全ては誰かの笑顔のために   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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今回初の試みで歌詞使用というものを使ってみました


#62 暗躍する影

途中、噂の社長〝レディリー・タングルロード〟に遭遇するなどというアクシデント(?)があったものの、一行は無事、ライブを準備している裏方の場所へとたどり着いた

スタッフであろう人たちがせわしなく準備している中、鳴護アリサの挨拶が響く

 

「鳴護アリサです。よろしくお願いしますっ!」

 

彼女がそう挨拶すると準備しているスタッフの方々も一度手を止めて、アリサに向かって「おねがいしまーす」などの短い挨拶を返してくる

 

「よろしくね、アリサさん」

「はい、お世話になります」

 

アリサの方へと歩いてくるプロデューサーであろう女性が手を差し伸べてきて、アリサはそれに握手で返した

握手を交わすと今度はプロデューサーの女性は橙子の方へと歩み寄り

 

「貴女も来ていただいて、ありがとうございます」

「こちらこそ。お招きいただき光栄ですわ」

 

眼鏡をかけて女性的な人格へとスイッチした蒼崎橙子がそれに応対する

アラタはそんな光景を少し離れた後ろで見ていたのだが、不意に佐天涙子がすいっとアラタの方へと近寄りつつ、少し声を抑えながら

 

「…アラタさん、何だか橙子さんのキャラガラッと変わってるような感じがするんですけど…」

「あぁ、眼鏡かけるとああなるんだよ、あの人」

「あんなにガラッと変わるもんなんです?」

「まぁ初めて見るとちょっと驚くよな」

 

すっかり慣れたものだが、まぁ一般人からしたら当然の疑問だろう

恐らく初春の方も顔には出てないが胸中で混乱していると思われるが、説明すると面倒くさいので割愛させてもらう

 

「あら、そちらの方々は…」

「こちらの方たちは、彼女のマネージャーさんです。可愛らしいでしょう?」

 

美琴たちの事を問われたとき、橙子は笑みを浮かべてそんなことを言った

マネージャーとかよく出てきたなとアラタは内心でツッコみながら苦笑いをしている美琴たちを見た

今美琴たちが着ているのはどう見ても制服なのでマネージャーではないということは察するまでもないだろう

 

「あら。本当に。…そうだ、橙子さん、ご提案があるんですけど」

「?」

 

不意に思い付いたかのようにプロデューサーの女性が橙子の耳に顔を近づけて何かを言っていく

ふんふん、と頷きながらそれを聞いていた橙子も徐々に笑みを浮かべて

 

「まぁ、それはいいですね!」

「でしょう! …ふふふ」

 

プロデューサーの女性と橙子の目線が美琴たちへと注がれる

視線を向けられた美琴たちはただ疑問符を浮かべるしかできなかった

 

◇◇◇

 

~アタリマエの距離~

 

つつがなく準備は終わり、一般客も交えたライブが開催された

ステージに立つアリサは衣装に身を包み、前列のスタッフのカメラの光が彼女を出迎える

かしゃりかしゃりとカメラの光がアリサを包み込んでいる中、そのカメラの光が別の人物を捉えた

 

それはアリサと同じような服を着た美琴と初春だった

 

 

 

宙に浮かんだ君の言葉はいつも、当たり前に僕を救ってくれた…

 

 

 

「あはは…ごめんね、こんなことに付き合わせちゃって」

 

苦笑いと共に隣の初春に美琴がそう言った

橙子とプロデューサーの女性の視線が光ってたのだから何かあるのかなとは思っていたがまさかこんなことになるとは

ステージ端にいるアラタや橙子たちに視線を向けてみる

橙子は微笑んでステージを見ていて、アラタと鮮花はは同じような苦笑いを浮かべてステージの模様を見守ってくれていた

 

「えへへ…ちょっと不安ですし、緊張しますけど…なんだか楽しくなってきちゃいましたよ!」

 

