前書きは基本作者の愚痴なので読み流し推奨です。
小昏社長との話が終わり、正式に雇用契約を交わした翌日、私はとある人物に連絡し、会う約束をしていた。
会う場所として、指定したのは大学のゼミ室。
呼びだした相手は同じゼミに属している女生徒のため、ゼミの開講時間の少し前に来てもらうよう頼んだ。
相手は自分と同じく大学の人気者。
少しでも噂になると周りがうるさくなるため、共通するゼミを隠れ蓑として使う。
呼んだ相手は、東郷あい。
男性よりも、イケメンだと女生徒からの人気の高いクールビューティーだ。
「さて、私を呼んだのは、どういう用件かな。」
指定の時間のちょうど5分前になるとゼミ室へと入ってきた、彼女。
ずいぶんと余裕な態度をとってはいるが、意図的に接点を作らないようにしていた相手からの呼び出しだ。
心の中では、さまざまな憶測が飛び交っているだろう。
「来てくれてありがとう。
ゼミまで時間はあるが、単刀直入に言うよ。
君にアイドルになって欲しい。」
私の言葉がよほど、予想外だったのだろう、きょとんとした様相を呈している。
私の時は、前置きがあったため、スカウトされたときも冷静でいられたが、突然すぎる言葉に人は反応ができなくなるのだろう。
「……すまない。
私の聞き間違えだろうか。
君の口からアイドルという言葉が聞こえた気がしたんだが?」
脳が処理をしきれていないのか、それともよほど私のイメージに無かったのか、とぼけたように聞き返す。
当然、私は同じ言葉を放つ。
「君にアイドルになって欲しいと頼んでいる。
先日、就職先が決まってね。プロデューサーとスカウトを兼任することになった。
東郷さん。貴女は常々、自分に自信を持っていて、取り巻きの女の子に対して女性としての魅力をアピールしている。
アイドルに興味があるんじゃないか?」
「そうか、君がプロデューサーね……。
確かに私は、自分の魅力に自信を持っているさ。
しかし、女性であることをアピールした覚えはないね。
同性愛の気がないから、彼女たちにそれを示しただけのこと……。
でも、アイドル……か。どうやら君は思っていたよりも面白い人間のようだ。
いいだろう。私が皆を魅了させるために、君にも存分に働いてもらうから、覚悟するように。いいね、プロデューサーさん。」
よし、まずは一人目。
すんなりとスカウトに成功した。
「ところで、契約書を交わす前に会社の実績を知っておきたいのだが、まず所属人数は何人だい?」
「……一人。」
「もしかして、アイドル部門は新しく設立されたとかかい?」
こちらの言葉を冗談ととなったのか、笑顔で聞き返してくるが、所属アイドルは一人しかいない。
しかも、私もまだ会ってはいない。
こちらが無言でいるとこちらの事情を察したように顔がゆがむ。
「新しく開業したということか……。
だから、ロクな説明もせずにスカウトしたんだね。
まぁ、約束した以上は反故にする気はないけれど、詐欺まがいでは信頼されなくなると覚えておくといい。」
分かってはいる。
しかし、実績がない以上は、まずは人数だけでも増やして、実績を作らなければならない。
当然、契約書を交わすときには詳しい説明が必要なので、断られることも覚悟している。
しかし東郷さんを含めた、今日スカウトする3人ならば言質さえ取れば、断ることはないと踏んでいる。
「この後、まだ二人スカウトする予定だよ。
詳しい話はその二人と後日、事務所でしよう。
住所は名刺に書いてあるから確認しておいてくれ。」
昨日、小昏社長から支給された名刺入れから一枚を取り出し、渡す。
「……ふむ。
随分と自信があるようだけれど誰を誘うんだい?
まさか、君のハーレムメンバーか?」
ハーレムを形成した覚えはないが、いつのまにかその名で知られるサークル。
当然、健全なサークルで、正式には第二文芸サークル『テ・セル・スカープ』。
「まぁ、そんなところ。
さて、そろそろ、ゼミの時間だ。
今日も噂が立たないよう、離れて作業をしようか。」
お互いカバンからノートパソコンを取り出して、作業を開始する。
論文は完成しているので、アイドル業界に関する情報の収集だ。
スカウトマンとしてのスカウトに関する常識。
プロデュースする上での暗黙の了解。
伝説とまで言われる765プロのプロデューサーが書いた書籍など。
プロデューサーとして最低限、必要な知識を取り入れる。
……気が付くとゼミが終わっていた。
次回は、キュートとパッションを一人ずつで、二人スカウトの予定です。
キュートは決定済み。
パッションが3人から悩み中……。
プロデューサーの口調が安定しない。