最後の更新がちょうど10話目で、キリがいい数字ですね。
狙ってやったわけではありませんが笑笑
来年からは出来ればですが、更新速度を上げていこうと思っています。
セリスとショッピングモールに行くと約束した日の朝。学校の正門でセリス・リーフェンシュタールを待つ春日野白雪の姿があった。
白雪の格好は珍しくもいつもの学生服とは違う。シャツにジーンズという楽な格好。
白雪は学生服か、適当なジャージで言いといったのだが、セリスがそれを却下。ならばせめて楽な格好でとお願いしたところ、今の服装になったのである。彼女曰く、『デートなのだから最低の格好はして欲しい』とのこと。
そして、何故同じ部屋のはずの白雪が早めに来てセリスを待っているのかというと『デートらしく待ち合わせをしたい。』
そんな理由から白雪は今もこうして正門で待っていたのだが、そこで思わぬ人物と遭遇した。
「白雪くん? 珍しいね、君がこんな朝早くから起きてるなんて。何処かに出かけるの?」
そう訪ねてきたのは、白雪の数少ない友人、黒鉄一輝だった。彼も自分同様楽な格好だ。
後ろには瀟洒な仕立ての白いブラウスの上に春らしいカーディガンを羽織ったステラ・ヴァーミリオンもいた。
彼女は一輝について来た感じで、自分から白雪に声をかけるような事はなかった。
だが二人の顔には驚きの表情が浮かんでいたのを見て白雪は思った。
(二人は俺の性格をある程度知ってるから驚くのは当たり前か……)
白雪は朝、早く起きる事はあっても出かける事はない。それは実家にいた頃からも変わらずで、白雪本人すら驚いている。
「俺はセリスと一緒にショッピングモールへお買い物。模擬戦の約束を果たしてもらう」
それだけ言うと一輝とステラは「ああ」と頷き納得する。それと同時に、一輝たちは周囲を見回すと、今度はステラが尋ねた。
「で、そのセリスはどこにいるの? 近くにはいないようだけど?」
「セリスに待ち合わせをしたいって言われたからだよ。俺が後から行くって言ってるのにこういう時は男の子の方が先に行って待つものよって。だから先に行ってって言われて追い出されるようにしてここに来たんだ…………にしても遅いな」
そう言って不満な顔をする白雪に、一輝は苦笑。ステラはなんでそんなこともわからないの? と呆れていた。
そして「あのね」と続き、
「女性との待ち合わせなら男が待つのは当たり前なのよ。そんなこともわからないなんて、これだから世の中の男はダメなのよ。…………一輝を見習いなさいよ」
最後にさり気なく一輝を持ち上げる一言を言うが、隣にいいる一輝を気にしてか実際はごにょごにょとしか聞こえない。
一輝が最後の部分が聞こえなかったとステラに聞いていたが、白雪は別にどうでも良いことと思っているので、もう一度聞き直すという面倒ごとを避けた。
(遅いな〜、怠いな〜、眠いな〜、もう帰ろっかな〜)
実は正門でもう三十分ほど待たされている。
一般男性がデートする場合、待ち合わせに三十分待ったとしても、好きな女性とのデートのためなら不満はないことだろう。
だが、白雪の場合。性格的な面を見ると、例え十分であろうと待つことは苦痛だろう。それがましてや、恋人ではないのだから。
そう考えると、三十分も待っていたこと自体が奇跡に近い。
だが同時に、限界が近いのも確か。これ以上待たされるのなら、白雪は寮の自室へ帰ることだろう。というよりも、すでにそう思い始めている。まだ帰らずにいるのは、一輝とステラが白雪に話しかけているからだ。
特にステラは、セリスと小さい頃から仲が良かったため、彼女との約束を無視して帰ろうと雰囲気を出す白雪を正門にとどめていた。
「でももう三十分は待ってるんだよ? セリスは俺の性格をわかってるから、帰っても文句は言われないと思うけどなー」
「女の子は準備に時間がかかるものなの! それが異性と出かけるとなればなおさらね。それに、あんたとセリスは同じ部屋なんだから、帰ったところでセリスに連れてこられるだけよ? 結局は出かけることになるんだからそこで大人しく待ってなさいよ。それとも何? あんたは二度手間になるような“面倒くさい”ことを好きでやるの?」
「………………あ」
「白雪くんって、時々抜けてるよね……」
