【完結】チートでエムブレム   作:ナナシ

15 / 16
マルス「来ちゃった☆ミ」
メディウス「く、来るなぁ!」


終章

1.決戦前

 

 

 

 アルテミスの定め。

 それは愛する人とは決して結ばれることが叶わないと言われる、悲しい伝説。

 伝説の勇者 アンリ。

 アカネイア聖王国の王女 アルテミス。

 アンリとアルテミスは互いに深く愛し合っていながら、しかし結ばれることは叶わなかった。

 

 時は流れて現在。

 アンリの子孫 マルス。

 アルテミスの子孫 ニーナ。

 かつて結ばれることが叶わなかったアンリとアルテミス。その二人の子孫が長い時を経て一つとなる。

 アカネイアの民は二人の婚姻を熱狂を持って迎えた。

 

 “マルスの誓い”と呼ばれる演説は瞬く間に各国へと広まった。

 民衆は自分達に圧政を強いたドルーア帝国を深く憎んでいる。機会を得られたのならば復讐したいとすら思っている。

 故に“マルスの誓い”を知った民衆は「復讐の機会を奪われた」と暴動に走り始める──解放軍そのように考えていた。

 しかし暴動は起きなかった。それどころかマルスを支持する動きが各地で起き始めた。

 何故民衆はマルスを支持するのか。それは彼が積み重ねてきたこれまでの功績に因るところが大きい。

 タリス島での決起。海賊や山賊の討伐。帝国に支配されてきた土地の解放。治安維持に復興作業。

 

 滅私奉公──マルスという人物を評するのにこれほど相応しい言葉は無い。

 

 家臣のため。仲間のため。自分を頼り支持してくれた民衆のため。

 僅か16歳の少年は『平和』という大儀のため、ひたすら自分の心を押し殺し動き続けた。少なくとも民衆からはそう見られていた。

 解放軍の盟主、アリティアの王族なのだから、平和の為に行動するのは当たり前。民衆のほとんどはそう思っていた。

 だがその一方で「マルス様だけに負担をかけ続けて、我らはそれで良いのだろうか…」とも思っていた。

 救われているだけ、守られているだけ、与えられているだけの民衆は、恥を感じていたのだ。

 自分達に出来ることは何か。誰もが考え始めた。

 そんな時である。コーネリアス王、オレルアン王、タリス王など、多くの王族・貴族が“マルスの誓い”を強く支持したのは。

 コーネリアス王やタリス王はまだ分かる。コーネリアスはマルスの父で、タリスもまた父と言っていい存在だ。

 オレルアン王がマルスを支持した。それが民衆に強い衝撃を与えたのだ。その証拠として、オレルアン王は不倶戴天の敵と言っていいマケドニアと停戦条約を結んだ。

 

「大陸の未来のため、我々は一歩踏み出す必要があるのだ!」

 

 平和のために過去の遺恨を捨てる。それは容易なことではない。

 しかし新たな時代に進むためにはそれこそが必要だとオレルアン王は民衆に対し強く説いた。

 それが功を奏し、多くの民衆がマルスを支持し始めた。

 さらに王都解放により復活した新聞メディアや、吟遊詩人を使った入念な情報工作により、ほぼ全ての民衆がマルスを支持するようになる。

 

 マルス王子はドルーア帝国との決戦に向け、着々と地盤を固めている。

 一方その頃、他国はどうなっていたのかというと──

 

 

 

 

 

 

【マケドニア王国】

 

 ミシェイル王。彼は当初、グルニアのカミュと同盟を結び帝国を打倒し、メディウスの首を持って解放軍と和睦しようと計画していた。

 しかしその計画は、グルニアで内乱が始まったせいで頓挫することになる。

 

「……カミュめ。存外使えぬ男だ」

 

 葉巻を取り出す。和睦のためにアカネイアへ送った家臣が持ち帰ったもの。マルスから「ミシェイル王へ」と送られた一品だ。

 葉巻に火を着け、軽く吸い込む。芳醇な香りが鼻をくすぐり、至福のひと時をミシェイルに与えた。

 ……カミュならば、あの黒騎士ならば自分同様、挙国一致体勢を作れるだろう。ミシェイルはそう信じていた。

 だが結果はご覧の通り。カミュはグルニアを纏めることが出来ず、遂には謀反──内乱まで許してしまった。

 失望。今のミシェイルはカミュに対して、その感情しか浮かばない。

 とは言え、彼はまだグルニアを見捨てるつもりはない。如何なる理由があれ、マケドニアは一度アカネイアを裏切っている。国際社会に置ける地位は必然低くなる。発言力など無きに等しい。

