「戦闘は私達二人に任せる、とのことです。バチカンが合流したら始まりますね。
……不安ですか? 妖刃君」
「不安、とは違うな。……単に、時間を与えすぎた。楽には勝てないだろう」
「……あなたの元相棒、そんなに厄介なんですね」
「……不安か?」
「ーーいいえ。私は妖刃君と一緒なら、負ける気はしません」
「そうか。……なら、足元を掬われないように、しないとな」
「ですね。……あ、バチカンの方々が来ました。行きましょうか」
セーラ「作者」
( ゚д゚)「はい」
セーラ「60%」
( ゚д゚)「大分下がりましたね。ではこちら、各国のブロッコリー詰め合わせをどうぞ」
セーラ「感謝。では私も戦ってくる」
潤「前回とほぼ変わらねえじゃん」
「しぃちゃん、バチカンの人達が来たよー。魔剱の気配も感じられるね」
「予想より遅かったですね、メーヤさんの幸運が仕事をしなかったのなら幸先よいのですが。
さて、こちらから仕掛けましょう」
遠山潤改め、シギです。部屋の窓から覗けば、バチカンの面々が大通りを歩いているのが見られます。遅まきながら、私達がここに潜伏した情報を掴んだのでしょう。
理子が集めた情報によると、師団は奪われていた勢力図を破竹の勢いで取り返していたようです。『魔剱』と『妖刃』に対する被害を考慮して、眷属が即時撤退をしたのもありますが。
「余裕が出来たのか、以前より人数が多いですね」
「めっちゃ目立つよねーあれ」
……カツェ達にも連絡はとれましたし、仕掛け時ですね。そして、向こうとも『繋がり』は出来ました。
「ご主人様、理子様、ご武運を。どうか、ご無事でお帰りください」
「ええ、もちろんです。ではリサ」
「いってくるね~」
「ーー『魔術陣地』、起動」
両手を組んで祈るリサに頷き、準備していた術式を『まとめて』起動させ、極東戦役関係者全員を巻き込んだ『転移』を開始する。
さあ、先手は取らせていただきました。これより戦いを、始めましょう。
……あ、転移が完了する前に男に戻っておきましょう。理子、勿体ないなあって顔するんじゃありません。
「こ、ここは……!?」
「おービックリした。転移させるとは聞いてたけど、いきなりすぎねえか潤?
ああ、腕はくっついたのな」
「事前に転移するって伝えたから文句言うなよカツェ。とりあえず、一週間ぶり」
「パトラとセーラもお久ー。調子はどう?」
「問題ないぞ、十分休んだからの。さて、あの二人へのリベンジマッチといこうかの」
「パトラ姉、調子乗ると痛い目見るよ。撤退の判断は適切に行うべき」
「待てセーラ、お主に言われると嫌な予感しかしないのじゃが!?」
「いや前回セーラに助けられなかったらやばかったじゃねえか、パトラ」
「うぐっ!?」
「お前らコントやってるとか余裕だな」
「「「お前が言うな」」」
いきなり異口同音のツッコミは予想外だよ。
どうも、遠山潤です。良かった、転移前に『変われた』わ。万が一見られてたらやってやって! と魔女連隊に騒がれるのが目に見えてたし。カツェ以外いねーけどさ、今回。
「まさか、私たち師団も巻き込んでの強制転移……!? これだけの大魔術を遠山さん一人で……
……侮れない方と思っていましたが、訂正します。遠山さん、あなたは師団の脅かす存在です」
「今更かよ」
カツェが呆れたような目を向けているが、俺は首を捻るばかりだ。
「魔力パターン、現在位置、指定座標との距離、魔力干渉への対抗ーーこれらを考慮して魔術式を構築すれば、誰だって出来るだろう?
