落第騎士と怠け者の天才騎士   作:瑠夏

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episode.13

 

 

銃声が鳴り響き、次いで悲鳴がモール内を駆け巡る。

急な出来事である為、白雪とセリスを除いた他の人たちは何が起きたのかまだ理解が及ばず困惑していた。

銃声が聞こえるのは同じ階の向かいの方。そこに目立ったものはない。あるとすればトイレくらいだろう。なのに何故、銃を乱射しているのか? 今は考えても仕方がない。白雪はこの状況をどう逃れようかと思考を働かす。

 

(間違いなくすぐにここも襲われる。それより早く子供たちを避難……は間に合わないだろうから、隠さないと)

 

「セリス!」

 

「ええ! みなさん! 落ち着いて私についてきてください!」

 

いち早く状況を理解していた二人は早急に指示を飛ばす。状況をわかっていなくとも、緊迫した雰囲気からただ事ではないと理解した親たちは、子供の手をしっかりと握り、セリスの指示に従って動く。

 

しかしーー、

 

「どこに行こうってんダァ?」

 

絡みつくような声が聞こえてきたかと思うと、一拍も待たず銃声が鳴る。

 

「「「きゃああああああっ!!!!」」」

 

動画や写真でしか見たことがないであろう銃が目の前で乱射されたことにより、皆がパニックに陥る。悲鳴をあげるもの、地面にしゃがみ込み頭を隠すもの、命乞いをするもの。収拾がつかないまでに状況は最悪なものとなってしまった。

白雪はこれ以上、現状をひどくしないためにアサルトライフルを携帯している男の意識を沈めようとするが、セリスに手で制された。

 

「ダメよ。あの男を取り押さえるのは簡単だけど、そんなことをすれば連中は何をしでかすかわからないわ。ここにいる人たちだけなら私たちで簡単に守れるけど……」

 

白雪たちがいるのは大型のショッピングモール。運悪く、今日は休日で買い物に来たお客が大勢いる。こうも広くては流石に白雪とセリスだけでは手が回らない。だからセリスの静止の判断は正しかった。

 

「ここはあの男の言うことを聞きましょう」

 

「…………わかった……」

 

 

 

モールの一階。大きく開けている空間に、モール内にいた人間が全員集められていた。周りには銃器を武装したテロリトスが何人も陣取っている。

 

(はぁ、どうしてこうなるかなぁ……)

 

一箇所に集められた中、息を潜めていた白雪は内心でため息をついた。

白雪の他に、セリス、ステラ、一輝の妹の珠雫がバレないよう、心がけていた。特にステラとセリスは国内外問わず知れた人物であり、今最も注目されている《伐刀者》だ。そのため、二人は帽子を深くまで被り、一般人を装っていた。そのため、白雪も含め現状誰も動けないでいた。

さて、どうしたものか……と、考えていた白雪に小さな声がかかる。

 

「シロちゃん、ちょっといい?」

 

「なに?」

 

バレないよう最大限まで声を抑えて会話する。視線だけを隣にいるセリスに向けると、近くにいた珠雫が言う。

 

「私に考えがありますが、時間が必要です。それまで絶対に気づかれないようにしてください」

 

それを聞いた白雪たちはわかったと頷く。今この場で何か策があると言うならありがたくお任せする。だが、もし万が一の時のためいつでも出られるよう神経を張り巡らせ警戒する。今の最優先事項は白雪たち《伐刀者》以外の一般人の安全だ。

ならばこそ、慎重にならなくてはいけない。

 

(黒鉄妹の策が完成するまで何事も無いといいけど……)

 

この先の流れに、不安を覚えるが今は待つしか無い。

と、白雪は人質の中に妊婦とその子供の家族が目に止まった。母親が恐怖に耐えながら、ソフトクリームを持つ子供に安心させるように抱きしめている。しかし、子供の方はテロリストを睨みつけており、今にも掴み掛かりそうな雰囲気だった。

それだけはさせてはならない。最悪、死人が出る事態に発展しかねない。母親と、産まれてくるであろう、弟か妹ーーもしかしたら両方かも知れないーーを守ろうとするその覚悟は賞賛されるものだが、この場だと蛮勇。さらに場を乱す最悪の行為になりかねない。

