卒論もどうにか提出でき、残りは口述のみ!
……心配だらけですけどね!!!!
ゼミが終了した。
本日の講義は、これ以外にはない。
卒業に必須な単位は取得済みなので、受ける講義は資格系統だけで暇な時間が多くある。
こうした暇な時間には、サークルに顔を出すことにしている。
私の所属する第2文芸サークル【テ・セル・スカープ】には、お茶会という意味がある。
主な活動内容は第1文芸サークルと同じく、文芸作品の制作。
しかし、【テ・セル・スカープ】では、優雅にお茶を飲みながら、という条件がつく。
研究という名目で読書に勤しむメンバーもいるため、修羅場の第1、楽園の第2と呼ばれている。
女性メンバーばかりということもあり、ハーレム扱いされるのも仕方がないのかもしれない。
サークル用に充てられた教室に着くと先客がいた。
相原雪乃
一年下の後輩ではあるが、【テ・セル・スカープ】のサークルリーダーでもある。
そして、スカウト予定の二人目だ。
「あら、いらっしゃいませ。
フェイさんも紅茶で良いかしら?」
雪乃さんは作業を一時中断し、席を立つ。
大きな白い円形のテーブルには、飲みかけの紅茶と栞の挟まった本、お菓子の乗ったティートレー、プリティーピンクの薔薇が生けられた花瓶が置いてある。
茶葉の準備が終わった雪乃さんは順番に、卓上IH調理機、小型のヤカン、陶磁器のティーポットを運んで来た。
お湯は、沸騰直後の100℃。
3分程の蒸らし時間が、過ぎるまでは話かけてはいけない。
カップは注ぐ直前に保温庫から取り出す。
以上が雪乃さんが決めたルール。
一度、破った時にはしばらくの間、話を聞いて貰えなかったので、待たなければならない。
と、その時。
「おはよーございまーっす!!」
教室の扉が開き、大きな声の挨拶が響き渡る。
入ってきたのは、仙崎恵磨。
ショートの銀髪、ピアスにチョーカーとパンキッシュなファッションが目立つ後輩だ。
サークルのメンバーではないが、縁があって遊びに来るようになった。
「恵磨ちゃん、いらっしゃい。
お湯が沸く前でよかったわ。一緒にお茶しましょう。」
「あざっす!って、あれ?
約束よりも早いけど、先輩もいたんだね!」
そう、彼女はスカウト予定の三人目。
講義が終わってからの約束だったが、休講にでもなったのだろう。
ちょうどいいので、紅茶が淹れ終わるのを待って、二人にスカウトの話をする。
話をする内容は東郷さんの時とそれほど変わらない。
まずは直球で、アイドルにならないかと誘う。
勿論、名刺もしっかりと渡す。
「私たちをアイドルにスカウト……ですか?」
私の言葉を確認するように、聞き返す雪乃さん。
肯定の意味で首を縦に振ると、悩むそぶりを見せる。
雪乃さんは、来年の卒業後に実家のある秋田に戻り、花嫁修業をすると聞いていた。
あと一年あるとはいえ、実家に戻ってしまえばスカウトは難しい。
なにより、彼女は私に好意を持っていて、実家に戻るのを良く思ってはいないことを知っている。
しかし、悩む雪乃さんとは対照的に、恵磨は悩みもせずに即断する。
「いやー……アイドルとかムリじゃね?アタシこんなだし。
それこそ、雪乃さんみたく清楚で可憐なカンジじゃないとダメじゃないのー!?」
まさか、これほど早く断られるとは思ってもみなかった。
恵磨にしても、異性として好意を持たれていると感じていたため、すこしは悩むものと思っていた。
しかし、断る理由からして説得の余地はあるだろう。
だからこそ、ここから畳みかける。
まずは、断る形になっている恵磨の説得からだ。
相手のココロに真摯に訴えかけるには、目をしっかりと見据えることが重要である。
私は恵磨の肩を掴むと、恵磨の瞳をひたすらに見つめ、自分の想いを告げる。
「……私は、いつも元気な恵磨が好きだ。
恵磨の元気さは周りの人間も元気にできる。それは、他人から好かれる才能でもあるんだ。
アイドルという仕事は、いかに好かれるかが重要なんだ!
だから、恵磨の才能はアイドルとして適してる。
それに……、パンクなアイドルってのも、いいと思うよ。」
「あー……なんてか、こっぱずかしいね!
うん。先輩がそんだけ言うんなら、アタシやってみるよ!」
恵磨はこれで良い……。
こぶしを握り、笑顔でガッツポーズをしているあたり、ヤル気に満ちているのだろう。
次は雪乃さんだ。
雪乃さんの説得はどうやって行おうかと考えながら、視線を雪乃さんへと向ける。
雪乃さんは既に悩むことを止めて、穏やかの表情で紅茶を飲んでいる。
「雪乃さん?」
意図が掴めず、眉をしかめた私に雪乃さんは語る。
「紅茶が冷めてしまいましたわ。
……お仕事のお話もいいですけれど、まずはお茶に時間にいたしませんか?」
こういった時の雪乃さんには逆らわない方が良い。
紅茶を一口飲むと、確かに既に冷え切ってしまっていた。
冷えているのに、苦みはそれほど強くなく、さわやかな香りがする。
紅茶を飲みきったところで、雪乃さんの方から話を切り出す。
「この茶葉は春に摘んだダージリンですの。
茶葉が悪くなってしまう直前の物ですが、冷めてもおいしくいただけます。
話があるとのことでしたので、この茶葉を選びましたが……。
恵磨ちゃんも私もまだ20を超えて1年2年ですが、アイドルにとっては、もう20を超えた状態。
でも、恵磨への説得が私にも響きましたわ。これでも容姿に自信はあるのです。
だから、私もアイドルになってみたいと思います。
その代り……両親の説得もありますし、行き遅れたらよろしくお願いしますわ。」
彼女の一言にドキリとさせられる。雪乃さんの方からこの段階で言われるとは思っていなかった。
彼女たちの感情を弄ぶようで申し訳なく感じるが、事務所としては都合が良い。
自分の行為が最低な行為であることを自覚し、胸の奥がチクリと痛むが、そのあたりの説明は後日東郷さんを含めてしっかりとして、納得してもらうほかない。
だから、私が今、言えることは一つだけだ。
精一杯に表情を造り、にこやかに言う。
「これからも、よろしく!」
アイドルたちの描写が無さすぎる。
次回はそこに気を付けます。
とはいえ、まだ何一つとして書いてませんが……。
次は3人を事務所に呼んで、所属アイドルの出番になると思います。
最近のアイドルは平均年齢が高めですが、シンデレラガールズは中高生多めなので、
世界観としては、14~17くらいが適齢期です。
まぁ、30越えのあの人も、いずれはアイドルとして所属しますが……。