突然だが、オレは転生者だ――何言ってんのか解らないと思うが、事実だ。
オレは死んだ――しかも、どうやら『神様』に殺されたらしい。
オレが死んだ原因は交通事故だったのだが、事実は神様のミスによる結果らしいのだ。
オレは自分の死んだ瞬間のことをハッキリと覚えている。
あの時、オレは自分に迫り来る死を感じ取ったのか頭の中で今までの人生で経験したことがやけに鮮明に、そして高速で流れていき、最終的には恐怖を感じるよりも、現実逃避の方に思考が傾いた。
死ぬ直前、オレは「オレって死ぬと天国行けんのかな? それとも案外地獄かな?」と死後の世界なんて曖昧なものは信じてもいないくせにそう考えていた。
そして、次の瞬間・・・青信号の横断歩道を堂々と中型車が信号無視して――歩いていたオレめがけて突っ込んで来た・・・そして、車に撥ね飛ばされ、体が宙を舞ったのを覚えてる。だが、痛みを感じる間もなく次の瞬間には、全てが真っ白な謎空間に居たのだ――
そして、そこでオレは神の使いを名乗る背中に翼を生やした退廃的な雰囲気を醸し出す、キツい顔立ちの美人と出会い、彼女から、事情の説明を受けたのだ。
それによると、オレは彼女の上司的な存在のミスによって寿命を大幅に削られ、その結果先程経験した死に繋がったらしいのだ。
その事について彼女はオレに頭を下げて謝罪してきた。だが、どうもオレはその謝罪が嘘臭く感じて仕方なかった。
なんつーか・・・目が完全に笑ってるんだよな。しかも、嘲笑う感じだ。
その他にも、口調や態度から全く誠意が感じられず、むしろ心底見下しているような気すらする。
まるで虫ケラでも見るような・・・いや、良いかどうでも。
とにかくオレは、彼女――いや、あんなの『アイツ』で良いか。アイツから全ての説明を受けた後、どこか別の世界に転生するか、このまま輪廻に帰るか好きに選べと言われたので、当然オレは『転生』を選択――因みにテンプレみたいな展開だが、特典は貰ってない。
むしろ、二回目の人生を生きることになる分、体は全く別物になるので、下手したら前よりも低スペックになる可能性もあると言われた。
そして、オレはその事を承諾し転生した――転生直前、アイツが「あー、ムカつく。なんで人間ごときに高位天使のあたしが・・・そうだ、因果イジって能力値を最低にまで落とそうかしら。その分の能力値を次に転生させる奴に渡しちゃえ♪」と呟くのが『耳の良い』オレにはハッキリ聞こえた――『あの糞女がッ!』と思いながらも何も出来ず、オレの意識は飛んでいった・・・
そして、この世界に転生してからざっと十六年が経った・・・
現在オレに解っていることをざっと纏めると、この世界が【FAIRY TAIL】の世界であること、そして、この世界が既にオレが前世で愛読していた漫画の世界とは
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
『魔導士ギルド「フェアリーテイル」今度はコスモスの街で大暴れ!』
『フェアリーテイルのS級魔導士『絶拳』の一撃により、コスモスの街の名物観光名所である花の塔が壊滅・・・』
『これにより、評議会はギルドに対して警告を発令――』
手に持った新聞の記事を読みながら、はぁ~と溜め息を吐く。
「また、やりやがったか『イレギュラー』――これじゃあ只の無差別破壊じゃねーか。ちょっとは自重しろっての・・・」
オレが転生してから十六年が経つが、その間オレはこの世界が【FAIRY TAIL】の世界であると知りながらも、なるべく息を潜めて、原作に関わる事をせず、出来る限り目立つことを避けて生きてきた。
理由は簡単だ。オレという『イレギュラー』な存在が下手に関わって、大体がハッピーエンドで終わる筈の原作の物語が変わってしまう可能性を恐れてだ。
特に『ニルヴァーナ編』『大魔闘演武編』辺りは、原作通りにいかないとまじでヤバい。
『ニルヴァーナ編』は、主人公を含めた『
しかし、もしこれで正規ギルドの面子が負けていれば善悪反転魔法によって、この大陸は正規ギルドの同士討ちによって滅茶苦茶にされていただろう。
『大魔闘演武編』なんかは、原作通りに終わってくれないと、七匹の竜を操る『ローグ』に世界を滅ぼされかねない。