故に、白雪は止めようと判断する。

 

「少年、お母さんや産まれてくる兄弟の為に身体を張ろうとするのは立派だけど、今は落ち着きな」

 

「え?」

 

買ってもらった飴を一つ少年に与え言う。少年は渡された飴と白雪の顔を交互に見て、驚いていた。

 

「もう少しで助けが来てくれるから」

 

白雪は子供に軽く笑いかけると、元の場所に戻っていく。

 

(取り敢えずこれであの子供が飛び出すことはない……と思いたい)

 

断言はできないが、落ち着かせることには成功したのだ。そこまで心配する必要もないだろう。

戻ると、何故かセリス達が暖かい目で白雪を見つめていた。何だと尋ねたかったが、必要のない会話は避けたほうがいい。白雪はセリス達から視線を切り、テロリストの動向を見ることにした。

アサルトライフルを装備した男達が少なくとも十数人は確認できる。

 

(まだか、黒鉄妹)

 

目を閉じて集中している珠雫を見るに、まだ時間がかかりそうだった。今はまだ我慢だ。

 

(きっと、一輝がどこかで隙を狙っているはず。それはきっと黒鉄妹の策が行使された瞬間。そのタイミングで俺も飛び出せるようにしておくか)

 

白雪はいつでも《氷輪丸》を展開できるよう、準備しておこうと判断した。

そして、その判断が正しかった。何故なら、事態が一瞬にして変化したからだ。それも、最悪な方に……。

キュン、と風鳴りをたてて、空色に光る矢が武装した男を貫いた。

 

「ぎゃっ、あ……!」

 

急に仲間がやられ、慌てる男達。しかし、流石にテロを起こす人間だ。こう言う事態に陥ってもすぐに持ち直した。

 

「《伐刀者》がどこかに隠れてやがったのか。もういい、大人しくしてるのがイヤならァ、全員ぶっ殺してやるよォォ! テメェら! 人質全員蜂の巣にしてヤレェ!」

 

「へっ!そっちの方が手取り早いゼェ、ビショウさんよォ!」

 

待ってましたとばかりに、アサルトライフルを嬉々として構えるテロリスト達。白雪はとっさに《固有霊装》を顕現させようとする。

 

(くそッ! 誰だよ! 下手に手を出したバカはっ!?)

 

「最悪ね」

 

見れば、セリスもステラも顔を歪めていた。そして、珠雫はと言うと、

 

「《障波水蓮》ーーーーッッ!!」

 

完璧なタイミングだった。水の防壁が人質とテロリストを分裂させる。

それが合図だった。

 

 

「行くぞ、《氷輪丸》」

 

《固有霊装》を顕現させた白雪は《障波水蓮》を突っ切って行く。背後から珠雫が静止の声をかけるが、すでに動き出していた白雪は止まらない。乱射される銃弾を全て防ぐほどの防御力をもつ《障波水蓮》を真正面から突破するなど危険だと、珠雫は伝えようとしたのだ。

しかし、珠雫の心配は杞憂に終わる。

《氷輪丸》が水の防壁に触れた瞬間。氷が流れる水の一部を遮り、外へと出る抜け道が完成する。人一人が通れる程度の大きさだ。白雪がその間を通り、《障波水蓮》から出ると氷は砕け水の防壁が元の姿に戻る。

 

「銃弾を防げるなら問題ないだろう。ーーそれなら」

 

白雪は《障波水蓮》に乱射する兵士の懐に瞬時に入る。乱射に夢中になっていた男は気づくのが遅れ、白雪が薙いだ一閃を胴体に受ける。

血飛沫が舞う。白雪はテロリスト相手に《幻想形態》ではなく刃のついた状態で顕現させていた。一切の手加減なし。胴を斬られ、痛みに悲鳴をあげる兵士を白雪はゴミを見るような目で見下ろす。

 

「ひっ……! た、たすけて、くれ! い、いの、ち……だ、け……」

 

命乞いをする兵士の言葉が徐々に鈍り、最後には完全に喋らなくなった。見れば、その男は固まっていたーーーー内側から。

 