そう言って初春はぐっと拳を握り締めてケツイを決めたような表情を作り出す

本人がそう言ってくれているのなら大丈夫かな、と美琴は笑みを浮かべた時ステージの端からまた声が聞こえてきた

 

「ほら。早く前に行きなさいな」

「で、でもぉ…」

 

そこには衣装に身を包んだ佐天涙子と、それを見て早くステージに立つよう促す白井黒子の姿が見えた

佐天涙子が衣装のスカートのすそが短いことを気にしているようで、なかなかステージに向かっていない

車いす状態の黒子は着れないから仕方がないのである

 

「ほらほら、行こうよ佐天さん」

「あ、待って待って! 行くからぁ!」

 

そんなことを言いながら佐天は同じ衣装を着た神那賀にステージに連れていかれる

普段初春のスカート捲っているのにいざ自分となるとやっぱり恥ずかしいものがあるのだろう

 

「鮮花さんは着ませんの?」

「いやいや。…興味はないでもないけど、流石にあんなかわいいの着れる歳じゃないし…」

「あら。可愛いと思うけど?」

「橙子さんもからかわないでください!! もう!」

 

話を振られて鮮花は顔を赤くしながらそう返事した

まぁもう少し年齢が戻ればあの衣装を着れたとも思うだろうが―――なんて思った時にぐわし、と頭を鮮花に掴まれた

アイアンクローの体制である

 

「なぁんか失礼なこと考えてない?」

「いいえ滅相もなアダダダ!?」

「バレてんのよぉ!この愚弟がぁ…!」

 

ステージの端っこで行われるそんな些細な出来事の中、不意にアラタは痛みに耐えながら、ふと気になる人物を見つけた

黒いローブかマントかで身体を隠していたが、間違いない

あれはいつぞやの黒髪ロングの女性だ

 

「ちょ、ちょちょちょ鮮花さん!?」

「? 何よ」

 

アラタの叫びに鮮花はアイアンクローを解除して肩で息をするアラタの事を見やる

痛みが引いてきたアラタはちらりと視線を動かして、まだあの女性がいるのを確認すると視線をそのままに

 

「ごめん、鮮花さん、ちょっとここ任せていいですか?」

「え? いいけど…トイレ?」

「似たようなもんです」

 

鮮花への返事もそこそこにアラタはゆっくりとその場から動き出す

視界にいるあの女性はゆっくりとその場を動き出した

 

 

 

並んで歩く いつもの道も君が隣にいてくれるから輝くの…

 

 

 

◇◇◇

 

階段を降りた辺りで見知ったツンツン頭が見えた

間違いない、上条当麻だ

アラタは軽く小走りで駆け寄りながら小さい声量で当麻の名を呼ぶ

 

「当麻」

「! アラタ…、お前も来てたのか」

「それは俺のセリフだ。補修終わったのか?」

「あぁ。そんでもって、やっぱりアリサが心配だからちょっと様子見に来てみたら…あいつと見かけたって訳だ」

 

当麻の言葉になるほどね、と頷く

まぁ一般人の観客の中にいきなり黒ローブの奴なんかいたらいやでも目に付く

最も、客の人たちはアリサの歌に夢中だったから見向きもしていなかったが

会話もそこそこに二人は息を殺してローブの女性を追っていく

やがて二人は地下通路、とでもいうべき場所にたどり着いていた

あまり明るい場ではなく、要所要所にある赤いランプが照らしている

距離を離れすぎたのか、ローブの女性は見えなくなっていた

しかし道の先にはドアが一つあるだけ、見回してみると他に出入りできそうな場所は特にない

恐らくはこの先に行っているはずだろう

確かこのドアの先は地下駐車場だったような気がする

 

アラタは先行しそのドアの近くへと歩み寄る

耳を澄ましてアラタはドアに対して耳を押し付けて聞き耳を立てようとしたところで―――扉越しに大きな爆発音が聞こえてきた

 

 

変化が起きた

不意にライブ会場を照らしていた照明が落ちたのだ

がしゃん、と言うような音と共に明かりを無くした会場は不安な空気に包まれる

 

