銀の車体が春の陽気に輝いている。
F市の近郊。スロットルを全開にして畑と田ばかりの風景を荒馬のように駆け抜けていくバイクの後ろには、長い悲鳴が尾のようについて回った。
「叫んでばっかりじゃなくて、もっとしっかり掴まらないと。落ちたら大変よ」
法定速度は一体何キロだったか。
ぶつからなければよかろうなのだの勢いで時折対向車線にすら飛び出していく幽香の神経を疑いつつ、ハジメは幽香の胴に回した腕にいっそう強く力を込めた。
体を密着させることに文句を言うのは家を出て一キロ走る前にやめている。たった一日で運転をマスターした無免許妖怪のハンドルさばきはどこまでも上手だったが、同時に途方もなく攻撃的であった。
「杏奈のやつ、一体全体どんな教え方しやがったんだ」
悪夢のようなツーリングをそれからしばらく続けていると、二月の枯れ畑ばかりのなかに、突如としてその色彩が現れた。
「ふうん。あれが遊園地ってやつなのね」
ヘルメットの中で涙と冷や汗をブレンドしながらハジメは小さく頷いた。
季節変わり目のやや強い風の中、くたびれたように浮かぶアドバルーンに白抜きで書かれた文字が近づくにつれて読み取れてくる。
『めるびるアイランド』
何を隠そうこの遊園地のモチーフはハーマン・メルヴィルの『白鯨』である。
いたるところにあしらわれた難破船とか難破船とか半壊した船のオブジェとの間に鯨骨が見え隠れする様は原作を無視したゴシックホラー的なテイストを醸し出している。
「中でもヘンなのが鯨のゆるキャラ、もびーでぃっく。通称もびー君で」
ゲートをくぐって園内への長い遊歩道歩く間、横からハジメのパンフレットを覗き込んでいた幽香が不意に視線を上げた。
「ねぇハジメ。白鯨ってどういう話なのかしら?」
血を垂らしたような赤い瞳に光が触れて、彼女の持つ底なしの美しさを引き立てていた。その深みについうっかりと引き込まれそうな自分を振り払って、平静を装いつつハジメも首をひねった。
「えーと。足食われたおっさんがカタキのクジラと戦う話。だったような」
「血湧き肉躍るって冒険物語って感じかしら。ドキドキするわね」
「そうそう。多分そんなんだと思う。うん」
とかなんとか適当に説明しておいて、当然おバカな高校生が白鯨の原典にあたったことなどあるはずもなく、この平日においても決して絶えない人足の大半も彼と同じく、モビー・ディックが白鯨の名前であることすら知らないはずだった。
それでもこの正体不明のコンセプトを持つ上、あたり一面を畑に囲まれたこの遊園地が未だに更地にされていないのは、ロクに娯楽もないようなど田舎町、F市だからこそなのだろう。
「夜に観覧車に乗ると、この場所が光の中に浮いてるみたいで綺麗なんだぜ」
ハジメの視線を追った幽香は、ジェットコースターの赤いレール越しにそびえる巨大な観覧車を見つけて表情を輝かせた。
「大きなお花に見えないかしら」
「そーいや、前に来た時は江梨花も同じようなコト言ってた」
彼女との連絡は未だについていない。
気づけば雪之丞に始まった亀裂が江梨花にまで広がっている。どんどん分解していく友情が元通りになる日が来るのだろうかと考える彼は次第に重苦しい雰囲気を纏って歩き始めるのだった。
「こら」
その肩を幽香が指で突いた。
「せっかく遊びにきたんだから。楽しまないと、でしょ?」
「――あぁ。そうだ。悪いな」
まるで困ったお子様に接するようなその態度が。
いつもは腹立たしいだけの彼女の振る舞いが、この日はすんなりと受け入れられた。
「いやに素直じゃない」
