【完結】チートでエムブレム   作:ナナシ

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オ「今こそ決着の時!」
ナ「ゆくぞ、オグマ!」
マ「サンダーソード!」
オ「」
ナ「」


3章

1.タリスの傭兵 オグマ

 

 

「──ナバール?」

 

 30分ほど前、一人のシスターを連れてマルス軍の駐屯地へ駆け込んできた男 ジュリアンの話しの中に、タリスの傭兵オグマは自分にとって因縁のある男の名前が出てきたことに驚き、話しの途中であるにも関わらず問うてしまった。

 ジェイガンは常に冷静を心がけるオグマが感情らしいものを見せたことに驚き、ジュリアンは「あんたあの人を知ってるのか!?」と詰め寄り、マルスは何かを考えるように眉をひそめていた。

 詰め寄るジュリアンをそっと押しのけ、「昔、少し手合わせしたことがあってな」とだけ言い、話しの続きを促す。

 ジュリアンも今はオグマの過去を詮索している場合ではないと理解したのだろう、それ以上は何も聞かず、サムシアンの頭目の名前、戦力、要注意人物などの説明に戻る。

 オグマはその話を聞きながら、自らの過去を振り返っていた──

 

 

 

 オグマはかつてとあるアカネイア貴族子飼いの剣闘士だった。

 その貴族のもと彼は闘技場にて腕を振るい、連戦連勝、ついには大陸一の剣闘士とまで呼ばれるようになった。

 彼は剣闘士──貴族の奴隷という立場でありながらも、その功績により奴隷とは思えぬ待遇を受けていた。

 

 そんなある日。彼と対戦を希望する一人の剣士が現れる。

 その剣士こそ後に『死神』という二つ名で恐れられるようになった男、ナバールであった。

 

 当時のオグマは天狗になっていた。

 今の俺は誰にも負けない。アカネイアの聖騎士だろうと、剣王と名高いアリティアの王だろうと、我が剣の前には……。

 自身こそが最強と強く自負し、それゆえに格下と見下し相手を侮っていたオグマは闘技場に立ち──敗北する。

 気が付けば剣を折られていた。気が付けば地に伏していた。気が付けば、負けていた。

 

 この敗北を機にオグマは変わる。彼から油断と慢心の二つが無くなり、常に思慮深く行動するようになった。

 そして今まで避けていた彼の剣闘士仲間達は、敗北を切っ掛けに変わっていったオグマのもとに集まるようになった。

 これが後に『オグマ達の脱走劇』、『タリスの王女との出会い』に繋がっていくのだが、それはこの場では割愛する。

 

 

 

 今の自分を形作ることになった原因の男、ナバール。

 そのナバールが現在サムシアンと共に行動しているという。

 ジュリアンの話によれば、元々彼はサムシアンに囚われたシスター・レナを救う為に山賊団へ潜り込んだという話なのだが。

 

(シスター・レナはすでに脱出した。なのに何故貴様は未だに山賊達と共に行動している……?)

 

 リターンよりリスクの方が大きい危険な依頼を受けてシスターを救ったナバール。その彼が何故未だに山賊達と共に居るのか。

 どれだけ考えても理由は分からない。分からないが……

 

(あの時の未熟な俺ではない。……今度は俺がお前を倒す。この俺が、必ず!)

 

 オグマは自らの愛剣──鋼の剣──の柄を握り締め、ナバールとの闘いを決意する。

 そこにあるのは怒り、憎しみ、悲しみ、失望、といった負の感情ではない。

 一人の剣士として、一人の男として。自らの前に立ちはだかるナバールという『巨大な壁』を越えたいという、ただそれだけの、しかし誰も嘲笑うことは出来ない強い決意をオグマは抱いていた───

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

【───現実は非情である】

 

 

 「サンダーソード!」「サンダーソード!」「キラーボウ!」「サンダーソード!」「かわいそうだが死「サンダーソード!」「キラーボウ!」え、必殺のぬわぁぁー!」「サンダーソード!」「サンダーソード!」「ておのッ」

 

 

 

 ズドドドドゴキュシュバドゴゥ!ふぉんふぉん。

 

 

 

 マルス軍112名(含む義勇軍100人)によるサンダーソードとキラーボウ(そして申し訳程度の手斧分)の大合唱。

 これにはさすがの『死神』もトホホである。

 

「な、ナバールゥゥゥゥゥゥ!!!」

「つ、強くなったな、オグマ……ぐふ!」

 

 サンダーソードの雷撃でコンガリとほどよく焦げた『宿敵』を抱き上げ、オグマは絶叫する。

 その宿敵──ナバールは満足気な笑みを浮かべ、しかしややアフロった自らの頭髪を気にしながら、静かに目を閉じた。

 

 こうして彼らの宿命の戦いは決着が付いたのでした。めでたしめでたし(?)

