遠山潤は楽しみたい   作:ゆっくりいんⅡ

42 / 111
 夏休みに入ってからアリアがツッコミをしていない気がするので、今回は頑張ってもらいます。
ア「また胃が荒れる日々が来るのね……」
 潤君の女装は今回ありません。
潤「まあ今回は無理があるだろ」
理「またやってもらうけどね!」
潤「オイ」
 



閑話その四 見栄を張るのは程々に

 

「い、いいジュン? 絶対に離さないでよ、絶対によ!」

「離せっていうフリにしか聞こえないんだが」

「ちっがぁう、大真面目に言ってんのよ! 離したら風穴スクリューの刑よ!」

「安全確保のために手を離すべきだろうか」

「まず手を離さなきゃいいでしょうが!?」

「その発想はなかった」

「お姉様、足が着くんですから沈むことはありませんよ?」

「引っくり返って溺れるかもしれないでしょ!?」

「そんな器用な溺れ方あったら笑うぞ」

 横浜国〇プール。オリンピック等の国際競技でも使われるここに、俺達いつもの面子(+レキ)は来ていた。夏休み中とあって結構な人の数だが、運良くメヌが人酔いをしない程度には空いている。

 さて本日何の目的でここに来たかというと……まあお分かりとは思うが、アリアのカナヅチ克服である。しかも誰かに強制されてのことではなく、自分から申し出た結果という。

 なんでも数日前、裁判の準備が終わった後学校に寄った際、見知った女子グループ(『武偵殺し』の件で俺が入院した時、顔を合わせていた救護科(アンビュラス)の生徒達)から遊びに誘われたらしい。友達が少ない(と思い込んでいる)アリアはこれに喜び二つ返事で了承したのだが、その行き先がプールとのことで――

「やべえ、アタシ泳げないじゃん!?」

 と遅ればせながら気付き、俺達に泳げるよう指導してくれと頼んできた訳である。素直に言えばいいだろうに、クラスメイトや後輩どころか戦姉妹である間宮さんにも自分の弱点は隠しているらしい。というか、(俺達へのツッコミを除いて)みんなの模範であるよう振る舞っている結果なのだが、疲れないかそれ?

 まあそんな訳で、プールでの練習である。ちなみに場所が横浜なのは、見付かるリスクを減らすこと、かつ比較的近郊で大きな場所を選んだ結果だ。そこまでばれたくないか。

 そしてリハビリを兼ねてメヌも参加し(理由の半分はアリアより先に泳げるようになってドヤ顔したいらしい)、リサ指導の元歩くところから二人でやっている。ちなみにアリアの指導役は白雪だったのだが、暇なのでついてきた理子の挑発に乗り、現在別のプールで水泳対決の真っ最中だ。なので俺が代役を勤める羽目になっている。レキ? その辺にビート板よろしく浮かんでボーッとしてる。

「う、ううー……えい!」

 アリアは怖がりながらも水面に顔を付け、引っ張られながらバタ足で進んでいくが――すぐに顔を出してしまう。

「うう、やっぱり痛くて目を開けられないわ……」

「開けない方が怖いと思うがね」

 ゴーグル使えばいいだろうに、『使うとカッコ悪いから嫌』と謎の拒否するんだよな。泳ぎの素人が体面気にしてどうするよ。

「う~……ねえジュン、手っ取り早く水に慣れる方法ってないの?」

「技術的な面ならともかく、アリアは精神面の問題だからなあ……まあ水中を異物と感じず、歩くのと同じ感覚で手足を動かせるよう慣れていけばいいんだが」

「……」プルプル

「うん、意識するとそうなっちゃうよな」

 手を繋いだままなのに、生まれたての子鹿みたいに震え出した。中々慣れんねえ、やっぱ幼少期に自宅の池で溺れたトラウマが払拭できんか。運動神経は妖怪クラスなんだから心配はな「誰が人外ですって?」いえ言ってないです。

 とりあえず、休憩も兼ねて昼食を取りに出ることとする。アリアは渋ったが、煮詰まってるんだから気分転換も必要と伝え、渋々納得させる。

「ふー、はー……こ、これで八連続引き分け……」

「ぜえー、ぜえー……流石ユキちゃん、理子が認めたライバルなだけはあるね~」

 お前等骨休めに来た筈なのになんでガチバトルになってるんだ。つーか一本400mを八連続とかアホの所業じゃねえか。

 

 

 リサと白雪(おまけ程度に俺)が用意した四段重箱×2を完食。相変わらず食欲すげえなこの四人は。

「はーあ……ねえジュン、暗示か何かでサクッと水に慣れる方法とかない?」

「頭クルクルパーになっていいなら」

「理子ならオミズダイスキー! みたいな感じになるよ?」

「メヌなら言葉だけで水、水ウワアアァァァ!! みたいな感じに出来ますが」

「全部頭パーになってるでしょうが!? ……まあ、そんな簡単に慣れたら苦労しないわよね」

 ツッコミ入れてから再度溜息。中々上手くいかなくて凹んでいるようだ。普段アホみたいなスピードで技を習得していくからな。この間なんか格ゲーの空中コンボをリアルに再現して理子をボコってたし(リサが目を輝かせてた)。