いや、ドラゴンがいかに強かろうとたった七匹で太古のドラゴンをほぼ単独で殲滅した原作最強の竜で最強の竜殺しとして黙示録にその名を刻まれた黒い竜――『アクロノギア』や不老不死で最強最悪の黒魔導士として名高い『ゼレフ』に勝てるのか? なんか微妙な気がするな。
いや、竜が七匹も居れば大抵のことは出来るだろうけど、その二つの存在を両方ともこの目で見た感想を言わせてもらうと、アイツらにその程度で勝てる筈がないと思えてしまうのだ。
特にアクロノギアは【占い】で特定した場所に直接張り込んで遠目に視ただけなのに震えが止まらないほど圧倒的な力を感じた。向こうはただ歩いているだけなのに、動いているところを視ただけで、最強の存在を見てみたいなどという軽い考えで来たことを心底後悔した。
ゼレフの方は偶然会っただけなので、その本領は一切見ていない。パッと見は、善良で臆病な少年といった感じだったので良く解らないが・・・何か得たいのしれない不気味なものを感覚で感じ取った。
と言う訳で、オレとしては原作通りに進んで欲しいのだが、残念ながらそうもいかないだろうという確信がある。
その確信のもとはオレと同じような存在――そう、原作には登場しない『転生者』というイレギュラーな存在だ。
現在、オレが把握している転生者は十六人――これは多分だがもっと居るんじゃねーか?とも思ってる。
そいつらのせいか知らんが、他にもオレの記憶の原作とは違う部分は多数存在する・・・
取り敢えず挙げると――妖精の尻尾にオレの知らない奴が数人居る――これは、例に挙げると現在妖精の尻尾の『S級魔導士』は七人。
『ギルダーツ・クライブ』
『ラクサス・ドレアー』
『エルザ・スカーレット』
『ミストガン』
『ミラジェーン』
ここまでは原作と同じだ。この時点でミラジェーンが現役なのは原作とは違うと言えばそうだが、それはハッキリ言って誤差の範囲内なので今さら気にはしない。
本来なら現在の時点でS級魔導士に認定されているのはこの五人だけの筈だが、他にも後二人ほど原作には存在しない者達が居るのだ・・・
その二人のイレギュラーがこの二人だ。
『ケン・ホクト』
『ジェラール・フェルナンデス』
何でやねん――そう初めて知ったときに突っ込んだオレは悪くないと思う。
因みに今オレの手元にある新聞で一面を飾っている【絶拳】とはこいつの事だ。容姿は【北斗の拳】という漫画の主人公である【ケンシロウ】にそっくりで、格好もまだ十代なのであそこまでの迫力はないが、同じ世紀末スタイルだ。
うん、意味が解らないな。この世界は王道ファンタジーな真島ワールドだよな?
なんで世紀末救世主が居るんだよ。訳がわからん。
しかし、更に意味不明なのは――『ジェラール』なんでお前がそこに居るんだよ!?
こいつが妖精の尻尾の連中と一緒に居る以上は原作はもはや跡形もなくなったと思う。
まず、前提として『楽園の塔編』は発生しなくなるし、その後のニルヴァーナ編でも記憶を失ったジェラールが重要な役割を果たすことでようやく主人公達は勝てたのだ。
特にナツとゼロの戦いはジェラールが全魔力をナツに食わせることで【滅竜魔法】の最終形態にして最強の力である【ドラゴンフォース】の発動を促す役割は、ナツが勝つ上では絶対に欠かせない。あれがなければ以下に主人公と言えどバラム同盟の一角を担う闇ギルドのマスターを一対一で倒す事なんぞ出来なかっただろう。
立場的には『
もちろん、ハデスがあそこまで強かったのは戦艦に積まれた悪魔の心臓のお陰という部分はあったろう。あれがなければ妖精の尻尾の主要メンバー全員と闘って尚も有り余るほどの大魔力はつかえないのだからな。
それに幾らなんでもゼロがハデスと対等の実力が有るわけではないだろう。
しかし、それを差し引いても『聖十大魔導』の現在の序列が第五位の三代目妖精の尻尾マスターである『マカロフ』を歯牙にも欠けないほどに強いハデスと同等の立場に居るゼロに対して、ドラゴンフォース無しの状態で闘ってもナツに勝ち目など存在しない。
そんな訳で、ニルヴァーナ編でジェラールは必要不可欠な存在だし、彼がそこに存在しない以上はその後の予定も大分狂うことは間違いない。
・・・なんでこうなった?