ハジメが不思議に思うところは、幽香もまた同じであったようだ。
「幽香とあの場所で出会ったばかりはさ。こんな所に一緒に来るなんて、想像もできやしなかった」
「そうね」
後ろ手に弁当箱をいれた包みをぶらぶらと揺らしつつ、彼女は踊るような足取りでハジメの周りをついて歩いた。
「この世界での生活は、もっともっと血なまぐさいものになると思っていたわ」
ふわふわと甘い花の香りを振りまきつつ、幽香は半ば自嘲するように、それでも楽しげに目を細めて微笑んだ。
「ふふ。それが何の間違いか。人間の男の子とデートの真似事だなんて。あなたの傍にいると、妖怪の自分を忘れそう」
数歩前を行く幽香の背中を見つめるハジメの拳は、固く握り固められていた。
不意に彼女が振り向いたので、浮かべていた不敵な笑みを押し殺すためにヘタクソなくしゃみの演技をするハメになったが。
「お昼ご飯には少し早いかしら――あら」
「痛えっ!」
背後にいるはずの、幽香に目を見開かせたものの正体を確かめようとした。振り向きざまに猛烈なタックルを受けて、ハジメはたたらを踏んでそのまま前のめりに倒れる。
「な、お、お前!?」
そのどこまでも愛想が良さそうで、同時にどこまでも空虚な笑み。
でっぷりとしたしろい腹とひげ、そしてビニール製の三叉槍を振りかざして威圧的に見下ろしてくるそいつは。
「…………もびー君!?」
唐突な遊園地のマスコットキャラの登場にあたりが沸いた。
ぐいぐいと子供たちにひっぱられて、彼の笑顔が不気味に歪む。そんなのお構いなしに身振り手振りで幽香に何かを伝えようとする彼は、どことなく必死であった。
「一枚写真いかがですか、だって」
不格好な手というかヒレをばたばたさせる姿だけでよくも察せられるものである。
「そうか。じゃあ頼むかな」
ケータイのカメラ機能を起動してもびー君に手渡すと、ハジメは幽香の隣に並び立つ。
そこからが早かった。
巨体に似合わぬスピードでさささと走り寄ったもびー君がハジメを思い切り突き飛ばすと、彼のケータイを地面に叩きつける。
「あぁっ!?」
呆気にとられるハジメの背後で幽香とちゃっかりと腕を組んだもびー君。その首と胴体の隙間からにゅっと伸びた白い手が、近くにいた遊園地のスタッフに彼の私物と思しきスマートホンを手渡す。
「は、はい、チーズ」
ぱしゃん。
合成されたシャッター音と、はしゃぐ子供に踏みつけられたハジメのケータイの液晶がメゲる音が完全にシンクロする。
「な、なにしやがる!」
食ってかかるハジメを太鼓腹でぶっ飛ばすと、もびー君は幽香に深々と頭を下げ、おまけにどさくさまぎれの熱烈なハグまでかます。
「あらあら。うふふ」
マスコットの熱烈な歓迎にご満悦の幽香を名残惜しそうに後にして、もびー君は颯爽と駆け出す。
「モビー君!」
「まってー!」
彼はもはやクジラであるという設定すら霞むほどのスピードを発揮して、子供たちを引き連れて去っていく。その中身が誰であるにせよ、タダ者でないことだけは確かだ。
「俺のケータイが」
「楽しいわねえ」
この間水浸しにして、買い換えたばかりだというのに。
ハジメが、がっくりと膝をついたままに思い出すのは小学校の思い出の一ページだ。恐れを知らぬ小学生のハジメは遠足のノリに乗ったまま、同じく浮かれまくった雪之丞ともびー君にタックルをかましたのだ。おまけに池の前で。
だが決して、決して最初から溺れさせてやろうなんて思っていたワケではない――ような、そうでもないような気が。ひょっとすればもびー君はホンモノのクジラで、泳ぐのなんてへのかっぱっぱだと実行したような記憶もある。
