遠山潤は楽しみたい   作:ゆっくりいんⅡ

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 どうも、作者のゆっくりいんです。今更なんですが、いつも誤字報告ありがとうございます!
 改めて指摘されると、「なんでこんな間違いしてるの!?」っていうのが結構あるんですよね……酷い時だと、アリアさんの名前を間違える時もありますし……これは風穴案件ですわ。
 さて、藍幇編も(多分)ラストです。孫とココ達の運命はいかに!?(そこかい)
 

※本編に飲酒シーンがありますが、決して未成年の飲酒を勧めるものではありません。
 


第四話 策というほどのものではない

「ふえええぇぇぇぇ……」

「ふふふどうしたどうしたー、転がしちゃうぞー?」

「……」コックリコックリ

「泣いてるお姉様を……いやいやダメよメヌ……」

「…………」

 何だこの状況(二回目)。

 どうも、遠山潤です。今は藍幇……というより静幻さんとの交渉を終え、、用意された貴賓室でゆったりしている……と言えればどれだけ良かったか(白目)

 ちなみに話し合いの内容だが、

・藍幇とバスカービルの停戦

・可能な範囲で、双方が支援を行う協力体制(藍幇は資源、バスカービルは戦力・技術)

・非々色金の譲渡(静幻さん曰く、「解析はもう終わった」とのこと)

 以上である。ココ達? 場を荒らすのが目に見えてたから、入場すら許してもらえなかったぞ。静幻さんの方が立場も権限も上だからな。

 協力については確約出来ないが、非々色金(迷探偵の負の遺産)が譲渡されるのは大きいな。向こうから仕掛けてきたものあって、譲歩してくれたから動きやすいのはありがたい。

 満漢全席? いつも通り壮絶な勢いで食いつくしてたからスルーで(冗談抜きで厨房が戦場と化していたらしい。ホントすいません)。

 静幻さんが「まさか全部食べてしまうとは……」って、糸目を開いて驚いてたのが印象的だったな。

「わふー、ごしゅじんしゃまー。りしゃはおしたいしてましゅ~」

 ……現実逃避やめるか。リサ、いつもと言ってること一緒だぞ。正面から抱きついてスリスリしてるのと、耳が出てるのが違うけど。あーこら、匂い嗅ぐんじゃありません。「いい匂いですぅ……」じゃないから。

 さて、なんでこんな状況になっていたかというと……理子がヒョウタンに入ってた『藍苺酒(らんめいちゅう)』、要するに酒を飲み始め、他の面々が気付かずにどんどこ続いたためである。口当たりいいし、ジュース感覚で飲めるからな。

 お陰でチャイナドレス(全員着替えた)はあっちこっち乱れてるし、酒気と女の匂い混じって色々アカン空間になってるよ。乱痴気騒ぎもいいとこである。

 なお、 俺は静幻さんと今後について話していたため呑んでない。戻んなきゃ良かったわ(真顔)

 というかどんだけ飲んだんだよ、ヒョウタンの中身ほぼ空じゃねえか。アリアは色金の影響で肉体年齢が止まってるから仕方ないけど、白雪は相当強いはずなのにカオマッカー! だし。なおメヌも普通に見えるが、酔いの回りはアリアと似たり寄ったりだ。白人なのに顔に出にくいのな。

「ふえええぇぇ……子供じゃないもーん」

「あーはいはい、俺が悪かったからもう寝なさい」

 こんな時も直感鋭いんだから。

 泣き上戸のアリアをベッドに寝かせ、頭を撫でてやってると、寝息を立て始めた。早いなオイ。

「んうー……ジュン、メヌもー。お姉様と一緒に寝るー」

「はいはい、早く寝な」

「だっこー……」

 子供か、いや子供だったかこの中では。車椅子から下ろしてアリアの隣に寝かせてやり、「うふふ、お姉様かわいーい……」と笑いながら眠りに就いた。これ記憶残ってねえよな?

「あはは、ほら潤も飲めー」

「はいはい飲んでるよ、残りは俺が貰っちゃうから白雪はこっちにしなさい」

「なぁにい~? 俺に酒じゃなくて水を飲めってか~!?」

「水じゃなくて酒だよ」

 「ならよーし!」と言いながら、豪快に飲み干す。まあ水なんだけどな、酔っ払って判別付いてないけど。

 女の子が取っちゃいけないポーズ状態の白雪に、もう何杯か水を飲ませて寝かし付けた。色々乱れてるから衣服は直した、アカンでしょコレ。

 で、レキは……体育座りのまま寝こけてた。何か「潤くん……」とか寝言漏れてるけど、そんな呼び方始めてだわ。とりあえず毛布掛けてやった、一番平和だわ。

「わふふー、しゅりしゅり、ふんふん」

 ……で、一番の問題はこのメイドである。介護中も引っ付いたままだし、口に出してることをずっとやってる状態である。犬かコイツは、いや狼か。

「リサー? もう寝ような?」

「わふふー? なんでしゅかー?」

「……リーサー?」

「わふ?」

 ……ダメだ、言語が通じねえ。甘え上戸+言語力低下かよ、性質わりい。

 ……ん? 待てよ?