ジェラールが妖精の尻尾に居ると知ったその時から、このジェラールとオレと同じ存在と思われるイレギュラーのことを真剣に時間を費やして調べた。
その経過で妖精の尻尾には、他にも転生者らしき魔導士が四人ほど居る事が判明したが、それは置いといて、最後の望みを懸けて、楽園の塔が建設されていた島にまでわざわざ足を運んだが、結局はそこには建設途中で破棄されたと思われる塔と、人っ子一人いない島があっただけだった。
それを見たときに、オレはもはや確信せざるを得なかった。この世界はもはやオレの知っている【FAIRY TAIL】の世界とは全く違うストーリーを歩んでいることを――そして、否応なしに『原作通りに進んで行けば大丈夫』等という甘い考えは捨てなければいけないと悟ったのだ。
一体何があって原作がここまで歪んだのかは解らない。いや、イレギュラー共が何かをやったのは確実だろうが、その原作を致命的にまで変えた「何か」が解らない。
しかし、解っていることもある。
ジェラールについては――少なくとも、自分の身代わりに拷問を受けていた彼を救うためにエルザが魔法に目覚め、同じ立場の捕らえられ、無理矢理連れてこられて【Rシステム】を造るために働かされていた者達と共にゼレフ教の狂信者共に反逆し、ジェラールがウルティアに騙されて闇落ちした所までは原作通りだった。
|俺もその場に居て、聴いていたので間違いない。
そこまでを確認した後は、原作通りに事が運んでいることに満足して、『相棒』と一緒に楽園の塔を離れたので、そこから先に何があったのかが、解らない。しかし、このあと――オレがその場を離れた後に「何か」あったのは確実だろう。
一体何があったのか・・・それが気にならない訳ではないが、まぁ、良いさ・・・今更、それを知ったところで過去を変えるなんぞ出来はしないのだからな。
「変えることのできない事に思いを馳せるよりも、これからどうするか考えた方が幾らか建設的だ。アンタらもそう思わねーか?」
オレはそう言って、手元の新聞を横に放り捨て、オレの目の前でボロボロになって、地面に片膝をついている男に問い掛ける。
「なぁ、ヒュドラさんよ?」
オレの目の前に居る男――暗殺ギルド【
「ハァ・・ハァ・・テメェ何者だ?」
息も絶え絶えながらも、こちらを射殺さんばかりの眼光を向けながら、オレに対して問い掛けてくる。
流石そこそこ有名な暗殺ギルドを束ねるだけあって大した殺気だ。だが、この程度の殺気などこの世界に来てから出会った本物の化物共に比べたら可愛いものである。
「何って・・・ただの『宅配屋』だが?」
特に隠すこともないので、事実をそのまま口にしたのだが、どうもこの返答はお気に召さなかったらしい。
血相を更に歪めながら――「俺のギルドを一人で潰しといて、何が運び屋だッ! ふざけんな!?」と捲し立ててきた。
確かにな――そう思って回りを見渡せば、闇ギルドの他の面子が倒れている。その数ざっと四十人以上――これをやらかしたのが宅配業者だなんてアホな話しは、前世のオレでも聞いたら信じないわ。
だが、残念ながら事実は事実――オレは正真正銘、本物の一介の宅配業者に過ぎない。少なくとも身分上はな――と言うか「運び屋」と呼ぶのはやめてほしいんだがな。それじゃあなんか「いかがわしい商売」をしてるみたいじゃねぇか・・・
まぁ、オレ自身、自分の商売が百パーセント真っ当だなんて思っちゃいない――実際、運ぶ品はまちまちだが、場合によってはたまに非合法な事もするが、それをこいつらに言う必要はない。
「別に、これは本当だぜ――と言っても、今回アンタらを潰したのは、仕事の事は関係無ぇがな・・・」