 自国の地位を上げ大きな発言力を得るためには同盟国が必須。その同盟国になり得るのはカダイン、グラ、グルニアの三つ。そしてその三国の中で最も信頼出来るのがグルニアだとミシェイルは考えている。

 故に彼はまだ期待している。グルニアの黒騎士カミュに。

 

 グルニアの内乱をいち早く察知したマケドニアは方針を変え、単独でアカネイアとの講和に踏み切った。

 紆余曲折あったものの、アカネイアとは和睦。アリティア・オレルアン・タリスの三国とは停戦条約を結ぶことに成功する。

 それだけではない。マルスの後宮へミネルバ・マリア姉妹が入ることをアカネイアは承諾した。

 家臣から報告を聞いたミシェイルは会心の笑みを浮かべた。ミネルバとマリアの側室入り。それは大陸の覇者たるマルスの血にマケドニアの血が混ざることを意味する。

 つまり──マケドニアの血を引く子が後のアカネイア王になる可能性が生まれたのだ。

 次代では無理だろう。しかし三代目、四代目ともなるとマケドニアの血を引く者が王の椅子に座る可能性が出てくる。

 

「……カミュよ、さっさと内乱を終わらせろ。でなければ貴様はこれから先の情勢に取り残されてしまうぞ」

 

 秘蔵のワインを開け祝杯を挙げる。この戦争に置いてミシェイルは間違いなく勝者の一人であった。

 

 

 

 

 

 

【その頃のマルス様】

 

 ふひひwwwやっべマジやっべ。今からニーナたんとの新婚初夜なんだけど、ニーナたんマジ女神!美しすぐるその裸体に私の【ファルシオン】が【レベルアップ】し【必殺の一撃】を放とうとプルプル震えておりまする!前世DT今世もDTの我輩にはもう……もう……耐えられませぬ!

 おっと落ち着け。落ち着くんだ私!ここで暴走してはいけない。私がこれまで築き上げてきたイメージが崩れてしまう。

 ニーナたんを怖がらせないためにクール・フェイスを維持し、ゆっくりベッドへ入る。私の【レベルアップ】した【ファルシオン】を見てニーナたんは顔を真っ赤にするも視線は【ファルシオン】から決して外さなかった。おっほーーーwwwww

 そんな顔見せられたらもう抑え切れません。私はゆっくり彼女と肌を重ね───【無料公開版はここまでです。続きはweb有料版で!(嘘)】

 

 

 

 この憑依系オリ主、ちょっとヒドすぎませんかね……?

 

 

 

 

 

 

【グルニア王国】

 

 アカネイアでマルスとニーナの婚約が発表され盛大なパーティーが開かれていたその頃。

 ここグルニアの地は大きな混乱に包まれていた。地方に領土を構える貴族達が謀反を起こしたのである。

 

 グルニア貴族はレフカンディ、ディール要塞、そしてアカネイアの地の敗戦の責任を全てカミュへと押し付け、将軍の地位から降ろそうと画策した。

 

「我が軍が敗北したのはカミュの責任である!」

「敗軍の将を排除し、我らの手で国内を統一すべし!」

「彼奴が軍の最高責任者のままだとグルニアは再度アカネイアに飲み込まれてしまうぞ!」

 

 しかしグルニア国王は貴族達の動きを全て無視し、カミュに対し『引き続き我がグルニアを支えて欲しい』と宰相の地位を与えてしまう。将軍の地位はロレンスに譲られた。

 これにグルニア貴族は激怒した。王はカミュに敗戦の責任を取らせないばかりか、宰相という地位を与えた。自分達の面子を潰されたと彼らは感じたのだ。

 だがグルニア国王にも言い分はある。今彼が信用し信頼出来るのはカミュとロレンスしかいない。他の貴族は隙あらば自分を排し、自らが王を名乗るだろうと彼は思っていた。王はカミュ(とその派閥)とロレンス(とその派閥)以外を全く信用していなかったのだ。

 

 謀反が起こるのは必然だった。今まで無かったのが不思議なくらいだ。

 

 しかし彼らの謀反もアッサリと鎮圧される。

 フォーチュン───マルス子飼いの商人達が介入したせいで。

 

 グルニア国内の流通を全て握っているフォーチュンは、まず謀反を起こした地方領へ赴き大量の武器(はがね製)を貴族・民衆問わず格安で販売した。

 謀反勢力はこれから戦争を始めるつもりだったので、これを根こそぎ購入した。

 金が大量に失われたがグルニア本国を制圧すれば資金面の問題は解決される。故に謀反勢力は金に糸目をつけず武器を買い取った。

 