『クソガキャ、はっ倒したるわ!』
その結果、もげた頭をおいてけぼりにしたまま鬼の形相でクロールしてくるオジさんに追い回されることとなったのだが。
――もしかしたらあいつの中身はそのときのオッサンなんじゃないか。これはそのときの逆襲なのではないか。
「そういえば飲み物忘れちゃったわね」
未だケータイを破壊されたショックから立ち直れないまま、ハジメは頭をもたげた。こういう時ならいつも完璧に段取りしてくる彼女にしては珍しい失敗だった。
「ちょっと買ってくるから。ハジメはここで待っていて」
「いいってば。今日無理言ったのはオレだし。お前は座ってろよ」
「そう?」
その顔は嬉しそうでもあり、少し残念そうでもあり。
「じゃあ、甘えちゃおうかな」
彼女は休憩所のベンチにおとなしく座ってくれる。
「行ってらっしゃい」
「あ、あぁ」
自販機を探しながら、ハジメは一度だけ彼女を振り返った。
近くの鉢植えの花と談笑する彼女がそれに気づいた様子はない。
「あのさ」
幽香が顔をあげる。思わず喉元まで出かけた言葉を飲み込んで、ハジメはかぶりを振った。時期尚早だ。今はまだ、その時ではない。
「なんでもない」
逃げるようにその場を後にしたハジメが姿を消すまで、幽香はずっと彼の背中を見つめていた。軽く花弁を揺らした花への受け答えも、どこか気もそぞろだ。
「彼はなんと?」
テーブルを挟んで向かい側、当たり前のように自然に腰を下ろした若い男が気障に問い質した。
「彼女ね。胡散臭いヤツが近づいてるから、気をつけてねって言われたわ」
「そいつはショックだな」
グレースーツの刑事、寺田は自分の姿をあらためた。
くたくたのコートとフレームの傾いだメガネ。頼りない刑事に彼は擬態している。隙を見せて隙につけこみ、こじ開ける。言うなればそれこそが、彼の持つ能力に似た素質なのだろう。
「少し、いいかい」
擬態を成して、寺田は表情の硬さまでは隠しきれていない。一方の幽香はうすら笑いを浮かべて手を組み直した。
「彼が戻ってくるまでなら」
「オーケー」
刑事はそれまで持っていたジュースの缶を開けて、無意識にかたずを飲む。食えない女。しんと冷える十二月の夜更けに彼女を追いかけて見事に撒かれたことは記憶に新しい。
「俺と俺の相棒はあんたらを犯罪者だと思ってる」
彼が懐から取り出した写真を手に取って、幽香はわずかに眉を持ち上げた。
「目的がなんであれ。好き勝手に町をぶっ壊して、不安を煽って、ネットを騒がせて。いずれしかるべき時に法の手でしかるべき報いを受けるべきだ。そうだろ?」
「それはそれは。今スグは困るわね」
「舐めてるねえ」
プラスチックのような甘ったるいだけのコーヒーを一息に飲み干して、寺田は幽香を見据える。
「それで、今日は宣戦布告に来たってところかしら」
「勘違いして欲しくないな。俺たちはあんたに打つ手なしだ。場合に応じて鶴見ハジメを保護することはあるだろうが、ケンカなんてとんでもない」
だが、と寺田は指の背で写真を叩いた。幽香ですら知覚できない距離から撮影されたそれ。彼女たちの日常を丸く切り取る赤いマークと、ろ号、い号という殴り書き。
「だが。あんたたちのところにも守護者がいたように、この世界にも守護者を名乗るヤツがいる」
あたりを確認して、刑事は立ち上がった。
「気をつけろよ」
「どうしてわざわざ警告に?」
「言ったろ。あんたを叩き潰すのは法の手だ。こんな陰謀じみたやり口じゃない」
「待ちなさい」
幽香は刑事の胸に一輪の花を挿した。
