灰かぶりは舞踏会の夢を見る?   作:焔勅

3 / 5
ようやく投稿です。

卒論もどうにか提出でき、残りは口述のみ!
……心配だらけですけどね!!!!


その3

ゼミが終了した。

 

本日の講義は、これ以外にはない。

卒業に必須な単位は取得済みなので、受ける講義は資格系統だけで暇な時間が多くある。

 

こうした暇な時間には、サークルに顔を出すことにしている。

 

私の所属する第2文芸サークル【テ・セル・スカープ】には、お茶会という意味がある。

主な活動内容は第1文芸サークルと同じく、文芸作品の制作。

しかし、【テ・セル・スカープ】では、優雅にお茶を飲みながら、という条件がつく。

研究という名目で読書に勤しむメンバーもいるため、修羅場の第1、楽園の第2と呼ばれている。

 

女性メンバーばかりということもあり、ハーレム扱いされるのも仕方がないのかもしれない。

 

 

サークル用に充てられた教室に着くと先客がいた。

 

相原雪乃

一年下の後輩ではあるが、【テ・セル・スカープ】のサークルリーダーでもある。

そして、スカウト予定の二人目だ。

 

「あら、いらっしゃいませ。

フェイさんも紅茶で良いかしら?」

 

雪乃さんは作業を一時中断し、席を立つ。

 

大きな白い円形のテーブルには、飲みかけの紅茶と栞の挟まった本、お菓子の乗ったティートレー、プリティーピンクの薔薇が生けられた花瓶が置いてある。

 

 

茶葉の準備が終わった雪乃さんは順番に、卓上IH調理機、小型のヤカン、陶磁器のティーポットを運んで来た。

 

お湯は、沸騰直後の100℃。

3分程の蒸らし時間が、過ぎるまでは話かけてはいけない。

カップは注ぐ直前に保温庫から取り出す。

以上が雪乃さんが決めたルール。

 

一度、破った時にはしばらくの間、話を聞いて貰えなかったので、待たなければならない。

と、その時。

 

「おはよーございまーっす!!」

 

 

教室の扉が開き、大きな声の挨拶が響き渡る。

 

入ってきたのは、仙崎恵磨。

ショートの銀髪、ピアスにチョーカーとパンキッシュなファッションが目立つ後輩だ。

サークルのメンバーではないが、縁があって遊びに来るようになった。

 

 

「恵磨ちゃん、いらっしゃい。

お湯が沸く前でよかったわ。一緒にお茶しましょう。」

 

 

「あざっす!って、あれ?

約束よりも早いけど、先輩もいたんだね!」

 

そう、彼女はスカウト予定の三人目。

講義が終わってからの約束だったが、休講にでもなったのだろう。

 

 

ちょうどいいので、紅茶が淹れ終わるのを待って、二人にスカウトの話をする。

 

 

 

話をする内容は東郷さんの時とそれほど変わらない。

 

まずは直球で、アイドルにならないかと誘う。

勿論、名刺もしっかりと渡す。

 

「私たちをアイドルにスカウト……ですか?」

 

私の言葉を確認するように、聞き返す雪乃さん。

肯定の意味で首を縦に振ると、悩むそぶりを見せる。

 

雪乃さんは、来年の卒業後に実家のある秋田に戻り、花嫁修業をすると聞いていた。

あと一年あるとはいえ、実家に戻ってしまえばスカウトは難しい。

なにより、彼女は私に好意を持っていて、実家に戻るのを良く思ってはいないことを知っている。

 

 

しかし、悩む雪乃さんとは対照的に、恵磨は悩みもせずに即断する。

 

「いやー……アイドルとかムリじゃね?アタシこんなだし。

それこそ、雪乃さんみたく清楚で可憐なカンジじゃないとダメじゃないのー!?」

 

 

まさか、これほど早く断られるとは思ってもみなかった。

恵磨にしても、異性として好意を持たれていると感じていたため、すこしは悩むものと思っていた。

しかし、断る理由からして説得の余地はあるだろう。

 

だからこそ、ここから畳みかける。

まずは、断る形になっている恵磨の説得からだ。

相手のココロに真摯に訴えかけるには、目をしっかりと見据えることが重要である。

 

私は恵磨の肩を掴むと、恵磨の瞳をひたすらに見つめ、自分の想いを告げる。

 

「……私は、いつも元気な恵磨が好きだ。

恵磨の元気さは周りの人間も元気にできる。それは、他人から好かれる才能でもあるんだ。

 

アイドルという仕事は、いかに好かれるかが重要なんだ!

だから、恵磨の才能はアイドルとして適してる。

 

それに……、パンクなアイドルってのも、いいと思うよ。」

 

 

「あー……なんてか、こっぱずかしいね!

うん。先輩がそんだけ言うんなら、アタシやってみるよ!」

 

 

恵磨はこれで良い……。

こぶしを握り、笑顔でガッツポーズをしているあたり、ヤル気に満ちているのだろう。

 

次は雪乃さんだ。

雪乃さんの説得はどうやって行おうかと考えながら、視線を雪乃さんへと向ける。

雪乃さんは既に悩むことを止めて、穏やかの表情で紅茶を飲んでいる。

 

「雪乃さん?」

 

意図が掴めず、眉をしかめた私に雪乃さんは語る。

 

 

「紅茶が冷めてしまいましたわ。

……お仕事のお話もいいですけれど、まずはお茶に時間にいたしませんか?」

 

 

こういった時の雪乃さんには逆らわない方が良い。

紅茶を一口飲むと、確かに既に冷え切ってしまっていた。

 

冷えているのに、苦みはそれほど強くなく、さわやかな香りがする。

紅茶を飲みきったところで、雪乃さんの方から話を切り出す。

 

「この茶葉は春に摘んだダージリンですの。

茶葉が悪くなってしまう直前の物ですが、冷めてもおいしくいただけます。

 

話があるとのことでしたので、この茶葉を選びましたが……。

恵磨ちゃんも私もまだ20を超えて1年2年ですが、アイドルにとっては、もう20を超えた状態。

でも、恵磨への説得が私にも響きましたわ。これでも容姿に自信はあるのです。

だから、私もアイドルになってみたいと思います。

 

その代り……両親の説得もありますし、行き遅れたらよろしくお願いしますわ。」

 

 

彼女の一言にドキリとさせられる。雪乃さんの方からこの段階で言われるとは思っていなかった。

彼女たちの感情を弄ぶようで申し訳なく感じるが、事務所としては都合が良い。

 

自分の行為が最低な行為であることを自覚し、胸の奥がチクリと痛むが、そのあたりの説明は後日東郷さんを含めてしっかりとして、納得してもらうほかない。

だから、私が今、言えることは一つだけだ。

精一杯に表情を造り、にこやかに言う。

 

「これからも、よろしく!」

 

 




アイドルたちの描写が無さすぎる。
次回はそこに気を付けます。

とはいえ、まだ何一つとして書いてませんが……。
次は3人を事務所に呼んで、所属アイドルの出番になると思います。


最近のアイドルは平均年齢が高めですが、シンデレラガールズは中高生多めなので、
世界観としては、14~17くらいが適齢期です。
まぁ、30越えのあの人も、いずれはアイドルとして所属しますが……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。