今気づいたかのような物言いに、一輝は苦笑する。
結局は出かけなければならないのなら、白雪は正門で大人しく待つことに決めた。
一輝が話し相手になってくれたお陰で、白雪は眠らずに済んだが、少し放置ぎみになってしまったステラは大変ご立腹だった。一輝は慌ててステラにも話を振るが、ヘソを曲げてしまい、プイと、顔を明後日の方へ向けていた。
(皇女様がヘソを曲げたら本当に面倒そうだなぁ)
必死にステラに話しかけている一輝を見て、白雪はそう思った。
それからどのくらい経っただろう? 時間経過で言えば五分。しかし、白雪にはもっと長く感じていた。
もう寝てしまおうか。白雪がそう思った矢先。
「はぁ、はぁ……ごめんなさい、遅れてしまって……」
「セリス、遅い……、よ…………」
息を切らしているところを見ると、彼女は走って来たようだ。
でも、四十分近く遅れてきたことには変わりない。白雪は文句の一つは言ってやろうとセリスを見た。そしてーーーーその姿を見て固まった。
それは一輝もステラも同じだった。
「本当にごめんなさい。服を選ぶのに悩んじゃって………どうしたの? みんな揃って固まったりして」
息を整えたセリスは、遅刻の理由を説明しようとするが、固まっている白雪たちを見て、不思議そうに尋ねた。
だが、白雪たちがセリスを見て固まってしまったのも無理はない。
彼らが固まっている原因はセリスにあった。
純白の清楚なドレスに、剥き出しの肩を隠すように春らしさの明るい色のカーディガンを着ている。飾り気こそ控えめだが、身に纏う少女が持つ優美さはまるで損なわれていない。
身体のラインがくっきりとわかる薄地のドレスのおかげで、普通の制服姿よりも豊かな胸がはっきりとわかり、艶めかしさが数段上がっているように感じられる。
「…………」
「…………」
「…………ちょっと、それは反則でしょッ!」
白雪は見惚れ、一輝は顔を背け、ステラは自分との差に悔しくて地団駄を踏んでいた。
「ーーーーッ! 一輝! ちょっとこっちに来なさい!」
「えっ、ちょっとステラ?」
ステラは顔を背けているが、一輝がセリスに見惚れていることに気づき、無理やり手を掴んで正門から離れていった。
その場に残された白雪とセリス。
セリスは急なステラの行動に固まる。
自分を見てからのあの行動だ。仕方がないといえば仕方がない。
「えっと…………、シロちゃん、どう?」
ステラたちが見えなくなると、白雪は漸く我に返る。すると、同時にセリスが自身の全身を見回しながら格好について尋ねてきた。
いくら毎日面倒くさいと全てを跳ね除けている白雪でも、セリスの優美さは面倒くさいで処理するには不可能だった。
でも、ここで素直に認めるのはどこか悔しいと思った白雪は、セリスから顔をずらしながらも言った。
「別に…………普通」
「フフフ、普通か」
白雪の顔をニヤニヤと見ているセリス。
彼女はわかっているのだ。一見、興味なさそうにしているが、白雪が照れて顔を背けたことに。
それはつまりは、全てを面倒と片付ける白雪が、照れてしまうほど、今のセリスは魅力的だということだ。
「ありがとう」
照れている白雪をからかってやろうかと考えていたセリスだったが、ご機嫌斜めになるのが目に見えていたため止めた。
「それよりもさ、早く行こ」
そう言う白雪に照れた様子は見られない。
待たされた分、早く行きたいと顔が物語っていた。
「そうね、行きましょうか」
セリスがそう言うと、同時に右手を向けてきた。
「うん?」
意味が理解できず、白雪は首をかしげる。
そしてセリスを見てみると、笑顔で「はい」とさらに手を近づけてくる。
ーーあれ? 何か持ってきてとか言われてたっけな。
そう思うや否や、白雪は思い出すため頭をひねる。思い出せないだけでポケットに入れているのかもと、ポケットを探ってみたが何もない。
「何をしているの? ほら、早く」
白雪の行動を不思議におもったのか、セリスが声をかけてきた。
白雪は正直に答えるべきか、決めあぐねていた。何を忘れたのかすら分からないが、誤魔化せるのならそれに越したことはない。
でも、手を差し出されている状態で誤魔化すなんてことができるのだろうか?
(どう考えても無理だろ。今要求されているのにどうやって誤魔化せと?)
