ことごとく就職に失敗。正直こんなことしている暇があったらダメなんですが、専門職のため一つ募集に落ちると次を探すのに時間がかかるので……。
次回もかなり更新が遅くなりそうです。
東郷あい、相原雪乃、仙崎恵磨。
スカウトに成功した3人の予定を摺合せ、その週の日曜日に事務所を訪れた。
事務所は都内にある、二階建ての小さな建物で一階部分が受け付けや商談を行うスペース。二階がスタッフの執務室兼アイドルたちの待機場所になっているらしい。
早速、建物に入ると受付の事務員が居た。
一風変わった、緑色のスーツに身を包む彼女は、アイドルとしても十分に通用するように見えるが、受付業務をしているということは違うのだろう。
近づいて行って、挨拶を交わす。
「はじめまして!茂庭プロデューサーですよね。
私、この事務所で総合的なサポートを担当しています、アシスタントの千川ちひろです。」
どうやら、私のことは社長から聞いていたらしい。
「事務所に来るのは初めてですよね?
案内します。着いて来てください。」
ちひろさんは、そう言うと受付の隣にある階段を上っていく。
受付が無人になってしまうのは良いのだろうかと、尋ねれば、ほかに来客の予定は無いという。
通常、来客者はアポイントを取ってから来るので、予定に無い客というのは現状あり得ないと笑顔で教えてくれた。
と、そんなことを言う間に二階の執務室へと案内が済む。
執務室とは名ばかりで、事務デスクが二つあるだけで、奥には3人掛けのソファーが一つ。
給湯室と思しきミニキッチンと小型の冷蔵庫。
そして、社長室の札の掛かった扉の部屋がある。
「随分とシンプルな部屋だね」
苦笑気味に話すのは東郷さんだ。
芸能事務所に入るのはこれが初めてだが、名前のイメージから、華やかなものを想像していたため、どうにも……残念としか言えない。
「皆さんにはこれから、社長室で契約書を交わしていただくことになります。
プロデューサーさんからの説明は十分ですか?」
ちひろさんから、確認の言葉が入る。
アイドル候補の彼女たちに質問が無いかと訊ねているが、まだ話しきっていないことがある。
まずは、それを言わねばならない。
「説明に不十分なところがあるので時間が欲しいです。」
社長からの要望、アイドルとして活動するうえで重要な条件。
交際は厳禁、ただし恋愛は推奨。
恋愛の対象としては、
勿論、私は好かれるように最大限の努力をする。
説明を終わると、その表情は様々。
「何とも、愉快な発言だ。
とは言え、努力するから好きになれとは、かなり情けないな。
惚れさせてみせるくらい言いきって欲しいよ。」
眉を顰めながら言うのは東郷さん。
愉快というのは当然皮肉だろう。バカにするなということだろうが、その後に続く言葉はキツイ物ではない。
「実家からは煩く言われそうですが……。
そのあたりは一緒に説得していただきたいですわ。」
雪乃さんは、片目を瞑り小悪魔的な表情で私のことを見ている。
実家への挨拶となるとかなりハードルが高い。アイドル引退後の責任をとって欲しいという意味があると思うのはさすがに意識過剰だろうか?
「アタシは、普通に先輩のこと好きだし良っけど、交際禁止で恋愛推奨とかヤバヤバじゃん!」
明け透けに好意を隠さない恵磨の言葉に、不覚にもときめく。
どうやら三人とも、納得してくれているようだ。アイドルとして誘った以上、恋愛禁止は当然として考えていたのだろうか。
これで、すべての説明は終わっただろう。後は社長から直接、契約書を受け取り、サインをするだけだ。
社長室につながる扉をノックし、入室。
社長に一言、挨拶を交わせば契約に関する書類を複数枚渡され、記入。
これといって変わったことはなく、記入が終われば社長が歓迎の言葉をかけてくれ、順調に終わったところで、誰かが階段を昇ってくる音が聞こえてきた。
ちひろさんは、壁が薄いんですよね。と恥ずかしそうに微笑む。
「たぶん、みくちゃんです。
ちょうど良い時に来ましたね。」
ちひろさんは足音のヌシを知っているようだ。
察するに元から所属していた唯一のアイドルだろうか。
「おはようございます。
あれ?ちひろさん、いないのかな?」
この業界は年齢よりも芸歴を優先することが多いと調べた情報にはあった。
であれば、早く挨拶をしたほうが良いだろうと、扉を開けて挨拶を返す。
「おはようございます。」
「あ、社長室にいたんですか……って誰にゃあ!!」
扉を開けた先にいたのは、制服を着た、中高あたりの学生だった。
アイドルにふさわしく、可愛らしい容姿はしているが、赤い眼鏡と真面目そうな雰囲気以外は特徴が無いようにも見えた。
しかし、こちらの姿を認識するや否や頭にネコミミをセットし、語尾には『にゃ』とつく猫言葉に変化を遂げる。
「もしかして、ちひろチャンの言っていた、プロデューサーとアイドルかにゃ?」
どうやら連絡はしっかりとしてあったらしい。
「はい、よろしくお願いします。」
「じゃあ、みくのことをしっかりプロデュース頼むにゃ。
それと、一応みくの方が先輩なんだからそのあたりは……。」
まずは上下関係をしっかりとしようとしたところで、社長室から出て、広いスペースへ移動する。
すると、後ろに隠れるような状態になっていた三人が、みくさんに見える位置へと変わる。
まずは、恵磨。複数のピアスとトゲの付いた革の腕輪、大胆にも肩を出したファッションでパンクな仕上がりは、見る人によっては危険なチャラさがみられる。
次は、雪乃さん。小さなフリルの多い、着る人を選ぶ服は傍目にも高級なのが見てわかる仕上がりで、普段のように紅茶を飲んでいれば、まさに良家の令嬢といった佇まいが出ている。
手に持った鞄も、服装に合わせてリボンとフリルをあしらったブランド物のバッグでセンスが良い。
そして最後は、東郷さん。契約を意識してか、スーツスタイルの姿はクールでボーイッシュな魅力を感じさせられる。同性からの告白が多いのも頷けることだろう。
手に持った鞄は、楽器ケースのようで特有の形状をしている。
その姿はさながらヴィジュアル系のバンドマンだろうか?
「」
個性的な魅力にあふれる三人を前に、みくさんは絶句し、二の句が継げないでいた。
ちょっと終わり方が微妙ですが、逆に長引きそうなので区切ります。
もう一つのデレマス二次と設定を共有したいんですが、本編への盛り込み方が難しい(文章にすると矛盾が生じる?)なので、もし良ければそちらもご覧ください。
短編シナリオを掲載予定ですが、簡単な設定資料になっています。
ただし、あちらも更新が止まってます。