「・・・何? じゃあ、一体何の用があって俺達に攻撃してきやがった?」
オレの話が気になったのか、オレの目的を尋ねてくるオッサン。顔も一気に先程までの激昂していたものから、冷静に人の話を聞く風にしている。
しかし――
「おいおい、質問してオレに隙が出来たら一気に仕掛けてくるつもりなんだろ? それならもう少し捻った質問の方が良いんじゃねぇか?」
「――ッ!?」
(――考えが読まれた!? 表情に出すようなマヌケな真似は・・・)
「安心しろよ。お前はそんなヘマはしてねぇ」
そう、こいつは隙有らばオレを殺そうと、魔法で毒を密かに作り出している。
さっき新聞に目を通してた時も隙を探っていたし、どうやら、オレが会話に乗ってきたので、話が通じると思ったのか、それを利用してオレを殺そうと虎視眈々と隙を伺っていたのだ。
と言っても、オレはそんな隙なんぞ作らないし、不意討ちは通じない――オレには聴こえるんだよ。
お前の汚い『心の声』がな。
転生する直前に『アイツ』がオレに施した何かのせいで、オレは才能やあらゆる能力値が軒並み最底辺だった。
しかし、この世界が【FAIRY TAIL】の世界と知った時点で、オレの中で『前世と同様に平凡に生きるという』選択肢を諦めた。
諦めた理由は色々あるが・・・まぁ、それは今は良いか・・・能力値が色々最底辺なだけあって、当然オレには『魔法』を覚える才能は無い。
オレにとって魔法を「覚える」のは凄まじく大変だ。魔法を覚えるのに必要なのはその魔法との適性なので、適性が合ってないと死ぬほど努力してもそこそこまでしか覚えられないし、そもそも全く使えないという場合も珍しくない。
オレの場合、どうも一部を除いてその才能や適性と言ったものが圧倒的に欠けているらしい。
だが、才能が無い=魔導士に成れないという訳でもない。エルザの弟分も言っていただろう?「魔法は誰でも覚えられる」とな。
この魔法――【
某運命の正義の味方が如く、どの魔法にも適性がほとんど無いオレだが、この魔法だけは話が違う。ある程度使えるだけの他の魔法とは違い、この一点のみなら誰にも負けない――並ぶ者など誰一人として居ないとさえ自負している。
他の才能が無いにも関わらず、これだけは突き抜けて高い適性が在るのは単に、オレが前世の頃から「異常ほど耳が良かった」こと――そして、
「まあ、ツマンネェ質問だが、一応答えてやるか・・・オレの狙いはアンタだよ」
「俺だと? まさか、テメェ!! どごぞの闇ギルドの鉄砲玉かッ!?」
そこで、評議院や正規ギルドが出てこない辺り、オレの事を完全に闇の人間と信じ込んでやがるな。
確かに、周囲で転がっているこいつと同じギルドの奴等は確実に大半が『
正規ギルドの魔導士は基本的に、人殺しはしない。その辺からそう判断しているんだろうな。
残念ながら、屑を殺すのになんの躊躇いも覚えない程度にはオレも逝かれてるが、流石にそこまで堕ちるつもりはない。
オレとコイツらは同じ人殺しではあっても、コイツら闇ギルドの中でも最悪の暗殺ギルドだ。こういった奴等は基本的に殺しを楽しんでいる奴等が多い。
実際、オレはコイツらを襲撃するに当たって万全の体制を整えた上で、集められるだけの情報も集めた――結果判明したが、コイツらもその例に漏れず大した趣味をお持ちだ。
特に暗殺対象が若い女子供だったりした場合は・・・止めよう。胸糞悪くなってきた。
兎に角、オレはオレの信条に従って動いている。こんな塵共と同じだ等と思いたくはない。
「オレが何者かなんてどうでもいいだろ? それよりも、自分の心配でもしたらどうだ? 暗殺ギルド
どうもらしくないな。オレはオレで、血の匂いにでも酔ってるのか?
