわよ」

「あ、はい。失礼いたしました」

 お母様は戸惑う事無く、屋敷の入り口までの長い道を歩いてたどり着くと、何もしなくてもドアが勝手に開いた。操作しているのか、それともここへ人が立つと自動的に開く仕組みになっているのか、よくわからない。いずれにしてもボクとしては新感覚だ。自動ドアの屋敷だなんて初めてだから。

「う~い……にしても(さみ)ぃな」

 さっきまで空気と化していた玄哉は身体をすくませている。流石の彼もコートなしでは厳しいだろうに。

「風邪を引かない様にね」

「わーってるよ……」

 屋敷の中へ入ると、ふわっと暖かい空気がボク達を包んでくれた。

「わ、あったかい……」

 半身で振り向いたお母様は、ふふっと微笑んだ。

「ここが私達の新しい住まいよ。屋敷の管理は業者に任せていたけれど、紬が居てくれるるのなら十数人も必要なさそうね」

「光栄でございます、お優しいお母様。その様な貴重なお言葉をいただけるとは思ってもおりませんでした」

「あら、本宅でも一番頑張って家事をしてくれているのは貴女じゃない。当然の事だと思うわよ?」

 そう言ってウィンクされるお母様。ああ、相も変わらずお美しいうえにお優しい。

 ボクはつい目頭が熱くなってしまう。

「やだ、貴女ひょっとして泣いているの? ダメよ、女が涙を見せる時はプロポーズの時くらいで良いのだから」

「も、申し訳ありません……感激のあまり、つい……」

 ボクは懐からハンカチを取り出し、そっと目元を拭う。そしていつもの笑みに戻れた。

 その間、お母様はずっとボクの頭を撫でてくれていた。

「今後は貴女も学業が入ってくるのだし、一日中家事をしているわけにもいかないでしょう? 何人かのメイドと、庭師などの従業員も雇っておいたわ」

 聞いてみれば、メイドは五人、庭などの管理業者を含めると合わせて七人ほどになるそうだ。

 そこでいよいよ、ボクも学校へ通う事になるんだと自覚する。

「学園へ通うのは今月末だから……そうね、あと一週間はあるわ。それまでに、屋敷にも、この島にも慣れておかないとね」

「はい、かしこまりました」

「私はもう仕事で発ってしまうけれど、何かあったら必ず呼びなさい。いつでも駆け付けるわ」

 お母様は最後にボクをぎゅっと抱きしめると、またもウィンクしてそのまま去っていってしまう。

「お母様、行ってらっしゃいませ」

「ええ。行ってきます。――ああ、それと紬。ここの所有者は貴女ということにしてあるわ。主として相応の振る舞いをしてね」

 そう言って、お母様はお屋敷から出て行ってしまう。

 玄関フロアに、ボクと玄哉だけが取り残されてしまう様な形となった。

「……それで、俺の部屋はどこなんだ?」

「さ、さぁ……。というか、ここの主がボク!?」

 ここ一番の疑問と、トンデモナイ事を言い残して。

 お母様の笑い声が、頭の中で反芻するように響き渡った。

 

       * * *

 

 ……それで、どうしてこんなことになっているんだろう。

「「………」」

 一人は玄哉。もう一人は和服の袴を着込んだ高校生くらいの少年。

 その二人が、ボクの注いだ紅茶を飲みながらテーブル越しににらみ合っている。

「……あの、二人とも。そろそろこの痛々しい沈黙を止めてくれないかな。メイド達も怖がっているんだけど」

 ここはあくまで公平的に、紳士的に応対するべきだ。この豪華な談話室のドア近くに立っているメイドさん五名が、びくびくと肩を震わせている。かわいそうでいたたまれないよ。