 フォーチュンは始めに大量の銭を謀反勢力から回収した。

 

 大金を支払い武器を購入した謀反軍。彼らから資金が無くなったと確信したフォーチュンは“荷止め”を決行。塩、油、麦などを始め、生活に必要な物資が根こそぎ謀反勢力の領土から消える。

 謀反軍はまだ良い。城にある貯えのおかげで混乱は最小限に留める事が出来たのだから。

 問題は謀反勢力が支配する領土の民衆達だ。大混乱である。それまで当たり前にあったものが突然無くなる。それは言葉に出来ない恐怖を彼らに与えた。

 

 さて。ここで一つ思い出してもらいたいことがある。

 フォーチュンは『武器を貴族・民衆問わず格安で販売した』

 はがね製の武器を購入したのは謀反勢力の貴族やその兵士達だけではない。民衆もまた武器を買い、所持している。

 

 生活に必要な物が根こそぎ無くなった。

 タイミング的に謀反を起こした貴族のせいである可能性が高い。

 グルニア王国の誇りとも言えるカミュ将軍が敵になった。

 謀反軍は戦争に向け徴兵を強行し、民衆を苦しめる。

 今、民衆の手には武器がある……。

 

 

 アカネイア暦604年! グルニアは乱世の炎につつまれた!

 

 

 自分達の生活が脅かされているのは謀反を起こした貴族のせい。民衆の恨みはすぐさま天元突破し、貴族に対し蜂起を起こした。貴族達を倒し、グルニアの英雄カミュが再びこの地の支配者になれば現在の状態は改善される───人々はそう確信し、立ち上がったのだ。

 

 グルニア国内の内乱はカミュ派vs謀反軍(反カミュ派)から、謀反軍vsグルニア国民へと完全にシフトしてしまった。

 そしてタイミングを見計らっていたかのようにフォーチュンがカミュへ接触。『アカネイアは貴国を全面的に支援したい』とマルスの言葉を告げる。

 カミュは頭をかかえた。現在のグルニアの惨状。それはマルスが裏からコントロールして起こしたものであるとカミュは思っている。ではそれはどこから始まったのか?

 民衆の蜂起? 貴族の謀反? フォーチュンによる流通の独占? あるいはもっと前から?

 ……一つだけ確定していることがある。すでにグルニアはアカネイアの……否、マルスの支配下にあるということだ。

 

 カミュはフォーチュンの支援を受けながら「これからグルニアはどうなってしまうのか…」と、先の見えない未来に絶望を覚えてしまった。

 

 

 

 

 

【その頃のマルス様】

 

 我が野望、ここの成就せり!

 ミネルバ殿(とマリアちゃん)が側室入りしますた!ドゥフフwwwww

 彼女だけじゃない。ミネルバ殿付き女官としてやってきたペガサス三姉妹も側室入りが濃厚であります。どうも彼女達、ミシェイル殿に「両国の関係をより強固なものへとするために」と命じられてきたみたいだ。ぶっちゃけハニトラみたいなもんだけど、私は 全 力 で 引 っ か か り に い き ま す !

 だってあーた、ペガサス三姉妹ですよ? 超絶美少女三姉妹ですよ? それを貰えるゆーたら遠慮無しに貰ってくのが男でしょう!? 据え膳食わねば男の恥やで!!

 

 マリアちゃんは───うん。数年後に期待ということで。

 だって見た目完全にJSだもん。ロリ通り越してペドだもん。ペドは私の守備範囲外だもん。

 リンダも側室入りを希望してるみたいだけど。……うん。彼女もちょっとペド寄りなので数年後に期待です(ニッコリ)

 あとバトゥ殿から「チキの世話をお頼みしたい」て彼女の側室入りを求められたんだけど。やはり彼女も数年後に期待ということで。

 

 ふふふ……ここからだ。ここから私の本当の人生が始まるのだ───ッ!

