「最近、こういうのが多くないか」
「こういうの?」
言葉を選んでくれた教師には悪いが、ハジメはおうむ返しする他なかった。
遊園地での一件の後に駆け付けた警察と消防の目を掻い潜っての逃走やらなんやらでほとんど眠れないまま迎えた翌日。そして昼食にありつく前に呼び出されたとあっては、僅かに頭を働かせることすら億劫だ。
「ロクに学校にも来ないで大ケガだの補導だの。何をしてるって聞いているんだ」
おまけに相手が昼食を食べながらというのが癇に障る。
しかしぎっちりと事務机の並んだ昼休みの職員室の真ん中で、そんな怒りを爆発させるわけにもいかない。
「はぁ。まぁ、悪さはしていないと思うスけど」
なので、ハジメはあくまで気の抜けた返事を口にするだけだ。
「来月から三年だろ。希望は進学か?」
そろそろ幽香が届けに来てくれるはずの弁当の内容と教師のコンビニ弁当とを比べて内心勝ち誇っていた最中なので、ハジメが頷くまでには大分間が空いた。
「俺もあんまりこういう言い方はしたかぁないがな。仮にも大学目指すなら、素行ってのも大事になってくるんだから」
「ソコーならちゃんとしてますってば。学校来てる時くらいは」
「部外者を毎日朝夕連れ込むことがか?」
毎日帰りを一緒にするハジメもクラスメートたちも当たり前になっていたが、校内のちょっとした有名人である妖怪は毎日どこかから無断侵入しているのであった。
「おまけに彼女、幽香さん、だったか。お前の恋人だとかなんとか、噂になってる」
「噂も何も、事実ですから」
嘘である。
もちろん『マジでそうだったらいいな』とは思っているのだが。
幽香が学校に来るたび来るたび出動する裸隊とファンクラブをあしらうのは面倒だったが、形だけでも彼女の恋人でいるのはそんなに悪い気分ではない。
ましてや、ただでさえ彼女持ちというのは学生生活のステータスのようなものなのだ。
「開き直るんじゃない」
「別にそんな」
「普通に校則違反ってことは置いておいてだ。人の目ってのをもう少し気にするべきだ。教師なら誰でも人格者ってワケじゃないんだからな」
じゃあお前はどっちなんだよと口をつきかけて、ハジメは眉間にしわをよせた。幽香の影響かトラブル続きの毎日のせいか、どうにも好戦的になりすぎてよろしくない。
「あの、これって一体なんの説教なんですか。俺のしてることってそんなにヤバいことじゃ――いや、ヤバくなくはないスけど。呼ぶべきならもっと他にもたくさんいるじゃないですか」
代わりと吐いたものも結局は含みのある物言いだったので、ハジメも教師も、同時に唸りながら頭を抱えていた。
「すんません。反省はしてるんですが」
「実はこないだ、警察の人が来たんだよ」
「は?」
それは寝耳に水だ。ここまで半分魂が抜けたようにイスに座っていた問題児がようやくコトの深刻さに気付いたのを見て、教師は一層頭痛を強めたようだった。
「も、もしかしてまた停学とかですか。俺、今度ばかりはなんもしてないですよっ」
「だったらまだよかったんだがな」
根掘り葉掘りハジメの事を聞くと、彼らはすぐ帰っていったという。ハジメを呼ぶこともせず、不気味すぎるくらいあっさりと、むしろ彼に会うことを避けたいようでもあった。
「やっぱりお前、面倒なことに首を突っ込んでないか」
それについては言い返したいことがあった。
「違いますったら。毎度毎度、面倒の方から俺に突っ込んでくるんですよ」
「つまり自覚はあるんだな」
「ええと。まぁ、確かに最近俺の周りではイロイロありますけど」
重苦しい沈黙に包まれたのは、何もこの二人の周囲だけではない。