「リサ、待て」

「わふっ」ピタッ

 嘘だろマジで止まったぞ。犬耳すらピクリともしねえし。

 とりあえずベッドの方まで移動し、

「はい、おいでー」

「わふー♪」

 嬉しそうにトコトコ寄ってきたので、抱き上げてベッドに寝かしつける。

「はい、お休み」

「わふ……おやしゅみなしゃい」

 言うと素直に目を閉じた。完全に犬系メイドじゃねえか。

 ……さて。

「くふふふー、ユーくんお疲れ様~。いやあ、いいのが一杯撮れタヌキチ!?」

「ちったあ手伝えや元凶ぉ!!」

 チャイナドレスで撮影しまくってる理子に、史上最高クラスのアッパーカットを叩き込んでやった。飲ませるだけ飲ませて放置とかふざけるなよホント。

 

 

「ったく、何考えてんだお前は」

「いやあ、そこにお酒があったものでつい。ユーくんも眼福だったでしょ?」

「記憶があった場合、ぶっ飛ばされそうで怖い」

「思春期を殺した少年みたいな感想ですな」

「お前は思春期真っ盛りのエロガキみたいだな」

「いやあ、それほどでも」

 褒めてねえ。こちとら酔っ払い+チャイナドレスの介護したせいで、色々見えちまうし触れちまうんだよ。スリットからの生足とか谷間とかうなじとか。

「役得でしょ?」

「お前は眼福だな」

「にゅふふー、理子のおにゃのこメモリーが更に充実しますな」

「メモリーごと焼くか」

「オイ殺すぞ」

 急にマジになるな、こええよ。声どころか目まで据わってるじゃねえか。

 酔っ払いどもを寝かしつけた後、俺と理子は中庭で月見酒としゃれ込んでいる。藍苺酒は飲み干されてたから、代わりに貰ってきた白酒(バイチュウ)でな。寝てる連中ほっといていいのか? 大丈夫、部屋にエグイ罠仕掛けといたから(真顔)

 しかし理子の奴、誰よりも飲んでる癖して余裕だな。流石に顔は赤いが。

「んー? 何々ユーくん、理子の顔に見惚れちゃった?」

「強いて言うなら酒臭い」

「ぶー。ユーくんが飲むの遅いからですー」

「俺は風情を楽しんでるんだよ」

 あと俺が遅いんじゃなくて、お前が早いんだからな? 貰った分の1/3無くなってるじゃねえか。

「というかー、こういう時はお月様だけじゃなく、理子を眺めて褒めるべきだと思いまーす」

「絡み酒かよ。……いやいつも通りか」

 視線を月から横に向けると、理子は首を傾げてこちらを下から覗き見つつ、ほんのり赤く染まった顔で笑っている。

 足を惜しげもなく組んで晒し、片手に酒の器を持つ姿は――

「……ふむ。月とは異なる艶のある美しさ、か。今に留めたくもあり、先が楽しみでもあるな」

「――――ホント?」

「嘘吐いてどうする」

 理子は目を見開き、こちらをマジマジト見つめてくる。そんな褒めなかったっけね。俺。……そういやいつもバカやってばっかだわ、つまり自分達のせいだわ(なんとも言えない顔)

酒をゆっくりと嚥下しながらいつもの所業を思い返していると、

「……えへへー」

 先程とは違う、蕩けた笑みでこちらに身を寄せてくる。飼い主に甘える仔猫みたいだな、スリスリしてくるし。

「どうした急に」

「んー? なんだろ、お酒のせいかな? 理子、甘えたくなってきちゃった」

「いつも通りじゃねえか。酒こぼすぞ」

「んーん、違うの。今はね、身も心もユーくんに預けたい気分。……ダメかな?」

「……別にいいぞ」

 ……わざわざ聞くことでもないだろうに。

「んふふ、ありがと。じゃあ、もう一個ワガママでえ……山査子(サンザシ)、食べさせて欲しいなあ」

「いつもなら言わずともねだるだろうに」

 まあいいけど、俺も食いたかったところだし。見た目は羊羹のような菓子を一個手に取り、

「ほら」

「あーん。……にゅふふ」

「あ? ――んっ」

 