「あら、停電かしら」

「…どう、なんでしょう」

 

蒼崎橙子と黒桐鮮花も周囲を見渡しながらそんなことを呟く

…ここを離れたアラタにも、関係していることなのだろうか

 

 

一方でまた地下駐車場

そこに女性二人が相対していた

一人はシャットアウラ

そしてもう一人は金髪碧眼の女性だった

 

「鳴護アリサは、我々黒鴉部隊の庇護下にある!」

「あら。真面目ねぇ。嫌いじゃないけど?」

「ぬかせ!!」

 

挑発じみた金髪の女性の言葉にシャットアウラは叫びながら接近する

繰り出す鉄拳と蹴撃、だが相手の女性も実力は高いようでその攻撃をいなされてしまい、上空へと跳躍する

そのまま天井を蹴りつけて素早く地上に戻るとシャットアウラの足を払うように下段蹴りを繰り出す

シャットアウラはそれをバク転で回避して距離を取るとシャットアウラはあの女の付近にレアアースペレットをばらまき、スーツの手首部分から射出されるワイヤーを突き刺し、自身の能力で爆発を引き起こす

 

「けほっ、なるほど。これが超能力ねぇ…舐めてかかるとマズいかも」

 

爆発を掻い潜って出てきた女の言葉はそれだった

またも挑発じみた言葉ではあるが、いちいち気になどしていられない

もう一度ペレットをばらまき、一つのペレットを起爆させて誘爆を発生させる

自身は移動と回避の為に、ワイヤーで天井のパイプなどを掴んで空中に飛んでいたが、その判断が悪手だった

 

「残念」

 

女性は容易くその爆破を掻い潜ると中空にいるシャットアウラに向かって拳を突き出した

咄嗟に反撃などが出来ず、もろにその一撃を腹に貰ってしまったシャットアウラは吹き飛ばされて柱の一つの背中からぶつかってしまった

 

「がっ! ぐぅ…!」

「さぁて。それじゃあ―――…!」

「はぁぁぁっ!」

 

不意に聞こえてきた第三者の声

その声の主は一直線に走ってきてその女性に向かって飛び蹴りを叩き込んだ

同時に彼の後ろからもう一人走ってきてシャットアウラの近くに寄ってくる

 

「おい、大丈夫か!」

「き、貴様たち…!」

 

声の正体はいつぞやの特訓に付き合わせたあの男と、その友人だった

 

「問題ない…!」

 

シャットアウラはその友人…上条当麻に短く返答するとゆっくりと身体を起こす

視線は今、金髪の女性と対峙しているあの男―――鏡祢アラタへ注がれた

 

「あら。貴方は報告にあったクウガの坊や…それじゃあ、ちょっと遊んであげようかしら」

 

そう言いながら女性はおもむろに白いドライバーを取り出す

両側に何かをつけるような部分がある、どこかで見たことのあるようなベルトだ

女性はそれを腰に押し付けるとベルトが巻かれ、彼女の腰に装着された

そして今度は懐から一つの時計のようなアイテムを取り出すと、ウェイクベゼル*1を動かし、ライダーの顔を形作る

 

<ゾンジス!>

 

その電子音声のあと、ドライバーにそのアイテムを装填させて、ドライバー上部のボタンを押すと

 

「―――変身!」

 

右手でJの文字を作ったのち、ドライバーを一回転させた

 

<ライダー タイム>

仮面(カァメーン)ライダー(ラーイダァー) ゾンジス!(ゾォンジスー!)

