遠山潤は楽しみたい   作:ゆっくりいんⅡ

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 総合評価1000pt達成……まさか趣味で書き始めたこの作品がここまで行くとは、ありがとうございます!

 さて、では『進行編』始まります。

潤「進行ねえ、武偵校の酷さが加速するのか?」

作者(以下( ゚д゚))「それは元々でしょ。寧ろ関係性が進行するものかと」

潤「……今更じゃね?」

( ゚д゚)「お前が言うな」

潤「そういやジャンヌどうした」

( ゚д゚)「欧州から逃げるように帰って、こっち(メタ書き部分)からも全力で逃げてます」

潤「もうジャンヌって感じだな」

( ゚д゚)そっすね

 極東戦役から一週間後、帰宅して呼び出された二人
校長「はいはい、遠山君、峰さんにお伝えしますよ。お二人のバスカービル再入隊を、当学園は認めます」

潤「およ、そりゃまた急に」

理子「校長せんせー、何かあったんですか?」

校長「……お二人とも、一体何をしたのですか? 独自に何かをする分には構わないと言いましたが……まさか西欧財閥の当主殿から連絡が来るとは、予想外でしたよ」

潤「ああ、レオの奴が言っていたサプライズってそれか」

理子「レっ君に感謝だねー」

校長「本当に何をしたんですか、あなた達は……?」



進行編
第一話 やべーものには蓋を押し付けろ


「潤ちゃん、鮭はらこめしと和牛弁当、どっちがいいかな?」

 

「白雪は食いたいのあるか?」

 

「私は、潤ちゃんが選んだ後でいいよ?」

 

「んー。じゃあ和牛弁当で」

 

「……」ホッ

 

「カロリー気にするなら重いの買わなくても大丈夫だぞ」

 

「え!? な、何のことかな? 体重計が怖いとかそんなことないよ!?」

 

 言ってんじゃねえか、あとそんな気にしなくてもいいだろうに、全然軽いんだからさ。

 どうも、遠山潤です。極東戦役の諸々の後始末が終わって約一か月、本日は二月三日の節分デーなり。きっと今頃ジャンケンで負けた鬼役のアリアが豆をぶつけられまくり、理子にキレている頃だろう(予測)

 

 

「おーにはーそとーーーー!!」

 

「落花生を全力で投げるなって言ってるでしょうがバカ理子ォ!!?」

 

「ふくまる!? だって手加減したら失礼でしょー!? アリアん鉄壁だからモーマンタイだし!」

 

「だぁれが成長の余地がない絶壁平原よ!?」

 

「それはもう被害妄想の類じゃないかなあ!?」

 

 

「雪、止んで良かったね潤ちゃん。この調子なら予定通りに到着するみたいだよ」

 

「そか。じゃあ夕方までには用事を片付けて、晩飯には間に合うかね」

 

「風雪、潤ちゃんが来るって張り切ってたよ。「潤義兄様が来るのなら、全力でおもてしますっ」って」

 

「普通に迎えてくれればいいんだけどなあ」

 

 ただでさえ忙しいだろうに、どこでこんな義兄様大好きっ娘になっちまったのかなあ。姉もクスクス笑いながらこっち見てるし。

 

 なんとなく決まりが悪くなり、窓の外に目を向ける。雪に覆われた田園風景は、東京じゃ中々見れない光景だ。たまには穏やかなのもいいよな、ボロボロになったり腕が吹き飛んだり散々だったし。

 

 ここ一か月は平和だったけどさ、アリアのツッコミ(物理)がより苛烈になったくらいで(苛烈にしている原因の一人のセリフ)。

 

 さて、俺達が向かっているのは青森にある星伽神社の本殿、白雪の実家だ。いやあ、二人で遠出のデートしてくるわって適当に言ったら大変だった。理子は連れてけ―!! ってうるさかったし、アリアとマイシスターは遂に覚悟を決めたのねって悟りの顔をしてたし。お前の関係で出向くんだからなピンクツインテ、恩に来させる気はねえけどさ。

 

 というか覚悟ってなんだよ、『まだ』何もしてねえよ。……唇は奪われたけど(真顔)

