……誰が分かるんだろうこの例え。起源弾ぶち込まれたケイ○ス先生でええやん。
『……え? ごめんレキお姉ちゃん、もう一回言ってもらっていい?』
「潤さんが藍幇の襲撃を受けて負傷しました。白雪さん曰く命に別状はありませんが、戦線復帰には時間が掛かるとの『よーしちょっと藍幇滅ぼす準備してくるね』……切られてしまいました」
「リサちゃんごめん、すぐに治療とベッドの準備して! 潤ちゃんが!」
「白雪様、一体何が――ご主人様!? ご主人様が、ボロボロ……」
「……これは一大事ですね。リサ、言われた通り用意しなさい。早く!」
「! は、はい、メヌ様!」
どうも皆さん、メヌエット・ホームズです。藍幇の相手を誘い出す作戦中、ジュンが標的に接触したと連絡を受けたのですが……満身創痍で白雪に抱えられた状態で、戻ってきました。
「……白雪、ジュンの容態は?」
「見た限りだけど、全身骨折と内臓の幾つかがやられちゃってるんだけど……一番の問題は、外より中。魂が傷付いちゃってるから超能力は使えない状態に……うう、ぐす、潤ちゃん……」
「……白雪、しっかりしてください。今この場で最も超能力に通じてるのは貴方です。ジュンが助かるかどうかは、貴方にかかってるんですよ」
車椅子から立ち上がり、白雪を落ち着かせるために背中をさする。尋常じゃないくらい取り乱してますね、無理もないですか。
「う……うん。ごめんねメヌちゃん、私の方がお姉さんなのに……」
「いいんですよ、貴方が動揺してるのは見るまでもなく分かりますし」
……本音を言うと、私はお姉様のように仲間が傷付く姿なんて見たことない。私一人なら間違いなく動揺していただろう。血塗れのジュンの姿なんて、私には縁遠い世界のことだった、はずなのに。
今冷静でいられるのは、目の前で泣きそうになってる白雪と、
「し、白雪様、準備できま――ふぎゅ!?」
……いつものパーフェクトメイドぶりが嘘みたいに動揺してる、リサの存在ね。ギャグ漫画みたいに正面から転んだわよ。
……ジュンへの依存度=焦り、なのかしら。嫌な比例ね、このチーム大なり小なり彼へ依存してるし。
「ありがとうリサちゃん! じゃあ降ろさないと……潤ちゃん降ろすよ、痛かったらごめんね……?」
「…………ん。あー、着いて、たのか……ありがと、な、白雪」
「ううん、このくらい気にしないで。それより無理に喋らなくてい「ご主人様!」」
「……あ? あー、リサ、か……」
「ご主人様、ご主人様……ああ、こんなボロボロになってしまって……」
リサが涙を流しながら、ジュンの無事な手を握っている。
「リサ、泣きたいのは分かるけど早く治療を始めなさい」
「そ、そうでした……白雪様、ご指示をください。リサに出来ることなら何でもしますので」
「うん、ありがとうリサちゃん。じゃあ最初は魔力路の修復から……」
……今なんでもって、って条件反射で言いそうになったけど、流石にこんな状況でボケるのはやめましょう。
「白雪、私に出来ることはありますか?」
「ありがとう、でも今は大丈夫だよ。潤ちゃんの治療は私達がやるから、メヌちゃんはアリア達の指示に専念してくれないかな?