 

眩い光と共に目の前の女性が生物的な黄緑の仮面ライダーが現れる

少し生々しい外見に赤いライダーの複眼が発光しこちらを見据えてきた

 

「さぁて…どっちが来るのかしら?」

 

「ぐ…離れろ…!」

「お、おい!」

 

シャットアウラは当麻を振り払うと対峙しているアラタの隣に立った

相手は仮面ライダーだ

当麻の右手は頼りになるが、流石にライダーが相手だと分が悪いか

 

「当麻、お前は一旦アリサの所に戻ってくれ!」

「! け、けどよ!」

「何かあってからじゃ遅いかもしれない、コイツは俺と…えっと?」

「シャットアウラだ、シャットアウラ・セクウェンツィア」

「俺とシャットアウラで何とかする! だから当麻、お前はアリサのそばにいてあげてくれ!」

「―――わかった!」

 

少し考えて当麻はアラタの決断を選択する

踵を返してさっき来た道を走っていく当麻を軽く視界に収めながらもう一度目の前ライダー―――ゾンジスへと視界を向けた

 

「…行けるのか?」

「無論だ。あの程度怪我にも入らん。貴様こそ足を引っ張るなよ」

「上等」

 

シャットアウラに言われてアラタは笑みを浮かべると腰に手を翳し、アークルを顕現させ身構える

それと同時シャットアウラもブラックイクサベルトを腰に巻き付けるとナックルを手のひらに押し付けた

 

<レ・ディ・イ>

 

「変身…!」「変身!」

 

<フィ・ス・ト・オン>

 

アラタが変身の動作を終えて、シャットアウラがナックルをベルトに装填する

光と共にアラタの身体が変質しクウガとなり、光の残像が重なりシャットアウラの姿をブラックイクサへと顕現させた

クウガが拳を構え、ブラックイクサがカリバーを構えたとき、ふと隣のクウガに気づく

 

「…貴様、前と姿が違うんじゃないか?」

「あれは俺のじゃなくってね。こっちが本当」

「そうか。ならば近いうちに改めてお前と模擬戦しなくてはな!」

 

言いながらブラックイクサはイクサカリバーをガンモードにしてゾンジスへと駆け出しながら発砲する

それを追いながらクウガもブラックイクサの後ろを追従するように走り出した

 

発砲された弾丸をゾンジスは両腕でガードしながら、ブラックイクサの攻撃を受け止める

ブラックイクサはそのままガンモードにしたイクサカリバーをカリバーモードに切り替えて二度、三度斬りつけるが、相手の装甲が厚いのか決定打にはなり得ない

ゾンジスから何度か反撃を受けて体制を立て直すように、一度ブラックイクサは後方へとステップして距離を取った

その隙を縫うようにジャンプしてきたクウガが割り込み、ゾンジスに鉄拳を喰らわせる

胸部へとその一撃を喰らったゾンジスは僅かに後方へと体制を崩し、「うっ…!?」とゾンジスから僅かに苦悶の声が聞こえてきた

そのまま何度か連撃を撃ち込んで、最後にゾンジスの腹部へと鉄拳を叩き込んだ

 

「おぉぉっと!? なかなかやるわね、流石クウガの坊や!」

「貴様の相手はアイツだけではない!」

 

クウガが作り出した隙を埋めるように今度はブラックイクサがナックルを構えて攻撃を繰り出してきた

なんとかゾンジスは防御に成功したが、流石に二対一ではこちらが劣勢か

初めて組んだはずなのに、なかなかどうしてこの二人は連携が取れている

―――この辺が引き時、か

 

「…頃合いね」

 

ブラックイクサの一撃を防御しながら、ゾンジスはベルトを操作する

 

<ゾンジス タイム ブレーク!>

 

繰り出されるブラックイクサの拳を左手で受け止めて、空いている右手に、ゾンジスは力を込めてライダーパンチを叩き込んだ

拳を止められたことに気を取られた彼女はその一撃を防げずに貰ってしまい、後方へと大きく吹っ飛ばされてしまい変身を強制解除されてしまった

 

「おっと!!」

 

なんとか後方へと飛んできた彼女をクウガは受け止める

彼に支えられながらゾンジスへと視線を向けるが、その時耳に仕込んでいた無線機から連絡が入った

 

<シャットアウラくん、聞こえるか、名護だ! D区画に複数の爆弾アリとの報告だ!>

 

突然の報告にシャットアウラは背筋をゾッとさせる

 

「すぐにそこから退避を! 他のものたちは、―――!?」

 

指示を飛ばそうとした時、不意にゾンジスが何かのスイッチのようなものを取り出した

何かのスイッチかはわからない―――だが想像はつく―――!!