即席は無理でも、今回は時間があったんだしな」
「「「「「…………」」」」」
「え、何この空気」
なんで何言ってんだコイツ、みたいな目を向けられてるんだろう。妖刃くらいじゃねえか、目で何も語らないの。こっちみんな。
面子は俺と理子、カツェ・パトラ・セーラの眷属の主力、メーヤさんと配下のシスター兵、そしてーー
「……」
離れた場所からこちらを無言で見ている『妖刃』と、寄り添うよう隣に立つ『魔剱』。
「さてと。潤、一番手もらうぜ? 雑魚はあたしに任せろ」
「因縁の相手を雑魚呼ばわりするのか」
「普段なら幸運の加護のお陰で厄介極まりないがな、あの胸だけシスターは。
だけど、今なら問題ないだろ? あ、折角だからタスラム一丁貸してくれ、暴れたい」
「はいよ、無暗に壊すなよ。
璃々粒子も吹き飛ばしておいたし、存分に暴れてこい」
「おう!」
ご機嫌な様子で歌いながら(この間のパーティーで俺達が弾いた曲だ)、カツェはシスター軍団の前に一人で立つ。魔剱と妖刃はーーふむ、動かないな。連携を取る気はない、か。
「よーうメーヤ。てめえの顔もそろそろ見飽きてきたんだが、ちょっとは変わり映えしないのか?」
「……カツェですか。私もあなたのような魔女の顔など、何度も見たくありませんね。速やかに己の罪を悔い、火にくべられるべきではないですか?」
「おー怖い怖い、未開の部族なんかよりよっぽど野蛮だなあバチカンの連中は。じゃ、精々殺されないよう返り討ちにしないと」
「……随分大きく出ましたね。『厄水の魔女』とはいえ、私達に一人で勝てると?」
「さあ、どうだろうなあ?」
ニヤニヤと小馬鹿にした笑みを浮かべて二丁のルガーーータスラムを弄ぶカツェと、射殺さんばかりの瞳で大剣を構えるメーヤさん。
「カツェ、援護は?」
「いらねえ、ここまでお膳立てされれば一人でも十分だ」
「そうかい。じゃあ俺達は観戦させてもらいますかね」
「ユーくんお菓子食べる?」
「いやガチの観戦モードじゃねえか!?」
だからそう言ってるじゃん。ストロープワッフルを堪能しながら、廃棄された風車の上に飛び移る。巻き込まれるのはごめんだしな、菓子が吹き飛ぶ(そこじゃない)
「ーー乙女達、相手は『厄水の魔女』一人! 今度こそその首を獲り、主に献上するのです! 突撃ーーー!!」
わあああああ!! と叫びながら、シスター軍団が突撃してくる。装備大盾と剣だけで銃持ちに挑むとか、長篠の戦いを思い出すのは俺だけだろうか。ここヨーロッパなんだが。
「はっ、やってみろバチカンの犬が!」
金と黒のルガーを構え、シスター達に向かって放たれるのは掌サイズの水球。
「そんな弾丸程度でーー」
「
「「「キャアアアアア!?」」」
「ーーな!? ぐう!?」
カツェが叫ぶと水球は
「ハッ、ボケっとして真正面から受けてるとは、とんだ間抜けだなシスターさんよお!?」
「おー! シスターの濡れ場シーンとか、カツェ流石ですな! これはいい資料になる!」カシャカシャ
「お、このワッフルキャラメルじゃなくてメープルなのか。うむ、うまい」
「いやお前らマジで自由だな!?」
戦闘前に頑張ったんだし、別にいいべ。
「ぐ、そんな!? 何故『幸運』の加護が働いていないのですか!?」
「ははは、踊れ踊れ!」
メーヤが動揺する間にカツェは笑いながら連射し、連携の崩れたシスター兵達を倒していく。これは一方的だなあ。
中には突撃してくるものや、聖句を唱えて攻撃しようとする者もいるが、
「ほほほ、妾達まで援護しないとは言っておらんぞ?」
「動揺した獲物ほど、狙いやすいものはない」
パトラの砂に足を取られ、セーラの弓によって詠唱を中断された。完全に眷属側のペースだな。
「カツェ、あなた、私の加護を打ち消すほどの力をどこで手に入れたのです!?」
「あー? そんな急に変わるわけねえだろ。お前、仮にも超能力使いなのに気付いてないのか?」
「何のことーーっ!?」
「ユーくんご指名みたいだよ?」
「よっし、ホームランで返してくるわ」
「それDH打者だよね? 理子はホストかキャバ嬢を期待してたんですが」
後者おかしいだろ(真顔)
さて、メーヤが何に驚いているかというとーー恐らく、この周辺に張られた魔術式だろう。