「まあ、苦手な分野だし焦らず覚えていこうや。人より遅くても別に恥ずかしいことではないし」

「寧ろそういう欠点があった方が愛らしく思えることもあるのよ」

「どっから出てきた夾竹桃」

「百合あるところに私ありよ」

「今回百合要素そんなにないと思うが」

「貴方も女装すれば良かったのに」

「何その嫌な振り」

 幾らなんでも体格とか誤魔化せないっつうの。

「今度水着でも出来る女装探してみるね夾ちゃん!」

「ええ、期待してるわ」

 サムズアップすんなし。とりあえず話しの邪魔だから追っ払ったら、イラスト描いているレキと一緒に黙々と同人誌を描き始めた。お前等ここプールだぞ。

「ねえジュン、誰か泳ぎの上手い人っていないかしら?」

「そこに二人ほど」

 白雪と理子を指差す。ちなみに俺は苦手な部類だ、連続だと800mくらいが限界だな。

「いや、そこの当てにならない二人じゃなくて」

「ちょ、アリア酷いよ!? さっきまで一緒に頑張ってたよね!?」

「ええそうね、途中で理子の煽りを受けて、プールのど真ん中で手を離してくれたわよね」

 危うく溺れかけたわよと睨まれ、サッと目を逸らす白雪。まあ夏の陽気にやられたんだろ、仕方ない。「だって潤ちゃんとのデート権を賭けて勝負って言われたし……」とか聞こえる気もするが、人の予定を勝手に作らないでくれませんかねえ……。

「知っている限りだと眞巳の奴が一番速いかな。河童並の速度でスイスイ泳いでく」

「ああ、イ・ウーにいた子ね。あの時は余裕なくてちょっと喋っただけだからどんな人か分かんないけど……ちょっと見てみたい気もする」

「見ると凹むと思うが――あ」

「はい? ……あら」

 水着の上に和風パーカーを羽織った眞巳が、から揚げを食いつつこっちに気付いて驚いた声を上げた。いや、なんでいるの?

 

 

「菊代に『あんたここ一ヶ月全く休んでないじゃない、まとめて休みやるからどっかで羽伸ばしてきな』と言われたんです。

 本当は会合の護衛と書類仕事の予定だったんですが、それも代役を立てられてしまって。何かしてないと落ち着かないので、運動も兼ねて遊びに来ました」

「立派な仕事中毒(ワーカーホリック)だなオイ」

 改めてアリアと初対面のメヌが挨拶をし(リサは同じ主戦派(イグナティス)ということで面識があるらしい)、泳ぎを見たいと頼んでみたら快く了承してくれた。比較対象として理子と競走してもらうことにする。というか3キロ以上泳いだのに元気だなコイツ。

「いやー、マミ=サンと泳ぎで勝負とか、無理ゲーにも程があるんですがそれは」

「ノリノリで受けてたじゃないですか……あと理子、同い年なんですし呼び捨てでいいですよ?」

「いいえ、マミさんはマミさんなのです!! これは理子の拘りなのだ!」

 いや呼んでやれよ、眞巳の奴(´・ω・`)ショボーンってなってるじゃねえか。

「では、位置についてください。よーい」

 ドーン!!