 

 何の脈絡もなく、山査子を咥えたまま俺と理子の唇が重なり。菓子の半分を舌で押し込んできた。

 

 

 ごくん。嚥下する音がやけに生々しく聞こえる。

「……オイ理子、酔ってるのも大概に――んうっ」

「ん~~」

 苦情は再度唇を塞がれることで遮られた。今度は白酒が流し込まれ、理子の唾液が混じったものを飲まされる。

「――ぷはっ。くふふー、お裾分けだよユーくん。どう? 美味しかった?」

「……食ってるもん一緒だろ。何がしたいんだお前は」

「あれれ~、そう言いながら顔が赤いよ~?」

「酒のせいだろ」

「そうかな? そうだね、お酒のせいだね~」

 仕方ない仕方ないと言いながら、理子(元凶)はまた身を寄せてくる。……ほぼ『戻ってる』筈なのに、自分の顔は見れたものじゃなさそうだ。

 結局その後は終始無言で過ごした。……何だかなあ、見られてないのが幸いか。

(遠山、ここで手を出したら炭も残らないよう燃やすからね)

(いたのかよヒルダ)

(可愛い妹の照れた姿がにっくきコンチクショウに向けられてると知りながら、悶絶と憎悪の狭間で空気を読んだわよ)

 じゃあ最後まで黙ってろよ。あとそういうとこは姉妹だな、お前ら。

 

 

 開けて翌日、本日はクリスマスイブなり。

「「「「「…………」」」」」

 まあ、そんな空気じゃないのだが。

「みんなニーハオー! はれ? どしたの死人みたいな顔して」

「半数が二日酔い対策で飲んだ薬の不味さに撃沈、もう半数は知らん」

「そりゃあーんなことやこーんなことがあったかランスロット!?」

「誰のせいよ誰の……うう、口の中がまだ変な感じ」

 げっそりしたアリアの裏拳が理子を撃沈させる。ちなみにコイツとメヌ、白雪の三人が薬で撃沈した組だ。『良薬口に不味し』を体現してるからな、酔い止めの『ヨイゴロシくん2号』は。

「というかジュン、何でアンタが寄越すのはトンデモ味ばっかなのよ……」

「味がアレなら次回は飲まないよう気を付けるだろ、その分効果は折り紙付きだが」

「納得はしたけど、ふざけるなと言いたいわね……」

 溜息を吐くのはメヌ。この二人が一番二日酔いのダメージでかかったからな、肉体年齢的に無理もないが。

「……? 理子ちゃん、何かいいことでもあった?」

「ん~? りこりんはいつも通りの元気印ですよユキちゃん?」

「……んー、気のせいかな」

 首を傾げる白雪の隣に、理子はいつも通りの笑顔で座る。恋愛関連では勘がいいな白雪、アリアはその方向だとポンコツ「何か言った?」何でもないです。

「ところで朝ごはんマダー? 理子、お腹空いた~」

「お前昨日と言ってること一緒だぞ」

「でも実際遅いですね、これは許されない事態です。『お仕置き』案件かしら?」

「藍幇の厨房を全滅させる気か」

「というか静幻の奴も遅いわね。ココ達辺りと揉めてるのかしら?」

「そんな気配は感じないが。……ん?」

「何よジュン」

「ちょっと待ってくれ。……白雪、静幻の気配を探ってくれるか?」

「え? ……あれ、感じられないね。出掛けてるのかな」

 白雪も眉を顰めてるが、それはないだろう。渡すだけとはいえ、大事な交渉を投げるほどあの人は阿呆じゃない。

「……ジュン、どう読みます?」

「……メヌと同意見だな」

「「予想外のアクシデント」」

 異口同音に言ったのを見計らったように、部屋の扉が乱暴に開かれた。そこから出てきたのは――予想通り、ココだ。ご丁寧に四姉妹勢揃いか。

「チュン! お前に話あって来たネ!」

「お呼びじゃねえ、静幻さん呼んでこい」

「会食も持たずに来るあたり、交渉する気があるんですかね」

 順に俺、メヌの反応である。いい加減低血圧でイライラしてるな、爆発しないといいけど。

「キヒヒ、これは交渉じゃない、勧誘ネ!」

 そう言いながらココ達が広げたのは、古風な形の巻物だ。えーと何々、辞令書? 判子は上役組織の上海藍幇か。

「……」

 どう反応すればいいんだろうな、これ。

 とりあえず、内容を産業で纏めると。

・遠山潤を武大校(軍でいう師団長クラス)、神崎・H・アリア、峰理子を武中校、他を武小校待遇で香港藍幇に迎える。

・曹操姉妹を正室側室とし、藍幇の運営について専属の女性教師を付ける(この時点で白雪と理子の目がヤバイ)