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

2.マスターソード?

 

 

 アフロヘアーになったナバール(生きてた)を背負って、オグマはとぼとぼ歩きながら野営地へと戻ってきた。

 そんな彼の下に一人の兵士が慌しくやってくる。

 

「で、伝令! 西にある廃城からサムシアンの本隊がやってきました! 数はおよそ60!」

「なんだと!?」

 

 今この地には10人しか兵士がいない。将に至っては自分とマルスの二人のみ。

 この人数はふもとの村を守る必要最低限の人数であり、他は全て東の砦攻略に回されていた。

 兵士にその場で待機しているよう命じたオグマは、マルスの居るテントへ向かって走り出しかけ──

 

「話は聞いた! 討って出るぞ、オグマ!」

「ま、マルス王子!?」

 

 完全武装し馬に乗ったマルスが彼らの前までやってきた。

 オグマは「ここは村に篭り防衛に徹するべきです!」と進言するが、マルスは首を横に振る。

 

「オグマ、我らの勝利条件は『村に一つの損害も出さずにサムシアンを討伐すること』だと思っている。村に篭り援軍が来るまで防衛に徹する。確かにそうすれば確実にサムシアンを討つことは出来るだろう。しかし、しかしだ。それでは村に少なからず被害が出る。それは駄目だ、それでは駄目なのだ。被害が一つでも出ればその時点で我らの負けだ。我らが完全勝利を収めるためにはここで討って出なければならない。……村に被害を出さずに勝利する。それを人は理想論と言うだろう。甘い考えだと言うだろう。しかし我々はその理想を民に見せ続けなければならない。『解放軍』とは、我らの軍とはつまるとこその理想の表現者、体現者でありつづけなければならないのだ。そしてそんな『解放軍』を見た民は明日への希望を、未来への希望を持つだろう。戦乱の無い世界を。親が子を、子が親を、兄弟が兄弟を殺す必要の無い平和な世界を…」

 

 マルスの言葉にオグマは何も答えられない。…答えることが出来ない。

 祖国奪還の為、ドルーア打倒の為、彼は『理想論』という名の茨に満ちた道を歩くと断言した。

 自分の知る貴族に、自分の知る反ドルーア組織に、マルスと同じセリフを臆面も無く言える人物は果たしてどれだけいるだろうか。

 茨の道と知りながらもそれを進む、こうも強く断言出来る将が、男が居るだろうか。

 

 オグマはマルスが持つ覚悟の深さを、ここサムスーフ山で初めて知る。

 

 馬上にいる主を呆然と見上げるオグマに、マルスは「安心してくれ」と言いながら腰にある剣を取り出す。

 

「タリス島を出るとき港市でこの剣を買ったんだ。この剣さえあればサムシアンなど敵じゃないさ」

「マルス王子、その剣は……?」

 

 それは鞘に納められているにも関わらず何やら呪いめいた雰囲気を放っている。

 気になったオグマはその剣の名を訊ねる。マルスはシャンッ!と勢いよく鞘から剣を抜き放ち、

 

「──マスターソードさ! ふはははははははあぁぁぁ!!!!!」

「マルス王子それマスターソード違う! デビルソードや!」

 

 「ヒャア!もうガマンできねぇ!」と叫びながら敵軍目掛けて馬を走らせるマルス。オグマは近くに居た兵士にナバールを預けた後「今見たのは誰にも話すなよ!黙っとけよ!」と固く命じ、マルスを追いかけた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

デビルソード

 

呪われた剣。この剣には殺された生物の怨念が多数篭められている。

装備すると呪いが身体に侵食し『狂化』される。

『狂化状態』のまま戦場に出ると、敵を見つけ次第わき目を振らず切りかかる。かろうじて敵味方の判別は付く。

『狂化状態』だと脳内麻薬が多量に分泌され痛みに鈍くなる。片腕を切り落とされた程度では動きを止めない。

 

アカネイア大陸では『禁忌の剣』として恐れられている。封印指定武器。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 俺の名前はハイマン。サムスーフ山を中心に村や旅人達から略奪行為をしている山賊団『サムシアン』の頭目だ。

 俺達が支配するこの地域に『サムシアン討伐』を掲げて、ガルダの方から軍が来やがったらしい。

 ……やろう、ガルダの海賊をやった程度で調子こきやがったな?