「《氷輪丸》に斬られてただの斬傷で済むと思った? そんな訳ないじゃん。《氷輪丸》は触れたものは凍らす。特に人体なんて血液も合わせれば大量の水の塊だ。凍らせやすい……って、もう聞こえてないか」

 

凍った男から視線を離し、次の標的を決める。テロリスト達は、一瞬恐怖を浮かべたものの仲間がやられたことに激怒したのか、数人単位で銃を乱射し始めた。

白雪は《氷輪丸》を地面に突き立てる。すると、地面から氷の壁が白雪の全方位を囲い銃弾を弾いた。

 

「なにっ!?」

「こんのぉ!」

「撃って撃って撃ちまくれ! 反撃の隙をあたえるんじゃねェ!」

 

尚も撃ち続けるテロリスト達に、白雪は呆れた。

 

「反撃の隙を与えない? それは無理だよ」

白雪は氷の壁に手を触れる。

 

「貫け」

 

そう、言葉を漏らす。すると、全方位の氷壁から氷が伸びて行く。先が鋭利に尖っており、人を貫くなど容易い形態になっていた。勢いよく、伸びて行く氷は兵士たちに突き刺さり、鮮血を撒き散らしながら瞬く間に凍っていく。助けを請う時間すら与えない。

チラッと、反対側を見る。《障波水蓮》で守っているとはいえ、いつまでも攻撃されていては鬱陶しいだろう。だからそちらも対処しようとしたが、セリスとステラ、そして一輝が敵の大将を倒していたので問題なかった。問題があるとすればそれは過剰戦力ではあることだろう。A級騎士が二人にAランクに買ったFランク。流石にその戦力は少しだけ同情してしまう。

向こうは問題なしとわかると、後は残兵だけ。

 

「……とその前に、あの光の矢に邪魔されるのはウザいから取り敢えずあの辺凍らしておくか」

 

白雪は氷の矢を無数に作り出し、矢が飛んできた方向に撃ち出す。場所は二階のフロアの一角。矢が奥まで進む。直撃するかはわからないが、矢が壁など物に当たると砕け、辺りを凍りつかせていくため、その場にいれば必ず凍る。また矢が飛んできたら今度はそこを凍らせればいい。最悪、二階フロアを全て氷に閉ざすことも考えている。だが、そうする前にこの騒動を収めればいいだけだ。残った兵を片付けようと《氷輪丸》を構えた。

が、既に終わっていた。

反対側にいたはずのセリスがいつの間にか白雪の加勢に来ていたのだ。手助けなど要らなかったが、早めに事態を収拾できたのならそれでよし。

 

「シロちゃん怪我はない?」

 

セリスが固有霊装、《皇鮫后》を片手に駆け寄ってくる。心配そうに覗き込んでくるのは、白雪が一人で戦っていたからだろう。

白雪は軽く両手を上げて無傷アピールをする。それを見て良かったと胸をなでおろすセリスに、白雪は苦笑した。

 

「心配しすぎ。こんな奴らにやられるわけないじゃん」

 

「それでも、一人で戦ってたんだから心配くらいするわ」

 

「……そっか。なら、心配してくれてありがとう」

 

「うん。シロちゃんも無事でいてくれてありがとう」

 

「感謝するところおかしいでしょ」

 

「あんたたち、この状況でよくそんな話ができるわね」

 

この場の雰囲気に合わない会話を広げる白雪たち。そこに呆れた様子のステラが合流し、その後に一輝と珠雫ともう一人、知らない男が来た。高身長の男だ。それだけで白雪はこの男は自分の敵だと判断した。

 

「ねぇ一輝。何故だかあたし、この子にすごく睨まれているのだけど……」

 

「あ、あははは……。気にしないであげて……」

 

一輝の乾いた笑いに、高身長の男が戸惑いながらも頷く。暫く睨み続けると、白雪はジト目で一輝に問いかける。

 

「一輝この人、誰?」

 

「あ、ああ、彼? は有栖院凪。僕たちと同じ破軍学園の一年生で、珠雫のルームメイトでもある」

 

「よろしくね、白雪ちゃん」

 