廃墟一帯を覆うほどの巨大な魔術陣が地表に展開され、空にも同様の、幾らか小さい魔術陣。こいつら全て、俺が用意した支援系の魔術ーー分かりやすく言うなら、てんこ盛りのバフとデバフだ。
本来はその場でしか発生しないそれらを、『魔術陣地』ーー起動した術式を『貯蔵』し、改めてこの場所に展開したのだ。
「場所を選べるなら、自身に有利な環境を、相手に不利な環境を与える。戦術の基本だろ?」
上策は戦わずして勝つことだがな。そう言っている間も、バフ山盛りカツェが、幸運の加護すら失ったシスター兵達を薙ぎ倒していく。大勢は決したーー
その者を、視よ
その時、動いたのは妖刃だ。使ったのは、■の魔術。
「「「「ーー」」」」
戦っていた者達は敵味方問わず、その魔術を無防備に受けてしまい、忘我の状態になる。
■しい、そんな陳腐な言葉すら意味をなさない、■の顕現。不完全なものは魅了され、動くことすら出来ず。視線を向けていないものでも、その影響からは逃れられない。
「ーー吹き飛べ」
だから、後ろの俺が動く。
理子が用意してくれたマークスマンライフル、HK417。理子特製の魔弾が積められたそいつから吐き出された弾丸は、金色に黒混じりの、音を超えた速度の熱線。
魔術を使用したばかりで隙を晒した妖刃に向けての狙撃は、一直線に向かいーー
「ーーさせませんよ」
直撃する前に、魔剱の投げた環剱が弾いた。
「チッ、流石にこの程度じゃ当たらないか。カツェ、生きてるか?」
「ーーーーっ。誰に、言ってんだ潤ーーいや待て、それで防げるのか!?」
「その者じゃ無理だよ、太〇拳じゃねえんだし。魅了系の魔術を防ぐ加工をしたもんだよ」
そう言いながら魔導具ーー見た目はサングラスのそれを投げ捨てる(理子のはピンク色)。視線と注意は妖刃と魔剱に向けたまま、な。
「さて、選手交代だ。アレをもろに受けちまった以上、まともに戦えないだろ」
「……ああ、まださっきの姿が目に焼きついて離れねえ。魔術もまともに使えねえし、腹立たしいが任せた」
「任された。理子、行くぞ」
「おーきーどーきー。さあて、暴れるぞー」
こっちは文句を言うパトラ以外スムーズに選手交代できたのだが、向こうは逆に揉めているようだ。
「ーー原田さん、何のつもりですか!?」
「負けそうだったところを助けてあげたんじゃないですか、妖刃君は。というか名前を言わないでください」
「そ、それはーーですが、魔女を討ち取る好機をみすみすーー」
「……邪魔だ、メーヤ・ロマーネ。部下ともども、下がっていろ」
「なーー」
「雇い主だから大目に見ていたが、これ以上は看過出来ない。
俺達があいつらを、殺す。そのためには、お前らが邪魔だ」
「…………っ」
何か口にしようとしたメーヤさんだったが、妖刃がわざとらしく刀を鳴らすと、青い顔で下がっていった。
「……さて、待たせたな」
「いや、別にい「氷断」うおおおおお!?」
「にょああああ!?」
いきなり氷の中に閉じ込めようとするって容赦ねえな!? ほぼ反射で左右に避けるーーいや、狙いは分断か。
「そのまま氷漬けになってくれれば楽だったんですが」
「絶対零度より冷たい氷の中とかお断りだわ、寒いってレベルじゃねえぞ。
というか俺の相手はあんたか、魔剱」
「そうですね。改めて始めまして、遠山潤。あなたにはボコるついでに、聞きたいことが山ほどありますので」
「ボコられるのが前提なのについて、女は怖い。
で、聞きたいことってなんぞ」
俺が問い掛けると、魔剱は何故か頬を赤らめた。え、何急に。
「その……凍刃君の昔のことを、色々と」
あー、そっちかあ。なんというか、
「乙女か」
「乙女ですよ!? モーレツに失礼ですね!!」
腕を振りながらうがー! と吠えたてる。何コイツ、ツッコミ適性あり?(そこじゃない)
「というか本人に聞けばいいだろ。性格変わってなけりゃあ聞かれれば答えるぞ、アイツ」
「むう……」
「何よ」
「そのよく知ってるぞ、みたいな感じが気に入りません」
「いやどーしろと」
そりゃ五年は一緒にいたんだし。
「あとその……改めて二人っきりで聞くとなると、ちょっと恥ずかしくて……」
「乙女か」
「だから乙女ですよ!?