……多分、理子ちゃんが一番まずいと思うから。説得して、何とか戻るように言ってくれないかな」
「……分かりました」
「白雪さん、運ぶの手伝います」
そこでかなめ達への通話から戻ってきたレキも合わせ、三人は奥の部屋へ消えていった。
「……さて、今の理子がどうなっているか、ですね」
正直、推理すればどんな状態かは容易に想像がつく。だからこそ問題なのだが。
「私は言葉で相手を操ったり切ったり出来るけど……通じない相手にはどうしようもないのよね」
もし突撃しそうなら、お姉様にも協力してもらわないと。……同じく錯乱してるでしょうけど、理子よりはマシでしょう。
「うん、うん。……分かったわ、理子にも伝える。……一応やってみるけど、期待はしないで。やばければ止めるけど」
神崎・H・アリアよ。……ジュンがやられたってのには驚いたわ。藍幇の連中を舐めてたかしらね、アイツもアタシも。
指令塔のメヌに指示が下されたけど……大丈夫かしら。
「アリアーん。ヌエっち何だってー?」
「あー、そのまま囮を続けてくれって。ジュンからの情報だと、孫だっけ? とココ連中以外に、襲撃者もいたらしいわ」
「おけおっけー。それじゃあデートしつつ、憎いアンチクショウを探しに行きますぜ~」
「目撃情報も何もないのにどうやって探すのよ……」
「そこはまあ、乙女の勘と待ちガイルスタイルで」
「後者乙女要素皆無じゃないの。……ねえ理子」
「ん~? なあにアリアん?」
理子はいつも通り、バカっぽい雰囲気で首を傾げている。そう、あまりにもいつも通りだ。浮かべてる表情も、スカートをあざとくふんわりさせながら振り向く動作も。
「いや、ジュンの様子が気になるんじゃないの? アンタなら白雪の助けにもなるだろうし、アタシ一人でも回るだけなら問題ないわ」
「……くふふー、アリアん珍しく優しいね~」
「珍しくは余計よ」
「そうだねー、いつも優しいねー。でもまあ、ユーくんがやられるような相手だし、アリアん一人にするのはちょーーっと不安だからね」
「ホントに心配してんのアンタ」
「ホントのホントですぜお嬢さん。まあそれに」
容赦なくやらないとだしね~?
「まーユーくんの場合、自分から手を出したかもだから自業自得かもだけど。女の子に手を出すのはスーパー早いからね!」
「……本人が聞いたら問答無用で殴りかかってきそうね」
「くふふー、今ボロボロだからそんなことナイナイ!」
……笑顔は本来攻撃的なものだって、良く分かるわ。これなら裏理子モードでキレてる方が何倍もマシね、怖過ぎるわ。見知らぬ通行人も無意識なのか、アタシ達を避けてるし。
……ごめんメヌ。何とか理子をそっちに戻したいけど、アタシじゃ力不足だわ。冷静に笑顔で怒ってる相手って、どうすればいいのかしらね。
「ご主人様……」
「リサちゃん、集中を乱しちゃダメ……」
「は、はい。すいません、白雪様……」
星伽白雪です。動揺しがちなリサちゃんを叱咤し、潤ちゃんの治療を行っていますが……正直、経過は良くありません。
今の潤ちゃんは魔力路――体内の魔力を循環させる、血管みたいな器官――がボロボロに乱されていて、回復以前に修復しないといけません。例えるなら巨大な風穴が開いたダムで、水が漏れ続けている状態でしょうか。
幸い致命傷には至っていないのと、潤ちゃんが超能力面での耐久が高いため、すぐに死んじゃうことはないけど……早く治さないと最悪後遺症が残ってしまうから、急がないと……。
「フ、ウ……」
「ご、ご主人様……? 眠ったのです、か?」
「うん、そうみたい……多分、休眠状態で魔力の循環を直すためだと思う」
多分潤ちゃんが起きてれば、「微々たるものだけどな」って苦笑するだろうけど、私達としてはそれがありがたいです。手術を手探りでやっている中、病の箇所が分かる図面を貰ったようなものですから。
「……っ」
「……白雪様、大丈夫ですか?」
「うん、私は大丈夫……リサちゃん、魔力を潤ちゃんに流すのに専念してもらえる? 私が直すのをやるから」
「は、はい。ご主人様、失礼します……」
リサちゃんが目を閉じ、潤ちゃんの手を自分の胸元に寄せて魔力を流してくれます。少し楽になってきたのか、呼吸も安定してきました。
穴が空いている身体、壊死しかけていた魔力路も回復傾向にあります。でも、まだ予断は許せない状況です。潤ちゃん、絶対助けるから……