 

「あ、そうだ潤ちゃん」

 

「ん? 何よ?」

 

「えっと、あの、そのね……お、お父様とお母様への挨拶、どうしよっか?」

 

「なんでお前も結婚報告する気なんですかねえ!?」

 

 隣に座って赤い顔で妄想の世界に旅立とうとする白雪さん、オーイ戻ってこーい。そこの老夫婦の方、優しい目で祝福を伝えないでくれ。小声で「若いの、頑張れよ」とか言わなくていいから。

 

 一応仕事で行くんだけどなあ。まあ白雪が幸せならいいか。……いやいいのか?(知らん)

 

 

 新幹線を下り、星伽の人が出してくれた車に乗って星伽神社に到着。本当はヘリを使うのが一番早いんだが、今回は急ぐ旅でもなかったため電車を選んだ。白雪の妹達へお土産買う必要もあったからな。

 

 ちなみに駅を下りてから階段を登りきるまでの間、白雪とずっと手を繋いでいた。

 

「寒いし足下危ないから、転んでもいいよう潤ちゃんに支えて欲しいな……ダメ、かな?」

 

 って、上目遣いでお願いされたら断れない。お前さんSSRの山籠もりで俺より健脚だろというツッコミを入れたくなったが、野暮な気がしたのでやめた。

 普段は姉としての立場があるから頼られるが、俺と二人きりになると甘えてくるんだよなあ。別にいいんだけどさ、(家事方面で)世話になってるし。

 

 ちなみにお付きの人には、「結納はいつになりますか?」とか言われた。あんたも恋愛脳(スイーツ)かよ、ここの人そんなんばっかか。

 

「潤義兄様、お姉様、お待ちしておりました」

 

「お久しぶりです、白雪お姉様。遠山様はうらやまけしからんなのでとりあえず天誅していいですか」

 

「こら粉雪、潤義兄様になんてことを」

 

「バッチコイ」

 

「よし。お覚悟お!!」

 

「潤ちゃん(義兄様)!?」

 

 なんて巫女服姿の風雪、粉雪とのいつものやり取りである(ちなみに今回クリティカルヒットはなかった、一安心)。

 

 驚いてる姉達よ大丈夫だ。顔を合わせる度殴り掛かってこない粉雪なんて粉雪じゃないから(サムズアップ)

 

 

 二人に案内され、俺と白雪は星伽神社の本殿とは離れた場所にある、湖の側へ向かう。今回はあっちに用はないからな。

 

「ここに来るのも三年ぶりかあ。相変わらず立ち入り禁止の札もないのな」

 

「潤ちゃん、あの時平気でここに入ってたもんね……」

 

「遠山様は神仏に平気で喧嘩を売りそうですよね。禁足地とか平然と土足で入り込むのが想像できます。」

 

「喧嘩を売られたらどうしようもねーべ。まあ仕事柄っていうのもあるけど、好奇心が勝るのは否定しない」

 

 当時は無断侵入して、星伽の大人たちに滅茶苦茶怒られたからなあ。まあその後いくつか『提案』をしたら、見る目が180度変わったけど。

 

「いつの間にか兄貴より重要な遠山家の人間として扱われた件」

 

「それだけ潤義兄様の提案が星伽の、ひいては私達にとって救いで、偉業と言っても差し支えないことだったのですよ。だから私は潤義兄様に感謝していますし、尊敬しています」

 

「具体的な方策は星伽の人達がやってくれたんだけどなあ。まあ称賛は素直に受け取っておくよ、ありがとうな風雪」

 

 俺が笑いながら礼を言うと、風雪は赤くなった顔でこちらこそありがとうございます! と頭を下げた。なんでお前が頭下げるよ。

 

 その姿を白雪は微笑ましそうに、粉雪は憎々しさと礼を言うべきかの迷いが混じった複雑な表情で見ていた。

 

 何だ、お前さん白雪(長姉)だけじゃなく風雪(次姉)もいけるクチ「違いますよ!」そうかい、こんなところで心を読むなよ。

 

 

「では、私達はここでお待ちしています」

 