「えっ? なんで俺の名前知ってるの?」

 

ゾクッと、背中に悪寒が走る。見ず知らずの男にいきなり名前を言われれば恐怖を感じる。それを察したのか、有栖院が誤解を解くように話す。

 

「別にあたしはストーカーとかじゃないわよ? 貴方、自分がどれだけ有名かわかってるのかしら。日本の学生騎士で二人目のAランク騎士、春日野白雪の名は超有名よ。特に、学生騎士の間では知らない者なんていない程にね」

 

「ふーん、そうなのか。俺の事知ってるみたいだけど一応。春日野白雪。好きなものは飴、嫌いなものは身長がものすごく高い人。あと、俺のことを見下ろす人」

 

「な、なるほど。さっきあたしを睨んでいたのはそういうことね……。それにしても、貴方のことを見下ろす人って、それ、殆どの人にーー」

 

「アリスストップッッ!」

 

一輝が有栖院のセリフを中断させる。有栖院はなんで止めたのかはじめは分かっていなかったが、喉元に剣先を突き立てられているのを見て理解した。

 

「……何か言った?」

 

「い、いいえ…………。何も言っていないわ……」

 

凍てつくような白雪の視線に、有栖院は冷や汗が流れる。有栖院は分かってしまったのだ。これ以上何か言うと本気で殺されかねないと。

有栖院がそう言うと、白雪は剣先を離して《氷輪丸》を地面に突き立てる。それで話は終わり。

一輝が珠雫に治癒はできるかと聞く。誰か怪我でもしたのだろうか? 白雪は順にセリスたちを見ていくが誰も外傷は見当たらない。では何故治癒を? 疑問に思ったが、一輝が指を向ける方を見ると、片腕を失い、大量の血を流していたビショウの姿があった。

 

(止血か。あのまま放置したら死ぬかもしれないしな)

 

珠雫は嫌そうだったが、最愛の兄を殺人者にしないため、渋々だが治癒を行うことに納得した。一輝が油断はしない様にと珠雫に言った刹那。

 

「動くなァァァァア!!」

 

『ーーーーッッ!?』

 

突然の引きつった悲鳴にも似た怒声。

それはあろうことか人質の中から響いてきた。全員が一斉に振り返り、そして見る。

若い男が中年女性のこめかみに拳銃を突きつけている光景を。

 

「ガキども動くんじゃねぇ! 動くとこのババァの頭を吹っ飛ばす!」

 

「人質の中に紛れてたのは……テメェらの仲間だけじゃァなかったってことだよ間抜けがァあ! 俺たちを拘束もしないでペチャクチャと話しやがってェ。テメェら自分のミスで形成逆転だぜェ?」

 

ビショウが狂ったように笑う。そして珠雫が治癒できることを聞いていたビショウは珠雫に腕を治すよう命令する。人質がとられているこの状況下で、こちら側に選択権は無い。

仕方なく、珠雫が治癒に向かおうとする。しかし、白雪が肩を掴んで珠雫の歩々を止めた。

 

「白雪くん!?」

 

今、相手の要望を無視するのは人質を見捨てるのと同義。故に、白雪の行動に一輝は驚いた。

それを見ていたビショウが叫ぶ。

 

「なにしてんだよォ! さっさとこっちに来やがれつってんだよォ! それとも人質は死んでもいいってかァっ!?」

 

ビショウの言葉に人質の中年女性はひぃっと悲鳴をあげる。

 

「ちょっと! あんた今がどんな状況かわかってるの!? 人の命がかかってるのよ! ふざけるのもいい加減にしなさいッッ!!」

 

国民は皆家族。力あるものは力なきものを守る義務があると、そう思っているステラは人質は絶対に死なせたく無かった。だから白雪の行動に怒りが湧き上がり、怒声を発する。

白雪はそれを無視して一輝たちに一言だけ言う。

 

「別にいく必要はない」

 

「だからーー」

 

「もう手は打ってる」

 

「え?」

 

驚くステラたちを尻目に、白雪はビショウ等を見て言う。

 

「お前たちのほうこそ、自分の状況を理解しているのか?」

 