この場に呼び出されてからずっと気になっていたことだったが、いつでもそれなりに騒がしい職員室にどことなく張りつめた空気が漂っていた理由がようやく分かった。
「センセ、でも、もうすぐ全部終わるんです。信じて下さい。そしたら勉強しますし、学校だって毎日来ますってば」
「偉そうに言ってるけど、それが当たり前なんだからな」
教師が顔を上げるのを待つ間、ハジメはうららかな陽気の渦巻く校庭へと視線を馳せていた。腹が低く鳴る。
「敢えて聞くが、悪いことじゃないんだな」
「もちろん。誓っていいスよ。今後一切俺は面倒起こしたりしません。なんなら一筆書きますか」
ようやく長話の落とし所が見つかったので、これ幸いとぽんぽん調子のいいことを吐きつけていた時だった。
「失礼します。ハジメ、鶴見ハジメはここにいますか!?」
職員室の扉を勢いよく開け放ち、そこに現れたのは上半身裸の男が数名。不穏などよめきが沸き始めるなか、彼らは机と机の間をぬるぬるとした動きで縫ってきて、ハジメの両脇をがっちりとホールドする。
「先生、緊急事態なんです。コイツ借りていきますよ」
約束をとりつけるなり早速派手な体当たりをかましてきた面倒の気配にハジメがぎこちなく教師に向き直る。
「あの、センセ。俺はマジで」
「もういいから。行け」
彼が庭に迷い込んだ野良犬でも追い払うかのようにしっしと手を振って見せると、裸の男たちは軽々とハジメの踵を引きずってその場を後にする。
「畜生っ、畜生っ、ようやく信じてもらえそうだったのに。何なんだよ。今度は」
長い廊下を猛スピードで引きずられつつ、ハジメは悪態と唾を撒き散らした。どれだけ暴れようと、無駄に筋トレに励んだ男たちはびくともしない。
「幽香さんと江梨花嬢がだな、ちょっとマズい感じになってるんだ」
そう答えるのは胸板に『1』とマーキングされた裸男。
俺だって学生生活が激マズなんじゃいと叫びかけて、あまりトラブルと並んで語られない名前が出てきたことに思い至る。
「なんだって、江梨花が?」
「そう。一触即発とか、そんな感じ」
『2』が頷くが、そんな説明では彼らの足が向かう先にある中庭で何が起こっているか推し量ることすらできない。できないが、凄まじくイヤな予感だけはしていた。
「任すぜ」
そうして穏やかな日差しが照らす吹きぬけに放りこまれた瞬間、見事に予感は的中したのである。
「ごめんなさい。もう一度いいかしら」
「ですから」
初代の卒業生たちが植えた記念樹の根元にはベンチがあり、日だまりに腰掛けた幽香は真正面に仁王立ちする江梨花を見上げていた。
「ハジメと別れてください。そう言ったんです」
思わずハジメは立ちすくんだ。
一体全体どうして二人がこんな状況になったのか、皆目見当もつかない。それでも二人の間に何度も見えない火花が散る気配だけは感ぜられた。
「どうして? 私がハジメと一緒にいることで、あなたに何か迷惑がかかるのかしら」
「えぇ。とってもイヤな感じがするんです」
遠巻きに世紀の対決を見守る生徒は多い。
当の江梨花もあまりこういうシチュエーションには慣れないのだろう。彼女の顔は耳まで真っ赤で、遠目にも首筋をじっとり濡らす汗が見て取れた。
この場で平然としていられるのは幽香くらいのものだ。
「それはやきもち?」
一瞬きょとんとして、江梨花は猛然と首を横に振った。
「まさか。流石にハジメ相手じゃそれはないですけど。私、けっこう理想高いし」
どう声をかけようかと悩んでいた青年の心に大穴をぶち空けたことには気づかない。江梨花の目には、もはや幽香はあこがれではなく敵としてのみ映るようだった。