「お姉様、ケガのないようお気を付けください」

 

「うん、ありがとう粉雪」

 

「あれ、俺は?」

 

「何もないところで盛大にずっこけてください、顔面から」

 

 どこのダメガネガンマンだよ俺は。

 

 風雪がお小言を粉雪にしているのを背に、俺達は注連縄で区切られた洞窟に足を踏み入れる。中は人二人が通れるくらいの道幅が出来ており、進むのに不自由はない。

 

「暗いね、潤ちゃん……」

 

「燭台のお陰で見るのに不自由はないけどな。って、なんでくっつくし白雪」

 

 左腕にくっつかれると、咄嗟に武器が取り出せないんだが。

 

「えっと、その……暗いのがこわ」

 

「……別にくっつくのに一々理由付けなくていいぞ」

 

「!」

 

 不安顔が洞窟全体を照らすんじゃなというくらいの明るいものになり、より強く腕にしがみついてくる。普段は許可なくくっついてくるのに、二人きりだと許可貰いに来るんだよなあ。あれか、対抗心と勢いか。

 

 うーむ、二つのやわっこい感覚に白雪のいい匂いが。……理子のHENTAI性が移ったか?(人のせいにするクズ)

 

「潤ちゃん、最近優しくなったよね」

 

「前の俺は外道だったと」

 

「違うよ、そういう意味じゃないよ!? あの、なんていうかーー前より壁がなくなったというか、距離が近くなったと思うんだ」

 

「……そうか?」

 

 うん、と幸せそうに頷く白雪。特に心当たりはないんだがなあ、帰国してから時折似たようなことを言われる気がする。

 

 ……どこからか『イチャついてんじゃねえぞコラぁ!?』とか聞こえた気がする。何だ、こんなとこまで嫉妬団のお出ましか(違)

 

 

 洞窟の行き止まりは、大きな空間になっている。そこに鎮座するのは注連縄を巻かれた、星伽神社の『ご神体』ーーUFO型の巨大な金属、緋々色金である。相変わらずツッコミ待ちとしか思えない形状だな、これが紀元前からあるってんだから驚きだわ。

 

「……うん、頼んでた魔術式はちゃんと刻まれてるな。星伽の人達はいい仕事してくれてる」

 

 お礼代わりにお土産多めに持ってきたけど、要請以上の仕事をしてくれてるし、別に何か用意するかなあ。あとで要望でも聞くか(フラグ)

 

「うん、私から見ても問題ないよ。じゃあ、潤ちゃんーー行ってくるね」

 

「ああ、ここからはお前が一番重要な役割だ。頼んだぞ、白雪」

 

「はい、潤ちゃん様! 命に代えてもやり遂げてみせます!」

 

「そこはちゃんと帰ってきなさい」

 

 失敗しても俺がフォローするから、力み過ぎるなって。というか万が一死んだら俺が粉雪に刺されて後追いエンドだよ?(真顔)

 

 「潤ちゃん、そんなに私のこと……!」と何やら感激した様子の白雪だったが、封じ布を外して俺に渡すと真面目な顔になった。良かった、緩んだ顔でやられたらリアクションに困る。

 

「ーー」

 祓串(はらえぐし)を手に、腰に着けた鈴を鳴らしながら、色金の上で舞う。そんな白雪の姿は、以前原田が使った■の魔術とは異なる神秘的な美しさを、たった一人の観客である俺に魅せてくれる。

 

「……ふむ、早速効果ありか」

 

 色金から漏れ出る力が弱まるのを感じる。効果が出るのはもう少し掛かると思ったが、教えた手順を完璧にこなしているのと、白雪が持つ魔力が大きいだろうな。本人は「私なんて歴代の星伽巫女に比べれば」とか言ってたけど、資料を見た限り十分匹敵するかそれ以上だと思うがねえ。あいつはもっと自信持っていいと思う(ブーメラン)

 

 

 緋祓舞。本来は緋々神に憑依された際、依代の身体から祓い出すための、もっとも強力な神楽舞である。

 