自分でも驚くほど冷たい声がでた。
「【毒の
「!?」
(馬鹿な!? 何でその事を――オレの魔法の事は誰にも――)
なるほどねぇ。やっぱり誰にも言ってなかったのか。
最もオレも正直、戦うまでは確信を持てなかったが、これで完全に確信した。
やっぱり、こいつがオレの『探していた物』を持っていたか・・・
「貰うぜ。その体に埋め込んだ『滅竜魔法のラクリマ』を」
この言葉を聞いて、オレの目的を察したのだろう。顔付きが変わった――
「糞がッ! この力はオレが手に入れた力だ! 誰にも渡さねぇ!!」
言葉と共に、奴の腕が紫の鱗の生えた蜥蜴のような物に変わり、その鋭い爪を持って、決死の形相で、オレに対して攻撃を仕掛けてくる――しかし・・・
「聴こえてるんだよ――」
オレはその動きを耳で察知して対応し、完全に回避する。
そう、オレには聴こえている。
目の前の相手の緊張による心臓の鼓動、骨、関節の駆動音、筋肉の収縮まで・・・そして、何よりも『心の声』が――な。
この魔法を発動した状態での接近戦は、負ける気がしない。
オレは、こっちの世界に転生してから長年の修行によってそれなりの量の魔法を会得しているが、そのほとんどが精々が「並」の域を出ない程度でしかない。【聴力付加】以外は、はっきり言って使えるレベルに達しているがそれだけなのだ。
なので基本的にはオレは器用貧乏を地で行く形で、オレの戦闘スタイルは、【
奴の攻撃が次々と迫りくるが、オレはそれらを全て余裕を持って回避しつつ、こちらからの攻撃を仕掛ける隙を探す――声を聴く限り、かなり焦っているらしいな。どうやら、オレの魔法がどんなものなのか大体は感付いているっぽいが、それ故に攻撃に焦りが見える。
そんな、雑な攻撃がオレに当たる訳もない。
【硬化】でオレは右腕を硬くする――この【硬化】は極めた者ならば、全身を鉄以上の硬度にすることも可能だが、残念ながらオレはそこまでの域には達していない。この魔法は硬くする範囲によって魔力量や硬度が違ってくるが、オレが全身を硬化させても精々が全身を厚手の布で覆っている位の硬度しか引き出せない。そんなものは何の役にも立たない。
だから、右腕の肘から先に力を集中することで、その場所だけをより硬くし、更に同じように右腕にだけ【強化】の魔法を掛けて力を強化する――
流石に魔導士四十人以上を殺った後に、滅竜魔導士の相手は少々リスクが高い。魔力も残り半分を切ってる事だし・・・何よりアンタみたいな奴には一切手加減するつもりはねぇ。
(なんだ? この悪寒は・・・!?)
おっと、殺気が漏れたか? 心に怯えが読み取れる。逃げる算段を考え始めたな。オレの魔法については完全に意識から外れてる。
「――逃がすかよ」
次の瞬間には、オレの魔法によって硬化・強化された右腕が、奴の肉体を貫いていた――
「こ・・の――ばけもの
「うるせーよ。とっととその汚い口を閉じてろ。一生な・・・」
奴の体を貫いた腕を抜き取り、その右手の掌で掴みとった物に視線を落とす・・・驚いたな、こんなに小さな物なのか――ってなんかどごぞのヨン様風のラスボスみたいだ。
しっかし、ほんとにこれであってるのか?
確かに握ってると凄まじい魔力を感じるが、なんかパッと見はビー玉みたいなんだが・・・
「まぁ、良いか・・・」
こいつをオレの体に埋め込めば、ようやく念願の滅竜魔導士になれる。
本来の【
その方法で滅竜魔導士になった存在を「第二世代」と呼ぶが、原作を見る限りでは、第二世代の力は別に本来のそれとは覚える経緯が違うと言うだけで、決して劣る物ではない。「滅竜奥義」も使える・・・
これでオレも
オレの名は『エリック・ノア』――コードネームは『コブラ』
『神』と名乗るクソ野郎に殺され、天使を名乗るゲス女に体を弄られて能力を落とされた上に嫌がらせのように性別まで変えられた・・・だが、オレは諦めない。
どんな手を使ってでもオレはオレのやり方で足掻き続けてやる――
多分、続きません