「ああっ! それは俺たちのセリフだァ! こっちは人質とってんだよォ。お前たちは初めから俺たちの言いなりだろうがァっ!」

 

それを聞いて、白雪は哀れを含んだ目で見る。ビショウはそれに気づき、怒りで叫びだすが白雪の一言で黙ることになる。

 

「俺はお前たちを初めから拘束していたぞ?」

 

「……な、なに……?」

 

言っている意味がわからないのだろう。顔を歪めながら聞くビショウだが、その瞬間にあることに気がつく。腕を切られた痛みで倒れていたビショウは自分の両足と片腕が動かないことに今更に気づく。

原因は一目瞭然だった。

 

「こ、凍ってる!? 俺の足が、腕がァァァァア!!!!」

 

恐怖に顔を歪めるビショウ。見れば、突き立てられた《氷輪丸》を中心に、一階の地面が全て凍り付いていた。

倒れ伏しているビショウの仲間は全員が凍っており、人質を取っていた男の足もすでに地面と一体化していた。

 

「い、いつのまに……」

 

唖然と目の前の光景を見つめるステラに白雪は言う。

 

「あの時、《氷輪丸》を地面に突き立てた時から」

 

「あっ」

 

有栖院の喉元から話した後、白雪は地面に突き立てた。そして、徐々に魔力を送り、地面の表面から凍らせていたのだ。

 

「どうして一気に凍らせておかなかったのよ」

 

紛らわしいと唸るステラ。白雪は「はぁ」とため息を漏らして、ステラを呆れた目で見る。

 

「あのなぁ、テロを起こすやつらがあれで終わるわけないだろう。何処かに最低でも一人は隠れているのは明確だ。初めっから凍らせたら警戒して出てこなくなるだろ? だから隠れているであろう残兵をおびき出し、そこで一気に凍らせた。これでわかった?」

 

ぐうの音も出ないとはまさにこのこと。おおよそ、面倒だったとか怠いとかで行わなかったとで思っていたのであろうステラが、まさかの正論に面食らい、項垂れる。

 

「もう良いッ! そのババァを撃ち殺せ!」

 

「まずいーー! 人質が……!?」

 

「だから、手は打ってあるって」

 

白雪がそう答えると同時に、拳銃を持っていた男が目に見えて狼狽する。

 

「バカな……銃弾が……でない」

 

「何バカなこと言ってやがる! そんなことありえるわけねぇだろォ! 今更怖気付いたとかほざくんじゃねェぞォ!」

 

暑くなっているところ、白雪は冷や水をかけるよう言う。

 

「この空間の、全ての発火現象を抑えた。だから炸薬に火がつくことはないーーーーっということで後は任せたよ、セリス」

 

「任されたわ。と言ってももう準備は完成しているのだけれどーー戦雫(ラ・ゴータ)」

 

「うぁあああ!」

 

「ぎゃっ、あ……!」

 

魔力を帯びた水が矢のごとく飛翔し、ビショウと人質を取った男を幾重にも射抜き、完全に無力化した。

 

「お疲れ様」

 

「ありがとう。シロちゃんもナイスな働きだったわ」

 

お互いに賞賛し、軽く笑い合う。

テロリストが全員倒れているのを見た人たちが、思い思いに歓喜の声を上げる。そんな時、白雪たちに声がかかる。声をかけたのは駆けつけた警察の責任者だ。

 

「おーい。君たちが事件を解決してくれた学生騎士だね? 今から調書を作るから署に同行してもらえるかい?」

 

それを聞くや、白雪の顔が歪む。もう帰りたかった。今日は慣れないことの連続だ。これ以上はうんざりだった。

白雪の心情を察していたセリスが白雪を後ろから包み込むように抱える。

 

「なに?」

 

白雪が疑問を浮かべると、セリスはニコッと微笑み、

 

「最後まで頑張りましょ」

 

「…………」

 

白雪は深く、ため息をつくのだったーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警察がモール内を詮索していると、二階の一角で、凍りついた男が発見された。

その男は破軍学園の制服を着ており、なぜか弓を構えながらドヤ顔のまま凍っていたという……。




今月中に一巻の内容を終わらせたいので、あと2話、今月に投稿します。

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