 今回白雪が執り行っているのは、俺が提案し、星伽巫女と関係者総出で草案を練って改造したものであり、その効果は『依代から緋々神を祓う』から、『緋々神の意思を色金の中に閉じ込める』ものに変更されている。簡単に言えば封印だな。

 

 もちろん封印するだけでなく、その後は緋々神の力を弱め、憑依が出来ないよう処置を進める予定だ。こっちは歴代星伽巫女の功績だな、俺が言うまでもなく向こうから提案してくれたので非常に助かる。

 

 白雪の舞を特等席で見守っていると、入口から張っていた軟糸(触れると切れることで対象の存在を知らせる糸)が引きちぎられるのを感じた。同時に高速で接近する魔力反応、猪突猛進って感じだな。

 

「さすがにほっといてはくれねえか」

 

「ーー遠山ぁ!!!!」

 

 叫びながら、少女の姿をした鬼の頭領、覇美ーーを依代にした緋々神が、喉が張り裂けん限りの絶叫を上げつつ、頭部を狙った飛び膝蹴りをかましてきた。

 

 完全に背後を取った奇襲、普通なら決まったと思うだろう。

 

「『(たが)いの恋は実らず』」

 

 だが残念、こちとら先月に妖刃の理不尽な気配遮断術を喰らったばかりなんでな。

 

 直前に『遮断』の魔術式で相殺された緋々神は、舌打ちをしながら後ろに跳ぶ。

 

「どけ遠山、じゃなけりゃすぐに儀式をやめさせろぉ!! あたしを、あたしはもっと恋と戦を楽しみたいんだ! 自分の中に閉じ込められるなんてごめんだ!!」

 

「どけって言われて通すと思ってるのか? てめえなんぞに白雪は指一本触れさせねえよ、幽霊モドキ」

 

「ーー殺すっ!!」

 

 問答は不要と判断したか、安い挑発に乗ったか。殺意を漲らせながらこちらへ突進してきた。

 

 用意していた魔術陣を起動させてタスラムを構え、敢えて嘲笑を浴びせる。

 

「ヒャハハハ! ちょうどいい、節分だし鬼退治といこうか! 頼光や四天王に比べれば、随分とみすぼらしい相手だがな!

 鬼さんこちら、傷だらけの身体でどうするんだあ!?」

 

「ーーてめえええ!! 前の封印といい、どこまでも舐め腐りやがってえええ!!!!」

 

 完全にキレた緋々神は自分の上で舞う白雪の存在も意識の外か、こちらに殴り掛かってくる。

 

 一撃一撃は速く重いが、俺程度でも捌き切れないほどではない。孫の時に比べて明らかに力が落ちているのは、白雪の封印によって依代から引き剥がされていくのとーー

 

「グ、ガ!? チク、ショウ! ちゃんと動け、このポンコツが!」

 

「ハ、やっぱり『妖刃』から受けた傷が癒えてねえみたいだなあ! 重傷者を無理矢理乗っ取って動かすとか、とんだ鬼畜もいたもんだ!」

 

「うるっせえ! てめえを殺すには、これでも十分すぎるくらいだよお!!」

 

 緋々神は吠えるが、妖刃ーー原田の斬撃は、自然治癒で治る類ではない。鬼生来の生命力で補っているが、余裕はないだろう。でなければ、牽制の魔弾程度で怯むわけがない。

 

「くたばれやあ!!」

 

「『斑目』!」

 それでも顔面に向けて致命の拳を振るう緋々神に、俺は銃を投げ捨てて詠唱を口にしーー顔面に触れる直前、奴の動きを止めた。手と瞳の中に出てきた『魔眼』が、緋々神を縛ったのだ。

 

「な、んだ、こーー」

 

「『色金包女(イロカネツツメ)』」

 

 驚愕した緋々神の言葉を遮り、亜空間から出現したのは以前白雪に送った武器ーー『色金殺しの槍』である。

 

「ガ、アアアアアッ!?」

 

 亜空間より射出された長槍が左肩に突き刺さり、勢いそのままに吹き飛ばされた緋々神は苦痛の絶叫を上げる。

 壁に縫い止められた奴の身体を、俺は展開していた糸で縛り上げた。

 