「これ、どこから出したんだ」
縁が紫色の、触れただけでも散ってしまいそうな可憐な花だ。グレースーツの胸元にそれが眩しい。おもわず彼は口元を緩めて、今井の前でよくみせるおちゃらけた笑みを浮かべた。
「もしかしてワイロのつもり?」
「面白い話のお礼よ。おまわりさん」
彼はそれが気に入ったようだった。休憩所を去っていく足取りは軽い。
一方幽香は、写真をもう一度見る。連れ立って歩くいつかの日の幽香とハジメの姿。ほかの写真の中には霊夢だったり雪之丞だったりの姿もある。
「守護者、ね」
◆◆◆
コンクリート製の巨大なホールに足音が反響する。
二月といえど日陰は寒い。あたりに人影はなく、遠のいた遊園地の喧騒が、ここが隔絶された空間であるかのような錯覚を覚える。居心地の悪さを覚えて数本のペットボトルを抱えて踵を返したハジメは、立ちはだかる巨大な影を見つけた。
「もびー、君……?」
彼が手にするものはいつものビニール製のぺにゃぺにゃの槍ではない。壮絶にねじれて曲がった、赤茶けた槍である。その先端に赤光が宿った瞬間、目にも止まらぬ雷撃に貫かれてペットボトルが吹き飛んでいた。
一瞬で、額をぐっしょりと汗が濡らしていた。
生々しい死の幻影が見えた。もびー君がその体を揺らしながら歩いてくる。決して変わることのない笑顔がなおいっそう不気味だ。
「池に落としたこと、そこまで恨んでたのか?」
もびーでぃっく君は物言わず槍を構える。
怒れる白鯨の化身を前に、ハジメの退路はない。
覚悟を決めたその手中で黄金の炎が収束する。もびーでぃっく君は陸上走者のように頭を低く、それこそ槍の柄をぴたりと地につけた姿勢をとった。
その穂先から未だほとばしる赤い電撃がタイルを舐める。
勝負は一瞬。
西部劇のカウボーイが決闘に挑むように、ハジメの手は腰のあたりで未だ上がりきっていない。
かっこつけでも慢心でもない。もはや不用意に動くことができない状態にまで追い詰められていたことに、彼はたったいま気づいたのだ。
すり足、呼吸、まばたき。僅かな行動を起こしただけでも、白鯨の握る槍の穂先は微調整を行うようにかすかに動いていた。
もびーでぃっく君のうつろな笑いをうかべる口の中に光る赤い眼光は、まるで未来にハジメが起こす一挙手一投足を見通しているかのようだ。
その昏い眼光が、不意に見開かれた。
――来る!
「遅い」
ひやりとした感触。
「ひと月前のお前の方がずっとずっと強かったぜ」
額には既に赤い穂先が触れていた。
ハジメの指先はほんの数センチも動かぬまま、空気を揉むようにあてどなく彷徨っていた。
「しょぼすぎて殺す気も起きねえよ」
びゅるんと槍をしならせて、もびーでぃっく君は失望をあらわに太い首を振った。
穂先の衝撃波にひっぱたかれて尻餅をついたまま、ハジメは白い巨体を見上げることしかできない。
「あ? あぁ、そっか」
ようやく思い出したように、彼は分厚い着ぐるみに包まれた自分の体を気づいたようだった。
あっけにとられるハジメの前で、もびーでぃっく君の頭がゆっくりと外されていく。
マスコットキャラがそれやっちゃまずいだろというハジメのツッコミも虚しく、雪のように白い美青年の顔があらわになる。
「…………ユキ」
「おう」
「その着ぐるみは」
「オレ、吸血鬼。日光はダメなの」
そうまでして彼が日中出歩くのは、単に人間の世界が懐かしいから、ということではないらしい。どこからか現れたコウモリにキチキチと耳元で囁かれ、彼は数度頷いた。
「そっか。オーライ。霊夢にも紫にも、すぐ行くと伝えてくれ」
