灰かぶりは舞踏会の夢を見る?   作:焔勅

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何故でしょうか……。

内容はとっくに決まっていたのに、残り2文ほどのところで全然、指が動かなかったです。



その5

「こ、濃すぎるにゃ!

パンク、お嬢様、イケメン!これじゃあ、みくが目立てなくなるにゃ!

しかも、みくより年上しかいないし!」

 

我を取り戻したみくさんが叫ぶ。

先輩として後輩を牽制しようとしたら、ネコミミの自分よりも濃いキャラクターが三人もいたのだ。叫びたくなるのも仕方のないことかもしれない。

 

「あら?可愛い猫ちゃんですわ。」

 

「ぐぅ……しかも、バリバリ余裕にゃ。

こ、こうなったら、勝負にゃ!みくが先輩として、ギョーカイの厳しさを教えてやるにゃ。」

 

ふんすふんすと鼻息荒く、勝負を挑むみくさんだが、三人はそれほど本気にしてはいない。

 

「ふ……イケない子猫ちゃんだ。」

 

特にあいさんは、いつものキメ顔と顎クイのコンボで明らかに口説きにかかっている。

口説くといっても同性愛者ではないため、本人としては茶目っ気たっぷりのジョークらしい。

 

「あ……、ってみくは本気にゃ!」

 

どうにか正気を保てたようだが、小さくあぶないと繰り返しているあたり、本気で堕とされかけていただろう。

さて、どうやら勝負を受けなければ納得しない様子だが、こちらはまだ素人。

どのように戦うかも分からない。

 

どうすればよいかと考えていると、こちらの困惑に気が付いたちひろさんが提案をする。

 

「では、わたしと社長が審査をするのでLIVEバトルをしたらどうでしょうか。」

 

 

LIVEバトルとは。

ちひろさんによる説明によると、一種のゲリラLIVEでダンスや歌、特技の披露、ポージングなどアイドルのパフォーマンスに対して、観客が評価をし、どちらのファンになるかを決める戦いらしい。

最近のアイドルはファンサービスとアピールの一環で、ステージの使用許可さえ下りれば頻繁に行われるとのこと。

 

 

「ただし、わたしと社長は既にみくちゃんのファンですし、みくちゃんは経験者ですから、ハンデとして三対一でどうでしょうか。」

 

 

いきなりの話ではあるが、ハンデ戦ということもあり、十分に勝機はある。

例え負けたとしても、いい経験として励みになるだろう。

 

 

「なら私は、最初のプロデュースとして三人を支援しますね。」

 

 

私が勝負を受けると、即席のステージを作る――デスクを端に寄せ、スペースを広げる――ために10分間の準備時間が設定される。

 

 

小声で、三人にアピール方法を伝えるが、恵磨を除いた二人の士気はそれほど高くない。

どうやら、年下の必死な姿を微笑ましく思っているだけで、対抗意識はないらしい。

 

こんなモチベーションで負けたところで、何の経験にもならないだろう。

どうやら見通しが甘かったようだ。

 

いや、モチベーションを上げることもまたプロデューサーの仕事だということだろうか。

 

 

 

 

 

 

東郷さんも雪乃さんも、冷静で大人の印象が強いが、プライドが高い。

年下のみくさんを侮っている……あまり、LIVEバトルに真剣でないように見えるが、あるいは負けた時の予防線を張っているのかもしれない。

 

 

ならば。

 

 

「東郷さん、雪乃さん……。相手は年下とはいえ先輩です。

胸を借りるつもりで行きましょう。」

 

 

「ふっ、私が彼女に負けるとでも?

分かりやすい挑発だけど、敢えて乗るのも良しとしようかな。」

 

 

「……そうですね。

私は簡単には負けはしませんわ。勝ち星は私たちのものです。」

 

 

    【グッドコミュニケーション♪】

 

 

 

 

 

「さて、準備はいいですか?

それでは、LIVEバトルスタートです!」

 

 

ちひろさんの開始宣言を聞いて、最初に動き出したのは、みくさんだ。

 

 

LIVEバトルは、ターン制ではない。

制限時間の中で、どれだけ相手よりアピールが出来るかによって評価が決まる。

先制すれば注目を集め易く有利に働く。

 

みくさんは、事務所に置いてあったオーディオから曲を流してダンスが始まる。

ネコを意識したポーズを随所に散りばめたダンスは魅惑的で、ちひろさんと恵磨は小刻みに体を揺らしてノり始めた。

 

恵磨の体の揺れは次第に大きくなっていき、少しづつ歌を口ずさみ始める。

 

声はだんだんと大きくなり、踊りも加わっていく。

 

 

これは、乱入だ。

不自然な形で行うと心象が悪くなってしまう高等テクとされる一つ。

 

 

恵磨の歌は、下手ではない。音程も間違ってはいないし、リズムも取れている。

しかし、あまりにも声が大きすぎて曲とはミスマッチだ。

だがそこにパワフルなダンスがマッチする。技術的には酷い出来だが、それすらも味になっている。

 

 

驚いたみくさんのダンスがぎこちないものへと変化する。

その隙を東郷さんが突く。

 

楽器ケースから取り出したのはサックス。まずは流れる曲に合わせた軽快なリズム。

 

 

そこへ特技アピールのためにと準備時間から給湯室に移動していた雪乃さんが戻ってきた。

 

案の定、紅茶である。

社長とちひろさんの二人に紅茶を淹れると、恵磨の動きが固まる。

紅茶を持った雪乃さんの前で騒いではいけないというサークルのルールが染みついているからだ。

そして、東郷さんの奏でる曲が徐々に落ち着いたジャズミュージックへと変移していく。

 

 

紅茶を口にした二人は、口元が緩み穏やかな表情のまま目を閉じる。

そして紅茶をすべて飲み干すころには、勝負の時間が終了していた。

 




次回はバトルの勝敗と、みくにゃんについての掘り下げ、になるのかな?



あぁ、早く担当アイドルを出したい……。


ちなみに、現在6人先までおおよそ決定していますが担当は入っていません。


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