「とお、やまぁ……!」

 

「やめとけって。今お前を縛ってる糸は通常のTNK繊維のものじゃねえ、対神霊を想定した魔導具だ。

 首以外、少しでも動けばその部分からズタズタだぜ?」

 

「ぐ、う……」

 

 糸を操作しながら告げてやると、緋々神は色金包女を抜こうとした手を止める。指が少し切れたので、脅しではないと気付いたのだろう。

 

「チェックメイトだ、緋々神。お前の敗因は十全でない依代を使ったこと、そして何より冷静になれなかったことだ。

 それともーー頭だけになっても、まだやるか?」

 

「クソ、があ……」

 

 射殺さんばかりにこちらを睨み付けているが、動く様子はない。逆転の目はないと、理解したのだろう。

 

「遠山あ、覚えてろよ……封印が解けたら、真っ先にお前を殺してやる……!」

 

「生憎、その手の脅しは聞き飽きてるんでね。全くもって心に響かんな。

 ……ま、解けるまで最低でも三百年あるんだ。その間、殺す方法でも模索し続けるんだな」

 

 もっとも、その頃にはその辺の亡霊と変わらないくらい弱体化しているだろうが。その言葉は、わざわざ伝える必要はないだろう。

 

「なーー三、百?」

 

 今この瞬間も力を失う緋々神が、信じられない、信じたくないと目を見開きーーすがるように、敵である俺の顔を見てきた。

 

 だから俺は、事実だけを告げてやる。冷酷で、何の慈悲もない言葉を。

 

「二千年以上生きてきたんだ、たかが半分にも満たない時間だろ? 色金同士のバランスもあるから、壊す予定もないしな」

 

「い、いやだ、いやだ……! 三百年もずっと孤独なんて、そんなの」

 

「……そういうセリフは、てめえが依代にして殺した人間達の怨嗟を聞いてから言うんだな。

 俺もお前も、命乞いが出来る立場じゃねえだろうよ」

 

 死なないだけありがたく思え。それだけ告げて俺は緋々神に背を向け、白雪の神楽舞を見守る。

 

「とお、やまーー」

 

 縋るような声を最後に、緋々神の気配は完全に消え去った。

 

 

「じゅ、潤ちゃーーきゃっ!?」

 

「おっと。白雪、お疲れ様。大分消耗しただろ、平気か?」

 

「私より潤ちゃんだよ!? 緋々神に襲われたんでしょ、ケガしてない!?」

 

「ああ、手負いだったし無傷だーーってこらこら、どこ触ってるんだ」

 

 耳たぶを揉むんじゃありません。足をもつれさせて落ちてきた白雪を御姫様抱っこで抱えたまま、なんでこんなことされてるんだろね。

 

「はあ、良かった……潤ちゃん最近ケガしてばっかりだったから、本当に良かったあ……」

 

「ぶっちゃけあの状態じゃ、アリアの方が怖いくらいだったけどな。

 さて、封印も無事に終了したんだ。相当消耗しただろ、おぶってやるよ」

 

「あ、えっと……ふ、ふつつかものですが、よろしくお願いします」

 

「だから返事がおかしいだろ」

 

 苦笑しながら白雪を背負い、来た道を戻る。正常に封印が機能しているのだろう、色金の纏う気配は変わらないが、攻撃的な意思は感じない。

 

「ねえ、潤ちゃん……」

 

「ん?  何だ?」

 

「本当に、ありがとう……潤ちゃんのお陰で、これからの星伽巫女は、依代になりうる人を、殺さなくて……」

 

「それは俺達より後の人間次第さ。ご先祖様の卑弥呼みたいに、悪用するため封印を解こうとすればーー」

 

「……すう……」

 

「ありゃ、寝ちゃったか。無理もないか」

 

 ここまでやってくれた相手に悲観論を伝えなかったから、まあ、良かったのかね。

 

「お疲れさん、白雪」

 

 背負ったまま白雪の頭を、優しく撫でてやる。

 

「えへへ、潤ちゃあん……」

 

 ……ホントに寝てるんだよな、こいつ?