 

 

 

 憑依系オリ主様は本日も絶好調でした。

 

 

 

 

 

 

【竜の祭壇】

 

 ドルーア地方に“竜の祭壇”と呼ばれる聖域がある。

 そこに地竜王メディウスと大賢者ガトーの二人が居た。

 メディウスは両膝を地に付け、この地に眠る“同胞達”へ祈りを捧げている。ガトーは傍らでそれを見守っていた。

 

 祈りを捧げながら、メディウスは傍らに居る古き友人へ語りかけた。

 

「ガトー。とうとう現れたな」

「うむ。我ら竜族の“良き理解者”が現れてくれた」

「永かったな……」

「ああ、永かった……」

 

 再び沈黙が流れる。

 遥か昔。かつてメディウスは人間達の守護者として世界を見守っていた。

 しかし一部の傲慢な人間による非道な行いによって、彼は人の世界を見限り、敵対した。

 ガトーもまた人間に失望し、敵対こそしなかったものの人の世界から極力距離を置くようになってしまった。

 

 あの時から長い年月が経つ。

 神話の時代から生き続けた二人は今、なにを想うのか。

 

 メディウスが立ち上がる。ガトーへと振り返った地竜王の瞳には某かの決意が込められていた。

 

「ガトー、マルス王子へ『我ら竜族はこの地にて待つ』と伝言を頼む」

「承知した」

 

 ガトーが転移魔法を使いその場から小さな魔法音と共に消え去る。

 転移した友を見送った後、メディウスは“祭壇”へ振り返り、その地に眠る“同胞達”へ最後の祈りを捧げる。

 

 

───同胞よ。この地に眠る我が兄弟達よ。

───我らの悲願が叶う時が来た。

 

───我らの怒りを知るニンゲンが現れた。

───我らの憎しみを知るニンゲンが現れた。

───我らの痛みを知るニンゲンが現れた。

───我らの苦しみを知るニンゲンが現れた。

───我らの悲しみを知るニンゲンが現れた。

 

───我らの全てを理解してくれたニンゲンが現れたのだ。

 

 

 メディウスはこれまで『人間憎し』という気持ちだけで戦って来た。

 しかしマルスという少年が現れたことで、メディウスは『憎しみだけで戦ってきた訳ではない』と自覚した。してしまった。

 彼はただ知って欲しかっただけなのだ。真実を。ヒトと竜の争い、その始まりを。

 かつてたった一人で戦いを挑んできた英雄アンリ。メディウスですら英雄と認める彼もとうとう辿り着かなかった真実に、その子孫が至った。

 それはメディウスの脳裏に『和平』の二文字をよぎらせるほど衝撃的なことだった。

 

 

───最早我に迷い無し。

───兄弟よ。我ら竜族最後の戦いを、この地より見守って欲しい。

 

 

 祈りを終えたメディウスは居城へと帰還する。

 運命の日まであと僅か。

 最後の戦いへ向け、メディウスもまた準備に入った。

 

 

 

 

 

 

2.最後の聖戦

 

 

 マルス達の長い戦いもようやく終わりが訪れようとしていた。

 

 アカネイア解放直後にマケドニアは使者を出し、アカネイアに従属。

 それが引き金になったのか、グラ、カダインの両国も使者を送り降伏。少し遅れて内乱を片付けたグルニアもアカネイアへ降伏した。

 

 大陸はアカネイアの……いや、マルスの名の下に再び一つになろうとしている。

 その彼らの前に立ちはだかる最後の壁───ドルーア帝国。

 

 地竜王メディウスが、モーゼス、ゼムセル、ショーゼン、ブルザークの四魔将率いる一万の大軍と共に、竜の祭壇にてマルスを待ち構えている。

 

 マルス達は戦いを終わらせるべく、大戦力を集結させる。

 アカネイアからはマルス率いる新生アカネイア騎士団四千。

 アリティアからはコーネリアス率いるアリティア騎士団一千。

 オレルアンからはハーディン率いる狼騎士団一千。

 マケドニアからはミシェイル率いる竜騎士団三千。

 グラからはシーマ率いるグラ兵団三百。

 カダインからはウェンデル率いる魔道士隊二百。

 グルニアからはカミュ率いる黒騎士団五百。

 

 一万にも及ぶ大戦力を持って、マルス達解放軍はメディウスに挑む。

 

 アカネイア暦605年───春。

 竜の祭壇があるドルーアの地にて、最後の戦いが始まろうとしていた……。

 

 

 

 

 

 

 そして───戦いはアッサリと決着がついた!

 

 

 

 

 

 

3.最後の聖戦(笑)

 

「レナさん! 例の作戦を!」

「かしこまりましたマルス様!」

 

 レナはマニュアルを使用した!×1万

 おめでとう! レナは ガトーをはるかにこえる だいまほうつかいになったぞ!