「あなたが来てからおかしなことばっかり起こってます」
傍で聞いていれば言いがかりも甚だしいことを口にする。それでも彼女の言うことは的を得ているのでハジメは静かに驚愕しながら幽香の答えを待った。
「そうね」
「素直ですね」
「まあね」
「だってさ。ハジメ、どう思う?」
この日の江梨花はいつになく意地が悪い。
中庭の様子を見守る目が一斉に向いたのを感じて、ハジメはまるで舞台にでも立っているような気分になる。緊張か陽気か、日差しの中に踏み入ると背筋がすぐに汗ばんできた。
「お前が俺のことをそんな風に思ってるって知って、傷ついた」
「そこじゃない」
もはやお茶の濁しようがなかった。
江梨花と幽香と、その他大勢の視線が降り注ぐ中でハジメは口を開く。ひと月前ならもう少し悩む余地もあったかもしれない。
しかし、遊園地の花畑に降り立った瞬間からハジメの腹は決まっていた。
「江梨花は、こいつを勘違いしてると思う」
ハトが対空砲火でも喰らったような顔で、暫く江梨花は佇んでいた。
「ねぇ、あんたこのままじゃ本当に卒業できなくなるわよ」
「だとしても俺にとって幽香は命の恩人で、数え切れないくらい世話になってきた。だから今更、こいつが何をしようが構わない」
彼女の背後からにゅいと首を伸ばしてハジメを見る幽香でさえひどくあいまいな顔をしているので、つまるところ彼の言葉はどちらを納得させることもできなかったということになる。
「一年そこら卒業が伸びたってかまわない。こんなにイイ女が彼女なんだから、割と人生安泰だって」
引っ込みがつかなくなったとはいえ、感心するほどの開き直りっぷりである。
真一文字に唇を結んでハジメを見つめていた江梨花は、やがて気が抜けたようにオーバーに肩を落として見せた。
「あっそ。余計な御世話だったってことね」
歩いてくる彼女と目を合わせることができない。
季節を読み違えた春の鳥がぴゅるぴゅる鳴いていた。そいつの空気の読めなさに何処ぞの誰かの妹の姿を思い起こしていると、すれ違いざまに江梨花がハジメの肩をどやしつけた。
「もうアンタのこと、助けてあげないんだから。せいぜい末短くお幸せに」
遠巻きに見守っていた生徒たちの輪へと乱暴に分け入ると、背の低い彼女はあっという間に見えなくなる。
「怒らせたかな」
じんじんする肩口をさする。
ただ一つ確かなのは、彼女がハジメとラーメンを食べに行くことは、もうないだろうということだけだった。
「ハジメ。あれはちょっとばかり酷いわね」
薄ら笑う幽香。
最近は彼女の心の動きが読めるようになってきた。特に今のこれは分かりやすい。
「どうしてお前まで怒ってるワケ?」
彼女は無言でニコニコ笑ったままハジメの手元に弁当箱を押し付けた。
「ねぇ、一緒にお昼しない?」
近くの生徒の一団に向かって手を振って去っていく彼女の背中は、やはり無言のうちにハジメを非難している。
とにかく今日は一人で食え、ということらしかった。
◆◆◆
大きな土鍋のなかでぐつぐつ煮える豆腐と野菜をつつきまわしながら、ハジメは背中合わせに流しに立って洗い物をする幽香の様子をうかがう。
「なぁ」
答えはない。
「なあったら。勝手にしゃべるからな」
結局彼女の不機嫌は家に帰ってからも続いている。
おそるおそるハジメが台所に足を踏み入れた時も、彼女は黙って菜箸を押しつけてコンロで煮える鍋を示しただけだった。
「俺、自分の能力ってヤツについて考えたんだけどさ」
それが無駄な言葉にならないかどうか不安だった。振りかえると、幽香は彼の視線を感じたのか僅かに頷いてくれた。聞く気はあるらしい。