 

 ……あ、覇美そのままにしてた。まあ槍は引っこ抜いたし止血もしたから、後で誰かに回収してもらえばいいだろ。

 

 

 

おまけ

「潤義兄様、白雪お姉様!? 大丈夫でしたか!?」

 

「ああ、見ての通りピンピンしてるよ。白雪は舞の疲れで寝てるだけだ。

 風雪もありがとうな、緋々神の足止めしてくれて。あいつの足のケガ、お前がやってくれたんだろ?」

 

「い、いえそんな! 私と粉雪じゃ、少しだけ手傷を負わせるのが精一杯でしだし、寧ろ潤義兄様に負担を押し付けてしまって……」

 

「怪我がないのが一番さ、それに殿は元々俺だったしな。

 あと、緋々神に手傷を負わせたのは十分『誇っていい』ことだぞ?」

 

「ーーっ。……はい、潤義兄様。ありがとうございます」

 

「どういたしまして。粉雪もありがとーー」

 

「……」

 

「何よその感謝と嫉妬が混じった目は」

 

「遠山様、何故、何故……白雪お姉様を運んで差し上げるという大任を、私に譲ってくださらなかったのですか!?」

 

「粉雪……最初に言うことがそれですか……」

 

「寧ろこれが粉雪って感じで、何か安心するわ」

 

 

おまけ2

「ん……あれ? 潤ちゃん?」

 

「お、起きたか白雪。おはよう。今風雪が夕飯を作ってくれてるぞ」パタン

 

「あ、そっかあ……」ボッー

 

「…………!? じゅじゅ、潤ちゃん!? なな、なんで、ひざ、ひじゃまくら!?」ガバッ

 

「ん? ああこれ? 本当は布団で寝かせてやろうと思ったんだが、風雪が、

 『潤義兄様のお膝は、白雪お姉様にとってどんな枕よりも心地よいものですよ』って変なこと言うもんだからさ。

 すまんね、野郎の膝とか寝にくかーー」

 

「本当にありがとうございます!」完璧なDOGEZAスタイル

 

「ええ……」(´・ω・`)ドウイウコッチャ

 

(ナイス、本当にナイスだよ風雪! こんな至福を味わえるなんて、お姉ちゃんはいい妹を持てて幸せです!!)

 

「……あー、まあ喜んでもらえたなら良かったわ。今回は白雪が一番の功労者だし、他に何かあれば出来る範囲で聞くぞ?」

 

「!? ほ、ホントにいいの!?」

 

「これに関しては二言はぬえ」

 

「じゃ、じゃあ、既成じーーじゃなくて、えっと、その……まだちょっと疲れてるから、潤ちゃん様のお膝、借りてもいいですか……?」

 

(今貞操を奪われかけなかったか)

 

「まあ、こんな硬いので良ければ幾らでも。あ、枕かタオルいる?」

 

「そのままでいい、いえそのままがいいです!」

 

「お、おう」

 

「えへへ……幸せえ……」

 

 

「し、白雪お姉様……すごく、大胆ですね……」

 

「……そうでやがりますか?」

 

(むしろあの距離感で、何故付き合ってやがらないんですかね……)

 

 

 




あとがき
 封印するだけのつもりが、思いっきりバトル展開入ったんですが。おっかしいなー、前話の影響か?(知らん)

 というわけでどうも、ゆっくりいんです。今回のテーマは『後始末』、封印した色金を完全に封じた形ですね。前回の分は、あくまで孫から出るのとアリアさんへの影響を防いだだけだったので。

 さて、次回も時間は飛び、女子の戦場の時間です。……このメンツだと修羅状態になるか、協力して追い込まれる未来しか見えませんね。どっちでもいいんですが(オイ)

 それでは今回はここまで。読んでくださりありがとうございました。

 感想・評価・お気に入り等、いただければテンションが爆上がりして投稿頻度が早くなるかもしれません(真顔)

ぶっちゃけ中学時代の話って見たいです?

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  • 各ヒロインとのイチャイチャを……
  • エッチなのはいいと思います()

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