「待てよ!」
もびー君の頭を小脇に抱えて去っていく吸血鬼に追いすがるハジメは必死の形相を浮かべている。槍を担いで、小馬鹿にした笑いで雪之丞は応じる。
「今日は別件。幽香さんと一緒にいるのがちょいちょい目障りだったからちょっかいかけただけでさ。ま、ヤるってんなら、俺の必殺技の実験台にでも――」
「霊夢と、ユカリが、来てるって!?」
「んあ?」
もはや青ざめつつあるハジメに胸ぐらを掴まれて、雪之丞は気圧された。
「どうして!?」
「どうしてって、そりゃあ」
口ごもった雪之丞は、それでも仕方ないといったふうにぽつぽつと話し始めた。
「いいか、いまこの町にはとんでもない妖怪がいる。朝だってテレビでやってたろ。南の方でビルが崩れたとか、車が潰れまくったとか、血の雨が降ってきたとか」
ハジメは頷く。朝方、弁当の支度をする幽香を待つあいだそんなニュースを目にしたような気がした。
「で、霊夢の結界であいつを追い込んでここまで来たってワケ。ここにはあいつのエサがごまんとあるからな」
ほかは一面の畑。人と鉄を食らう妖怪がこの場所を見逃すはずがない。
「善意で妖怪退治してやるってんだ。ありがたく思いやがれ」
「ダメだ。霊夢たちには帰ってもらってくれ。とにかく今日はダメだ」
「無茶言うなよ。それにヤツは雲の上だ。さっさと叩けばお前らにメーワクはかからねえよ」
ハジメはいっそういらだちを募らせて雪之丞へと食ってかかった。
「ちっとは頭使えよお前! 霊夢と幽香が戦った跡を見ただろ!」
大きくかしいだビルの群れと、もはや月面のようにクレーターだらけとなった道路。たとえ霊夢が手を出さなくとも、幽香がやる気を出しては彼女も迎撃に出るほかない。なによりハジメが見たこともない大妖怪、八雲紫までもこの場にいると言うのだ。
「凶悪な妖怪なんてどうでもいいっつーの。あいつらを引き合わせるほうがずっと危険だってば!」
その実力は未だ明らかにならずとも、幽香と同じく大妖怪の名前を冠するのなら推して知るべしといったところだろう。
「そ、そんなこたねえって。紫だって分別くらい――いや」
雪之丞の表情がぎこちなく固まった。
『えへへ。ユキ、藁買ってきて』
『自分で行ってこいよ、出不精』
『それと五寸釘』
『聞けよ』
『あとこしゃくな花妖怪の髪の毛も。それじゃ、頼んだから』
隠れ家でこたつと一体化したままの紫に渡された物騒なお使いのメモ。そして愛娘のような霊夢を傷つけられた恨みつらみを毎晩巨大わら人形に叩きつける紫の背中が脳裏をよぎったのだった。
「けっこう不安に、なってきたかも」
「だろ」
槍を弄ぶ手を止めて雪之丞は頭の中で電卓を叩く。
この場所にある思い出は忘れたわけではない。人間をやめた今でも無駄に被害を広めることには抵抗がある。
そしてなにより、幽香がこの場にいるというのなら、先ほどのような役得に恵まれないとも限らない。
「分かった。お前のデートのお膳立てするみたいでクソムカつくけど、口車に乗せられてやるよ」
下心の計算も終わって、雪之丞は顔を上げた。
「で、どうするんだ」
どうにかして今日という日は騒ぎを起こさずに終わらせなければならない。
殺し合いなんていう馬鹿げた約束をなかったことにするためにも、このイベントを外すことはできない。
ちくちくと脳みその裏側を突き刺すような頭痛を抑えて、先ほどの一件で液晶の割れた携帯のスケジュール帳を開く。午後八時にアラームを設定して、ハジメは決然と顔を上げた。
「絶対にあいつらがカチ合わないように、俺たちでなんとかするんだよ」