そもそも、誤魔化そうと考える方が間違っているのだが、あの曇りのないセリスの瞳を見ると忘れたとは言いづらい。
どうしたものかと悩んでいると、助け舟が意外なところから出された。
「シロちゃん手を出して」
まさか当のセリスから出されるとは……。
何故、手を出してと要求されたのかは分からないが、せっかく出された助け舟だ。乗らない理由がない。
白雪は言われるがままに、左手を前に出した。
何をするか分からないが、忘れ物を追及されるよりマシだろうと考えていた白雪は、すぐに後悔することになる。
「…………? どうして俺とセリスは手を繋いでいる? 今からショッピングモールに行くから手を繋ぐ必要ないだろ?」
繋がれた手を訝しむように見ながら言う。
「何を言っているの? デートなんだから手を繋ぐなんて当たり前でしょ?」
「は、はぁぁぁっ!? デートッ!? 俺と、セリスがっ?」
この言葉に白雪は心底驚いた。
この女は何を言っているのだろうと。
デートなどと馬鹿馬鹿しいと、白雪は手を解こうとした。
が、セリスの手を握る力が強すぎて中々話すことができない。
「ちょっ……は、な、せ!」
力一杯引っ張り離そうとするが、一向に離れる気配がない。それどころか、どんどん指と指を絡められてガッチリとロックされていく。いわゆる恋人繋ぎというヤツにシフトしようとしているのだ。
片手では無理だとわかった白雪はもう片方の手も使い取り外しにかかった。
「ふんぬぅぅぅううっ!」
力の入れすぎで、手と顔が真っ赤になるが白雪は諦めない。
「そんなに私と手を繋ぐのが嫌?」
白雪の必死さを見ていたセリスが、眉を寄せ、悲しそうに聞いてきた。
別に嫌というわけではない。男ならば、セリスほどの美貌を持つ女性と手を繋いで歩けることは光栄なことだろう。
しかしだ。今回はまずい。白雪はセリスを見てそう思っていた。
何がまずいのか……理由は単純。
素の状態でも、女性なら憧れてしまう美貌を持っているセリスが、今日はデートということで気合いを入れてオシャレしてきたのだ。
正直言ってやばい。
普段のセリスの美貌が十倍以上に感じてしまう。
もう卍解を超えられてしまった思いだ。
今のセリスは男子はおろか、同性すらも魅了する美しさがあった。
それは白雪も例外はなく、言い訳の出来ない程に、セリスに魅了されていたのだ。
セリスを見ているだけでドキドキと心臓がうるさいのに、デートに手繋ぎなんて、白雪にはハードルが高すぎる。
でも…………白雪はバレないようにセリスをチラッと見る。
そこには、瞳を悲しそうに揺らし、捨てられた子犬のような顔をしたセリスがいた。
「うっ……」
そんな顔されたら断れないじゃないか!
ショボンと落ち込んだ顔は、保護欲を掻き立てられる。もしこれを狙ってやっているのなら、とんだ悪女だ。
「そうか……ごめんなさい。急に手なんか繋いじゃって」
答えに詰まる白雪を見て、セリスが手を解き始めた。どうやらセリスは、詰まっているのを図星と勘違いしてしまったようだ。
絡まりかけていた指が、徐々に解けていく。セリスの白く、繊細な指が……。
絡まっていた指が全て解けると、白雪は直ぐに手を離した。
「あ…………」
離れた手を見ながらセリスが切なそうな声を漏らしたのが聞こえてきた。
だから、という訳でもないが、白雪は離れたセリスの手をとって、繋いだ。
無論、恋人繋ぎではないが。
「え? どう、して……」
嫌がっていると勘違いしているセリスは、握られている手を見てそんな声をあげる。
「デートなんでしょ? 手を繋ぐぐらいなら普通じゃん。 ……でも、恋人繋ぎだけは勘弁してくれ。は、恥ずかしい、から」
ぶっきらぼうに言った白雪は、先ほどと同じように顔を背けていた。
顔を背けるのは照れ隠しの証。
白雪はその癖を分かっていないが、セリスは知っている様子で、悲しみの顔から一転、満面の笑みに変わった。
「本当、素直じゃないんだから」
「何か言った?」
「いいえ、何も言ってないわよ……それじゃ、遅くなっちゃったけど行きましょうか」
「……うん」
白雪が頷くと、それを合図に二人はショッピングモールに向かって歩き出したのだった。
前書きで書きましたが、今年最後の更新です。
今年一年間ありがとうございました。
そして来年も宜しくお願いします。
最後にーーハイスクールD×D 〜ドラゴンに転生しました〜!をリメイクしようと思っています。
何時になるかまだわかりませんが、その時は宜しくお願いします。
ではでは〜。