 

「またね♪」

 

そんな軽やかな言葉と共にゾンジスは手元のスイッチを躊躇なく押し込む

刹那、周囲から爆発と思われる大きな音が響いてきた

地下駐車場も崩壊に襲われ、パイプやらが落ちてくる中、クウガはハッとシャットアウラの方へと振り向く

彼女は現在生身の状態、あんな状態では大怪我だって免れない

判断したクウガの行動が早かった

一度無動作で青へと色を変えると一飛びで彼女の近くへと跳躍すると、そのまま自分の身体を紫へと色を変えながら盾になるように覆いかぶさった

 

◇◇◇

 

当然ながらライブ会場の方も騒ぎになっていた

爆発と共に観客の悲鳴が起こり地震かの如く全体が震えている

 

「黒子!」

 

美琴は素早く後輩である白井黒子へと声を呼びかける

「はいですの!」と彼女の声が聞こえ、車いす状態の彼女がライブ会場へと空間移動で駆け付ける

そのまま美琴の隣に神那賀へとドライバーを投げ渡し、うずくまる初春と佐天の服を掴むと安全な場所へと黒子ごと空間移動する

 

「変身!」

 

神那賀もためらうことなくドライバーを巻いてそこにメダルを装填し、バースへと変身を完了させて、周りの瓦礫などの除去や人命救助へと駆けていった

美琴はこの場に残ったアリサを守るべく歩み寄ろうとした時、またひと際大きい爆発が起こり、大きな鉄骨がこちらに向かって倒れてきた

 

「!」

 

美琴は自身の力でこちらに倒れ込んでくる鉄骨を大きく歪めながら自分たちのスペースを作り出すことでなんとかこの場を凌ぐ

だが倒れてくる鉄骨はこれだけではない

 

「! 全部は無理…!!」

 

苦渋の決断だがいくら美琴でも不可能なことはある

今は自分の友達を守ることだけが精一杯だ

 

瓦礫や鉄骨、ガラスなどありとあらゆるものがライブ会場を襲い、地上へと落下してくる

しばらくして騒ぎが収まり、煙が収まってくる

美琴は立ち上がって辺りを見回してみるが、状況は酷いものだ

 

「ビリビリ! アリサ!!」

 

その時聞こえてきた男性の声

そちらへと振り向くとそこには上条当麻がこちらに向かって走ってきていた

 

「アンタは…、どうしてここに?」

「と、当麻くん…」

「良かった…二人は無事みたいだな」

 

そういえば途中からアラタもいなくなっていたし、もしかしたらそれと関係して当麻もここにいるのだろうか

そうこうしているうちに、初春や佐天、橙子や鮮花たちを安全圏へと送り届けた黒子が再度美琴の隣に戻ってくる

腕には風紀委員の腕章をしており、仕事モードだ

 

「皆さん! 風紀委員(ジャッジメント)ですの! 怪我をした方はいませんか!!」

 

黒子が大声でそう叫ぶ

彼女の声を耳にしながらバースは周囲を駆けながら負傷者などを探しているが、驚くべきことに負傷した人が見られないのだ

それどころか、軽傷すら負ったものはいない

 

「…嘘…なんでこんな…」

 

はっきり言えばもはや大事故レベルの損害である

なのにどうしてこうも怪我人がいないんだ…?

そうバースが考えた時、不意に観客の一人がある単語を漏らす

 

 

「―――奇跡だ」

 

 

奇跡

 

だけど、本当に?

 

口々にそう言って喜びを分かち合う観客たちを、鳴護アリサはどこか苦い顔で眺めていた

*1
スライドさせているアレ


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