 ※マニュアルを使えば武器レベルが上昇し、武器レベルが上昇すると武器使いや魔法使いとしての格が上昇する。詳しくは前話参照。

 

「───捕らえた! レスキュー!」

 

 しゅわしゅわしゅわ~←魔法発動音

 

「───あれ? ここは……」←地竜に変身する前のメディウス召喚

「死ね、メディウス! マルス・スゥパァナッコォ!!!」

 

 

 

 ど ご ぉ っ !

 

 

 

「ぐほぉぉぉ!?」デストローイ!

「ハッピーエンドの条件は、主人公(ヒーロー)が勝つことさ!」

 

 

 

 チートでエムブレム  完!

 

 

 

 

 

 

4.Q.こんな最終回で大丈夫か?

  A.大丈夫だ、問題ない

 

 

「貴方という人は…貴方という人は……!」

 

 地面に正座しているマルスに向かってニーナが激しく説教している。

 ニーナは激怒した。必ず夫であるマルスに説教せねばと決意した。

 ニーナには戦争は分からぬ。けれども、戦場に赴く兵達の想いには人一倍敏感であった。

 今日、兵達は始めて犠牲を良しとする戦争に臨んでいた。この戦争が『ヒトと竜』の新しい未来を生み出すと確信していた彼らは、自らの命を惜しまず最後の戦争に臨もうと決意していた。

 その彼らの決意をマルスは、こう……ポキッとへし折ってしまったのだ。

 いや、マルスのやり方は何も間違っていないのだ。結果だけ見れば犠牲者を一人も出さずに大将首を獲ったのだから。(メディウスは死んでいない)

 ただ何ていうか、マルスの行動は……そう、 KY だった。自分達の覚悟は何だったのかと、色々納得出来ないのだ。

 コーネリアス達に慰められてるメディウスを横目に、マルスは反論を試みる。

 

「なるほど。ニーナは今のやり方が気に食わないと。ではプランBを選択すれば良かったか……」

「……イヤな予感がヒシヒシと感じますので一応聞いておきます。プランBとは?」

「うむ。プランB───オペレーション・メテオだ!」

「おぺれーしょん・めてお?」

 

 全員がマルスの言葉に耳を傾ける。いつの間にかガトーやチェイニーまでその場に居た。

 

「まずレナさんにマニュアルを大量に使い、ワープの杖を渡します。そしてバヌトゥに“パワーリング”“天使の衣”“竜の盾”をそれぞれ二万個ほど使わせたあと、竜の祭壇から上空一万キロ───大気圏ギリギリまでワープさせます。その後、重力に引かれたバヌトゥは竜の祭壇まで一直線に───」

『大陸が沈むわバカモノォォォォォ!!!』

 

 メディウス、ガトー、チェイニーの トライアングル・アタック!

 しかし マルスには こうかが ないようだ……。

 

「大丈夫! ブレス使えば落下地点の調整は出来るから、ちゃんとピンポイントで落ちる場所を狙えますよ!」

「何が大丈夫なのだ! どこも大丈夫ではないわ!」

 

 グッ!とサムズアップするマルスに激怒するガトー。

 ニーナ達はタイキケン、という言葉あたりから理解が及ばなかったが、どうやらガトー達三人は正しく理解出来ているようだ。そしてその三人が揃って激怒している様子から、プランBとやらが碌でもないものであるということだけは彼女達にも分かった。

 チェイニーは地面に座りこみ、さめざめと泣く。

 

「俺さぁ……実はさぁ……アカネイアでやったマルスの演説聴いてさぁ……ちょっとだけ泣いたんだぜ……? ああ、やっと俺達竜族の理解者が現れてくれたんだなぁって。それなのにさぁ……へへ、こんなのってないよなぁ。グスッ……」

 

 チェイニーの嗚咽につられて、いつの間にか来ていたドルーア四魔将も涙を流す。

 なんかもうグダグダである。これ本当に最終回なの?

 

 

 

 

 

 

 ヒトと竜の戦いは終わった。

 両軍ともに大きな犠牲(捏造)を出し、一週間にも及ぶ激戦(捏造)を制したのは解放軍だった。

 戦いが終わったあと、両軍は互いに健闘を称え、手を取り合ったという。

 ヒトと竜は過去から続く『呪縛』より解放された。アカネイア大陸に真の平和が訪れたのだ───

 

 

 

 

 

 

「ニーナ様、事実をありのまま記録に残すのはさすがにまずいのでは……?」

「捏造しましょう。誰も真実を語らないよう戦争に参加した兵士達に緘口令を敷きましょう。メディウス殿、貴方は竜族の方をお願いします」

「承知した」

 

 戦争終結直後コーネリアス、ニーナ、メディウスの三人が密談したという記録は無い。無いったら無い。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。