神崎・H・アリアよ。結局あの後、アタシと理子の二人で藍幇の下手人を探して回ったけど……結局夜まで成果はなく、土地勘もないので無理は出来ないから、ホテルに戻ってきた。警戒されたのか、それらしい奴は影も形も見えなかったわね。途中出会ったゴウ達にも話を聞いたけど、収穫はなかったし。
「めーちゃんレキュ、ただいまー。ぶう、見つからなかったよー」
「メヌ、レキ、ただいま。……ジュンの様子はどう?」
「お帰りなさい、二人とも。治療は終わりましたよ」
「とりあえず、峠は越えたとの事です」
「……そう、それなら良かったわ。じゃあ、情けない姿をさらしてるアイツの顔でも拝みにいこうかしら」
軽口を叩いてみるが、内心安堵の息を吐く。隣の理子も「まーユーくんだし、そう簡単にはくたばらないよね~」などと言っているが、アンタ険しい顔しながらもホテルの方チラチラ心配そうに見てたじゃない、アタシ知ってるから。
……正直、アタシはジュンがやられるなんて想像もしてなかった、のかもしれない。
アタシ達の中では一番弱く、武偵校全体で見ても実力は良くてCクラス。だけど、アイツにはそれを補う頭の回転の速さと、何より『上手い』がある。
銃撃の技術、先読み、交渉エトセトラ、アイツは何をやらせても器用にこなす。だから格上の連中でも対等以上に戦えるし、ふざけているようで引き際や駆け引きも心得ている。ここにいる誰より慣れている、っていうのもあるんでしょうけどね、戦いも交渉も。
だからか、無意識に思っていたのかもしれない。ジュンが、アタシの相棒はいつでも笑って、どんな危機も平然と乗り越えるんだって――
「えちょっと待ってリサ、そのえぐい急旋回殺人鬼がやるもんじゃな、ギャー二回目殴られたあ!?」
「急旋回は生存者だけの特権じゃないのです、ご主人様」ドヤァ
「初心者の私から見ても、リサちゃんがとんでもない動きをしているの分かるんだけど……」
「……くおらぁジュン!!?」
「お? アリアお帰りー」
「お帰りーじゃないわよ!? こっちが心配してたのに平然とゲームやってるとかどういう神経してるのよ!?」
「平然とはやってない、寧ろ追い詰められてピンチ」
「そういう意味じゃないの分かってるでしょうが!?」
ピンピンしてるじゃないの!? しかも横に白雪とリサをはべらせて! センチになったアタシの心を返せこの(風穴ァ)野郎!!
全く、心配して損し――
「……レキ」
「どうぞ、アリアさん。潤さん特製デストロイくん7号です」
「何でアタシが7号なのよ」
「私は9号ですね」
「理子は5号!」
「いや聞いてないから」
ひっぱたく紙の部分が全員のカラーに合わせてる辺り、無駄にこだわりを感じるわね。
まあそんなことはどうでもいいので、
スパァン!
「ぶげ!?」
「潤ちゃん!?」「ご主人様!?」
思いっきり後頭部を引っ叩いてやった。ゼロフレームハリセンの名に恥じないわね、ジュンが反応も出来ず喰らってたわ。……なんか手に馴染むのが釈然としないけど。
「おーいて、ゲーム中に手を出すのはハウスルール違反だぞオイ」
「ちゃんとリザルト画面になるまで待ってたからノーカンよ。無様を晒したリーダーに対する罰だと思いなさい」
「そりゃまたお優しいこって」
「普段なら地獄落としとか決めるよねーアリアん」
「今はしないわよ、流石に。……で、アンタどれくらい『治ってる』のよ」
直観で分かった、軽口叩きながらゲームやってたコイツは全然回復してない。どころか、横にいるリサと白雪が付いていないと、万が一もありえるかもしれない状態だと。……そんな状態でゲームやってるのは。
アタシの思考を予測したのか、ジュンはゲームからこちらに目を向け、
「全開時の2%」
「どこの探偵魔人よアンタは」
そんなんだったら指一本動かせないでしょ。
「真面目に答えると、40%だな。思考は問題ないが、身体は七割程度。一番は回路がいかれてて魔術の効力も結構切れてる。全快は三日、戦線の復帰は一日」
「大分やられてるわね……じゃあ、今回は後方支援に徹しなさい。で、そんな状態で何でアンタは寝てないのよ」
「寝すぎて目が冴えた。かといって出来ることももうやったから、リサに付き合ってもらっての気晴らし」
「ああ、もしかしてまた『あの』魔術切れてるの?」
「……生存を優先した結果だよ」