 俺は部下達を呼びつけ命令を下す。

 

「おう、てめぇら! つい最近ガルダのひよっこ共をやりやがった軍人様が山のふもとまできやがったらしい。

偵察から戻った野郎の話じゃ、どうもそいつらは俺様達をこの山から追い出そうって腹積もりらしい!

……程度の低い、ガルダの雑魚共をやったことで調子に乗ったようだぜぇ?」

 

 俺の言葉に自慢の部下達は一斉に笑い出す。…そうさ、あんな雑魚を片付けた程度で俺達サムシアンに喧嘩を売りにきたんだからな。俺達にとっちゃぁ笑い話にしかならねぇ。

 

「つーわけでだ! ガルダ…いや、タリスか? まぁいい、とにかくだ! どこぞの田舎から出張ってきた軍人様達に世の中の厳しさってーもんを教えてやろうじゃねーか! なぁ!?」

 

 おぉぉぉ! 部下達のおたけびが廃城に響き渡る。士気のほうはバッチリだな。

 さぁて……それじゃ身の程知らずの田舎者達を狩りに行こうかねぇ。

 

 

 

 その時の俺達は自分達の勝利を信じて疑わなかった。

 奴らについて流れてた噂……『盗賊殺しの王子』だの『一人で砦に乗り込んで30人居たガルダ海賊を皆殺しした』だの、そんなものは自分らの力を大きく見せるために流したホラ話だと、そう思ってた。

 そう、思ってたんだ………。

 

 

 

「■■■■■─────ッ!!!!!!」

「く、来るな! 来るんじゃへぶぅッ」

 

 マルスと名乗った小僧が、ハポイ──俺の部下だ──の首を切り落とす。

 一人、また一人と殺していくたびに、小僧は「ヒィヤァーーーハハハハハッ!」と狂ったように笑い、そしてまた部下を殺していく。

 そいつを止めるために腕を切った。脚を矢で貫いた。目を射った。…でもな、止まらねぇんだ。止まらねぇんだよぉ!

 

「ふしゅるるるるる………」

「ひぃっ」

 

 小僧に睨まれた俺達は、腰を抜かしたのか地面に座ってしまった。ビチャリ、と音がする。臭いがするから誰かが──あるいは俺も──小便を漏らしたか。

 しかしそんなことを気にしている余裕は無い。俺達の目の前には俺達の命を奪うために現れた『死神』が立っているのだから。

 

「た、たすけ、たすけて、たすけてくれぇ……!」

 

 誇り高きサムシアンとは思えない命乞い。これは誰の声だ? 左に居る部下か、後ろに居る奴か。それとも、俺か───?

 『死神』は左眼に刺さった矢を千切れかけた左手で抜いた後、ニタリと笑いながら言った。

 

 

 

 

「ろくじゅうにぃぃぃぃぃぃーーーーー!!!!!」

「いやぁぁぁぁぁぶひゅっ」

 

 

 

 

 

マルスは62のけいけんちをえた!

 

たらららたらららら~♪ マルスのレベルが 5になった!

 

ちからが    1あがった!

わざが     1あがった!

はやさが    1あがった!

こううんが   1あがった!

ぶきが     1あがった!

しゅびが    1あがった!

HPが      1あがった!

 

ハイマンは  リライブの杖をもっていた

マルスは   リライブの杖をてにいれた




おまけ。

ジェ「全く、御一人でサムシアンの集団を相手取るなどなんて無茶な真似を!」
オ「(……何故傷薬を飲んだだけで千切れかけた腕が再生するんだ? あ、何時の間にか左眼も再生してる)」
ジェ「王子!聞いておられるのですか!?将たる貴方が危険な最前線に出て、しかもここまでの重症を──」
マ「ジェイガン。とある英雄が残した言葉の一つにこんなのがある」
ジェ「……なんです」
マ「曰く。死ななきゃ安い」
ジェ・オ『そんな名言あってたまりますか!!』
マ「(´・ω・`)」

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