「まあよい……。――それより、久しいな紬。また髪が伸びたか」

「まあ、お陰さまでね」

 玄哉とは違う和服の少年……石川伊右衛門は、話題を変えようと、ネタをボクの髪に持ってきた。良い判断だろう。

 彼と玄哉は所謂()ンエンの仲。故に合う毎にこんな空気が必ず訪れる。二人とももういい歳なのだから、そろそろやめてもらいたいものなのだけれど。

「君達、すまないね。ボクが今日からこのお屋敷の主人になる、峰紬だ。これからよろしく頼むよ」

 美少年顔負けの微笑みかつ自分の中でもっとも男性らしい低い声を出して自己紹介すると、メイド達は揃って一礼した。うん、良い子たちが揃っているみたいだ。

 ボクが自分の紅茶を淹れ、二人の間の一人掛けソファへと座り、一口。ようやく二人も落ち着いたのか、それぞれボクの淹れた紅茶へと少しずつ手にする頻度が増える。

「すまないけれど、ここはボク達三人にしてくれないかな? 君達はーそうだね、できれば夕食の準備を」

「畏まりました、お嬢様」

「うん、素直な人は大好きだよ。何かあったらすぐにボクを呼んでね」

「はい。それでは、失礼いたします」

 五人並ぶ若いメイドの一人が、ボクと言葉のキャッチボールをしてくれた。言語はフランス語。彼女はいい話相手になってくれそうだ。

 そしてゾロゾロとではなく、ササッとその場から出ていくメイド達。所作も何もかも洗練されているのが分かる。初々しさは残るけれど、みんな優秀なんだろう。

「……さて、第三者の目はなくなったワケだけど。ふたりとも、せめてその険悪なムードだけでも取っ払ってくれないかな? でないと外へ放り出すよ?」

「「………」」

 それだけはまずい、といった顔を二人とも一斉に出し合った。そして頷き、はあ、ふうと息を吐く。いつもの事だ。ボクが仲裁に入らないと、この二人はいつまでも無言で険悪ムードなままなのだから。

 慣れ親しんだ友人……というよりかは、幼馴染の関係だからこそ耐性のつくこの空気。メイドさん達然り、第三者としては近寄りがたい雰囲気なのだろう。今後も注意しなければ。

「伊右衛門はいつからこの屋敷に?」

「二年ほど前の事だ。この屋敷の管理を、そなたの母君より賜った」

「そうなんだ」

 となると、伊右衛門は庭師という扱いになるのかな? 小さい頃からフランスの本宅へ盆栽を持ってきていたし。

「とにかく久しぶりに伊右衛門の顔が見れてよかったよ。元気そうで安心した」

「それはこちらのセリフだ。……お前も元気で何よりだったが」

「……まあな」

 玄哉はむすっとした表情でそっぽを向いた。これは彼なりの挨拶だ。伊右衛門だってそれくらいじゃ怒らない。

「伊右衛門は背も伸びたね。いくつになったの?」

「175ほどになる」

「うわ、本当に大きくなったね……ボクなんかまだ160もいかないよ」

 まあ、それはあまり日に当たらないところで生活していたからなんだけど。それでも高身長の人は憧れる。

「よいのではないか。日本の女子(おなご)は大体そんなところだ」

「そういうものかな。お父様の血も継いでいるんだし、お兄様のようにもう少し伸びてくれてもいいんじゃないかと思うんだけど」

 んーっと自分の頭を軽くぽんぽん叩いて唸ると、伊右衛門はフフッと目を伏せて笑う。

「拙者はその様な紬がよいのだがな」

「おー嬉しい事言ってくれるね。ありがとう伊右衛門」

 ボクは安心したように微笑むと、伊右衛門は少し顔を赤くして紅茶を飲んだ。うん、やっぱりまだ女の子には耐性付いてないのかな。

 伊右衛門は小さいころから()っつり――じゃなくて、女性が苦手なのだ。会話するだけでも少しだけ頬が赤くなるから、あまり話せない。ボクはこの通り男装だから、彼はかろうじて会話が出来るレベルなのだ。

 いっそ世界中の女性が男装すればいいのではないかって? それは駄目だよ、お母様の美しさは男装でもにじみ出るほどだけれど、やっぱり女性モノの服の方が映えるんだから。

 とまあ、この二人がボクにとっての仕事仲間かつ相棒であり、幼馴染。小さい頃はお兄様がボク達を引っ張ってくれていたけれど、流石にお仕事が忙しいみたいで、ボクがフランスへ戻って来た時にはもう一緒に遊ばなくなってしまっていた。

「そういえば、(キラ)殿は今、何処(いずこ)へ?」

「うん。お父様と一緒に世界中を飛び回っているよ」

 峰煌・ルパン四世。それがボクのお兄様の名前。基本的に四世と呼ばれているけれど、ちゃんとお名前もあるのだ。

「そうか……。紬も心労が絶えぬな」

「まあね」

 それから暫く談笑した後、玄哉が自室へ行きたいという事で席を立ったため、ボク達もそれに合わせてティータイムを切り上げることにした。

 


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