 うん、ドラグノフの空砲で合図するのやめようね? 他のお客さん何事かとこっち見てるじゃねえか。こっち見……ますよねそりゃ、すんません。

 両者同時に飛び込み、泳ぎ始める。その時点で差が出始めていた。

「え、ちょ、速!?」

「……オリンピックでも余裕で金取れるんじゃないかしら、ジュン?」

「本人はやりたがらないだろうな」

 理子と眞巳の差は、水かき一回ごとに倍々ゲームで開いていく。流石、河童の血筋も引いてるだけのことはあるな。

 当然眞巳の圧勝で、その後偶然いた水泳競技の関係者からスカウトの話が掛けられ、そそくさと逃げるように去っていった。何かすまんな、今度飯でも奢るわ。

「いやー……ハードル高くなった気がするわ」

「あそこまでは目指さなくていいから」

 遠い目をするアリアに言っておく。アレは完全に人外の領域へ片足突っ込んでる速度だし。どこぞの魚人族も真っ青なスピードだよ。

 うーんしかし、このままだとマイナスイメージもあって泳げるまでにこぎつけるか怪しいな。裁判の証拠集めで今日以外は練習時間取れないし……仕方ないか。

「リサ、メヌの進渉はどれくらい?」

「水の中を歩くのはもうお一人でも大丈夫です。メヌ様の体力も考慮して、今日は補助ありで25mまで泳ぐのが目標です」

「なるなる。じゃあアリア、今日中に補助なしで最低25m泳げるようにしよう」

「はあ!? いきなり無茶振りとかどういうことよ!?」

「だらだらやるより目標あった方がいいだろ? ちなみに目標未達成で姉より妹が優れてた場合、東方地霊〇のルナティックノーミスクリアを出来るまでやってもらいます」

「ちょ!?」

「もしくは超魔〇村をノーコンクリアでも可」

「アンタアタシを睡眠不足で殺す気!?」

「大丈夫ですアリア様、その場合は不肖リサが全力でサポートさせていただきます!」

「主人権限で許可する」

「うわあい全力で目を輝かせてるんだけどこのメイド! あーもう分かったわよ、そんな地獄をやらされるくらいならあの子達に笑われないよう死ぬ気でやってやるわよ!」

 いや、別に出来なくても笑われはしないだろうが。誘ってきた曲直瀬(まなせ)さんのグループは武偵高でも一、二を争う良心の持ち主達だし。まあ言わないけどね!(ゲス顔)

 その後、必死の練習(アリア曰く『背水の陣』、後ろで期待してるリサから逃れるためか)が実を結んで夕食までには何とか25m泳げるようになった。うん、やっぱり人間追い込まれると強いね。

 そして後日、アリアは一人緊張の面持ちで遊びに出かけたのだが――楽しかったが何か違うという、凄い複雑な表情で帰ってきた。まあそりゃ、プールだからって泳ぐとは限らんしな。

 

 

 




登場人物紹介
遠山潤
 白雪からアリアの指導役を(なし崩しに)バトンタッチされた男。最終的には恐怖の罰ゲームを課すことで解決。
 実は当初女装姿で指導するのも考えていたが、本文の通り無理があるので却下した。ちなみに予定していたのはちょっと大人版ケロちゃん。
 水着は……野郎のなんて書かなくていいよね?
 

神崎・H・アリア
 カナヅチ克服作戦で身も心も削りきったツッコミ役。とりあえず最低限水を怖がったり溺れることはなくなった。
 水のトラウマに関しては本作オリジナル。運動神経いいのに泳げない理由は精神的なものじゃないかと勝手に思った結果である。
 水着は赤のワンピースタイプ。
 
峰理子
 結局手伝いもせずに遊び倒してた奴。お前何しに来たんだとアリアにジト目を向けられるが、当然のように興奮していた。
 水着はハニーゴールドのビキニ、フリル付き。そんなのあるのかは不明。


星伽白雪
 指導ほっぽり投げて理子と勝負してた巫女。今回の件でアリアからの信用が若干下がった。
 水着は白のビキニタイプ。黒でもいいけど何か違う気がするので。


メヌエット・ホームズ
 足のリハビリがてらリサと一緒に泳いでいた妹。結構大変だったが始めてのプールはご満悦した模様。
 姉が必死になって妹に追いつかれまいとする様は、見ていて中々楽しかったらしい。愉悦部員要素が強くなってる気がする。
 水着は青のワンピースタイプ。スクール水着を想像したそこの君、私もだ(オイ)


リサ・アヴェ・デュ・アンク
 メヌの指導役として泳ぐのを手伝い、仲は益々深まっている模様。泳いだ距離や運動量を記録して潤に渡しているなど、メイドの仕事もしっかりこなしている。
 罰ゲームの件については本気で、アリアが目標を達成した際は賞賛しながらもちょっと残念そうだった。ちなみに罰ゲームを普通にクリアできるのは彼女だけである。
 水着は青のパレオ。腰に布巻いてる割に隙が多く見えるのは着こなし方の問題だろうか。


レキ
 勝手についてきたマイペース娘。プールに浮かんでいたのはイラストのアイディアを練るためだったらしい。
 ハイマキは家で留守番。クーラーを付けてもらい、ご飯も用意されてグータラしていたらしい。太るぞ狼。
 水着は黄緑のビキニ。布は大きく露出度は控えめ。

夾竹桃
 フラッと神出鬼没に現れる百合の愛で手。最近はメヌとリサのコンビで色々書いているらしい。
 水着はそもそも着てない、パーカーと短パンでそれっぽい格好をしていただけである。お前何しに来た。 

 
須彌山眞巳
 休みを押し付けられた(本人談)仕事中毒(ワーカーホリック)。友人と働ける環境でやる気がモリモリ湧いており、止まる気がない。
 特に予定はなかったが出てもらった。理由も特にない(オイ)
 水着は灰色のタンキニ(タンクトップ+ビキニ)。露出度と色が控え目なのは大和撫子の嗜み(嘘)

 
後書き
 水着回なのにエロス成分が欠片もない不思議。ギャグ優先の弊害か(←ただの力量不足)
 夏休み編は後一、二話分で終わる予定です。そうじゃないと延々と書いてそうなので……というか書きたいもの適当に書いてるだけな気がする。
 感想・誤字訂正・評価・批評・質問・リクエスト。良ければ付けてくださるとこれ以上なく嬉しいです。
 

ぶっちゃけ中学時代の話って見たいです?

  • 読みたい!
  • いいから続きを書け
  • 各ヒロインとのイチャイチャを……
  • エッチなのはいいと思います()

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。