「だから顔赤いのね。いやいや、珍しいもの見れたわ」
「やかまし」
白雪がくっついてて顔赤くなってたら説得力ないわね、笑っちゃうわ。ほら「じゃあ理子もー!」って、横のバカが嬉々として突撃していったわよ。あーらら、照れちゃって可愛いわねえ。
「……お前最近メヌに似てきたんじゃないか」
「んなわけないでしょ、日頃の仕返しよ。
とにかく、全快じゃないならさっさと休みなさい。アンタぶん殴れないとか調子が狂うわ」
「普段から殴らなきゃいいんじゃないですかねえ。心配されてるんだかしてないんだか」
「心配してるに決まってるでしょ? ……あんまり不安にさせるんじゃないわよ、リーダー」
「……あー、悪い」
珍しく素直に謝ってきた。分かればいいのよ、分かれば。とりあえず、疲れたから先に寝ることにするわ。
あ、一つ言い忘れてた。
「ねえジュン」
「なんぞ」
「……無理に強がったり、平気そうに見せなくていいわよ。アンタが弱ってるなら、アタシも他のみんなも、助けてあげるし手を差し伸べてあげるわ」
それとも、アタシ達はそんなに頼りない? ドア越しに振り返ると、ジュンはポカンとした間抜け面になっていた。あら珍しい、写真撮っておけば良かったかしら。
「……いや、そんなことはないさ。じゃあ今は、お言葉に甘えさせてもらうかな」
苦笑して、少しだけ力を抜いた、ような気がする。コイツ肝心なとこは隠すの上手いから、見抜くの難しいのよね。アタシの直観も働かないし。
よろしい。アタシはそれだけ返し、今度こそ自分の部屋に入っていった。決して恥ずかしいことを言って顔が赤いわけじゃないわ、ないったらないわ。
「いやー愛されてますなーユーくん。アリアんがあんなこと言うなんてねー。これは盛大に反省! しないと」
「それは猿のだろ。まあ今は大人しく――オイマテ理子、なんでくっつイデデデデデ!?」
「いやー、アリアんがアメだから、理子はムチになろうかなーと」
「理子ちゃん!? ちょ、傷が開いちゃうからダメだよ!!」
「ダイジョーブダイジョブユキちゃん、傷になる場所は避けてるから」
「いやそういう問題じゃないし当たってダダダダダ!?」
「うるせえ心配させた分とエテ公如きにやられた罰だ、甘んじて天国と地獄を同時に受けろ解禁済みヘタレ」
「デフォでヘタレな奴に言われたくなギャアアア!?」
……向こうで騒ぎになってるけど、それが理子の愛情(物理)よジュン、甘んじて受けなさい。
というか、ここで涙の一つも流せばいい雰囲気になるのに、つくづく愛情表現下手よねアイツ。
「アリアんに 恋愛を 説かれた…!?」
やかましいわ!! 毎度恋愛相談して寝不足にさせるのはどこのどいつよ!! つーかナチュラルに心読むな!!(ブーメラン)
おまけ
「ジュン、そこに座りなさい」
「え、床じゃなくて「いいから」アッハイ」
「……」
ドン
「おおう?」
ボフッ
「……」
ギュッ
「ちょ、メヌ?」
(何故にベッドで押し倒されて抱きつかれて――)
「……あんまり、心配させないでちょうだい」
「……」
「大切な人と別れるのは……慣れて、ないのよ」ギュッ
「……そうだな、悪かった」
「……もっと強く撫でて、抱きしめて。いるってこと、教えて」
「……ん」
十分後……
「……他の人に言いふらしたら、殺すから。覚悟してちょうだい」
「言わねえよ、(精神的に)死にたくないし」
(顔が真っ赤だってこともな)
あとがき
シリアスからの謎のラブコメ、この小説はどこへ向かっているんだろう。そしてホームズ姉妹はどうなるんだろう(知らん)
どうも、ゆっくりいんです。久々のシリアスが難産過ぎて頭沸騰しそうでした。お陰で合間にオリジナル異世界小説書いて、同時投稿しますので読んでくださいギャグです(ダイマ)
さて、次回は孫襲撃イベントです。今のとこ酷い目にあっている中国勢、孫は果たして逃れられるのか!?(フラグ)
感想・誤字訂正・評価・批評・質問・リクエストなど、良ければ付けてくださるとこれ以上なく嬉しいです。
では読んでいただき、ありがとうございました。
追伸
デストロイ君の数字が分かった人は、お金を掛ける覚悟のある同士とみなします。
ぶっちゃけ中学時代の話って見たいです?
-
読みたい!
-
いいから続きを書け
-
各ヒロインとのイチャイチャを……
-
エッチなのはいいと思います()