「ずっとずっと半端な威力の弾を撃ちだすのが精いっぱいだったのに、昨日は違ったじゃんか。だから、もしかすると俺の力は『怒りを撃ち込む』とか『激情を形にする』とかなんじゃないかなって思って」
額の汗をぬぐう。鍋の熱気をうっとおしく感じるくらい、最近は温かい。
つまみ食いした湯豆腐が思いのほか熱く、思いのほかおいしかったので、ハジメは暫く間を置いてから続けた。
「実際、あのクジラのバケモノだって俺の能力でボコってやれたわけだし」
「うああああっ、やられたあぁ」
玄関から転げ入ってきた杏奈が見えた。そのままリビングで地団太を踏む彼女を前に、千晃は心底面倒くさそうに雑誌から視線を外した。
「何。うっさいな」
「千晃ちゃん冷たいよ。ねえ聞いてよ千晃ちゃん。ちゃんちあ」
「ああもうベタベタしないでってば。親なら娘の名前くらいちゃんと呼べっつーの!」
思わず幽香と顔を見合わせて、ハジメはリビングの窓にかかったカーテンを開け放つ。
「うわ」
見るも無残なスクラップと化した彼女の車を前に、ハジメは呻いていた。
「まだ明るいのに、堂々としてやがる」
遊園地での一件以来、例のクジラは一層見境なく暴食を行うようになっていた。不運にもこの日の犠牲となった杏奈だったが、よくよく考えれば堂々とひと月近く路駐を続けた報いのような気がしないでもない。
「あー、もう。いいや。サツ呼んでくる」
勝手にがくがくとゆすっていた千晃をこれまた勝手に放り出して彼女は携帯片手にリビングから姿を消した。ここのところの騒動で手一杯の警察はどこまで杏奈を相手にしてくれるだろうか。
「ずいぶん、つまらない結論ね」
虚を突くように幽香が口を開いた。
「能力とは願望を叶える手段。あなたの本質のあらわれ。それが、だれかれ構わずあなたのイライラを押し付けるような下らないモノでいいのかしら?」
幽香は失望を隠そうとしなかった。
「だって、千晃がさらわれた時も、遊園地のときも俺は頭にきてたじゃんか。幽香は見てないだろうけど、ユキと戦った時もキレてたし」
「回答としては四十点くらいね」
まるで答えを知っているような口ぶりだ。彼女はハジメの手から菜箸をひったくって、いつの間にか煮えきっていた鍋の世話に取りかかる。
「あなたの本質は、きっともっと素敵なものよ。さて、お父さんを呼んできてくれる?」
コンロから土鍋を下ろしながら、幽香はあぁそうだと呟いた。
「あれは別に怒っていたわけじゃないから」
「……じゃあさっきまでの態度、なんだよ」
「呆れていたのよ」
ハジメが釈然としないのを見て取ると、幽香はまるで出来の悪い生徒に接する教師のように、一言一言噛み砕いて口にした。
「私をあなたが殺したら、後に残るのは江梨花やユキたちなのよ。今からどちらを大事にするべきかなんて、考えるまでもないでしょ」
「それこそつまらねえよ。殺し合うからこそ仲良くしようっていったのはそっちだぜ。今はあんたのこと、本当の家族だって思ってるし。それ以上だって」
面と向かってそんな言葉を吐くのが照れくさくて、知らず足元に視線を落としていた。だから、困ったような幽香の笑みを見逃してしまった。
「やっぱり、あなたはずるいことを言うのね」
懐かしい台詞に弾かれたように顔を上げると、幽香はすでに背を向けていた。珍しく『人間のフリ』を忘れた彼女は熱々の土鍋を素手で持っていたので、気づいた千晃が腰を抜かしていた。
◆◆◆
「はい、あーん」
「あーん」
恋人の真似ごともだいぶ上手になったハジメが臆面もなく大口を開く。見かけ上はラブラブのカップルを演じきる二人を前に父は悔しそうにご飯をかきこみ、事情を知る杏奈はニヤニヤ笑う。