・終身雇用の前払いとして、三千万元(日本円で約四億五千万強)を支払う

 以上を条件として藍幇に降伏・所属しろとのことである。珍しく三行で収まった? そりゃ収めるもんだろ(真顔)

 普通に考えれば破格の条件……じゃねえな。コイツ等俺をダシにして成り上がる気満々だし。オチは絶対抗争へ巻き込まれるパターンだろ。

「外部の人間に対する待遇としては、破格のものネ。コレを断るような宇宙規模のバカなら、孫と一緒に叩きのめせと――チュン、聞いてるのカネ!?」

「……はあ」

 答える代わりに溜息が漏れた。コイツ等理子達と孫の戦闘を聞いてないのか? 香港藍幇が不利なのを分かってるからこそ、静幻さんは交渉に乗り出したのだし。まさか、金を積めば誰でも降ると思っているのだろうか。

「……言っておくが、お前らのいう宇宙規模のバカなんて、割とそこら中にいるぞ。世の中金と地位が全てとは思わないことだ」

「ヘエ? じゃあ断るつもりカ?」

「そもそも俺達は静幻さんと交渉したんだが」

「諸葛は譲歩し過ぎネ、だから人質取らせて大人しくしてもらたヨ。お前達も受けなければ、自分も家族も大変なことな――」

 喋る途中、ココ姉妹の横で轟音が鳴った。白雪の投げたテーブルが砕け散ったものだ。あーあ、結構な工芸品なのに。

「――で? 言いたいことはそれだけ?」

 黙って聞いていたアリアが、怖気が走るほどの怒気を纏いながら立ち上がる。コイツに『家族』のワードは禁句だわな、それだけのために必死こいて走ってきたんだし。

「降伏どころか脅迫なんていい度胸ね? じゃあこっちも極東戦役の方式に倣って、宣誓してやるわ。

 『バスカービル』は香港藍幇と敵対を宣言する、全員一切容赦なく風穴開けてやるわ。異論はないわよね、リーダー?」

「反対しても止まらないだろ、ウチのメンツは」

 温厚なリサですら、険しい顔でココ達を見てる訳だし。バスカービルの空気やばいぞ、ココ達も察したのか引き気味だし。

「ふ、フウン。こんな条件を蹴るなんて、お前ら最高のバカね。ココ達の城で喧嘩を売ったこと、後悔するがイイネ!」

 猛妹が負け惜しみよろしく叫ぶと、脱兎のごとく逃げ出した。凄い三下感出てるな。

「……手を出すなって合図されたけど、良かったのか? 理子、メヌ」

「ダイジョーブダイジョブ。ねーヌエっち?」

「ええ、勿論です理子。相手が準備万端だというなら」

「「完膚なきまでに潰して、プライドも何もかも粉々にしてやる(します)」」

 ……いーい笑顔だなあ。静幻さんの努力が水の泡となったよ、完全に。オマケで逆鱗にも触れちまったと。俺しーらね(目逸らし)

「ジュン。アタシ達がやるから、メヌと一緒に指令塔やりなさい。アンタまだ完治してないでしょ」

「まあ確かに全快じゃないが……大丈夫かお前ら?」

「大丈夫だよ潤ちゃん、身の程知らずの泥棒ネコに思い知らせるだけだから」

「いややりすぎを心配してるんだが……」

 九条破りするなよマジで、証拠隠滅大変だから(違)

 

 

 

 




あとがき
 終わらねえじゃねえか、何で酒盛りのシーンをあんなに延ばした(白目)
 という訳でどうも、ゆっくりいんです。やはりココ達がとんでもない目にあうフラグ立ちましたが、いかがお過ごしでしょうか。私は今から(アリア達の暴れっぷりが)怖いです。
 さて次回ですが、本当に藍幇の決戦……なんだけど、さっくり終わらせないと残酷シーンになりそうですねコレ、どうしよう(知らん)
 感想・誤字訂正・評価・批評・質問・リクエストなど、良ければ付けてくださるとこれ以上なく嬉しいです。
 では読んでいただき、ありがとうございました。

ぶっちゃけ中学時代の話って見たいです?

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  • 各ヒロインとのイチャイチャを……
  • エッチなのはいいと思います()

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