……んん! とにかく、凍刃君の元には行かせません。あなたが集団戦でこそ真価を発揮するのは、聞かされていま」
「通してくれるなら、あいつの弱点とか好きなものの詳細を教えるけど」
「…………行かせません! あなたを倒してから聞けばいいんですし! モーレツに惑わそうとしても無駄ですよ!!」
「だいぶ迷っただろ今」
分かりやすいなあこいつ。生温い目を向けてやったら、「なんですかその目は!?」とまた百面相してるけど。
「さて、精々抵抗させてもらいますかね。火力で」
亜空間からストックしていた魔導書を展開、更に魔術陣を並べーーようとして、何個かが真っ二つに裂かれた。
「出来るものならどうぞ。持ってくるならせめて首だけにしてこいと、凍刃君に言われているので」
いい笑顔で複数の環剱ーー投げたのも合わせて計七個が展開される。わあ、すげえ回転速度+放電してるし。あれ、充式と魔術式の起動を自力で行うようにしてるのか。
「首だけとか鬼退治かよ」
「あっちはそのままにしておきましたよ、死んじゃいますし。あなたは首だけくらいじゃ死なないでしょう?」
「そりゃそうだけどよ」
治せるからって生首オンリーを許容できるわけじゃないんだが。
「まあ、そこまで言うならーー殺す気で来るといい」
その続きは言わない。今の俺は魔術師じゃなくて、武偵だからな。
「ぬうう……」
「……」
どーも、峰理子です。妖刃の罠に見事引っ掛かり、現在一対一で睨み合っている状況だ。向こうは無口無表情の自然体だけど。
「正直、意外だった。こんな簡単に分断出来るとは」
と思ったら、口を開いてくれた。独特なテンポの語りも、鈴の鳴るような美声でやんの。なんだこれ(語彙力消失)
「まあ、この展開は予測してたからな」
「遠山が、か?」
「私もさ。元相棒だからって、そっちばっかに注目するのは酷いんじゃないか?」
「他意はない。……寧ろお前も、十分脅威だ」
「そう言ってもらえるなら、光栄だなあ。
ああそうだ妖刃、お前に一つだけ言っていきたいことがある」
「……?」
首を傾げる妖刃(これもすげー絵になる)に、私は指を突き付けて京都の修学旅行Ⅰ以来、思っていたことをぶちまける。
「な・ん・で! 潤の元相棒がこんな超絶美人なんだよ!!?」
「……は?」
「しかも女ならまだしも、男! 男だぞ!? そりゃ敗北とかを通り越して世界遺産レベルの美貌だってのは分かるけどさ、いくらなんでもあんまりじゃん!
こんなのが常時傍にいたら潤に顔面偏差値の意味がなくなるのは確定的に明らかだし、しかもアプローチ掛けても反応薄いし恋愛は疎ましく思ってるから二年近くかけてほとんど進展しないし!
もうーーなんか、なんかだよ!? 神は理子にどれだけ険しい恋愛の坂を用意してくれてるんだよチクショーめえ!!」
「…………それは、俺が悪いのか?」
「いんや、これはただの僻みと羨望と嫉妬だから! 気にしないで、慰められたら惨めになる!!」
「…………」
少しだけ眉を下げた困惑顔で、こっちを見る妖刃。潤がいたら「何そのレアな表情」とか言いそうだけど、私には関係ねー!!
キャラ崩壊? 知るか! 理子はこの思いをぶつけずにはいられなかったんだ!(傍迷惑)
「ふー、ふー……悪い妖刃、リビドーを抑えきれなかった」
「……いや、別に構わんが。……容姿を理由に褒められることはあったが、キレられたのは、初めてだ」
「金輪際ないだろうから気にしない方がいいぞ」
「お前が言ったんだけどな」
正論、だが私は悪くぬーー
髪に仕込んでいたタクティカルナイフを抜き、
「残念。見えない感じられない一撃でも、慣れれば対処は出来るさ」
「……」
妖刃は刀を収めたまま、私の一撃を避けて後退する。決闘じゃないしな、会話中の奇襲くらい予測してた。
しかし、いつ離れたのか全然理解できない。瞬間移動したようにしか見えないし、やっぱり視力は当てにならないな。
「さあて、もう言いたいことは言ったし、曲がりなりにも通用するのは分かった。
ーーりっこりこにしてやんよ、妖刃」
「……意味が分からん」
言いながらも妖刃は刀を収めた無形の構えを崩さず、対する。20m以上の高さはある氷で見えないけど、向こうも始める頃だろう。
「『魔剱』立花・氷焔・アリスベル」
「元魔術師の武偵、遠山潤」
「元イ・ウー
「西欧財閥所属、『妖刃』原田凍刃」
意味はないが、自然と名乗りを上げーーそれ以上は何も口にせず、師団と眷属それぞれの傭兵が激突した。
あとがき
カツェ達の前半戦だけで終わったんだけど!? くそう、書きたいことが多すぎる!(計画性の無さ)
というわけでどうも、ゆっくりいんです。ええ、予定にない前後編ですよこれは。まあ潤と妖刃は因縁があるから仕方ないとはいえ……どうなるんだこれ(知らん)
それにしてもここ、原作ではリサがメインの回なのに完全フェードアウトしているという。まあこんな戦場に連れてこれるわけないんですが、ジェヴォーダンの獣状態でも即死するわ(白目)
それでは今回はここまで。読んでくださりありがとうございました。
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各ヒロインとのイチャイチャを……
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