「ねぇ、くそあにき。一ついいかな」
そして唯一無表情なのが千晃だった。
油断しきったところに煮えたぎる豆腐を放りこまれて悶絶する兄などお構いなしだ。
「どうしてお姉ちゃんを好きになったのかってことなんだけどさ」
ずっと前にそんな質問を千晃にした。
今度はハジメ自身が問われる側になったというだけのことだ。
「決まってるだろ」
口を開いて、閉じて、また開いて。
人のいなくなった遊園地では簡単に形にすることが出来たはずの言葉が、とっさに出てこない。
「さんにーいちはいおしまい。時間切れ、だよ」
ぱんぱんと手を打って、千晃は意地悪にほくそ笑んだ。
「なんだそりゃ」
「敵を待ってやるほどわたしはアマくないのだ。で、今度はお姉ちゃんに質問タイムなんだよね。いい?」
文句を言ったところで千晃がハジメの言葉を聞いてくれないのは明らかなので、さっさと茶碗を取り上げていい具合に冷めた湯豆腐を掻きこむ。
その横に座る幽香が目で促したので、千晃はおもむろに口を開く。
「お姉ちゃんはどうしてこいつと付き合いだしたワケ?」
「好きだから。そんなに不思議なことかしら」
ふと手を止めて盗み見た幽香はまっすぐに千晃を見つめ返しているところだった。父も母も今や二人のやり取りへと神経を集中させていた。唐突に訪れる張り詰めた時間。ようやくCMが明ける。あれほど気になった番組の続きも、今やどこかよそよそしい。
「……フシギに決まってるじゃん。てゆーか怪しすぎ。好きだから、なんて」
「もしかして、ウソだとか疑っちゃったかしら?」
「ごめんね。だけど、本当にこんなフツツカなあにきでいいの? お姉ちゃんならもっと、ぜいたくできるよ」
むしろ二人のウソに気づきかけていたはずの千晃が居心地の悪さに襲われるほど、幽香の瞳は妹を捉えて小揺るぎもしなかった。その澄んだまなざしはハジメですら不安になるくらいだ。
「あなたが思うほどハジメはお粗末な子じゃないと思うわよ。まぁ、この子は確かにバカなことばかりしてはいるけどね」
「むむ」
二人からさんざん言われて立つ腹もあった。しかし口をはさむのが下策だということは分かっていたので、バカは大人しく黙って成り行きを見守ることにする。
「言ってろ」
無関心を装って口に運びかけた箸は、結局なにも出来ぬままに豆腐をお碗に持ち帰ることになった。
「どうしてハジメが好きになったのか。か」
息を呑んで、ハジメはそれを見つめる。
洗いざらしの分厚いジーンズの生地越しにも、ひんやりとした感覚が伝わってくる。掌からするりと箸が抜け落ちていくのを知りながら頭の処理が追いつかない。
隣を見る。心配しないでとでも言うような幽香の微笑みにクラクラくる。
「あにき、ハシ落ちたよ」
ハジメの膝に置かれていた幽香の手は、子供をあやすようにぽんぽんと膝を叩くとテーブルの上へと戻っていく。
「分かってるよ」
千晃がいぶかる前にギクシャクと動き始めるも、距離を計りそこなった彼は額をしたたかにテーブルの角にぶつけ、小声で悪態をついていた。普段なら千晃や杏奈がけらけらと笑ってくれそうなものだが、今日はとことん静かだ。
テーブルの下で箸を掴んで、耳を傾ける。
考えているのか、まだ千晃を見つめ続けているのか、幽香はそう簡単に答えを口に出そうとはしない。
テーブルの下にいるハジメには千晃の爪先が緊張に耐えるように、くっと丸まっているのがよく見えた。
「私がハジメを選んだ理由なら、そうねぇ。まずは彼が私にとって大切な約束をしてくれたってこともあるのだけれど」
けれど、の先はハジメも知らない。